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とりあえず、アフリカに行こう(1)
 
アフリカ開発銀行 日本等代表理事 野元  隆章*1
 
 
このエッセーで伝えたいことは「アフリカには多くのチャンスがあるので、是非、アフリカに来て欲しい」ということである。私自身は、昨年7月より、アフリカ開発銀行に日本等を代表する理事として赴任し、その本部があるコートジボワールという西アフリカの国に住んでいる。私自身、アフリカについて学んでいる最中であり、アフリカの将来や状況について断定的な意見を述べることは自分の能力を超えている。しかしながら、それでもなお、前述の通り、アフリカには多くのチャンスがあると感じているし、アフリカは、今後、世界の成長センターとしての役割を果たしていくだろうと思う。このエッセーは、私が、この1年余りの間に見聞きしたことや、それについて思ったことなどを2回に分けて、率直に共有するものである。今回は、その1回目であるが、それが、少しでも読者のアフリカに対するイメージを変えたり、アフリカへ行きたいという気持ちを引き出したりすることにつながれば幸いである。
 
 
1 アフリカは遠い?ビジネスに向かない?
まずは簡単に私の経歴等を紹介したい。というのも、前述の通り、このエッセーは主観的なものであり、経歴を共有した方が、読者に私の知識や考え方における偏りを察してもらえると思うためだ。私は、2004年に財務省に入省し、2007年に国際局の開発機関課という国際開発銀行(Multilateral Development Banks. 略してMDBs)を担当する課に配属された。それ以降、開発(Development)・開発金融(Development Finance)に関心があり、2011~14年にはアジア開発銀行、2018~21年には世界銀行に出向する機会を得ており、現在のアフリカ開発銀行が、3回目のMDBs勤務である。このため、開発経験はそれなりにあるし、公私で多くの途上国を訪れており、途上国への関心は一般より高い方でないかと思う。なお、MDBsというのは、日本を含む世界の各国政府が株主になっている銀行であり、インフラ整備や制度改革等に必要な資金を途上国政府や民間企業に貸し付けるなどし、加盟国の経済社会的な発展に貢献することを主な使命とする国際機関である*2。
ここで共有したいのは、これほど途上国に関心が高い私でも、つい数年前にアフリカに実際に行くまでは、無意識にアフリカを意識の外に置いていたということである。もちろん、アジアが成長した現在にあっては、世界銀行の最貧国向け支援の大半はアフリカ向けであり、所得・人口・経済状況、さらには開発事例・研究等を含めて、「知識」としてはアフリカを知ってはいた。しかしながら、その国がどういう国なのか、どのような人や組織がどう動いているのかといったことにまで、思いを馳せていなかったと思う。私の場合、アジアについては、多くの国に実際に行ったことがあるほか、普通に生活していても報道等で触れる機会があるからか、データや事例に触れた際に自然と主体的に消化し、アジアについてのフィールド感を形成していたと思う。一方、アフリカについては、触れている情報があまりにも少なかったためか、情報を整理して格納する箱がそもそも頭の中になかったと思う。しかも、恥ずかしながら、自分がアフリカについてしっかりと考えていないことにも気づいていなかった。2019年に世界銀行の会議でコートジボワールに行き、現地の説明を聞いた際に、「そうだろうな(データから把握できる状況からすれば、当然の帰結)」と思うことがあまりにも多く、消化していない、つまりは、アフリカについてよく考えてなかったことに気づいた次第である。
このことを踏まえれば、アフリカは、やはり私にとっても遠かったのだと言わざるを得ない。また、現状、多くの日本人にとっても遠いのかもしれない。一方、ここでの遠さは、関係性からくる主観的な距離(地理的にいえば、アフリカは、日本人がよく訪れる欧州のすぐ近くであり、ラテンアメリカよりも日本に近い)であり、「とりあえず、アフリカに行ってみる」ことによって、アフリカを近くすることができると思っている。特に、アジア経験・途上国経験がある人であれば、実際に行ってみれば、「アジアとそう変わらない」「普通の途上国だな」と思うはずである。都市にいけば、立派なビルやモールが立ち並ぶ一方、田舎に行けば、農業や漁業が行われており、アジアや他の途上国と同じ経済原理の中で動いている。このため、アジアで培ったフィールド感や経験を活用すれば、比較的早く、フィールド感を形成できると思う。
 
ガバナンスはアジアと違うのか?
ここでは、アフリカでビジネスをする際のリスクとして指摘されたり、アフリカを特異視する理由として挙げられたりすることのあるガバナンスの問題について触れたい。結論から言えば、アジアとは「多少の」違いしかないというのが私の見方である。ガバナンスとは、政府の行政能力の有効性(Government Effectiveness)、腐敗(Corruption)、政治的な安定性(Political Stability)、公的な場での意見の述べやすさ(Public Voice)、法の支配の程度(Rule of Law)などを総称するものであり、「アフリカはガバナンスが弱く、ビジネスできない」との意見を聞くことがある。たしかに、世界銀行のガバナンス指標*3をみると、アフリカの平均はアジアの平均より悪く、その意味で、この主張は正しい。しかしながら、この主張は、アフリカには50か国を超える国があり、各国ベースでみれば、アフリカにも、日本企業が多く活動するアジアの国と同程度もしくはより良いガバナンスやビジネス環境を備えている国があることを見逃している。なお、これを逆から言えば、日本企業は「一部のアフリカ諸国よりもガバナンスが悪いと評価されるアジアの国で既に活動している」ことを意味しており、日本企業は、既にリスクを取り、それに対応しているということになる。
具体の数字をいくつか例示したい。前述のガバナンス指標の最新版のうち、企業活動への影響が大きいと思われる政府の有効性や腐敗の項目を見ると、ケニアやタンザニアといった比較的日本人に馴染みのある国から、ザンビアやブルキナファソなどのあまり馴染みがないであろう国を含めて、半数以上のアフリカ諸国が、日本企業が多く活動しているバングラデシュよりも高い評価を得ている。また、南アフリカ、ボツワナ、ルワンダといった南部アフリカの国は、政府の有効性においてフィリピンを上回り、ベトナムやタイと同じ程度であるし、腐敗については、それらの東南アジアの国よりも大分高い評価を得ている。つまり、東南アジアと同程度もしくは良い評価を得ている国も多々あるのだ。ビジネス環境についても同じように比較的良い評価を得ているアフリカ諸国も多くあるので、世界銀行のDoing Business Indicators*4を見てみよう。これは、建設許可の取りやすさや電気へのアクセスの容易さなど、各国のビジネス環境を包括的にとらえて、ランキング形式で整理した指標であるが、その2020年版をみると、アフリカで一番よいランクのルワンダは世界で38位であり、スイス(36位)と同じ程度、それに続く、モロッコ(53位)やケニア(56位)はイタリア(58位)と同じ程度であるし、チュニジア(78位)、南アフリカ(84位)、ザンビア(85位)は、インドネシア(73位)やフィリピン(95位)に挟まれる位置にある。
なお、いずれの指標でも、スーダンやソマリアなどの国は、アフリカでも、そして世界でも最も悪い部類の評価になっており、日本における「アフリカはガバナンスが悪い」というイメージは、過去にアフリカで頻発した紛争や、現在もそうした状況から抜け出せない一部の国のイメージを引きずっているのではないかと思う。ここで、アフリカが巨大である(アフリカの面積は、アメリカ合衆国、中国、欧州の面積を足し合わせたものよりも大きい)ことも併せて考えてみると、「アフリカはガバナンスが弱く、ビジネスできない」というのは、例えば、「アフガニスタンの情勢がよくないので、インドでは活動できないし、インドネシアへの進出も控える」「ミャンマー情勢が悪いからフィリピンでの活動は難しい」というような粗さの議論に聞こえてこないだろうか。
もちろんこうした指標はあくまでも参考にしかならないことはよく承知しており、ガバナンスの状況も含めた実際のビジネス環境は、それぞれの企業が実際にアフリカに来て判断してもらうしかない。ただ、ここで問いたいのは「アジアでビジネスができるのであれば、アフリカでもビジネスをできるのでは」ということである。多くのアジアの国とアフリカの国は、ガバナンスやビジネス環境について粗々の意味で同じ範囲に収まっている上、多くの日本企業は既にそうした状況にあるアジアで活動している。こうした中で、アフリカはガバナンスが悪いといった言説を鵜呑みにしたり、それを思考停止の理由として使って、アフリカを戦略の外側に置いたりし、成長が期待されるアフリカでのビジネスを模索しないのはやはりもったいない。よく指摘されるように、国際連合の推計*5によれば、現在、アフリカの人口は14億人弱であるところ、2050年には25億人に達し、世界の4人に1人がアフリカの人となると言われる。さらに遠い2100年には、アフリカの人口が世界の人口の約4割を占めると推計される。実際のところ、アフリカへの世界からの投資は、急増している。直接投資残高でみれば、2000年には1,530億ドルだったところ、2021年末には1兆ドルに達している*6ほか、後述する通り、アフリカへのスタートアップ企業への投資も急増している。
 
 
2 アフリカ開発の特徴についての雑感
さて、ここでは、昨年夏に赴任して以来、アフリカ諸国を訪れて見聞きした結果として、現時点で私が持っているアフリカの開発の印象について、3つの特徴としてまとめる形で、事例や個人的な雑感とともに紹介する。
(1)民間主導の開発、それを支える強い意思
一つ目の特徴は、開発プロジェクトについて民間が主導する力が強いということである。この点については、今年の5月に見聞したナイジェリアの事例を中心に紹介したい。ナイジェリアの経済の中心地であるラゴスは、大西洋に面しており、護岸浸食により過去100年で海岸が後退している。これを受けて、約1000万平方メートル(関西国際空港とほぼ同じ広さ)を埋め立て、その土地を再開発する事業が行われているが、その計画・実施を主導しているのは、州政府といった公的セクターでなく、Eko Atlantic という民間の会社である。もちろん、ラゴス州政府やナイジェリア連邦政府は、戦略的パートナーとして関与しているが、資金貢献はしていない。「埋立後の土地の先売りを含めてデベロッパー等に売却することで埋め立て費用を賄い、利益を得る」という全てを民間資金で賄うprivately fundedの設計である。政策面についても、同社が世界中の埋立地の利用に関する規制を自ら研究して規制案を立案して州政府に提出するなど同社が主導する形だ。都市の埋立ては一般に言って大事業であり、日本やアジアであれば、公的セクターが主導する場合がほとんどではないだろうか。アフリカでは、こうした大事業を一民間の会社が主導して実際に行ってしまう場合があるのだ。私が訪問した時点で、既に一部の埋立ては終わっており、日本で見かけるのと同じような、3棟のタワーマンションが完成しつつあった。
ナイジェリアでは、他にも、大企業が主導する形で道路や住宅を整備する事業が行われている。例えば、西アフリカで最大規模のコングロマリットとされるDangote Groupは、2019年に政府と道路整備に関する取り決めを結び、500キロ超の道路を整備する計画を立てており、既に75キロの道路を完成させている。天然ガス会社のNigeria LNGや農業会社のFlour Mills of Nigeriaも、道路に加え、水道や電気敷設といったコミュニティ開発の事業を自ら積極的に行っているとのことだった。こうした民間が主導する形式での開発は、ナイジェリア以外でも行われている。例えば、ガーナでは、住友商事も参画するCenpower社を訪れる機会を頂いたが、同社のガス発電事業については、ガーナ政府から同社への働きかけでなく、同社がガーナ政府に働きかける形で始まったということだった。
この民間主導の開発についてハイライトしたいのは、担当者が、何が何でもやり遂げようとする強い意志をもって実行していることだ。先ほどの埋立事業については、州政府との折衝はかなり大変だったようだが、埋立地を米大使館や英大使館が購入する約束をしてくれていることなどをうまく使うなどして乗り切ったようである。また、道路事業やコミュニティ開発事業の担当者からは、企業の短期的な利害を超えて、目の前にいる人の生活を改善したい、国を発展させたいという国の開発に対する当事者意識(ownership)も強く感じた。つまり、政府の能力が必ずしも高くない中*7、国の発展*8に必要な事業を諦めてしまうのでなく、むしろ「政府を待っていても、何も起こらないから、自分たちでやってしまおう」と考えているのである。こうした「自分たちが何とかする」という当事者意識を持つ人が多いか否かは、国の発展にとって非常に重要な要素だと思う。一方、ここでは、ナイジェリア政府についても「開発を民間に任せる」という大胆かつ現実的な決断をし、実際に必要な事務手続きを進めたことに敬意を表したい。
この観点からもう一つ紹介したいのは、ナイジェリアのTony Elumelu財団である。同財団は、銀行等で財を成したElumelu氏が、民間セクターの役割が国の発展に決定的に重要との信念の下に2010年に設立したもので、農業・保健・教育・エネルギーなどを優先分野として定め、それらの分野における起業等を推進している。私は、同財団との懇談会において、各担当者からプレゼンを聞いたが、その内容は、それぞれの分野における課題を正面から捉え、官民の縛りにとらわれずに政策面も含めて必要な取組を列挙し、それと整合的な民間における起業を推進することを基本とするものだった。課題分析のくだりは政府の担当者かと思うほどであり、「自分たちが何とかしてこの国を発展させるんだ」という強い思いを感じた。これを聞きながら、「明治維新後の日本もこんな感じだったかもしれない」と思ってしまった。明治以降の日本の成長の特徴の一つは農業と非農業がともに高成長を遂げたことだが、農業について、老農と言われる人々が、公的な取組に先行して、自主的に効率的な生産方法や高収量品種を実証により特定するなどして生産性の向上に大きく貢献したと言われる。これに限らず、当時の日本は、官民問わず、みなが強い当事者意識を持って近代化に貢献したのだと思う。ちなみに、その後、アフリカ開発銀行のナイジェリア理事*9に聞いたのだが、同財団は、日本の財閥にインスパイアされ、それと同じようなものをナイジェリアに作りたいとの思いから設立されたとのことだった。
アフリカについては「本当に成長するのか」「成長しないのではないか」といった懐疑的な議論が根強くあるが、このように「自分たちが何とかする」という気持ちの人が多くいるのを見ると、多くのチャレンジを克服して、いずれはしっかりと成長するだろうと思ってしまうのである。この論点は、私の関心事の一つでもあり、後ほど結語でも触れたい。
さて、この民間主導のプロジェクトが多いことの日本企業へのインプリケーションは、価格ではなく、質で勝負できる場合が増えるということである。こうした民間セクターのプロジェクトも、公的セクターのプロジェクトと同じく、一般競争入札を経る場合があるが、民間企業は、シビアに投資のライフサイクルコストを勘案して、技術力などもしっかりと見る印象である。また、相手企業との関係次第では最初から立案企業として参加し、入札を避けることができる場合もある。実際、私が訪問したアフリカ企業において、その企業が手掛ける事業の一つを日本企業が受注したとのことだったので、その理由を聞いたところ、「競争入札にかけ、最終選考に残った数社から直接話を聞くなどして検討した結果、技術的にしっかりしていたために、価格面では最安ではなかったが選ぶことにした」とのことだった。今後、人口増に伴い、都市での集積*10もさらに進むことを考えると、前述の埋立事業*11やタワーマンションの事例だけでなく、都市交通や都市における災害向けインフラなど*12、高い技術力が必要なプロジェクトも増えてくるはずである。従来型のODA事業に加えて、こうしたプロジェクトの情報をしっかりと集めることができれば、日本企業にとって「おいしい」事業を見つけることができるのではないか。
写真1:ナイジェリアのラゴスの埋立地に建設中のタワーマンション。
写真2:写真1のタワーマンションの上層階から見た埋立地の様子。
 
(2)シンプルな社会課題と起業
二つ目の特徴は、「社会課題がシンプルであり、ストレートなモチベーションに基づく事業ができる」ということである。アフリカにおける課題は、発展段階が低いことの裏返しとして、例えば、教育・保健・エネルギーへのアクセスが低い、道路を含むインフラが足りないなど、シンプルである上に、小さなプロジェクトでも目に見えた効果があがりやすい状況にある。これは、社会課題解決的な起業を志す人にとっては非常に魅力的な状況であり、アフリカは「気持ちのよい起業ができる」場であると言える。
先日、三菱商事とチュニジアの商工会議所が主催したTICAD8のイベントにおいて、アフリカで起業する一人であるMansoor Hamayun氏と話す機会があった。同氏は、太陽光発電などの再生可能エネルギーを活用し、エネルギーアクセスを高める事業などをアフリカで手掛けるBboxx社を2010年に創業し、2019年には三菱商事の資本参加も得て、現在では、ルワンダ、ケニア、トーゴなどアフリカ10か国で35万の契約者に電力を供給している。お会いした際に、私から「なぜ、このビジネスを始めたのか」と尋ねたところ、「英国のインペリアルカレッジで電気工学の勉強をしたが、アフリカにおけるエネルギーアクセスが過去数十年であまり進捗せず、エネルギーアクセスのない人がアフリカに集中していることを知りショックを受けた。このため、せっかく勉強したのだから、エネルギーアクセス改善のために何かしたいと思い、友人とこのビジネスを立ち上げた」とのことだった。起業のモチベーションは、人によって様々だと思うが、「目の前にいる人に対してポジティブな変化を与えたい」というのは大きなモチベーションの一つであり、アフリカは、そうした起業家を集めやすい状況にあると言える。ちなみに、Bboxx社の共同創業者は3人で、パキスタンとスウェーデンの二重国籍者、イギリス人、ベルギー人であるが、出自としてアフリカに関係がある訳でなく、自らの意思で事業の場としてアフリカを選んだのである。
実際、世界的なスタートアップ企業の興隆も背景として、アフリカにおけるスタートアップ企業は急増しており、2015年には3億ドルに満たなかった資金調達額が、2021年には52億ドルに上ったと言われている*13。さらに、世界的な景気後退にも関わらず、資金調達額は、今年(2022年)の前半だけで30億ドル以上、年末には70億ドルに達すると言われている*14。こうした動きは、ナイジェリア、南アフリカ、エジプト、ケニアといった比較的大きな国だけでなく、ガーナ、セネガル、モロッコ、チュニジアなど、アフリカの幅広い国で活発であるし、分野も農業を含めて多岐にわたる。この動きの裏側には、前述のTony Elumelu財団を含め、多くの投資家、投資ファンド、さらには、各地に設立された起業支援を行うラボ(有望なスタートアップ企業にワークスペースや会計・法律などに係るサービスを提供する場)が、incubator(孵化)機能を発揮していることがある。このように、アフリカでは、起業を助けるエコシステムが着々と築かれつつある。アフリカにleap frog(蛙跳びのような急速な変化)が多いと言われるのも納得できる。
さて、ここで共有したいのは、これらスタートアップ企業のビジネスモデルが、前述の民間主導の開発の流れと軌を一にして、政府の補助金等に頼らず、純粋にビジネスとして収支相償することを基本にしていることだ。これは、企業活動なので当たり前と言えば当たり前なのであるが、寄付金等に支えられて従前からアフリカで行われている非営利団体による活動とは、関わる人のマインドが随分違うように感じているので特筆した。ただし、非営利団体から企業に転換したり、スタートアップ企業も社会課題の解決に非常に理解が深い投資家に寛容に支えられたりしていることもあると聞くため、実際は、この中間の形態も多くあるのだと思う。また、有望なスタートアップ企業は、ビジネスとして成り立たせるための「ひと工夫」をしっかりとしていることも共有したい。さきほどのBboxx社を例にとれば、アフリカでのエネルギービジネスで頻出の問題である「電気料金を契約者から取れない」ことに対応することが重要であるが、同社は「料金の前払い制(pay as you go形式)を採用し、料金の支払いがなければ電気へのアクセスを自動的にストップする仕組みを組み入れることでその実効性を担保する」ことにより対応している。ちなみに、このような工夫は、フィリピンのバイクローンなどにも見られる仕組み(バイクローンを支払わないと自動でエンジンがかからなくなる)であり、途上国でのビジネスでしばしばみられる手法の一つだ。
こうした動きの中で、政府が果たす役割は様々であるが、資金的に政府に頼らないにしても、政府の理解が重要なことは論を待たない。この点、前述の起業支援ラボを国が支援している場合もあるほか、国によっては、各国の大臣自身が、非常にアクティブに関わってくれる場合があることも付け加えておく。特に、小さい国では、民間出身者が大臣に指名されることも多く、小回りも聞く印象だ。起業の事例ではないが、私が関わった農業関係の取組(ソフトバンクが開発したe-KakashiというITを活用して、農業生産性を高め、かつ温暖化ガスの排出を抑制する技術のアフリカでの実証・実践*15)では、コンセプトを話し合うワーキング・レベルの打ち合わせに、ベナンの投資担当大臣が自ら出席し、積極的に発言していた。私の印象では、アフリカの大臣は自分で判断する優秀な人が多く、国の姿勢とスタートアップ企業の取組がうまくかみ合えば、大きな革新を遂げることができるかもしれない。日本が希求する水素発電も、もしかするとアフリカのどこかの国が最初の実践の地になるかもしれないのである。
 
(3)ユニークな発展経路
三つ目の特徴は、アフリカのとっている発展経路が、欧米、日本、アジアなどが辿ってきた伝統的な発展経路と異なっているという点である。伝統的には、産業構造は、農業、工業、サービス業との順で発展していくとされる(ペティ・クラークの法則)。また、この農業から非農業のへの産業構造の変化は、農業も速いスピードで成長しているものの、工業・サービス業の成長スピードがそれを更に上回ることによって起こってきた。つまり、産業構造の高度化の中で農業の生産性も飛躍的に高まってきたのである。さらに、工業化については、繊維産業など、必要な資本(設備)が少なく、安い労働力を活かせる産業から発展し、そうして蓄積した資本を活用して重工業等に進んできた。こうした発展経路については、日本において、戦前には農業・繊維産業が発展し、戦後に鉄鋼業や自動車産業などの高度化が進んだこと、高度成長期には、都市への移住の加速などによる農業分野での労働力不足に対応して農業の機械化や生産性の向上が見られたこと、さらには、1980年代後半から、製造業の担い手が日本を含む先進国からアジアなどの途上国へ移行してきたことを思い返すと分かりやすい。
一方、アフリカにおいては、労働人口が、農業から工業へ移るのでなく、農業からサービス産業に移行しており、経済成長しているにも関わらず、工業化がさほど進んでいないことが指摘されている*16。また、農業の生産性もさほど向上しておらず、他地域と比べて極めて低い*17。実は、アフリカの多くの国が、アジアやラテンアメリカから食料を輸入しているが、その理由の一つは、アジアやラテンアメリカから食料を輸入する方が安くかつ安定しているためである。つまり、農業でもアジアなどの地域に太刀打ちできていないのだ。アフリカとアジアの農地の様子を比べると、アジアの農地の方が明らかに整然としており、商業化の程度の違いや生産性の違いが見て取れる*18。また、潜在的に耕作地として利用可能であるが未活用の土地の65%がアフリカにあると言われる*19が、実際、農地に適しているように見えるにも関わらず、農地として活用されていない土地も目に付く*20。
サービス産業化が工業化に先行している要因については、学問的にも分析され始めたところであり、見方が確立していないのではないかと思うが、安定した電気供給の有無といったインフラの問題もさることながら、アジアなどに比べ所得水準が低いにも関わらず、実は賃金等の労働コストが高いことも指摘されて始めている*21。この点、教育の質*22、資源依存から来る経済構造の歪み*23など、アフリカが抱える問題が複雑に絡み合った結果であると考えられ、こうした問題の解消には時間がかかることから、工業化がなかなか進展しない状況はしばらく継続するのではないかと思う*24。ただし、これも、やはり国や分野次第であり、例えば、エチオピアは、繊維や皮革などの製造業の誘致に力を入れ、一定の成果を上げているとされる*25。ちなみに、注21で触れたGelb et al.(2020)でも、エチオピアは、バングラデシュと同程度の労働コストと推定されており、安い労働力を軸に発展していく可能性があるとする。また、アフリカの需要を主眼としたアフリカ現地での生産は既に進みつつある。私の住むコートジボワールでは、フランスのチョコレート会社のCemoiが2015年に生産工場を設置した*26ほか、世界的なビールメーカーのHeinekenも2017年に豊田通商が出資するCFAOと共同出資する形で現地生産の工場を設置している*27。隣国のガーナでも、チョコレートの現地生産が2007年からガーナ現地企業のNicheにより行われている*28ほか、近年、フォルクスワーゲン*29、トヨタ*30、日産*31が現地生産を始めている。そのほか、北アフリカでは、モロッコで国内需要向けにおむつやお菓子等の生活用品の生産をグローバル企業から請け負う工場、チュニジアでグローバル企業から請け負って輸出向けの自動車部品を製造する工場を見学したことがある。仮にアフリカが消費市場としてさらに堅調に成長すれば、こうした現地生産もさらに増加するだろう。
なお、個人的には、アジアなどの他地域における農業や工業が、労働節約技術を含めて高い技術を搭載する設備を使い、規模の経済が働くような大規模でなされていることを考えると、農業や軽工業への参入がかつてほど容易とは思えず、IT技術の進展とも相俟ってサービス産業の方が先に発展することは割と自然なのではないかという気もしている。また、製造業における雇用が減っているのは前述の労働節約技術の発展等を背景とする世界的な現象であり、先進国*32はもちろんのこと、他の途上国*33でも見られるのであり、かつてのように雇用吸収力のある製造業がどの程度あるのかという論点もあるのではないかと思う。さらに、サービス産業が経済発展をけん引できるのか否かとの論点について、デジタル技術を活用したサービス産業が持続的な経済発展を促すことができるという研究も出てきている*34ほか、前述のスタートアップ企業の増加等を通じてイノベーションも一定程度起こっていると思われる。このため、工業化が進んでいないことのみをもって、アフリカの将来を悲観することはないと思っている。さらに言えば、この状況は、アフリカの政治家やリーダーにとっては前例のない発展の模索が必要という難題を突きつけるものであるものの、敢えて割り切って書けば、日本にとってはビジネス上の「参考情報」でしかないと思う。アフリカが生産工場として適切な場であることは日本企業が成長するアフリカ市場から裨益するための必要条件ではないし、ましてや、アフリカの工業化の発展に日本企業が義務を負っているわけではなく(コスト面などから経済的に合理的になれば、アフリカで生産すればよい)、「アフリカは、アジアとは異なる。潜在的な生産工場ではなく、市場として見た方が良い」といったことを示唆しているに過ぎない。
一方、農業分野全体(農作物の生産・加工・販売だけでなく、肥料等の農業資材に係るビジネスなどを含む関連分野全般)については、多少無理をしてでも現状を変えていく努力が必要だと思っている。アフリカにおける農業が、他地域との競争に負けてしまって振るわないのだとすると、無理は望ましくないとの見方もあろうが、将来の世界の人口増を考えると、世界的な増産が必要であり、アフリカ自身の増産は必須だろう。アフリカでは、現時点で、生産性が非常に低く、収穫後の損失(Postharvest Loss)も深刻であるため、既存の技術でも十分に改善・増産が見込める。Postharvest Lossとは、収穫後の保存中に害虫被害にあったり、出荷時に紛失したりすることなどによって作物が損なわれることであり、アフリカでは日本では想像できないほど大きい。例えば、Affognon et al.(2015)によれば、トウモロコシでは21%、マンゴーに至っては91%が失われるとされる。しかしながら、関係者の意識改善を含めて対策を取れば、前者を4%、後者を20%に減らすことができるとされる(ibid)。さらに、何よりも大きいのは、アフリカの労働人口の5割超が農業に関わっていることを考えると、農業分野の改善による他分野へのポジティブな波及効果が非常に大きいということだ。例えば、前述のスタートアップ企業には、社会課題の解決を企図するものも多いわけだが、エネルギー、保健、農業などの分野を問わず、利用者から十分な料金を取れるか否かは死活問題であり、農業の生産性向上により、幅広い人々の所得が少しでも上がることの効果は大きい*35。
 
 
3 アフリカの今後への個人的な想像
さて、ここで今回の結語も兼ねて、(1)から(3)で指摘した文脈を改めて整理してみるとともに、アフリカの今後を想像して(speculate)みたい。アフリカにおける民間主導の開発、スタートアップ企業の興隆、サービス産業主導の成長というのは、政府の能力が必ずしも高くないことやアジアなどの他地域の農業・製造業における生産性が非常に高いことなどを所与の条件として受け止め、アフリカの人々自身のアフリカを成長させたいとの強い意志を反映する形で、「人々の生活の改善に向けた試行錯誤がなされている」ということである。特にスタートアップ企業の活動は、人々の「こうだったら良いのに」「もっとこうできる」という欲求に応える文字通りの試行錯誤である。今後、アフリカに限らないスタートアップ企業の運命として、多くの企業が淘汰され、成功している企業も整理統合される形で規模を持つようになっていくだろうと思う。また、それと同時並行する形で、国際社会の支援も得ながら、政府や大企業によりインフラを含む社会経済基盤が整えられていくだろう。そして、この2つの動き(スタートアップ企業等による人々の欲求にこたえる動きと社会生活基盤の整備)がかみ合えばかみ合うほど成長が早まると言えるのではないか*36。
こうした動きが成就するか否かを見通すことは難しいし、実際のところ、世界経済の動きなどの外部要因やアフリカ内部の政治状況なども含め多くのアップダウンがあるだろう。しかしながら、こうしたアフリカにおける動きは「所与の条件の中で効用の最適化・最大化を行う」という経済原理に則ったものであるように思えるし、スタートアップ企業の動きは「社会的に付加価値を出すことにより利益を得る」という企業の王道の在り方であるように思え、方向性として間違っているとは思えない。このため、「成長するか否か」よりも、「成長が早いか遅いか」の方が適切な問いではないかというのが、現時点での暫定的な私の見方である。成長パターンが伝統的なものと異なっていることについては、前述の通り、経済原理から離れたものとは思えないことや、学問が後追いの場合も多々あることなどから、個人的には過度に問題視するよりも、とりあえずの特徴としてとらえておけば良いのではないかと思う。仮にアフリカが成長を遂げれば、将来の時点において、アフリカの経済成長モデルとして分析・説明されることになるだろう。
今回は、ここまでにしたい。次回は、こうした動きがあるアフリカの中で、日本企業や日本人がどう動いているのかなどを見ていく。実は、この10年において、日本企業が、農業・食糧・通信・インフラといった分野において、アフリカで活動する企業を買収したり、一部出資したりするなどして、アフリカの成長を日本の成長に取り込んでいくための足掛かりを築きつつあるほか、日本人の若者が、アフリカで起業したり、アフリカ向けのベンチャーキャピタルを立ち上げたりするなど、ポジティブな進展が見られる。
(以上)
 
 
 
*1) 本エッセーの作成にあたっては、在アフリカの日本大使館や日本企業の知人、アフリカ開発銀行の日本人職員の同僚(特にアジア事務所の花尻所長)、世界銀行時代の同僚のほか、東京大学の鈴木綾教授に助言や協力をいただいた。この点、御礼申し上げたい。一方、本文中の意見、感想等はすべて筆者の個人的な意見であり、誤りがある場合も筆者個人に責任があることを明記しておきたい。
*2) ちなみに、日本もMDBsの一つである世界銀行から1953年から1966年にかけて貸し付けを受けていた。例えば、東海道新幹線の建設のために当時の国鉄が、「クロヨン」の名称で有名な黒部川第四発電所の建設のために関西電力が長期資金を借り入れている。一般に、国の発展の初期段階においては、インフラ整備等に膨大な資金が必要である一方、そうした国の政府や民間企業が合理的な条件で市場から資金を調達する力は限られている。こうした状況において、開発事業を行う者に対し、長期かつ合理的な金利で貸付けを行うことにより国の発展を支援するのが開発銀行の基本的な役割の一つである。なお、現在は、国の発展における制度の重要性がよく認識されるようになり、インフラ整備だけでなく、制度改革などを支援するための貸付けなども行われるようになっている。前述の日本への貸付けについては、「日本が世界銀行から貸出を受けた31のプロジェクト」として、下記の世界銀行のホームページによくまとまっているので、参考にされたい。
https://www.worldbank.org/ja/country/japan/brief/31-projects-shinkansen
https://www.worldbank.org/ja/country/japan/brief/31-projects-shinkansen
*3) Worldwide Governance Indicators 2022.  http://info.worldbank.org/governance/wgi/
*4) Doing Business 2020. https://openknowledge.worldbank.org/bitstream/handle/10986/32436/9781464814402.pdf
*5) United Nations, Department of Economic and Social Affairs, Population Division (2022). World Population Prospects 2022, Online Edition.
*6) UNCTAD. World Investment Report 2022.
*7) ナイジェリアは、2億人超とアフリカで最大の人口を有する地域大国であり、多くの日本企業も活動する。しかしながら、前述のガバナンス指標で、政府の有効性をみるとアフリカ54か国中37位との評価であり、アフリカの中でも高い方ではない。
*8) 「開発」と「発展」は、英語ではともにdevelopmentであり、このエッセーではほぼ同じ意味で用いている。
*9) アフリカ開発銀行には81の加盟国があり、加盟国による選挙によって20人の理事が選任されている。ここでいう「ナイジェリア理事」とは、この20人のうちの1人としてナイジェリアなどから選ばれた理事であり、私の同僚である。私の場合は、日本のほか、アルゼンチン、オーストリア、ブラジル、サウジアラビアに選んでいただいており、「日本理事」と呼ばれることが多い。
*10) 集積に関連する数値として人口密度の数字を紹介する。アフリカの人口密度は大陸全体としては低く、前述の国際連合の人口統計によれば、2021年時点で47人/km2である。しかしながら、地域的な偏りがあり、例えば、私が住む西アフリカはアフリカの中では人口密度が比較的高い。2021年において、人口大国であるナイジェリア(234人/km2)だけでなく、トーゴ(159人/km2)やガーナ(144人/km2)でも比較的高く、東南アジアの平均(152人/km2)と遜色がない。さらに、将来的には、2050年時点でナイジェリアは414人/km2、トーゴは284人/km2、ガーナは229人/km2と高度成長期の日本(1960年で251人/km2、1970年で280人/km2)と同程度か、それを超える水準になると推計されている。
*11) 世界銀行のレポート(Croitoru, L., Miranda, J.J. and Sarraf, M., 2019. The Cost of coastal zone degradation in West Africa.)によれば、こうした海岸浸食は、ナイジェリアだけでなく、ベナンからセネガルまで西アフリカ全体見られるとされる。今後、ラゴスのように海岸部に位置する都市への集積が進んでくれば、埋立てを行う経済合理性は増していくものと考えられる。
*12) 気候変動による豪雨の増加や都市化が相俟って、私が住むコートジボワールの首都のアビジャンでも洪水被害が増えているほか、最近訪れたセネガルのダカールでも、都市での洪水被害が散見されるようになっていると聞いており、日本の都市で用いられている治水技術が活きる可能性も出てきていると感じる。
*13) https://partechpartners.com/2021-africa-tech-venture-capital-report/
*14) https://news.bloomberglaw.com/private-equity/funding-for-african-startups-more-than-doubles-in-first-half
*15) e-Kakashiの実践・実証ついての日本政府の支援は、アフリカ開発銀行を通じたものよりも、米州開発銀行を通じたラテンアメリカ向けの支援や、外務省のNGO連携無償資金を活用したエチオピアへの支援が先行する。アフリカ開発銀行を通じた支援については、今夏、ソフトバンクやササカワ・アフリカ財団と協力する形で、同実践・実証をエチオピアの他地域やナイジェリアに拡大することを新たに承認したところである。前述のベナンの大臣は、これを聞きつけ、ベナンでの同様の取組を要請してきたのである。
*16) 例えば、Rodrik, D., 2016. Premature deindustrialization. Journal of economic growth,21(1), pp.1-33.
Rodrik, D., 2018. An African growth miracle?. Journal of African Economies, 27(1), pp.10-27.
Rodrik, D., 2018. An African growth miracle?. Journal of African Economies, 27(1), pp.10-27.
*17) 例えば、https://ourworldindata.org/africa-yields-problem
*18) 蛇足になるが、このエッセーの推敲過程にて、実地で得た直感をデータで確認することが重要であると改めて感じたので共有したい。私は、ほぼ全ての南アジアと東南アジアの国を訪れたことがあり、それらの国の郊外では、発展レベルが低いとされる国も含めて、整然とした広い農地が目に入ることが多かった。一方、アフリカについては、私が訪問した国は10か国に限られるが、アジアほど整然とした農地が目につかない印象だった。このため、私は、アフリカはアジアに比べて小規模農家が多いとの印象を持っていた。しかしながら、東京大学の鈴木綾教授より「アジアも小規模農家が多いのでは」との指摘を受けて、種々のデータや研究(Word Bank 2022, Lowder et al. 2016など)を確認したところ、1人当たりの農地面積や農家の規模は、インド・インドネシアとエチオピアが同程度であるなど、両大陸で分布が似通っていた上、平均的にはむしろアフリカの方がアジアより大きかった。なお、現時点では、両大陸の見た目の印象の違いは、商業化の程度の違いによるのではないかと思っている。というのも、Masters et al. (2013)によれば、「アジアの食糧生産の半分から3分の2が完全に商業的に行われているのに対し、アフリカの農家のほとんどが自給自足をやや超える程度(semi-subsistence)」とされ、これが、農地が特定の地区に集約されているか否か、農地が農地らしくみえるか否かなどの違いにつながり、前述のような印象の違いにつながっているのではないかと暫定的に仮定している次第だ。今後も、本論点に限らず、適切なフィールド感を形成するよう努力したい。
World Bank. 2022. World Development Indicators.
Lowder, S.K., Skoet, J. and Raney, T., 2016. The number, size, and distribution of farms, smallholder farms, and family farms worldwide. World Development, 87, pp.16-29.
Masters, W.A., Djurfeldt, A.A., De Haan, C., Hazell, P., Jayne, T., Jirström, M. and Reardon, T., 2013. Urbanization and farm size in Asia and Africa:Implications for food security and agricultural research. Global Food Security, 2(3), pp.156-165.
World Bank. 2022. World Development Indicators.
Lowder, S.K., Skoet, J. and Raney, T., 2016. The number, size, and distribution of farms, smallholder farms, and family farms worldwide. World Development, 87, pp.16-29.
Masters, W.A., Djurfeldt, A.A., De Haan, C., Hazell, P., Jayne, T., Jirström, M. and Reardon, T., 2013. Urbanization and farm size in Asia and Africa:Implications for food security and agricultural research. Global Food Security, 2(3), pp.156-165.
*19) African Development Bank, 2017. Feed Africa. Brochure.
https://www.afdb.org/fileadmin/uploads/afdb/Documents/Generic-Documents/Brochure_Feed_Africa_-En.pdf
https://www.afdb.org/fileadmin/uploads/afdb/Documents/Generic-Documents/Brochure_Feed_Africa_-En.pdf
*20) この点、本当に農地として活用できるのかについては議論がある。例えば、下記の研究。
Séronie, J.M. and Jacquemot, P., 2020. Agricultural Land Available In Sub-Saharan Africa. International Journal of Agriculture, 4(2), pp.17-32.
Séronie, J.M. and Jacquemot, P., 2020. Agricultural Land Available In Sub-Saharan Africa. International Journal of Agriculture, 4(2), pp.17-32.
*21) 例えば、Gelb, A., Ramachandran, V., Meyer, C.J., Wadhwa, D. and Navis, K., 2020. Can Sub-Saharan Africa be a manufacturing destination? Labor costs, price levels, and the role of industrial policy. Journal of Industry, Competition and Trade, 20(2), pp.335-357.
*22) 労働コストが所得水準の割に高い理由については、前述のDani Rodrik (2015、2018)やGelb et al.(2020)では、フォーマルセクター(例えば、近代的な製造業等)が、インフォーマルセクター(例えば、路上販売等)から飛び地のように完全に区分されている(enclaveされている)ことが要因の一つとする。仮にそうだとすると、教育が量・質ともに高くないことが背景の1つであると考えるのが自然である。なお、日本でも、戦前、近代的な技術を採用する大企業が質の良い労働者を囲い込み、中小企業の労働者との間で大きな賃金等の格差(「二重構造」と称される)があったとされる。
*23) 資源が豊富な国については、その輸出により為替が増加する結果として、それ以外の工業・農業が衰退したり(オランダ病)、輸入依存や高消費体質となったりするほか、資源による収入の分配において汚職が蔓延したりするなどの悪影響(いわゆる「資源の呪い(Resource Curse)」に悩まされる国が多いとされる。ただし、資源が豊富でもしっかりとした政治や経済運営を行う国もあるほか、アフリカの資源依存度も国によって様々である。例えば、コンゴ共和国のように資源による収入がGDPの50%を超える年も度々ある国から、ガーナのようにGDPの10%程度で推移している国、さらには、ボツワナのようにGDP比で2%以下の年がほとんどで資源収入に頼らない国まで存在する。なお、労働コストが高い状況は、資源依存が少ない国でも指摘されており、資源の呪いだけが要因ではないと考えられる。
*24) 以下の世界銀行の研究は、アフリカの軽工業への参入に係る課題を分析しているので参照されたい。なお、同研究は、それらの課題が解決されれば、アフリカは軽工業により裨益できるとする。
Dinh, H.T., Palmade, V., Chandra, V. and Cossar, F. eds., 2012. Light manufacturing in Africa:Targeted policies to enhance private investment and create jobs. World Bank Publications.
Dinh, H.T., Palmade, V., Chandra, V. and Cossar, F. eds., 2012. Light manufacturing in Africa:Targeted policies to enhance private investment and create jobs. World Bank Publications.
*25) 例えば、Oqubay, A., 2018. The structure and performance of the Ethiopian manufacturing sector. African Development Bank Group.
*26) https://group.cemoi.com/about-us/history/
*27) https://www.theheinekencompany.com/newsroom/with-brassivoire-heineken-and-cfao-open-one-of-west-africas-most-modern-breweries-in-abidjan-cote-divoire/
*28) https://nichecocoa.com/
*29) https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/08/f52b168ba2d6221e.html
*30) https://www.toyota-tsusho.com/press/detail/210630_004853.html
*31) https://www.jetro.go.jp/biznews/2022/04/c1258b2b912cc1bd.html
*32) 例えば、 Fort, T.C., Pierce, J.R. and Schott, P.K., 2018. New perspectives on the decline of US manufacturing employment. Journal of Economic Perspectives, 32(2), pp.47-72.
*33) 例えば、International Monetary Fund, 2018. Manufacturing jobs:implications for productivity and inequality. World Economic Outlook.
*34) 前述の注33)の研究のほか、例えば、 Di Meglio, G., Gallego, J., Maroto, A. and Savona, M., 2015. Services in Developing Economies:A new chance for catching-up?. SPRU Working Paper Series 2015-32, SPRU - Science Policy Research Unit, University of Sussex Business School.
*35) このほか、伝統的には、農業による収入増が、農村における教育投資や非農業のビジネスへの投資を引き上げる効果があるとされる。また、食糧価格の低下により、前述の労働コストを引き下げる効果も期待できる。
*36) スタートアップ企業は、基本的に、既存のインフラ状況を所与としてビジネスモデルを設計している訳だが、例えば、より安定した電力供給や通信網、さらには道路等の交通網があった方が、ビジネスコストが下がり、より効率的にサービスが提供できるほか、ビジネスの規模や幅の拡大も行いやすくなると思われる。