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編集後記/令和4年7月号(通巻第680号)

広報誌「ファイナンス」は、今月で通算680号を数えます。将来の世代が現在のような困難に再び直面し思い悩んだときに、良き相談相手となり未来への道標となれるよう、この一年間ささやかながらその歴史を紡いでまいりました。
最近、大学生の方々と話す機会がありましたが、いずれ日本は衰退するといった悲観論をキャンパスで耳にすると伺いました。かつてに比べれば国際競争は厳しくなり、日本の位置づけが相対的に変わってきているのは確かですが、ただただ世界の命運に身を委ねるのではなく、その次、そして、そのまた次に続く世代のために、未来を信じて挑戦する気持ちはやっぱり大事なんだろうと思います。イギリスの歴史学者エドワード H.カーは、「未来に向かって進歩するという能力に自信を失った社会は、やがて過去におけるみずからの進歩にも無関心になってしまう」と述べました。悲観論は未来だけではなく、過去すら失ってしまう。困難な時代のただ中にあることは間違いありませんが、過去の世代が手本を示してくれたように、現代を生きる世代もまた進歩しようとあり続けることが、将来世代に遺産を残し、希望を与え、歴史をも尊ぶことになるのだと信じます。
一年に及ぶ稚拙な編集後記は大変お見苦しかったことかと思いますが、反響も頂きまして、これまでお付き合いを頂きまして誠にありがとうございました。「ファイナンス」の引き続きのご愛読をどうぞよろしくお願い申し上げます。
(財務省広報室長 伊藤 拓)