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非価格競争入札入門ー海外編ー

服部  孝洋*2/石田  良*3/早瀬  直人/堀江  葵*4
 
 
1はじめに
「非価格競争入札入門―基礎編―」(服部・石田・早瀬・堀江 2022)では、日本における非価格競争入札について概説しました。本稿では、他の先進国における非価格競争入札に類似した制度を紹介します。我が国が国債市場特別参加者(いわゆるプライマリー・ディーラー(Primary Dealer, PD))制度導入の議論を開始した際には、既に多くの主要国において、類似した制度が存在していたことが、国債市場懇談会資料(2003年6月27日参照)で紹介されています。したがって、このような制度は、多くの国で、比較的歴史のある制度と言えましょう。更に、OECD(2020)によると、現在、OECD加盟国のうち3分の2程度の国には、第Ⅱ非価格競争入札に類似した制度が導入されていることが示唆されています。
我が国の非価格競争入札は、第Ⅰ非価格競争入札と第Ⅱ非価格競争入札に大別されます(その他、2年・5年・10年利付国債については、小規模の投資家を対象とした非競争入札*5が行われています)。第Ⅰ非価格競争入札とは、価格競争入札と同時に応募が行われ、発行予定額のうち一定割合を発行限度額とし、価格競争入札における平均価格を発行価格とするものです。一方、第Ⅱ非価格競争入札とは、価格競争入札*6が終わった後に、当該入札の平均価格で購入する入札です。諸外国でも、こうした非価格競争入札や非競争入札に類似した制度が見られます。
しかしながら、長い歴史があり、幅広い国で似たような制度が導入されているにも関わらず、諸外国の非価格競争入札・非競争入札に類似した制度について整理した文献は、筆者の知る限り僅少です。そこで、本稿では、非価格競争入札に類似する海外の制度についての説明を行います。まずは、北米の入札制度に焦点を当て、例えば米国の競争入札では、落札者全員が同じ価格・利回りで購入するというダッチ方式が用いられていること等を紹介しつつ、我が国の非価格競争入札に類似する制度は存在しないことを説明します。続いて、欧州に目を向け、欧州主要国(英、仏、独、伊)では、競争入札の大宗で、落札者が自ら応札した価格・利回りで購入するコンベンショナル方式が用いられていること等に言及しつつ、我が国の非価格競争入札に類似した制度が広く導入されていることを紹介します。その上で、欧州主要国において、非価格競争入札類似制度による落札額は、全落札額の概ね20-30%程度であり、この水準は、我が国と大きくは乖離していないことを確認します。
本稿では、このように、諸外国の非価格競争入札に類似した制度を整理し、概説することとします。また、我が国の非価格競争入札について、追加的な内容を取り上げます。なお、本稿では、日本国債の入札制度の理解を前提としていますので、制度の詳細等を知りたい場合は、石田・服部(2020)及び服部・石田・早瀬・堀江(2022)を参照してください。国債や債券全般に関する情報については、筆者のうち服部のウェブサイト*7にも掲載しているため、そちらも参照いただければ幸いです。
 
 
2北米における非価格競争入札の制度
2.1 米国
まず、北米を見てみると、PD以外も参加できる日本の非競争入札に類似した制度が見られます。例えば米国には、日本の非競争入札と類似の制度があります(noncompetitive bid、以下、米国のこの制度も非競争入札と呼ぶこととします)。米国における非競争入札は、米国が競争入札(コンベンショナル方式*8)を1929年に開始して暫く経った1947年に導入された歴史のある仕組みです(Malvey et al., 1995)。現在では、TreasuryDirectという個人や競争入札に参加しない中小投資家向けのシステムを通じて、競争入札に参加する機関投資家に比べると比較的少額(上限1,000万ドル)の投資を受け付けています*9。PDに限らず、入札参加者は価格競争入札又は非競争入札のいずれか一方に限り応募することができ、非競争入札の落札利回りは、ダッチ方式に基づく価格競争入札の落札利回りとなっています*10。
米国債のオークションにおいて特に重要なのは、現在ではダッチ方式が採用されている点です。前述のとおり、ダッチ方式では、競争入札において、すべての投資家が同一の価格・利回りで落札することになります。⽶国では、⽇本でいうダッチ⽅式を uniform price auction(single price auction)と呼ぶ⼀⽅、コンベンショナル⽅式を discriminatory price auction(pay-as-bid auction)と呼んでいます。詳細は、石田・服部(2020)を参照していただきたいのですが、ソロモン・ブラザーズの不正等をきっかけに、それまではdiscriminatory price auctionが用いられていたところ、1992年9⽉から2年国債と5年国債の発⾏についてuniform price auctionが導⼊され、1998年11⽉からは全てのオークションについてuniform price auctionが採られています。
ダッチ方式ではすべての人が同一の価格・利回りで購入しますから、同制度を利用している米国債入札においては、アベレージで購入したいというニーズは競争入札を通じて満たすことができる可能性があります。他方で、前述のとおり、非競争入札は、競争入札に普段参加していないために適切な応札価格を判断することが困難な中小投資家等に対しても、平均的な価格で国債を購入する機会を与えているとも考えられます。これは、我が国で、非競争入札が小規模の投資家向けに実施されているのに類似しているとみることもできます。
図表1 米国債における入札の結果の例が米国債のオークションの結果の一例です。図表1において、noncompetitiveと記載されている部分に非競争入札の結果が示されています。Tenderが応札額であり、Acceptedが落札額に相当します。なお、米国では、非競争入札においてFIMA(Foreign and International Monetary Authorities)も参加できる点が特徴であり、FIMAの落札額についても公表されています。
我が国では、非価格競争入札による発行は、(第Ⅰ・第Ⅱ非価格競争入札合わせて)入札の発行額の30%*11になりますが、米国の場合、上記のとおり、非競争入札が比較的小規模の投資家を対象にしていることなどから、発行総額に比して規模が少額である点も重要な特徴です。なお、米国における国債発行計画では、債務上限の範囲内で、政府の借入需要見込みや四半期末キャッシュバランス、国債償還額などを踏まえ、2・5・8・11月に向こう3か月分の国債発行計画を公表しています*12。米国債は、市場性国債(割引国債、利付国債、物価連動国債)及び非市場性国債(個人向け貯蓄国債、政府部門向け非市場性国債)に分けられるところ、非市場性国債の対象は主に政府(年金基金)であることなども特徴と言えましょう。
また、非競争入札が実施されるのは、競争入札の対象となる市場性国債であり、非市場性国債では実施されません。2022年9月末時点で、米国債の発行残高30.9兆ドルのうち、市場性国債は23.7兆ドルを占めており、発行される国債の大半は市場性国債であることが分かります。その上で、市場性国債の大宗は競争入札を通じて売却されており、非競争入札を通じて売却される部分は比較的少額です(例えば、2022年第2四半期においては、競争入札で発行された10年国債は1,069.6億ドル、非競争入札で発行された10年国債は0.4億ドルでした)。
 
2.2 カナダ
カナダでは、固定利付国債である2年から50年国債*13に加え、物価連動国債(Real Return Bond)と割引国債が発行されています。国債の発行方法は、30年以下の固定利付国債や割引国債についてはコンベンショナル方式が用いられており、50年固定利付国債や物価連動国債についてはダッチ方式が用いられています。国債管理政策は、財務省が企画立案を担当しており、実際の入札にあっては財務省の委任を受けたカナダ銀行(カナダの中央銀行)がその事務を担っています(カナダ銀行によって提供されるBank of Canada Auction Systemを通じて入札の事務が執行されます*14)。
カナダでは、PDに限らず一定の要件を満たす入札者(Government Securities Distributors)は非競争入札に類似する制度(以下、カナダのこの制度も非競争入札と呼びます)に参加できます*15。米国との大きな違いは、固定利付国債の大宗についてコンベンショナル方式が用いられていること、さらに、PDを対象とした非価格競争入札類似の制度(以下、カナダのこの制度も非価格競争入札と呼びます)が存在することです。カナダで実施されている非価格競争入札は、我が国の第Ⅰ非価格競争に類似しています。具体的には、入札の参加者は、競争入札と非価格競争入札の札を入れることが可能であり、カナダ政府は、まず、非価格競争入札の札を受け入れた後(上限があることは後述)、競争入札の枠として、金利が低いものから発行量に達するまで落札していきます*16。その一方、我が国における第Ⅱ非価格競争入札に相当するような競争入札後に実施される非価格競争入札は(筆者が知る限り)実施されていません。
詳細は図表2 米国債における入札の結果の例に記載されていますが、非価格競争入札に応募する場合の上限は、自己分と委託分で異なる取り扱いがなされています。具体的には、自己分の上限は合計300万カナダドルである一方、委託分については、注文の合計が固定利付国債や割引国債といった名目債については1,000万カナダドル、物価連動国債については300万ドルとされています(図表2にあるとおり、PDではない業者に対しても、一定程度、非価格競争入札への参加が認められています)。その一方で、40年以上の超長期国債については、具体的には、自己分の上限は合計300万カナダドルである一方、委託分については顧客ごとに500万カナダドル(ただし、自己分および委託分の合計額は1,300万カナダドル以内)とされています*17。なお、非価格競争入札の落札利回りは、ダッチ方式で販売される物価連動国債や50年国債については利回り競争入札の落札利回り*18、その他のコンベンショナル方式で販売される国債については利回り競争入札の平均落札利回りとなっています。*19
 
 
3欧州における非価格競争入札の制度
3.1 欧州における非価格競争入札
欧州主要国では、第Ⅰ・第Ⅱ非価格競争入札に類似の制度があります。これらの制度は、北米の非競争入札制度とは異なり、PDに相当する入札者に対する資格として機能していると考えられます。図表3 諸外国のプライマリー・ディーラー制度は各国のPD制度を比較したものですが、米国には非価格競争入札に類似する制度が見当たらない一方で、例えば、フランスではPDが独占的に参加できる制度として非価格競争入札に類似する制度が記載されています(英国については明示的に記載されていませんが、後述のとおり非価格競争入札に類似する制度が存在します。また、ドイツについては「非競争」としての記載がありますが、後述するとおり、諸外国のPD制度とは異なる点に注意が必要です)。PDの資格という観点で見れば、我が国の非価格競争入札は欧州の制度に類似しているのかも知れません。もっとも、我が国の非競争入札を米国の非競争入札と類似していると解すれば、日本の非価格競争入札・非競争入札は、欧州と米国両方の制度と類似点があると見ることもできます。
 
3.2 英国*20
英国の利付国債はギルト(Gilt, Gilt-edge security)と呼ばれており、固定利付国債と物価連動国債で構成されています。固定利付国債は短期国債(1か月~1年)、中期国債(1年超~7年)、長期国債(7年超~15年)、超長期国債(15年超~55年)で構成されており、非常に長い年限の国債が発行されている点が大きな特徴です(その背景を知りたい読者は、中対・村田(2018)を参照してください)。物価連動国債についても幅広い年限(5年~55年)が発行されています。英国の債務当局はHM Treasury(英国財務省)及びUK Debt Management Office(DMO、債務管理庁)になりますが、この詳細はBOX 1を参照してください。
ギルトの発行に際しても、一般に競争入札が実施されており*21、固定利付国債についてはコンベンショナル方式、物価連動国債についてはダッチ方式が用いられています。英国では、PDに相当する者はGEMMs(Gilt-Edged Market Makers)と呼ばれており、入札に関する義務と同時に、非価格競争入札に類似する制度(以下、英国のこの制度も非価格競争入札と呼びます)への参加などの資格が与えられる形になっています(本稿では非価格競争入札に焦点を当てますが、GEMMsの義務などの詳細を知りたい読者は「GEMM Guidebook A guide to the roles of the DMO and Primary Dealers in the UK government bond market」を参照してください。PD制度の詳細については既出の図表3をご確認ください)。
英国の特徴は、我が国と同様、2つの非価格競争入札(Non-competitive bid allowanceとPost Auction Option Facility)が併用されている点です*22(後述しますが、欧州でもフランスやイタリアは、我が国における第Ⅱ非価格競争入札に類似した制度のみを実施しています)。Non-competitive bid allowanceは我が国における第Ⅰ非価格競争入札に類似した制度であり、応募額のうち15%まで購入することができます。一方、Post Auction Option Facilityは、第Ⅱ非価格競争入札に類似した制度であり、競争入札落札額の25%まで購入できます*23。Post Auction Option Facilityについては、GEMMsが投資家から委託を受けた分については、委託元の投資家がその権利をGEMMsに譲らない限り、Post Auction Option Facilityの権利を委託元の投資家に譲らなければならないとされています*24。いずれの落札価格も、ダッチ方式で販売される物価連動国債については価格競争入札の落札価格、その他のコンベンショナル方式で販売される国債については価格競争入札の平均落札価格となっています。
英国の非価格競争入札の応札限度額は増加傾向にある点も大きな特徴です。Non-competitive bid allowanceは、DMOが設立されて以降実施されており、2016年に10%から15%へ増加されています。一方、Post Auction Option Facilityについては2009年に開始され、当初の応札限度額は発行予定額の10%*25であったところ、2016年に15%、2020年に25%へと拡大しています。個々のNon-competitive bidの入札結果に関しては、筆者が調べた限りにおいては公表先を承知していません*26が、Post Auction Option Facilityについては、図表4 Post Auction Option Facilityの結果のようにDMO Annual Reviewなどを通じて一定程度開示*27されています。
DMOはPost Auction Option Facilityの導入について、複数の理由を挙げています*28。まず、Post Auction Option Facilityは我が国における第Ⅱ非価格競争入札のように、落札実績に比例してオプションが配分されるため、オークションへの参加のインセンティブを上げることが可能になります。また、平均価格で追加発行することになるため、一回当たりのオークションの発行額を上げることで安定的な調達に寄与しえます。
 
BOX 1 DMO、英国財務省(HM Treasury)と英国中銀(BOE)
本稿で説明したとおり、現在、英国における国債の発行の実務は債務管理庁(DMO)が担っています。そもそも、国債管理政策の最終責任者は財務大臣であり、英国財務省(HM Treasury)の内部部局であるFiscal Groupが年間発行額等について企画立案を担っているところ、英国財務省の執行機関である債務管理庁が発行計画などの企画立案及び執行を担当しています。英国の債務管理庁は業務運営に一定の独立性が与えられたExecutive Agencyです。これらの事情を踏まえ、英国の債務管理当局は、債務管理庁と英国財務省とされており、『債務管理リポート』においても、英国の債務当局として債務管理庁と英国財務省が併記されています。
歴史的には、1998年に国債管理政策の所管が、英国の中央銀行であるバンク・オブ・イングランド(BOE、英国中銀)から政府に移管されたことに伴い、財務省に債務管理庁が設立されました。英国中銀はもともと株式会社であったところ、第二次世界大戦後の1946年に国有化されました。その頃は公定歩合の変更を財務大臣が行うなど、中央銀行の独立性は低かったのですが、前世紀末に諸外国と軌を一にして英国中銀が独立性を獲得するとともに、銀行監督権限が英国中銀から分離され、それらが証券投資委員会と統合されて金融サービス機構(FSA)が設立されました。同時期に、国債管理業務についても、英国中銀から財務省にその機能が移管され、上記のとおり債務管理庁が設立された次第です。これらの経緯の詳細が知りたい読者は、斉藤(2014)などを参照してください。
 
3.3 ドイツ
ドイツの国債は、固定利付国債については2年~30年の年限が発行されています。ドイツ国債の愛称としてBunds(ブンズ)がよく知られていますが、詳しく述べると、7~30年の国債がBundsと呼ばれており、2年国債についてはSchatz(Schaetze)、5年国債についてはBoblsと呼ばれています。更に、物価連動国債(5・10・30年)が発行されているほか、短期国債(3~12月)も発行されています。
ドイツ国債については通常、コンベンショナル方式で発行されると説明されていますが*29、他の先進国とそもそも入札方式が大きく異なる点に注意が必要です。まず、ドイツ国債の入札には、リテンション・クオート(Retention Quote)とよばれる制度があります。これは入札における発行額の一部を、債務管理当局であるFinanzagentur GmbH(Finance Agency、ドイツ連邦債務管理庁)が保有する権利を有していることを指します(ドイツ連邦債務管理庁については後述します)。Finanzagenturは、制度上、各入札において上限なく保有することが可能ですが、実際には、発行額の20%程度を留保しています(図表5 リテンション・クオートの推移は、Finanzagenturのウェブサイトに掲載されている保有割合の推移です。およそ20%前後の発行額が留保されていることが分かります)*30。前述のとおり、各入札について、Finanzagenturが保有できる明示的な上限は定められていませんが、Finanzagenturがドイツ国債を保有できる年間の上限については、Federal Budget Actで総発行額の20%と定められています*31。なお、報道などでブンデスバンクが入札において国債を保有すると記載されることもありますが*32、その背景としては、入札のオペレーションをブンデスバンクが担っていることが考えられます。
このようなリテンション・クオートという特徴的な制度に加え、ドイツ国債については、入札のプロセスも大きく異なります。入札の参加者は価格競争入札とともに非価格競争入札類似の制度(以下、ドイツのこの制度も非価格競争入札と呼びます)にも参加できます。その上で、下記のようなメカニズムで発行価格を定めます(図表6 ドイツ国債のオークションの流れがドイツ国債のオークションの流れになります)。
(1) 発行当局は、価格競争入札における最低落札価格を定めることが出来る。最低落札価格を上回る札は全て落札となり、最低落札価格を下回る札は落札できない。
(2) 最低落札価格と同価格の札について、どれだけの落札できるのかを当局は定めることができる。
(3)(2)により、価格競争入札における平均落札価格が定まる。
(4) 最後に、非価格競争入札においてどれだけ落札できるのかを当局は定めることができる。
(5) リテンションの割合が決定される。
競争入札については、最低落札価格を超えた札について、自らが応札した価格で購入することになるので、この入札方式は、コンベンショナル方式と整理できます。また、非価格競争入札については、コンベンショナル方式で販売される国債について、価格競争入札の平均価格で落札されます。さらに、ドイツにおける非価格競争入札については、その上限額は定められていません*33。実際の入札の結果は、Finanzagenturのウェブサイトに掲載されていますが、非価格競争入札の割合は、平均すると応札額全体の4割程度*34です。もっとも、前述のとおり、入札の方式そのものが大きく異なるため、この数値は単純に他の先進国と比較できない点に注意してください。
入札に参加するグループとして、欧米の大手銀行などを主体とするBund Issues Auction Groupがあります*35。なお、日本や米国が有するようなPD制度は、ドイツには存在していませんが、発行市場における参加を一定程度制限しているという点では、PD制度への類似性を有するという意見もあります*36。
なお、歴史的には、かつてはブンデスバンクが国債の発行を担当していたのですが、現在では、2001年に政府から独立したFinanzagenturがその役割を担っています。Finanzagenturは、財務省による100%出資会社であり、発行計画の立案や入札などを担っています。ただし、前述のとおり、ブンデスバンクがオペレーションなどの事務を担うこともあります。
 
3.4 フランス
フランスの国債は、短期国債(BTF)、中長期国債(OAT)、物価連動国債(OATi,OAT€i)に大別され、入札はコンベンショナル方式に基づく利回り又は価格競争入札により実施されています。フランスでは、SVT(フランス語でSpécialistes en Valeurs du Trésor)がPDに相当すると考えられています。
フランスの国債については、フランス国債庁が管理しています。歴史的には、政治と一定の独立性を保ちつつ、市場参加者の意見や需要を迅速に反映できる組織が必要との問題意識の下、前述のイギリスの債務管理庁やドイツのFinanzagenturを参考にしながら、現在のフランス国債庁となりました。フランス国債庁は、財務省の管轄下である一方で、一定の独立性を有した組織(semi-autonomous)として設立されています(Lemoine, 2016)。
フランスでは、競争入札後に第Ⅱ非価格競争入札類似の制度(コンベンショナル方式で販売される国債について、価格競争入札の平均価格で発行されます)が実施されており、Non-competitive bids(NCBs)*37と呼ばれています。SVTはNCBsに参加する資格を有し、落札額の25%まで応募できることとなっています*38。フランスのNCBsの特徴としては、例えば、当日の落札額を参照する我が国の非価格競争入札とは異なり、当日を含まない同種の国債の直近3回の落札実績で応札限度額が決まることが挙げられます*39。
 
3.5 イタリア
イタリア国債には、固定利付国債(BTP)に加え、ゼロ・クーポン債(CTZ)、短期国債(BOT)、物価連動国債(BTP€i)、変動利付国債(CCTeu)があります。また、イタリアでは、BOTのみコンベンショナル方式での利回り競争入札が実施されていますが、それ以外についてはダッチ方式による価格競争入札で発行されている点が特徴です*40。また、Specialists(イタリア語でSpecialisti)がPDに相当します。
イタリアでは、大宗の国債についてダッチ方式が用いられているところ、第Ⅰ非価格競争入札に類似する仕組みは存在しません。他方、第Ⅱ非価格競争入札に類似するreopenings reserved for Government bond Specialistsは実施されています。reopenings reserved for Government bond Specialistsの重要な特徴は、年限ごとにその応札限度額が異なる点です。具体的に、Specialistsはreopenings reserved for Government bond Specialistsに参加し、発行額の10%ないし30%まで応募できることとなっています。コンベンショナル方式で発行されるBOT(償還期限12か月以下)については、競争入札の平均価格で落札額の10%まで、ダッチ方式で発行されるCTZやBTPについては、価格競争入札の落札価格で落札額の30%(リオープンは15%)まで応札することができます*41。
また、イタリアのreopenings reserved for Government bond Specialistsは、その名称からも分かるとおり、PDに相当するSpecialists向けのリオープン制度の一環として機能している点も重要な特徴と言えます。Specialistsは、競争入札への一定程度の参加が求められており、その対価として、reopenings reserved for Government bond Specialistsに参加する資格を有するという仕組みになっています。
 
 
4我が国における非価格競争入札の実績
以上が海外の非価格競争入札の概要になりますが、ここから、我が国の非価格競争入札に係る追加的な内容について取り上げます。
4.1 PDが第Ⅰ非価格競争入札を用いる理由
まず、図表7 第Ⅰ非価格競争入札における行使率の推移は、第Ⅰ非価格競争入札の、応札上限額に対する応札率を時系列で整理したものです。この図をご覧いただくと、年限・時期によってばらつきはあるものの、一貫して50%を上回る行使率となっており、近年、90%程度であることが分かります。
PDが第Ⅰ非価格競争入札を使う理由については、服部・石田・早瀬・堀江(2022)で直観的に説明しましたが、ここではPDの視点に立って、各回の第Ⅰ非価格競争入札に参加している背景を考えます。例えば、読者がPDのトレーダーであるとして、顧客から入札の平均価格で100億円分の10年国債を購入したいとの注文を受けたとします。この場合、読者は、入札において100億円分の10年国債を確実に落札する必要があります。読者には、(1)価格競争入札で自身が妥当と判断した価格で100億円分落札する選択肢と、(2)第Ⅰ非価格競争入札で価格競争入札における平均価格で100億円分落札する選択肢があります(ここでは第Ⅱ非価格競争入札や非競争入札は捨象します)。
読者の中には、第Ⅰ非価格競争入札は、価格競争入札の「平均の価格」で落札するものであり、その利用は価格競争入札と比べて特に有利でも不利でもないと思われる方もおられるかもしれません。しかし、上記の状況で第Ⅰ非価格競争入札に参加する理由は、幾つか想定できます。例えば、上述の「平均の価格」とは、落札に成功した札の中の平均の価格を指しますが、実際の入札では、必ずしも落札できない可能性があります。また、注文を履行できない事態を避けるため、保守的な対応として、平均価格より割高だと自身が考える価格で応札することになるかも知れません。このような事態を避けるために非価格競争入札が選択される可能性があります。
「アベレージで委託を受け、アベレージで落札して引き渡すのでは、儲けがゼロではないか」と思われる方もおられるかもしれません。しかし、入札に際し、対投資家の取引シェア争いの重要性が指摘されることもあります。また、投資家に対して入札においてサービスを行うことで、投資家にセカンダリー市場での取引相手として選んでもらうという側面が指摘されることもあります。実際、投資家は、財務省が四半期に一回公表している「国債の落札順位」を一定程度重視しており、入札時の委託先のみならず、セカンダリー市場での売買相手を選ぶ際にも参考としていると言われることもあります。こうした背景から、第Ⅰ非価格競争入札への参加が選択される可能性もありましょう。
 
4.2 第Ⅰ非価格競争入札が100%活用されない理由
上述の観点で言えば、第Ⅰ非価格競争入札が100%行使されても良いように思われますが、図表7にあるとおり、その行使率は現在、90%程度であり、行使されていない部分も存在します。その理由は幾つか考えられますが、その一つとして、PDは、顧客の注文を媒介する金融機関だけでなく、最終投資家たる金融機関からも構成されている点に着目されることがあります。例えば、顧客の注文の取次ぎを行うような金融機関は最終投資家から札を集めるという意味で、いわば媒介的な存在であり、規模の小さな投資家も含め、様々な投資家から注文を受けます。その意味で、そのような金融機関は常に平均価格で買いたいという注文を受ける可能性があると言えます。一方で、顧客の注文の取次ぎを行っているわけではない金融機関は、いわば投資家そのものです。そのような金融機関が平均的な価格で買いたいかどうかは、その時の状況次第であり、必ずしも平均価格で買いたいというニーズがあるとは限りません(もっとも、これは一つの仮説に過ぎないことに留意が必要です)。
また、たとえ顧客の注文の媒介を行っているPDであっても、第Ⅰ非価格競争入札の枠を全ては使わないケースもありえます。前節では、暗黙のうちに、価格競争入札における入札結果の予測能力が平均的であるPDを想定していました。しかし、読者が平均的な参加者より、入札に係る予測の正確性に自信があるのであれば、第Ⅰ非価格競争入札において平均価格で買うよりも、競争入札で平均価格未満かつ最低価格以上の価格での落札を狙う方が良いかもしれません。また、PDの中には、規模があまり大きくないといった理由から、投資家を見つけられないケースや、既に金利リスクを大きくとってしまい、リスク管理上これ以上買えないなどのケースも考えられます。こうした様々な事情が、行使率が常に100%からある程度下方に乖離した水準で上下していることの背景となっている可能性があります。
 
4.3 PDが第Ⅱ非価格競争入札を用いる理由
図表8 第Ⅱ非価格競争入札における行使率の推移は、10年国債における第Ⅱ非価格競争入札の、応札上限額に対する応札率を時系列で整理したものです。この図をご覧いただくと、行使率が0%~100%の間で上下していることが分かります。
服部・石田・早瀬・堀江(2022)で説明したとおり*42、第Ⅱ非価格競争入札は、競争入札後の結果公表後の後場に実施されるため、価格競争入札における平均価格を権利行使価格*43とし、応札時点(14時から14時30分まで)の市場価格と比較しながら行使するか否かを判断できるオプションという側面を有します。入札後、国債の価格が上昇し、市場価格が平均価格より高い場合、PDはその権利を行使するメリットを有しています(第II非価格競争入札のオプションを行使して、市場で売ることができれば、キャピタル・ゲインを得られます)。逆に、後場、マーケットにおいて、入札対象銘柄の価格が低下していれば、わざわざ平均価格で購入する必要がないため、第II非価格競争入札へ参加して国債を買うインセンティブは乏しいと考えられます。
この点をデータで確認します。図表9 入札日の後場の利回り変化と第Ⅱ非価格競争入札の行使率は2019年度以降の10年国債と20年国債の入札日における後場の利回り変化と第Ⅱ非価格競争入札の行使率をプロットしたものです。これを見ると、行使率と利回り変化にある程度の関係があることが窺えます*44。
もっとも、第Ⅱ非価格競争入札の行使率について、前述のオプション性のみで説明できるわけではない点に注意する必要があります*45。このようなオプション的な性質が妥当するのは、投資家の売買が市場価格に大きな影響を与えないなどの条件が満たされる場合でしょう。例えば、読者がPDであり、ある入札について5,000億円の落札をしたとします。その場合、第Ⅱ非価格競争入札では、最大500億円購入できるわけですが、平均価格でそれほど在庫を抱えたくないということも起こりえますし、その金額を購入してセカンダリー市場で売却した場合、市場の流動性が低ければ、その売却が市場価格を変動させる可能性もあります。例えば、ビッド・アスクが開いており、大きめの取引を行える相手が見つからないなどの事情があれば、上記のオプションとしての説明が妥当しないことも考えられます。本稿で取り上げた仮説はその一因にすぎませんが、第Ⅱ非価格競争入札の行使は、様々な要因に依存する可能性があり、単に入札で決まった平均価格とその後の価格の動きのみで決まるわけではない点に注意が必要です。
 
 
5おわりに
本稿では、非価格競争入札について海外の制度を紹介した後、我が国の非価格競争入札に係る追加的な内容について議論しました。本稿および服部・石田・早瀬・堀江(2022)が、非価格競争入札の意義・機能の理解を深める一助となることを祈っております。
参考文献
[1].石田良・服部孝洋(2020)「日本国債入門―ダッチ方式とコンベンショナル方式を中心とした入札(オークション)制度と学術研究の紹介―」財務省財務総合政策研究所PRI Discussion Paper Series(No.20A-06).
[2].斉藤美彦(2014)「イングランド銀行の金融政策(世界の中央銀行)」きんざい
[3].財務省理財局(2021)「債務管理リポート2021」
[4].服部孝洋・石田良・早瀬直人・堀江葵(2022)「非価格競争入札入門―基礎編―」『ファイナンス』(9月号)14-23.
[5].服部孝洋・日本取引所グループ(2022)「国債先物オプション入門」
[6].中対剛・村田大介(2018)「イギリスの平均償還年限とその背景―国債の需要と供給両面からの分析―」PRI Discussion Paper Series (No.18A-09)
[7].Lemoine, Benjamin (2016) “The Strategic State Caught up in Rates:The Creation of a French Public Debt Management Agency.” Revue française de science politique (English Edition) 66(3-4), 27-51.
[8].OECD(2020)“Annex A. OECD 2020 Survey on Primary Markets Developments.”
[9].Malvey, Paul F., Christine M. Archibald and Sean T. Flynn (1995) “Uniform-Price Auctions:Evaluation of the Treasury Experience.” U.S. Treasury Department.
[10].Rocholl, Jörg(2005)“Discriminatory auctions with seller discretion:evidence from German treasury auctions.” Discussion Paper Series 1:Economic Studies.
[11].Umlauf, Steven R. (1993) “An empirical study of the Mexican Treasury bill auction.” Journal of Financial Economics33(2), 313-340.
 
*1) 本稿の意見に係る部分は筆者らの個人的見解であり、筆者らの所属する組織の見解を表すものではありません。本稿を作成するにあたり、著者の1人である服部のリサーチ・アシスタントとして安斎由里菜氏、岩田侑馬氏、曹徳宇氏のサポートを受けました。本稿の記述における誤りは全て筆者らによるものです。また本稿は、本稿で紹介する論文の正確性について何ら保証するものではありません。
*2) 東京大学公共政策大学院特任講師
*3) 財務省財務総合政策研究所客員研究員
*4) コロンビア大学国際公共政策大学院
*5) 価格競争入札と同時に応募が行われ、価格競争入札における加重平均価格を発行価格とする入札(入札者は、価格競争入札又は非競争入札のいずれか一方に限り応募することができます)。
*6) 厳密にいえば、ここでは金利競争入札も含みますが、金利と価格は一対一の関係を有するため、本稿で煩雑さを避ける観点で価格競争入札と記載しています。
*7) https://sites.google.com/site/hattori0819/
*8) 現在の米国の競争入札はダッチ方式となっています。
*9) 非競争入札の上限は、過去における入札の規模の拡大およびインフレを勘案して、2022年から500万ドルから1,000万ドルへ引き上げられています。
*10) 詳細は下記のサイト等をご参照ください。
https://www.federalregister.gov/documents/2004/09/02/04-19999/sale-and-issue-of-marketable-treasury-bills-notes-and-bonds-six-decimal-pricing-negative-yield
https://www.treasurydirect.gov/indiv/research/indepth/auctions/res_auctions_faq.htm
https://www.treasurydirect.gov/instit/research/gloss/gloss.htm
https://www.federalregister.gov/documents/2004/09/02/04-19999/sale-and-issue-of-marketable-treasury-bills-notes-and-bonds-six-decimal-pricing-negative-yield
https://www.treasurydirect.gov/indiv/research/indepth/auctions/res_auctions_faq.htm
https://www.treasurydirect.gov/instit/research/gloss/gloss.htm
*11) ここでは2~30年国債を想定した書きぶりになっています。40年国債入札については第Ⅰ非価格競争入札を実施していません。詳細は服部・石田・早瀬・堀江(2022)を参照してください。
*12) 米国の国債発行計画については、例えば下記など米国財務省のウェブサイト等を参照してください。
https://home.treasury.gov/policy-issues/financing-the-government
https://home.treasury.gov/policy-issues/financing-the-government
*13) 50年国債は2014年から発行が始まり、当初はシ団方式でしたが、2017年から入札(ダッチ方式)で発行がなされています。
*14) STANDARD TERMS FOR AUCTIONS OF GOVERNMENT OF CANADA SECURITIESでは、「Tenders shall be submitted to the Bank of Canada, acting on behalf of the Minister of Finance, via the Bank of Canada Auction System provided by the Bank of Canada」(p.2)としています。
https://www.bankofcanada.ca/wp-content/uploads/2016/08/standard-terms-securities180816.pdf
https://www.bankofcanada.ca/wp-content/uploads/2016/08/standard-terms-securities180816.pdf
*15) ここでの記載はSTANDARD TERMS FOR AUCTIONS OF GOVERNMENT OF CANADA SECURITIESなど、カナダ中央銀行の資料に則っています。
https://www.bankofcanada.ca/wp-content/uploads/2016/08/standard-terms-securities180816.pdf
https://www.bankofcanada.ca/wp-content/uploads/2016/08/standard-terms-securities180816.pdf
*16) STANDARD TERMS FOR AUCTIONS OF GOVERNMENT OF CANADA SECURITIES では、「Subject to the bidding limits set out in the summary tables in Section 5 of the Terms of Participation, Government securities distributors may submit competitive tenders or non-competitive tenders, or both. Subject to the conditions set out in (a) and (b) below, non-competitive bids for Government of Canada securities will be accepted in full, and then competitive bids will be accepted in rising order of yield (or in the case of Real Return Bonds, real yield), until the full amount of the issue (or tranche, in the case of treasury bills) is allotted. In the case of nominal bonds and treasury bills, non-competitive bids will be allotted at the average yield of the accepted competitive bids.」としています。
*17) 詳細は下記をご参照ください。
https://www.bankofcanada.ca/wp-content/uploads/2016/10/terms-ulb030521.pdf
https://www.bankofcanada.ca/wp-content/uploads/2016/10/terms-ulb030521.pdf
*18) なお、ダッチ方式の下ではアベレージで購入したいというニーズについて競争入札を通じて満たすことができる可能性があることを踏まえると、幅広い投資家が価格競争入札と非競争入札の両方に参加でき、かつ価格競争入札がダッチ方式で行われる例は比較的珍しい可能性があります。傍証として、Umlauf(1993)によると、メキシコでは価格競争入札と非競争入札に同時に参加できるところ、価格競争入札がコンベンショナル方式の場合は非競争入札が行われるが、ダッチ方式の場合は非競争入札が行われない旨、紹介されています。
*19) 本図表の注記は下記の通り。
1 Entities that are affiliated will be considered one bidder for purposes of calculating their bidding limit.
2 Non-competitive bids are made without specifying a price or yield. Non-competitive allocations are made at the average price or yield of the accepted bids at an auction (in the case of auctions of Real Return Bonds, non-competitive allocations are made at the allotment price).
3 For examples illustrating how to calculate aggregate bidding limits, see Appendix 3.
4 Government securities distributors that do not act as principal in the purchase and sale of Government of Canada securities directly with customers and other financial intermediaries have a competitive bidding limit of 0 percent and a non-competitive bidding limit of $0 for their own account.
*20) この節は下記の資料(Official Operations in the Gilt Market An Operational NoticeやGEMM Guidebook A guide to the roles of the DMO and Primary Dealers in the UK government bond market)など、英国のDebt Management Office(DMO)のウェブサイトおよび資料に基づいて記載しています。
https://www.dmo.gov.uk/media/5rkbjnuu/opnot310322.pdf
https://www.dmo.gov.uk/media/ye2psdx3/guidebook160316.pdf
https://www.dmo.gov.uk/media/5rkbjnuu/opnot310322.pdf
https://www.dmo.gov.uk/media/ye2psdx3/guidebook160316.pdf
*21) 英国債はシンジケート方式でも発行がなされています。
*22) この節における非価格競争入札の説明は、主にDMOによる「Official Operations in the Gilt Market」に基づいています。
*23) DMOによる「Official Operations in the Gilt Market」を参照。
*24) DMOによる「Official Operations in the Gilt Market」では、「GEMMs are under an obligation to pass on the right to the option to any client bidder(s) that submitted successful bids in the auction through their firm, and, as a result, dealers should factor client take-ups into the single amount of options that they apply for during the take-up window. However, in the event that a client does not wish to take up its allowance, the GEMM may opt to take up that allowance for its own account.」と説明しています。
https://www.dmo.gov.uk/media/5rkbjnuu/opnot310322.pdf
https://www.dmo.gov.uk/media/5rkbjnuu/opnot310322.pdf
*25) https://www.dmo.gov.uk/media/nheb5lvg/gar0910.pdfを参照。
*26) 通常の価格競争入札は公表されていますが、価格競争とnon-competitive bid allowanceを含んだ形で公表されています。
*27) 個別の結果についてはBloombergなどの端末を経由して開示されています。
*28) ここでの記述はDMOによる下記の文章を参照しています。
The DMO judges, however, that there could be merit in introducing a dealer non-competitive option as part of the auction process. A dealer non-competitive option is an option available to a GEMM to purchase a small amount of a gilt that has been offered at auction in addition to the total amount sold via the auction. The option would have to be exercised within a pre-set period after the auction (not least so that the new amount in issue could be accounted for in relevant gilt indices). The maximum amount that an individual GEMM could purchase via the option could be set by reference to its successful allocation at the auction itself (thereby further incentivising participation) and would be sold at the average accepted price (conventional gilts) or the strike price (index-linked gilts). Such a facility could enhance the auction process by reducing the execution risk for the DMO and market participants. Moreover, it could increase the amount of gilts sold at individual operations, potentially reducing the number of operations needed in any one year (all other things being equal) if the cumulative total additional issuance via the option was sufficiently large.
https://www.dmo.gov.uk/media/ksdev3oa/cons20090318.pdf
The DMO judges, however, that there could be merit in introducing a dealer non-competitive option as part of the auction process. A dealer non-competitive option is an option available to a GEMM to purchase a small amount of a gilt that has been offered at auction in addition to the total amount sold via the auction. The option would have to be exercised within a pre-set period after the auction (not least so that the new amount in issue could be accounted for in relevant gilt indices). The maximum amount that an individual GEMM could purchase via the option could be set by reference to its successful allocation at the auction itself (thereby further incentivising participation) and would be sold at the average accepted price (conventional gilts) or the strike price (index-linked gilts). Such a facility could enhance the auction process by reducing the execution risk for the DMO and market participants. Moreover, it could increase the amount of gilts sold at individual operations, potentially reducing the number of operations needed in any one year (all other things being equal) if the cumulative total additional issuance via the option was sufficiently large.
https://www.dmo.gov.uk/media/ksdev3oa/cons20090318.pdf
*29) 財務省理財局(2021)でもコンベンショナル方式と整理されています。
*30) Finanzagenturはそもそも応札された札をすべて拒否するという権利も有しています。「The Federal government reserves the right to reject all bids as well as to repair both the bids at the lowest accepted price and the bids without price indication, i.e. to allocate only a certain percentage」
https://www.deutsche-finanzagentur.de/en/federal-securities/issuances/auction-process
https://www.deutsche-finanzagentur.de/en/federal-securities/issuances/auction-process
*31) The amount of own securities on an annual basis is governed by § 2 (5) of the Federal Budget Act. Own securities may currently be built up to a maximum annual amount of 20% of the amount of outstanding German Government securities.
https://www.deutsche-finanzagentur.de/en/federal-securities/trading/secondary-market/activities
https://www.deutsche-finanzagentur.de/en/federal-securities/trading/secondary-market/activities
*32) 日本経済新聞(2011/11/23)「ドイツ国債入札不調 応札額、募集の7割弱」では、「ドイツ政府の国債入札の制度では、入札予定に届かなかった金額分の国債をドイツ連邦銀行(中央銀行)が購入する。銀行の応札義務が弱く札割れは他国に比べて多い。」と記載しています。
*33) Rocholl(2005)は、German Treasury Marketを説明する2節で「There is no upper limit on the number of bids that bidders may submit in the competitive tender and there is no maximum amount that bidders may demand in the non-competitive tender」(p.5)と指摘しています。
*34) 1999年からの単純平均で計算しています。
*35) 財務省理財局(2021)等を参照。
*36) 例えば、Primary Dealer Systems:Draft Background Noteでは、「Germany has a “quasi-PD system” by limiting the access to the primary market to banks meeting some conditions, including a minimum market share.」としています。
https://openknowledge.worldbank.org/handle/10986/24099
https://openknowledge.worldbank.org/handle/10986/24099
*37) https://www.aft.gouv.fr/en/dernieres-adjudications
*38) フランス国債庁の資料に、BTF、Fixed-rate OAT、inflation-indexed OATについてのMaximum amount allocated for NCBsとして、25%と記載されています。詳細は下記の資料(SVT CHARTER Appendices)のAppendix3を参照してください。
https://www.aft.gouv.fr/files/medias-aft/1_AFT/2.Partenaires/2.2_SVT/AFT_Charter%20SVT%202022_appendices_EN.pdf
https://www.aft.gouv.fr/files/medias-aft/1_AFT/2.Partenaires/2.2_SVT/AFT_Charter%20SVT%202022_appendices_EN.pdf
*39) フランス国債庁の資料では、「The NCB allocation coefficient for each SVT in each category of securities corresponds to the arithmetic mean of its purchases of all of the lines sold at the three previous auctions of securities in the same category (not including the current auction)」と記載しています。詳細は下記の資料(SVT CHARTER Appendices)のAppendix 3 Note 4を参照してください。
https://www.aft.gouv.fr/files/medias-aft/1_AFT/2.Partenaires/2.2_SVT/AFT_Charter%20SVT%202022_appendices_EN.pdf
https://www.aft.gouv.fr/files/medias-aft/1_AFT/2.Partenaires/2.2_SVT/AFT_Charter%20SVT%202022_appendices_EN.pdf
*40) イタリアでは前者をcompetitive yield auction、後者をmarginal price auctionと記載しています。
https://www.dt.mef.gov.it/en/debito_pubblico/titoli_di_stato/aste_titoli_di_stato/#car3
https://www.dt.mef.gov.it/en/debito_pubblico/titoli_di_stato/aste_titoli_di_stato/#car3
*41) Department of the Treasuryのウェブサイトの「Auction reopening reserved for government bond specialists」の項目において「The maximum amount offered in reopenings is usually 10% of the ordinary BOT issue. For medium/long-term bonds it is 30% of the amount offered in the first tranche of new bonds and 15% for the following reopenings.」と指摘しています。
https://www.dt.mef.gov.it/en/debito_pubblico/titoli_di_stato/aste_titoli_di_stato/#car3
https://www.dt.mef.gov.it/en/debito_pubblico/titoli_di_stato/aste_titoli_di_stato/#car3
*42) 同論文のp.16を参照。
*43) 権利行使価格とは、オプションにおいてあらかじめ決められた原資産を購入(売却)する価格を指します。原資産(この場合は国債)の価格と権利行使価格が一致する点をアット・ザ・マネーといいますが、第二非価格競争入札では、平均価格でアット・ザ・マネーが決まるとすれば、入札に掛けられた国債の価格が平均価格より上がる(下がる)と、イン・ザ・マネー(アウト・オブ・ザ・マネー)と考えられます。なお、ここではアット・ザ・マネーなどの知識を前提に記載しましたが、オプションの基本概念を知りたい読者は、筆者とJPXで記載した「国債先物オプション入門」(服部・JPX, 2022)を参照してください。
*44) なお、留意点が2点あります。(1)ここでは「利回り変化」として、価格競争入札における平均利回りと(14時30分ではなく)15時時点の引け値の差を使用しています。従って、第Ⅱ非価格競争入札の締め切り以降15時までの引け間際の値動きを含んでしまっている分、利回り変化が第Ⅱ非価格競争入札に与える影響を捉えづらくしている可能性があります。また、(2)「行使率」の算出に当たって、第Ⅱ非価格競争入札の上限の割合(2019年12月までは15%、その後は10%)を発行予定額に掛けた額を分母として使用しています。実際の第Ⅱ非価格競争入札の上限額は、過去の個別PDの応札実績や当日の価格競争入札におけるPD以外による落札の有無によってはより小さくなり得るなどの事情があるため、「行使率」は過少に見積もられている可能性があります。
*45) 実際、過去10年間における2年―40年までの入札データのパネルデータを用いて固定効果推定を行ったところ、決定係数は0.2-0.3程度でした。もっとも、ここで用いられたデータは売買参考統計値であるため、15時時点での価格であることから、第Ⅱ非価格競争が行使できるタイミングと若干ずれていることなど、一定の制約の下での分析に過ぎず、結果についてはあくまで幅を以って解する必要がある点に注意してください。