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令和5年度概算要求基準の概要


主計局総務課主計官 一松 旬


1.はじめに
令和5年度予算編成においては、我が国が直面する内外の重要課題への取組を本格化していくことが求められている。
すなわち、「新しい資本主義」の実現に向けた施策を具体化していく必要がある。人への投資、科学技術・イノベーション、スタートアップ、GX(グリーントランスフォーメーション)、DX(デジタルトランスフォーメーション)への重点投資を官民連携の下で推進するとともに、エネルギーや食料を含めた経済安全保障を徹底していかなければならない。あわせて、こども政策の充実を図り、全世代型社会保障を構築していくことも重要である。
また、ロシアによるウクライナ侵略のほか、インド太平洋地域においても、安全保障環境は一層厳しさを増している。そうした中で、日本の安全保障を確保し国民の生命と暮らしを守り抜くため、新たな国家安全保障戦略を策定し、防衛力を抜本的に強化していく必要がある。
令和5年度予算においては、これらの重要かつ困難な課題に応えつつ、これまでの歳出改革努力を継続し、経済再生と財政健全化をしっかりと進めていくことが求められている。
すなわち、必要な政策対応と財政健全化目標に取り組むことは決して矛盾するものではない。経済をしっかり立て直し、そして財政健全化に向けて取り組んでいく。ただし、感染症及び直近の物価高の影響を始め、内外の経済情勢等を常に注視していく必要がある。


2.令和5年度概算要求基準の基本的な考え方
令和5年度予算においては、「経済財政運営と改革の基本方針2022」*1(以下「基本方針2022」という。)及び「経済財政運営と改革の基本方針2021」*2(以下「基本方針2021」という。)に基づき、経済・財政一体改革を着実に進めながら、歳出全般にわたり、施策の優先順位を洗い直し、無駄を徹底して排除しつつ、予算の中身を大胆に重点化していく方針である。
このような基本的な考え方の下、「令和5年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について」*3(以下「令和5年度概算要求基準」という。)が本年7月29日に閣議了解されたところである。
令和5年度概算要求基準の大要は、以下のとおりである。
1)地方交付税交付金等、年金・医療等、裁量的経費及び義務的経費の8月末までの要求・要望の仕組みは、前年度までの仕組みと同じ枠組を踏襲している。
2)その上で、「基本方針2022」における「重要な政策の選択肢をせばめることがないよう」にするという方針に則る観点から、「基本方針2022」及び「新しい資本主義のグランドデザインおよび実行計画」*4(以下「新しい資本主義実行計画」という。)等を踏まえた重要政策については、「重要政策推進枠」として別途要望を可能としているほか、新型コロナウイルス感染症対策、原油価格・物価高騰対策等を含めた重要政策については、必要に応じて、「重要政策推進枠」や事項のみの要求も含め、適切に要求・要望を行い、予算編成過程で検討することを明記している。
令和5年度概算要求基準のイメージは下図 令和5年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針についてのとおりであり、その具体的内容については3.以降で説明する。


3.要求・要望について
(1)年金・医療等
年金・医療等に係る経費については、前年度当初予算額に、高齢化等に伴ういわゆる自然増(5,600億円)を加算した範囲内で要求することとしている。
年金・医療等に係る経費について、「新経済・財政再生計画 改革工程表」に沿って着実に改革を実行していくことを含め、合理化・効率化に最大限取り組み、「基本方針2021」等における「新経済・財政再生計画」において示された「社会保障関係費については、基盤強化期間においてその実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸びにおさめることを目指す方針とされていること、経済・物価動向等を踏まえ、その方針を継続する」との考え方を踏まえつつ、その結果を令和5年度予算に反映させることとしている。

(2)地方交付税交付金等
地方交付税交付金等については、「新経済・財政再生計画」との整合性に留意しつつ要求することとしている。

(3)義務的経費
義務的経費については、前年度当初予算額の範囲内で要求することとしている。その上で、聖域を設けることなく抜本的な見直しを行い、可能な限り歳出の抑制を図ることとしている。
なお、義務的経費を削減した場合には、同額を裁量的経費に振り替えて要求できる仕組みとしている。
また、広島サミットの開催に必要な経費等の増減については、加減算することとしている。

(4)その他の経費
その他の経費(裁量的経費)については、前年度当初予算額の90%(「要望基礎額」)の範囲内で要求することとしている。

(5)重要政策推進枠
令和5年度予算においては、新しい資本主義の実現に向け、人への投資、科学技術・イノベーションへの投資、スタートアップへの投資、GXへの投資及びDXへの投資への予算の重点化を進めるとともに、エネルギーや食料を含めた経済安全保障を徹底し新しい資本主義実現の基礎的条件である国家の安全保障を確保する等のため、「基本方針2022」及び「新しい資本主義実行計画」等を踏まえた重要な政策について、「重要政策推進枠」を設け、前年度当初予算におけるその他の経費に相当する額と要望基礎額の差額に100分の300を乗じた額及び義務的経費が(3)の額を下回る場合にあっては、当該差額に100分の300を乗じた額の合計額の範囲内で要望できる仕組みとしている。


4.予算編成過程における検討事項
令和5年度予算編成過程においては、施策の安定性・継続性にも留意しつつ、施策・制度の抜本的見直しや各経費間の優先順位の厳しい選択を行うことにより、真に必要なニーズに応えるため精査を行う。その上で、新型コロナウイルス感染症対策、原油価格・物価高騰対策等を含めた重要政策(人への投資、科学技術・イノベーションへの投資、スタートアップへの投資、GXへの投資及びDXへの投資並びにエネルギーや食料を含めた経済安全保障の徹底や為替変動への適切な対応を含む)については、必要に応じて、「重要政策推進枠」や事項のみの要求も含め、適切に要求・要望を行うこととし、予算編成過程において検討を加え、「基本方針2022」で示された方針を踏まえ措置する。
また、新たな「中期防衛力整備計画」に係る経費、少子化対策・こども政策に係る経費、GXへの投資に係る経費について、「基本方針2022」で示された方針を踏まえ、予算編成過程で検討する旨を明記している。


5.要求とりまとめ結果
上記の概算要求基準を踏まえ、期限である8月末日までに各省庁から提出された令和5年度一般会計概算要求・要望の総額は、約110兆円となり、9年連続で100兆円を超えることとなり、前年度当初予算額(新型コロナウイルス感染症対策予備費を除く)と比較すると約7.5兆円(7.3%)の増となった。また、「重要政策推進枠」による要望については、約4.3兆円となった。本稿の末尾に「令和5年度一般会計概算要求・要望額」を添付する。
今後、提出された概算要求の内容を精査していく。

*1)令和4年6月7日閣議決定。
*2)令和3年6月18日閣議決定。
*3)本文は、以下の財務省ウェブサイトから参照可能。
   https://www.mof.go.jp/policy/budget/budger_workflow/budget/fy2023.html
*4)令和4年6月7日閣議決定。