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特集 令和3年度の事例集から紹介 全国財務局の地域連携の取組

財務局は財務省の総合出先機関として、また、金融庁から事務委任を受けた組織として、地域において、財政、金融、国有財産などの業務を通じて国の施策を実施している。また、財務省及び金融庁の施策の広報、地域の意見・要望、地域経済の実態把握を通じて、地域に貢献することを使命としている。本特集では財務局の「地域連携」の取組を令和3年度の事例集から紹介する。取材・文 向山 勇

財務省・金融庁をつなぐハブとして地域の課題を把握し地方創生を支援

ポストコロナを見据えた地域経済の復興支援も
財務局は、地域にとって真に必要な取組は何か、地域にどのように役立つことができるかなど、地域の課題を把握し、地域と財務省・金融庁をつなぐネットワークの結節点(ハブ)としての役割を果たすことにより、地方公共団体等が進める地方創生を支援している。
令和3年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大が地域経済や国民生活に対して大きな影響を与えた。その中で財務局では、地域連携及び地方創生支援の取組について、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた地域経済の復興に向けた支援に取り組むことを方針に掲げ支援を行った。
一方で政府の「デジタル田園都市国家構想基本方針」(令和4年6月7日閣議決定)においては、「関係省庁や地方支分部局、地方公共団体、地域金融機関、企業等とのネットワーク機能を活用し、地域企業の価値創造や課題解決等に向けた『つなぎ役』を果たす」旨が示された。これを踏まえ、財務局においても、より効果的な地域貢献を実施するため、各種業務で培ったネットワークや財務局をハブとする地域の恒常的・互恵的な意見交換の場(プラットフォーム)を積極的に活用して「地域経済エコシステム」の「つなぎ役」を果たしている。


全国財務局の地域連携事例集(令和3年度より)


新型コロナウイルス感染症拡大を受けた取組

CASE01
ポストコロナを見据えた関西経済活性化を支援
近畿財務局及び管内財務事務所
近畿財務局は、ポストコロナを見据えて、(1)事業者支援、(2)起業支援、(3)地域価値の向上を重点テーマとし、地域の特性やニーズを踏まえた取組を実施した。
事業者支援では、事業再構築や事業承継等の支援施策の活用を促進するセミナーのほか、金融機関の事業者支援能力向上のためのゼミを開催する等、コロナ禍で変動する経営環境への対応を迫られている事業者の取組を後押し。起業支援では、政策金融機関や大学、士業等の専門家との連携による女性や学生の起業マインドの醸成に取り組んだほか、地方公共団体による取組も積極的に支援した。地域価値の向上に向けては、地方公共団体等による観光振興やまちづくり等の取組を支援。各主体間の意見交換等を通じたネットワークの形成やノウハウの共有により、地域の課題解決を後押しした。

写真:地域・未来ミーティング
写真:事業者支援のパンフレット
写真:女性のための起業スキルアップセミナー
写真:市町村職員向けプロモーション研修会

CASE02
アフターコロナを見据えたサステナビリティ関連セミナーを開催
福岡財務支局
福岡財務支局は、日々の業務で経済団体、金融機関、公的機関等と意見交換を行う中で、SDGs/ESGについて何から始めればいいのか分からないといった地域の声を聴取。これを受けて福岡財務支局は、地域経済活性化に向けた機運醸成を図りつつ、SDGs/ESGの取組のきっかけや重要性について気付きを与えることを目的として、関係機関と連携してセミナーを企画した。
セミナーには、福岡、佐賀、長崎の地方公共団体、金融機関、企業等から約80名が参加。各講師から、SDGs/ESGの分野における九州地域の立ち位置や課題、各界における取組等について説明。組織としてどう向き合うべきか、何から取り組めばいいのかなど、参加者にSDGs/ESGの取組のきっかけや重要性を付与した。
参加者の声
●金融機関事例、企業の具体的事例、国の潮流、九州の位置付け、各種制度の見識が深まった。
●SDGsと金融のつながりを確認することができた。
●SDGs関連の補助金等の全体感が理解できた。

写真:配信会場の様子
写真:セミナーの模様


財政に関する取組

CASE03
公立病院の経営改善に向けた支援
関東財務局東京財務事務所
東京財務事務所は、地方公共団体に貸付した資金の監査を通じて、公立病院の経営上の課題(収入増加・費用削減)を把握。当該課題の解決に向けて「病院経営セミナー」を開催し、地方公共団体の病院経営の改善に向けた取組を側面支援した。
セミナーには、経営に携わる副院長、各部門長をはじめとした医師、看護師、事務部長等のほか、副市長や市の財政担当部局の職員も参加(約40名)。多くの病院関係者等に幅広く情報提供することができた。セミナー終了後、参加者からは「今後の経営や業務の改善に活かしていきたい。」といった声が聞かれ、気付きやヒントが与えられる機会となった。

写真:セミナーの模様


国有財産に関する取組

CASE04
空き地・空き家の有効活用を通じたまちづくり支援
東北財務局山形財務事務所
東北財務局山形財務事務所は、山形県上山市のまちづくり支援のため、令和2年10月に上山市、NPO法人かみのやまランドバンクと「空家等・空き地対策に関する連携協定」を締結し、まちづくりを進めていくうえでの課題解決に取り組んでいる。
当面の課題を「空き家を利活用した起業創業希望者に対する支援体制強化」とし、地域金融機関や政府系金融機関、大学関係者を講師に招き、創業支援のポイント、定期借地制度の活用等をテーマとした研修会を計3回開催。研修会における意見交換等を通じて、まちづくり支援に関する地域関係者のネットワークが拡大した。
参加者の声
●創業にあたっての事業計画の重要性を再認識した。
●地方では土地所有意識が強く、定期借地に対するニーズ発掘が課題。

写真:研修会の様子


金融に関する取組

CASE05
中国地方サステナブルファイナンス協議会
中国財務局
中国地方は、製造業が集積し、人口当たりのCO2排出量が全国一となっており、カーボンニュートラルは喫緊の課題となっている。カーボンニュートラルの実現には、成長資金を供給する金融機関の役割が重要。そこで中国財務局は、国の機関や官民金融機関などが連携する「中国地方サステナブルファイナンス協議会」を設置。カーボンニュートラルの取組を金融面から支援している。
具体的には令和4年3月2日に第1回協議会を、6月15日に第2回協議会をオンラインにより開催。国の機関等による各施策の説明や意見交換により中国地方の現状認識を共有したほか、関係機関の間でカーボンニュートラルに向けて機運を拡大することの重要性を認識した。

写真:オンライン開催による協議会の様子


経済調査に関する取組

CASE06
地域主体との地域経済情勢及び課題の共有
東海財務局及び管内財務事務所
東海財務局及び各財務事務所は、地域経済情勢について地域へ情報発信するとともに、最新の地域経済の状況や課題を把握するため、経済調査機能を有する地域の経済団体・シンクタンクなどと継続的に意見交換会を実施している。
意見交換会は地域の実情や生の声が聴けるほか、財務局の情報発信もできる貴重な機会。地域の関係者との深い信頼関係の構築に寄与している。

写真:中小企業家同友会との意見交換会
写真:しずおか経済フォーラム


広報相談に関する取組

CASE07
財政教育プログラム授業拡大に向けた取組
沖縄総合事務局
財務局では、小・中・高を対象として、国の予算編成を疑似体験する授業「財政教育プログラム」を実施している。これまでの同プログラムの実施先において、生徒からは「グループワーク」に高評価を得ているものの、一部の先生からは事務負担等の課題が指摘された。そこで沖縄総合事務局では、学校側の事務負担軽減と財政教育プログラム授業の更なる拡大を図るため、先生のみで、時間を短縮して授業を実施するモデルケースを策定した。
モデルケースでは、財務局職員向けのガイドブックをもとに、授業の進め方やグループワークを活性化するための方法等をまとめた「財政教育PGガイドブック(先生用)」を作成。当該ガイドブックの活用により、先生のみで授業が実施可能になった。今後、沖縄総合事務局では、生徒の「主体的・対話的で深い学び」の実現・拡大のため、当局主体の開催に加え、当該モデルケースを積極的に各学校に周知し、財政教育プログラムの更なる拡大を図っていく。
参考にした先生の声
●コロナ禍で財務局職員の受入調整に手間と時間がかかった。
●プログラム実施のための時間(2時限)の確保に苦労した。

写真:グループワークの様子
写真:財政教育PGガイドブック


金融リテラシー向上や金融犯罪被害防止に向けた取組

CASE08
北海道の関係機関と協働した
金融教育プロジェクト
北海道財務局及び函館・帯広財務事務所
北海道財務局は、地域の金融リテラシーの更なる向上・拡大を図るため、各関係機関に声掛けし、金融経済教育の取組に関するノウハウを結集させ、「高校生と先生のための北海道における金融教育シンポジウム」を協働で開催した。
シンポジウムは、札幌、函館、帯広の3会場のほか、オンラインも活用したハイブリッド形式で開催し、北海道を中心に全国からおよそ170名の高校生と先生が参加。参加した先生からは、「金融教育は実践的な学びになりづらく、資産形成ゲームのような教材はとても価値がある」、高校生からは、「金融について授業を受ける機会がなく、貴重な体験だった」との声が寄せられた。

写真:基調講演/杉村太蔵氏と高校生
写真:資産形成体験ゲームの様子

CASE09
矯正施設(少年院)への講師派遣
四国財務局
四国財務局では、成年年齢引下げを踏まえ、四国少年院において出院を間近に控えた者に対し、「銀行口座やクレジットカードの作り方」から「悪質商法に注意」といった日常生活に必要とされる金融知識の授業を実施した。

写真:授業の模様


災害に関する取組

CASE10
軽石漂着の被災団体を
国有財産の無償貸付等により支援
九州財務局及び沖縄総合事務局
令和3年8月に発生した小笠原諸島沖の海底火山の噴火により大量の軽石が漂着した地域では、船舶の航行、漁業、観光等に対する様々な被害が発生。軽石は広い範囲で繰り返し漂流・漂着することが予想され、早急かつ継続的な対応が必要となった。
九州財務局・沖縄総合事務局は、被害を受けた地域の復旧支援のため、(1)利用可能な国有財産に関する情報提供、(2)早期復旧に向けた災害査定立会を実施した。
国有財産の提供では地方公共団体からの要望に速やかに対応するため、口頭確認による国有地の無償貸付を実施し、回収した軽石の仮置き場の確保に協力した。また、速やかに災害査定立会を実施し、被災が確認された漁港施設・港湾施設の復旧に関する事業費の決定に同意し災害からの復旧を支援した。

写真:被災したビーチ ▲軽石漂着前 ▲軽石漂着後
写真:▲軽石の仮置き場として無償貸付した国有地
写真:▲災害査定立会の様子


地方創生支援に関する取組

CASE11
地方公共団体に対する地域課題解決に向けた支援
北陸財務局
北陸財務局は、公営住宅の建替えなどの諸課題を有する中能登町に対し、「PPP/PFIプラットフォーム」への参加を提案。北陸財務局エリアマネジメントPTが同町の公営住宅建替え事業を継続的に伴走支援することで、深い関係性を構築。令和3年度は新たに(1)古民家等歴史的資源を活用したまちづくり、(2)公共施設の健全な維持管理・運営について同町の取組を多面的かつ継続的に支援した。
古民家等歴史的資源の活用では、先進地視察が予定されるなど具体的な検討が進むとともに、古民家等歴史的資源を活用したまちづくり(地域活性化)を学ぶオンラインセミナー開催にも発展。公営住宅建替え事業では、同町が地域内外の民間事業者や整備予定の大学と連携し、小学校跡地を活用した一大拠点づくり事業に成長。令和4年度に本格着工した。

写真:座談会の模様
写真:プラットフォームの官民対話


今後の取組
財務局は、地域において、財政、金融、国有財産などの業務を通じて国の施策を実施するとともに、財務省及び金融庁の施策の広報、地域の意見・要望、地域経済の実態把握を通じて、地域に貢献することを使命としている。希望ある社会を次世代に引き継ぐべく、また地域経済の発展に貢献し、地域住民の皆様にとって役立つ組織となれるよう、地域の様々な主体とさらなる連携・協働を図り、地域課題の解決に向けて創意工夫を凝らしながら、社会の変化に伴う新たなニーズに対応していく。
なお、令和3年度地域連携事例集は財務局のホームページで公開している。令和3年度は、事例を9つのカテゴリーに分けて紹介。ウェブサイトで閲覧する際には、目次から各取組のページへ直接アクセスできるよう利便性の向上を図っている。また同ホームページから地域(財務局等)ごとの取組にもアクセス可能。
https://www.mof.go.jp/about_mof/zaimu/renkei/index.htm