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最近の租税教室について~新型コロナの影響とICT活用型租税教育の推進~

 
税務大学校研究部長(前国税庁広報広聴室長) 江崎  純子
 
 
1はじめに*1
戦後の租税教育は、昭和25年に国税庁が高校生向けの租税教育の補助教材を刊行してスタートし*2、以降、教育関係機関、税理士会、関係民間団体等の協力を得て、租税教室の開催等が各地で広がり、徐々に裾野が広がってきた。学習指導要領に「税」に関する記述が初めて記載されたのは、昭和43年の小学校の学習指導要領であったが、現在では、小中高の各学習指導要領に租税に関する記述が記載されており*3、学校教育において必須の学習項目となっている。
平成以降、租税教育に関し、一番の転機となったのは、平成23年度税制改正大綱(平成22年12月16日閣議決定)であった。これにおいて、「租税教育の充実」が初めて閣議決定され、関係省庁及び民間団体が連携して租税教育の充実に取り組むこととされた*4。以降、租税教育は充実の一途にあったものであるが、最近は折からの新型コロナウイルス感染拡大の影響で、一時的に停滞を余儀なくされている面もある。
本稿では、コロナ禍における租税教育の現状を踏まえ、今後の租税教育の在り方、特にICT活用型租税教育の推進について整理、検討することとしたい。
 
 
2租税教育の現状
(1)租税教育の推進体制
租税教育の環境を整備し、租税教育の充実を図るため、国税当局、地方公共団体、教育関係機関、税理士会、関係民間団体等を構成員とする租税教育推進協議会が、全国に設立されており、これを中心として、各地域における租税教室への講師派遣、副教材の作成、教員等への意識啓発研修、税の作文募集等の各種取組みが実施されている(資料1 租税教育の推進体制)。
この租税教育推進協議会は、昭和33年に熊本県で発足*5以降、現在は全都道府県単位及び市区町村単位で、合計767の協議会が設立されており、これらの事務局は、税務署の総務課または署の税務広報広聴官などが担っている。
中央レベルでは、平成23年度税制改正大綱を契機に、平成23年11月に租税教育推進関係省庁等協議会(以下、「中央租推協」という。)が設立された。中央租推協では、関係省庁(国税庁、文部科学省及び総務省。オブザーバーとして日本税理士会連合会が参加。)が毎年協議し、租税教育の充実に向けた基本方針の策定、「租税教育の事例集*6」の作成などを行っている。
次図(資料2 租税教育の全体像)は、これらの協議会を中心とした、租税教育の取組みの全体像を概略的に示したものである。円の大きさは、国税当局における事務量をおおよそではあるが相対的に表している。
 
(2)租税教室の開催回数
租税教育推進協議会を通じて当局の職員等を各学校に講師として派遣する形で実施される租税教室(以降、「租税教室」という。)の開催回数*7は、令和元年度は、全国で3万回を超え、小学校においては、全国の8割近く、中学、高校では3割から4割の学校で開催されていた。しかしながら、令和2年度は、新型コロナの影響を受け、開催回数は前年度のほぼ半分と減少した(資料3 租税教室開催状況の推移)。
令和3年度は、前年度比で開催回数は、約1.5倍に、受講者数は、約1.4倍と持ち直したものの、令和3年度の数字をコロナ前である令和元年度の数字と比較すると、全体の開催回数は、令和元年度比で約77%、全体の受講者数は、令和元年度比で約65%にとどまっており、まだコロナ前の租税教室の開催状況まで戻っていないことがわかる。
令和2年度の開催回数の大幅な減少は、令和2年度の一学期に全国的に学校休校があったこと、二学期以降も感染対策の徹底から外部の人の出入りの制限や、密を回避するため集合方式での開催を避けたということが大きかったのではないかと推察される。令和3年度は、全国的な学校休校等がなかったため、租税教室の開催回数の自然回復があったと考えられるが、緊急事態宣言が2回、まん延防止等重点措置が2回あった等、新型コロナの影響は依然大きかったため、コロナ前の開催水準まで戻らなかったのであろう。
令和3年度の開催回数を、小・中・高校別に見ると、特に、中学生以上を対象にした租税教室は伸びておらず、令和3年度における、令和元年度比の租税教室の開催回数・受講者数については、いずれも50%台である。中学・高校とも、学習指導要領に税についての記載はあるため、租税教室の開催はなくとも、学校教育において税の学習はされているものの、教員等による税の授業の内容等について、その実態は把握できていないのが現状である。
なお、租税教室の開催回数が回復しつつある小学校の数字をみると、コロナ前は、1回当たりの受講者数が40名前後であったのが、令和3年度は1回当たり33人となっている。おそらく、コロナ前は、体育館等で集合して学年ごとに開催していたものが、コロナの影響により、密を回避するため各教室での開催形態となったため、1回当たりの受講者数が減っているのではないかと推察される。
 
(3)租税教室への講師派遣状況の推移
租税教室の講師については、国・地方公共団体の税務職員のみならず、税理士や関係民間団体の方々、また財務局、選挙管理委員会、年金事務所などの関係機関の職員が講師を務めている。
講師派遣の状況をみると(資料4 租税教室等への講師派遣状況(対象者別構成比等))、小・中学校では、多様な講師構成となっており、特に関係民間団体の方々が講師となっている割合が高い。一方、高校、大学になると、税理士の従事割合が高くなっており、租税教室の講師分担については、受講者と講師の専門性に応じた分担がされているということが見て取れる。
 
(4)税に関する中学生・高校生の作文の応募状況
税に関する中学生・高校生の作文の応募数については、令和2年度は、中学生で前年比54%、高校生で同75%とかなり減少したものの、令和3年度は新型コロナ前である令和元年度と比較すると、中学生で78%、高校生で83%と回復してきている(資料5 税に関する中学生・高校生の作文の応募状況)。租税教室実施後に、「税に関する作文」を夏休みの課題として出す学校も多いため、租税教室の開催回数の増減が、全体の応募数の増減に連動していると考えらえる。
 
(5)小括
上記のとおり、租税教室の開催回数や税に関する作文の応募件数をみると、令和2年度に新型コロナの影響により減少していたものが、令和3年度にかなり持ち直した一方、まだコロナ前の状況には戻っていないことがわかる。平成23年の閣議決定以降、充実の一途にあった租税教育が、新型コロナの影響により一時的に停滞を余儀なくされているとも言え、これまで積みあげてきた租税教育のネットワークやノウハウが解消されることのないようにすることが喫緊の課題であろう。
もちろん、租税教育は、学習指導要領に記載されているのであるから、租税教室が実施されていない学校でも、何等かの形で税に関する学習が行われているのであり、租税教室の開催回数の増加がイコール租税教育の充実というわけではない。実践的な租税教育の研究会を学校教員が集まって実施している地域もあり*8、そのような「内製型」租税教育の取組みも、よく注視、評価されるべきである。そのような取組みも踏まえて、租税教育の全体像を考えるべきであるが、「内製型」租税教育の全国的な数値がなく、このような取組みをどのように継続的に把握、評価するかも今後の課題と考える。
 
 
3コロナ禍における租税教室
(1)ICT活用型租税教室の試み
前述のとおり、新型コロナウイルス感染症の影響で、租税教室の開催回数は、コロナ前よりもかなり減少したが、国税庁では、コロナ禍にあっても児童・生徒等が、従来どおりの租税教育が受けられるよう、ICTを活用した租税教室などを全国的に試行・実施してきた。
折しも、令和元年6月に学校教育の情報化の推進に関する法律が公布・施行され、また令和元年度からGIGAスクール構想により、小学校段階から高等学校段階において学校における高速大容量のネットワーク環境が整備された。令和3年度からはほとんどの義務教育段階の学校において児童生徒一人一台端末(以下、「GIGAスクールPC」という。)が整備され、教育の情報化が急速に進展してきている。*9
租税教育においても、このGIGAスクールPCを使った、リアルタイムオンライン型の租税教室、事前に録画した授業のデータを配信したオンデマンド方式の租税教室など、非接触型の租税教室が、コロナ禍で広がっており、資料6 オンライン等による租税教室の開催回数(令和3年度)は、このようなICTを活用した租税教室の開催回数を示したものである。
令和3年度に全国で年間約2万5千回行われている租税教室のうち、数%に過ぎない数ではあるが、これまでにない取組みもあるため、いくつかの興味深い事例を紹介したい。いずれも令和3年度中に実施されたものである。
イ 霞ケ関発リモート租税教室(例1)
令和3年11月に、国税庁広報広聴室職員が講師となり、全国11の小中学校に向け、リアルタイムでのオンライン租税教室を試行的に開催した。生徒からの質問やクイズには、チャットでやりとりし、税の説明に加え、霞が関や国税庁の説明を入れ、先方からは学校紹介もしてもらうなどして、双方向型、地域交流的な租税教室を指向したものである。実は筆者もこの講師の半分を担当し、オンライン租税教室のメリットを実感として感じたところである。今回、オンラインで繋いだ先には、鹿児島県屋久島、愛知県答志島、長崎県対馬などの離島地域もあったが、遠く離れた地域の子供たちとリアルタイムでやりとりすることは、それだけでも先方の関心を引くものであったし、子供たちの熱心かつ真摯な姿勢は、租税教育の意義を改めて再確認させるものであったと思う。
いずれの開催においても、TeamsやWebexなどの電子会議ツールを使ったが、開催前に学校側と通信確認を行い、準備を入念に行ったところで、問題なく実施できたのがほとんどであった。一部、当日にハウリングや画面がフリーズするという事態もあったが、開催当日に、各教育委員会のICT支援員の支援を仰ぐことで、このような事態は回避できた可能性は高かったのではないかと考える。
ロ 税務署等からのオンライン租税教室
税務署からリモートで、あるいは学校内の別室から校内LANを使って、非対面で租税教室を行う試みも広がってきている(例2、例3)。
中には、茨城県下の税務署長が新潟県の高校にオンライン租税教室をやったケースなど、県を跨いでの租税教室の開催というケースもある(例4)。
ハ 対面型の租税教室における工夫
リモートによる租税教室ではないが、対面型の租税教室において、各生徒のGIGAスクールPCを有効活用した事例も紹介したい。
高松市の中学校では、アクティブラーニング用に作成した教材を生徒の各GIGAスクールPCに配付し、各自のPCから回答してもらい、回答を電子黒板に表示し発表、他の生徒の意見も見ながら話し合う、といった方式で進められた(例5)。
このようなアクティブラーニング教材とICTの活用により、より集中して各生徒が考えていた、という評価があったようである。
このような、各生徒の端末を活用したアクティブラーニング方式による租税教室は、広島県の高校でも実施例がある(例6)。
同じく高松市の小学校の租税教室では、通常の租税教室に、ICTを活用したアンケートを実施した(例7)。実施方法は、児童の各GIGAスクールPCに、税金のイメージ、税金は必要か等のアンケートを事前に配付し、通常の租税教室を行った後、授業の最後に再度、税金は必要か等のアンケートを実施したというものである。前後のアンケート結果をグラフ化、電子黒板に並べて表示し比較するとともに、各自の意見を発表しながら話し合いを行ったというもので、このように部分的にでもICTを活用するやり方も好評であったようである。
福井県の小学校でも、生徒にGIGAスクールPCでワークシートを記入してもらい、結果をすぐに大型モニターで共有するなどして、授業展開を図った事例もある(例8)。
ニ 外部講師によるオンライン租税教室
山口県の中学校の例であるが、高校の情報ビジネス科の生徒6人が、オンライン租税教室の講師となり、リモートで250人をつないで租税教室を実施した(例9)。大人数への租税教室であったが、若い世代ならではのアイデアでもある、クイズアプリを使ってのクラス対抗の税金クイズを取り入れることで、個々の生徒の関心を引き付けたようである。
最近は、関係民間団体や税理士会の講師がオンライン租税教室を実施する例も増えてきているが、担当講師が、生徒の関心・興味を引き、理解を高めるべく、様々な工夫を試みている(例10)。
ホ 地域の租税教育推進協議会における試み
新潟県の糸魚川市租税教育推進協議会では、市の教育委員会ICT支援員の協力の上、ICT活用型の租税教育授業案を策定しており、今後、オンライン中継を取り入れるなどの検討も進められているようである。*10
租税教育におけるICT活用に、地域の租税教育推進協議会が積極的に動きだしていることが注目される。
 
(2)オンライン租税教室のメリットとデメリット
霞ケ関発リモート租税教室では、実施後に児童・生徒と教職員にアンケートを行った。そのアンケート結果から、オンライン租税教室のメリットを要約すると、コロナの感染状況に関わりなく開催できること、チャットやアンケート機能により双方向性が確保できることがメリットとしては挙げられるところである。改善点としては、準備の大変さなど技術的な面と、臨場感を欠く、というところに収斂されてくるようである(資料7 霞ヶ関発リモート租税教室でのアンケート結果(児童の回答))。
技術面のデメリットについては、このようなリモート教室を経験していくことで、解消されるであろうし、またオンライン授業特有の臨場感に欠ける点については、チャットや挙手機能などをうまく使えば、逆に、個々の児童にダイレクトに届く面もある。改善点は、経験とともに解消されてくるはずである。
 
(3)今後の方向性
新型コロナの影響を回避すべく、リアルタイムオンライン形式やオンデマンド方式の、非対面での租税教室の開催が進んできたが、今後、コロナの影響がなくなれば、あえて非対面にする必要性はなく、従前の対面型に戻ってくることも当然予想される。しかし、非対面方式での良かった点は、積極的に取り入れることにより、さらなる租税教育の充実に繋がるのではないかと考えるものである。
今、現場から聞かれることの一つに、租税教室の開催の再開を希望する学校でも、従来のように、体育館で一同に会して行う方式ではなく、それぞれの教室での開催の希望が増えているということがある。前述のとおり、少人数単位での開催が増えているということは、そのことの証左であろう。
それぞれの教室での対面での租税教室開催となると、その学年のクラス数だけ租税教室の開催が必要になり、そうなると、これまで以上に、講師の手当て、あるいは講師の時間的拘束が必要になる可能性が高い。まだ租税教室開催回数自体が平常時ベースに戻っていないためこの問題は顕在化していないが、今後コロナ前の開催状況に回復してきた場合、考えていかなければいけない課題であり、そういう意味においても、複数教室をつないでの、オンラインでの租税教室開催は、一つの解決策ではないかと考える。
また、対面型の租税教室を開催する場合においても、前述の例5ないし例8のように、GIGAスクールPCを利用してワークシートを共有するような方法は、かなり好評であり、今後、租税教室の手法の一つとして広がることが期待される。昨今、学校教育においては、「主体的・対話的で深い学び」の視点に立った授業改善が図られているが*11、租税教室においても、GIGAスクールPCを使って、双方向型の授業を行うことで、より主体的・対話的な学びが可能になるように考える。
さらに、リモート形態により、離れた地域や場所から、租税教室を行うことは、より多くの希望する学校での開催を可能にするだろう。今後、国税組織における内部事務センター化により、小規模の税務署の職員数が減少する可能性もあり、小規模署(多くは人口減少地域に所在)の所在する地域の学校において、リモート租税教室の開催は、一つの解決策になると考える。
以上の点を踏まえると、アフターコロナに向け、今後の方向性としては、リモート型はもちろんのこと、リモート型に拘らず、ICTを活用した租税教育を行うことで、さらなる租税教育の充実を図るという方向を目指すことになるのではないか。もちろん、学校現場のニーズがあっての話ではある。しかし、これまでの対面型租税教室のメリットに加え、『ICT活用』を租税教室のサブメニューに追加することは、租税教室をより魅力あるものにでき、コロナによりいったん停滞した租税教育を回復させ、さらなる充実につなげる有力なツールになるように思う(資料8  ICTを活用した租税教育の類型)。
 
 
4喫緊の課題と解決策
教育のデジタル化が進展し、税務手続のDXが進展する中、ICT活用型の租税教育は、当然これから進むべき方向であると思うが、現時点においては、まだ現場にも温度差があるのが実状である。喫緊の課題と解決策としては、以下のような点があるだろう。
(1)ICT活用型租税教育のニーズの拡大
現状、教育現場で、ICT活用が進んでいないところもあり、ICT活用型租税教育のニーズがそもそもない、という話も聞かれるところである。各地域の租税教育推進協議会等での意見交換を通じて、学校側のニーズを把握し、ニーズがあるところに積極的にICT活用型の租税教室を展開し、活用事例を情報共有していくことが、まずやるべきことであろうし、そのような成功事例の広がりによって、ニーズは自ら広がっていくのではないかと考える。
 
(2)副教材のデジタル化対応
副教材は、現在、国税庁HPで公開しているもの、及び各地方租税教育推進協議会で作成しているものとある(資料9 現状の租税教育用教材)が、いずれも従来の対面式での租税教室での使用を前提としたものであるため、これも、GIGAスクールPCでの利用を前提としたものに見直しを図っていく必要があるだろう。
 
(3)モデル事例の共有
ICT活用型租税教育は、まだ緒についたばかりであり、モデル事例もまだ不足している。有効な取組みについては、今後も国税庁、国税局において情報を集約し、中央租推協の「租税教育の事例集」に追加する等の措置を検討していくべきであると考える。
 
 
5さいごに
新型コロナによって、働き方や価値観も大きく変わってきたと言われるが、租税教育自体、その意義は変わることはなく、むしろシェアリング・エコノミーの進展等により申告納税手続きを必要とする納税者は今後も増えていくであろうし、租税教育の重要性は高まることはあっても、低下するものではないと考える(資料10 租税教育の意義)。
租税教育は、その重要性ゆえ、これまで小中高大と段階的に実施してきた。小学校、中学校、高校と継続的段階的に税について考える機会を設けることで、税の役割や意義をきちんと理解し、自立した納税者として社会に参画できるようになるものであるが(資料11 租税教育のステップ)、コロナ禍において、中学以降の段階で、租税教室の開催が減少し、その回復が弱いこと、中学生・高校生の税の作文の応募件数も減少していることは残念なことである。この解決策として、ICT活用型の租税教室の開催は一つの方策であろう。
もう一つの方策として、コラボ開催ということもある。最近は、租税教育だけでなく、財政教育、主権者教育、金融教育など、様々な社会教育の要請があるが、主権者教育、財政教育については、租税教育との親和性も高く、近年の厳しい財政状況を踏まえれば、財務局とのコラボ、選挙管理委員会とのコラボで租税教室を開催することで、相乗効果のある取組みが期待できる。このようなコラボ開催も実際に取組みが進んできており、今後、租税教育の魅力あるメニューの一つとして定着していくことが期待される。
戦後の混乱期以降、70年以上にわたって、関係機関と連携し、各地で副教材を作成し、租税教室を開催してきたことで、租税教育が根付き、若い世代の税に対する関心が高まり、健全な納税者としての意識が定着してきた*12面は大きい。新型コロナを機にこれまでの取組みが後退しないよう、ここ数年の取組みは非常に重要であり、また今後、ICT活用型租税教育など、時代のニーズに沿った、魅力あるメニューの充実を期待するところである。
現在進行中の令和4年度において、また(まさに本稿掲載時期である)本年の「税を考える週間」(11月11日から11月17日まで)においても、全国各地で、租税教育の取組みが広がっていることとであろう。関係の方々のご尽力に改めて敬意を表したい。
 
*1) 本稿の作成にあたって、大川博史氏、萩原亮氏には大変有益な助言や示唆をいただきました。本稿の意見に係る部分は筆者の個人的見解であり、国税庁の見解を表すものではありません。本稿の記述における誤りは全て筆者によるものです。
*2) 今村千文「租税教室」NETWORK租税史料2023年1月(予定)(https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/sozei/network/)(校了時HP未登載)国税庁広報課(当時)は、昭和25年に、初の試みとして、新制高校の社会科の副教材として利用されることを目的とした色刷パンフレット「租税教室」(シリーズ形式、全12巻)を文部省、東京都教育庁等と協議の上刊行し、全国の教育庁及び新制高校に配付した。税務大学校租税史料室所蔵(資料12 「租税教室」 昭和25年刊)。
*3) 国税庁「国税庁70年史(平成21年7月~令和元年6月)」154頁(https://www.nta.go.jp/about/introduction/torikumi/70th/pdf/02/02-08.pdf#page=7)(令和4年10月14日最終閲覧)
*4) 市田浩恩「『租税教育の充実』について」ファイナンス2012年1月号46頁。
*5) 市田浩恩・前掲注4、47頁。
*6) 国税庁ホームページ掲載(https://www.nta.go.jp/taxes/kids/kyozai/jireishu/index.htm)(令和4年10月14日最終閲覧)
*7) 本稿における各資料の計表については、地方租税教育推進協議会を通じて開催した租税教室を基礎としており、関係機関、税理士会、関係民間団体等が独自に開催したものについては含まれていない。また、本稿中の「年度」は、4月から翌年3月までの1年間をベースにしている。
*8) 例えば、宮城県の石巻地区租税教育推進協議会では、毎年、小中学校教員による租税教育実践発表が行われている。国税庁ホームページ「令和3年度租税教育実践発表会(石巻地区租税教育推進協議会)」(https://www.nta.go.jp/about/organization/sendai/education/jirei_ishinomaki/r03.htm)(令和4年10月14日最終閲覧)。
*9) 文部科学省『文部科学白書2021』309頁。
*10) 新潟県租税教育推進協議会「租税教育だより第60号」令和4年3月1日発行(https://www.pref.niigata.lg.jp/uploaded/attachment/307097.pdf)(令和4年10月14日最終確認)
*11) 文部科学省・前掲注9、78頁。
*12) 日本は、tax morale(自発的納税意欲)が他国に比べ高いという結果が指摘されている。富田愛優、玉岡雅之「納税意欲を考えた税制改革」租税研究2022年9号131頁。