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還流する地下資金―犯罪・テロ・核開発マネーとの闘い―12 終章:デジタル革命と地下資金

IMF法務局 上級顧問(執筆時)野田 恒平

図表.本章の範囲


要旨
■ デジタル資産に関し、地下資金対策に係る安全性・利便性・プライバシーの3つの要請を、同時に完全な形で実現することは困難。このような緊張関係を正面から認識した上で、社会的な合意としての均衡点を探っていかなければならない。
■ 地下資金対策の観点からは、デジタル資産についても捜査・訴追に繋がる追跡可能性までが必要であるが、現在の技術水準では未確立。加えてステーブルコインとP2P取引の普及は、このような困難性に拍車をかける、ゲームチェンジャー。
■ 他方で中央銀行デジタル通貨(CBDC)は、デジタル資産に係る地下資金対策を、高い水準で確保するためのツールとなる潜在力を秘める。その制度設計に当たっては、複数の社会的要請をどのように実現させていくか、検討を深める必要。

ビットコインを提唱した謎の人物・ナカモトサトシ氏は、通貨高権を国家の独占から解放し、独立した世界通貨を構想したと言われる。しかし、「仮想通貨」という当初普及した呼称とは裏腹に、ビットコインをはじめとするこれらの資産は、ハイリスク・ハイリターンの投機商品としてブームになって価格が高騰した後、急激な下落を経験した*1。また、大規模な流出事件等も発生し、マネロン等への悪用可能性も指摘されるようになるに連れ、「仮想通貨=いかがわしいもの」といった印象も広まりつつあった。
このような中で、2019年にフェイスブック社(現メタ社)によって発表されたのが、リブラと称するステーブルコインの創設構想である。リブラは法定通貨の裏付けを持つことで価値を安定させ、将来的には真に「通貨」としての役割を持ち得るものであると謳われたが、その際に掲げられたスローガンは「金融包摂(financial inclusion)」であった。これは、従来銀行等の金融インフラにアクセスできなかった層にも、金融サービスの恩恵を敷衍させよう、という理念である。リブラ計画自体は各国の反対に遇い凍結されたが、ステーブルコイン創設の構想は、形を変えて既に実現しつつある。しかし、その金融包摂の要請は、地下資金対策上の安全性の要請とは相克を来たし得るものでもあることには、留意しなければならない。
最終章となる今回は、このデジタル技術革命が地下資金対策にもたらす光と闇とでも言うべき、最も今日的な課題について論じていく。

写真:2019年にリブラ創設構想を発表した、フェイスブック社(現メタ社)のマイク・ザッカーバーグCEO(出典:Anthony Quintano from Westminster, United States, CC BY 2.0)


1.デジタル革命と地下資金対策
トリレンマと3つの落とし穴
ここで取り上げる領域は新しい分野であり、未だに複数概念の間の揺らぎがしばしば起こるため、まず本稿における用語方法を統一しておく(図表1 本稿における用語方法の統一。一般的な用法と異なる場合もある点、要注意。(筆者作成))。本稿においては、ビットコイン等のいわゆる「仮想資産(Virtual Asset)」と、これと同様にブロックチェーン技術に依拠しつつも、その価値に法定通貨等の裏付けを持つステーブルコインを総称して「暗号資産(Crypto Asset)」、更にこれに、中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)を加えて「デジタル資産」と呼ぶことにする。歴史を遡れば、最も早くビットコイン等を指す呼称として定着した用語は「仮想『通貨』(Virtual Currency)」であったが、通貨の裏付けがないものを『通貨』と呼ぶことは適切でない等の理由から、我が国は、もう一つの呼称である「暗号資産」を広く採用している。他方で国内においても、暗号資産に係る交換業者は、2つの呼称のハイブリッドである「仮想資産」に対応する「VASP(Virtual Asset Service Provider)」との呼称が広く使われる等、和名・英名の不整合も見られる。また、現在FATFでは、一般的にステーブルコインまでを含めて「仮想資産」と称しているが*2、すると今度は、ステーブルコインを除いた補集合を上手く切り取れない、という問題が生じる。これは、後述の通りステーブルコインの登場をゲームチェンジャーと考え、ビットコイン等と明確に峻別したいという立場からは不都合だ。更に、CBDCまでを含めた3つの総称としては、世間一般には「デジタル『資産』」よりは「デジタル『通貨』」の方が人口に膾炙した呼称であるが、上記の『通貨』という語に係る経緯を考えれば、仮想資産までを含む上位概念に『通貨』という呼称を与えることは適切でないと考えられるため、ここでは「デジタル資産」とするものである。以上のような混乱は、単なる表面上の単語選択の問題ではなく、正にこの新たな存在をどのように概念構成するかの、試行錯誤の投影と言えよう。
さて、各論に先立ち、以下の大きな視座を提供しておきたい。
まずは、デジタル資産を巡るトリレンマの存在である。一般的に、3つの要請があるがそれらを同時に達成することが不可能な関係にあるものを、「トリレンマ」と呼ぶ。政策の世界でこのカテゴリーに類するものとしては、国際金融のトリレンマ*3が良く知られているが、デジタル資産についても、同様の「三すくみ」の状況が存在すると考えられる。それは、地下資金対策上の安全性と、金融包摂を含めた利便性、そして、人権保障の観点からのプライバシー保護の3つの要請を、完全な形で同時に実現することはできない、という緊張関係である(図表2 デジタル資産を巡るトリレンマ(概念図・筆者作成))。この関係性は、後述の通り、究極的にはこれらの3つの要請をどこでバランスさせるかという、政治的な価値選択を迫るものである。
そして、このトリレンマと並んで「3」という数字をキーワードとした着眼点として、デジタル資産に関連する議論にまつわる、以下の3つの落とし穴がある。
1つ目は、デジタル資産を地下資金対策の射程に収めようという際に、ともすれば、地下資金対策の全体像が忘れられがちである点である。暗号資産についての、FATFを中心とする国際的議論は、現在、ようやく対策の第2段階である水際措置に係る部分までが充実し始めた、といったところである。しかし、既に累次説明した通り、地下資金対策としては、最終的には不正を検知した場合の捜査・訴追や没収等の事後対応までを含めて、はじめて完成するものである(図表3 地下資金対策の各段階(再掲・筆者作成))。議論の進展は歓迎すべきであるが、真のゴールラインがどこにあるかを見失ってはならない。
この点にも関連した2つ目の落とし穴は、技術に対する過信である。具体的には、デジタル資産を可能にした技術の力を地下資金対策にも応用することで、セキュリティ面の不安を払拭できるというものだ。しかし、残念ながら現状のテクノロジーには、規制を実施する側よりも圧倒的にそれを潜脱しようとする側に有利に働くという、著しい非対称性を認めざるを得ない。現在の技術水準を前提とした場合、第2段階の水際対策、及び第3段階の半分である疑わしい取引の提出までは、取引態様等に基づくリスク分析等がある程度は有効と考えられる場合も多い。しかし、そこから更に行為者を特定しての捜査・訴追となると、現状の技術水準は未だ求められる水準には程遠いものだ。これは、暗号資産に係る追跡可能性の論点と言い換えることができる。
最後に、上述のような非対称性を、更に一気に強化し得るような非線形の変化をもたらす要因、即ち「ゲームチェンジャー」の存在を意識しない議論に陥ることが、3番目の落とし穴である。より具体的には、仮想資産とステーブルコインは今や「暗号資産」の名の下で一まとまりとして議論されることも多いが、それが社会に及ぼすインパクトにおいては、明確に非線形の変化が存在する。更に、VASP等の業者を介さない個人間のP2P取引の普及も、地下資金対策上全く別次元のリスクをもたらし得るゲームチェンジャーとして位置付け、地下資金対策上の問題点につき、議論を行っていかなければならない。
以下、このような総論的な枠組みを前提に、検討を進めていく。

追跡可能性の技術的限界
金融(Finance)と技術(Technology)を足し合わせて、「フィンテック(Fin-tech)」という言葉が使われるようになってからもう大分経つが、昨今ではこれと並び、規制(Regulation)や監督(Supervision)への技術の応用という意味で、「レグテック(Reg-tech)」や「スプテック(Sup-tech)」という単語も用いられるようになった。暗号資産の世界においても、その利便性向上の要請に応えるのみならず、民間事業者の顧客管理や当局の規制の側にも、積極的に技術を活用する可能性が模索されている。確かに、技術の発展は日進月歩であり、今後の可能性については大いに期待したいところである。他方で客観的に現状を見れば、現時点までで確立されてきた様々な技術の本質は、多くの顧客や取引に係る属性を分析し、マネロン等の地下資金に関係しているリスクをウェイト付けする、というものに留まる*4。この点、理想的にはマネロン等に係る個別の資金の流れを把握し、最終的には捜査・訴追・没収に結び付けることまでが求められることは言うまでもない。実際、そのような技術も足許で開発されてきてはいるが、捜査当局との連携手法も含めまだ発展途上と言わざるを得ない。
詰まるところ、地下資金対策の第3段階において、事後的にカネの流れを探るに当たっては、追跡可能性(traceability)が決定的に重要である。これは、匿名性(anonymity)と対置される概念であり、不審なカネの流れを関知した際に、事後的にどの程度それを追えるかを意味する。追跡可能性がない最たるものは、現金である。よって序章で説明した通り、マネロンにおいてはカネの流れの何れかの段階で現金化を介在させることが、有効な手段となる。しかし現金はかさばるため、多額の犯罪収益等を保管・移転するには適さない。現金は、幸いにしてそのような物理的制約が内在するため、マネロン等の媒体になる機会が自ずからある程度限定されている。他方、銀行間送金等は多額のカネを動かせる反面、追跡可能な電磁的記録が残る。このように、通常は匿名性と移転容易性の間にトレードオフが存在するのである。しかしここで、仮に世の中のデジタル資産に追跡可能性がないということであれば、犯罪者目線からは匿名性と移転容易性の「良いところ取り」である。地下資金対策の観点からは、物理的制約が一切存在しない「現金」を、マネロン等の手段として提供することと同義であると言って過言ではない。
この点、ブロックチェーン技術の下での金融取引に係る追跡可能性は、2019年に金融庁による委託調査が包括的に検討を行っており、その結果は公表されている*5。そして、多くのテクニカル・タームにまぶすことなく、その結論を端的に言えば、その当時の技術水準を前提にする限り、このような追跡可能性についてはほぼ皆無である、という一文に尽きる。それから数年を経て技術水準も急速に向上してきてはいるが、今日現在においても前述の通り、この追跡可能性を逐一捜査・訴追にまで繋げられる程度に特定された形で実現することは、非常にハードルが高い。マトリョーシカというロシアの民芸品がある。これは入れ子構造になった木製の人形であり、開いても開いても、中からまた人形が出てくるものである。デジタル資産の取引を匿名化する手法は、これに似ている。匿名化の技術は様々にあるが、大きくは(1)ブロックチェーン技術の中で行われるもの、(2)インターネット内世界における一般的技術として、IPアドレス等を介して行われるもの、(3)我々が存在する実世界において行われるもの、の3つのレイヤーに分けられる。これらについては、(1)~(3)それぞれの中で複数の手法を同時に使うことができ、かつ、(1)~(3)のレイヤー自体も、相互に併用可能である。正に、匿名性のベールを剥がしていってもいつまでも実体に辿り着けない、金融取引のマトリョーシカである(図表4 ブロックチェーン技術の下での金融取引に係る匿名化技術(出典:金融庁・三菱総合研究所(2019)))。
より具体的には、(1)のレイヤーについては例えばミキシング*6に代表される、複数の取引情報を撹拌してしまう類型と、記録自体を何らかの方法で不可視化してしまう、ライトニング・ネットワーク*7やミンブルウィンブル*8のような類型があり、それぞれ高度な匿名化を実現できる。(2)のレイヤーに係る技術の典型例は、オニオン・ルーティングである。これは、送信者と受信者のアドレス情報を、玉ねぎ(オニオン)のように重層的に暗号化することによって、真の送信者と受信者が特定されることを防ぐものである*9。さて、(1)及び(2)のレイヤーでの匿名性のベールを何とか剥ぎ取り、行為者のIPアドレスまで辿り着いたとしよう。しかし、マネロン等は実世界の出来事であり、捕えるべき対象は電磁的情報に過ぎないIPアドレスではなく、生身の人間である。最終的には、そのアドレスから当該行為者まで辿り着かなければ意味がないが、この(3)のレイヤーにおける追跡可能性の遮断は、最も技術的知識を伴わない形で可能である。即ち、公共の場でのフリーWifiを使用したり、取引に使う端末を中古市場から他人名義又は架空名義で現金で購入する、といった原初的な手法で、使用したディバイスと行為者の紐付けを、断ち切れてしまうのだ。
このように、現行の技術を前提とすれば、望ましいセキュリティ水準を直ちに確保することは困難であることが、既に明白であると言わざるを得ず、漠然とこれらの技術に期待した楽観的立場を取ることは適切ではないだろう。利便性・金融包摂の観点から暗号資産を推進するのであれば、その反面で地下資金対策上の要請は大幅に妥協せざるを得ないという事実を、正面から認識し受け容れる必要がある。そして、現状においてすら対応が困難な事態に、更に拍車をかけるのが、以下の2つのゲームチェンジャーである。

2つのゲームチェンジャー
最初のゲームチェンジャーは、ステーブルコインである。ステーブルコインは、法定通貨等の裏付けがあり暗号資産より「安全である」、との漠然とした理解から、地下資金対策上のリスクについても、暗号資産と比較して小さいかのようなイメージを持たれているようにも思うが、マネロン等への悪用可能性を考えた場合、実態はその逆である。そもそも、デジタル資産それ自体を窃取の対象とする場合と、麻薬犯罪等の他の前提犯罪による収益を隠匿する純粋な媒体として、デジタル資産を用いる場合は分けて考えねばならない。前者には、個人によるもの、犯罪組織によるもの、更に北朝鮮のような国家的アクターによるものまでが含まれる*10。他方、マネロン規制の対象としてまず考えるべきは、言うまでもなく後者である。その際、犯罪組織の目線に立ってビジネスとして犯罪を見た場合、大切な収益を化体させる対象としては、価値の変動が少ないステーブルコインの方が安心である。乱高下する暗号資産は、収益の一部を投機的に投資する対象とはなっても、恒常的な価値保存の媒体とはなり得ない。
従って、ステーブルコインの普及は暗号資産と同等かむしろそれ以上に、マネロン上はリスクと捉えるべきであり*11、事実それは、FATFも警鐘を鳴らすところである*12。更に、これまでの暗号資産を巡る議論の前提は、犯罪収益を再投資又は費消する場合には、決済機能として通用性が高い円・ドル・ユーロ等の法定通貨(フィアット)に換金する必要があり、その段階で不正な資金を捕捉できるであろう、というものであった。確かに、暗号資産について言えば決済機能としての地位が極めて弱く、将来的にもその状況は大きく変わらないと思われる。他方、法定通貨と連動し価値が安定したステーブルコインは、このような機能を潜在的に持ち得るものである。そうであれば、法定通貨への換金という、犯罪収益が「尻尾を出す」タイミングが消滅してしまい、上記の前提は成り立たない。ステーブルコインの登場が、一つの大きなゲームチェンジャーと言えるのは、そのような理由からである。
フェイスブック社(当時)が、初めての本格的なステーブルコインとして、2019年にリブラの創設を提唱した時、各国政府の警戒感は非常に強かった。その背景には、それがその当時新しいコンセプトであったことと同時に、フェイスブック社が以前に情報流出等の問題を引き起こし、同社に対する茫漠たる不信感がベースにあったこと等も寄与したものと考えられる。それから時は経って、当局の警戒感もいつの間にか薄れ、現在ではその他のステーブルコインが、かなりの存在感を持ちつつあるという現実がある。繰返しになるが、利便性・金融包摂の観点から、このような社会の進歩は頭ごなしに否定的に捉えるべきものではない。しかし、それによってトリレンマのもう一つの要請である安全性がどのような形で、どの程度後退を強いられるのか、そして、それを甘受する用意が社会にあるのかは、今一度問い直す意味があるのではないか。
もう一つのゲームチェンジャーは、特定の業者を仲介させない、個人間でのP2P(Peer to Peer)取引の普及である。FATFは2018年以降、累次、デジタル資産をその射程に収めるべく関連文書の策定・改定を行ってきている*13。これは大きな成果として評価し得る一方、現状におけるFATFでの暗号資産の取扱いは、官民のバーデン・シェアリングとして金融機関等にゲートキーパー機能を果たさせるという地下資金対策の従来の基本構造を、原則としてそのまま踏襲したものである。即ち、暗号資産交換業者(VASP)をゲートキーパーとし、顧客に係る顧客管理を行わせることが、FATF基準全体の適用の基礎となっているのだ*14。他方、このような構造を取る以上、VASPを介在しない取引については、規制の網からその大部分がそっくり抜け落ちてしまうのは、当然の帰結である。これも、マネロンにおける現金使用の容易性になぞらえれば理解し易い。つまり、銀行のような第三者を介さない個人間の現金の収受に関しては、水際でカネの流れに関わる人物を集約して把握することも、事後的に追跡することも不可能である。P2Pでの暗号資産の取引普及は、個々人が自由に、金額の多寡を問わず現金を自由にやり取りできてしまうのと同様の状況を、仮想空間において具現化することだと言い換えられる。
なお、正に世界で日々どれだけ現金のやり取りがなされているかを正確に把握する術がないのと同様に、P2P取引がどの位のボリュームを占めるのか、そもそも現状では全く分かっていない。FATFは、P2Pでのビットコインの取引割合を、複数の機関に推計させ公表しているが、例えば金額ベースの数値で言えば、その割合は2016年では5%~91%、2020年では3%~80%と、推計を行った機関によって著しい幅がある*15。どのような対策を取るかといった方法論以前の問題として、我々は、今この瞬間におけるP2P取引の規模という、最も基本的な情報すら、掴めていないのである(図表5 ビットコイン取引の内、P2Pの占める割合推計(左は取引数ベース、右は金額ベース)。それぞれの折れ線は、推計を算出した各機関に対応するが、それらの間には著しい幅がある。(出典:FATF(2021)))。
以上を総合して、未来社会の仮想的状況を考えてみよう。世の中では、ステーブルコインが大きな通用性を持ち、法定通貨に迫る決済媒体としての地位を占めている。ネット上の通販サイトはおろか、現実世界の店舗でもステーブルコインでの支払いを受け付けており、また、麻薬等の違法取引も、ステーブルコインを介して行われることも多い。即ち、表裏両方の社会において、ステーブルコインが主要な交換手段の一つとなっている。そしてP2P取引の普及により、若干なりともITリテラシーがある人々は、何れの業者も仲介することなく、直接にステーブルコインのやり取りをしている。このような社会において、マネロン規制をはじめとする地下資金対策を有効に行うことは、最早不可能と言わざるを得ない。P2P取引の下でも、全てのステーブルコインの通貨経路が完璧に辿れ、しかもそれを個人と逐一紐付けられるような、技術上の革命的なブレイクスルーがあれば話は変わって来るかも知れないが、少なくとも現在のところ、そのようなものは確立されているとは言えないのである。金融包摂・利便性の向上といった観点からは、安定的な決済機能を持つステーブルコインの普及、そして、それが個人間でも自由にやり取りできるようになることは、望ましいことだ。しかしここでも、その反射効として我々の社会が同時に如何なるリスクを引き受けざるを得ないかは、十分に認識しておく必要がある。国際社会は、既往の金融システムを前提に地下資金対策の枠組みを時間をかけて築き上げてきたが、眼前で起こっている技術革新は、それを根こそぎ瓦解させ得る力を持っていると言っても、決して大げさではないのだ。
なお、P2P取引の普及に伴うリスクについても、ステーブルコイン同様、FATFのガイダンスにおいては言及がなされている*16。しかし、これら2つのリスクが単に数あるリスクの中の一つではなく、現在の地下資金対策に致命傷を与え得る、決定的なゲームチェンジャーであるというまでの認識は、未だに醸成されていない。これも正に、地下資金対策の世界において、巨大な問題でありつつも真正面から取り上げられていない、「部屋の中の象(elephant in the room)」(第4章参照)の例と言えよう。国際社会は今、レトリカルなポージングではなく、本当の意味でこの象達と向き合わざるを得ない局面を迎えている。

地下資金対策から見たCBDC
他方で、現状セキュリティの側に圧倒的に不利な非対称性を、更なるテクノロジーの力で、逆にドラスティックに転換し得る可能性がある。それは、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の普及である。CBDCは、暗号資産(仮想資産及びステーブルコイン)の広まりを追い掛ける形で、ここ数年、急速に存在感を増してきた。2022年月現在、世界80か国においてCBDCの発行が何らかの形で俎上に上っており、この内、バハマ等のカリブ海諸国をはじめとした9か国では既に流通開始済み、中国・ロシア等15か国においてパイロット実施中、そして、日米を含む56か国が調査・開発段階にある(図表6 世界各国におけるCBDCの実施状況(出典:Atlantic Council))*17。我が国に関して言えば、現時点でCBDCを発行する計画はないものの、日本銀行において、CBDCに関する技術的な実現可能性を検証するための実証実験を段階的・計画的に実施するとともに、これと並行して、様々な観点からの制度設計面の検討を進めている*18。
なお、これまで登場した暗号資産は、ブロックチェーン技術を中核とした技術的仕様に、基本的にはタイアップしたものであるが、CBDCには中央銀行が電子的形態で発行する法定通貨、という緩やかな定義があるのみであって、その制度設計には様々なものがあり得る。分類の軸も、一本ではない。まず、技術的側面から、銀行の口座振替類似の形態を取るものと、トークンの形態を取るものに大別される*19。また、オペレーションの態様から、民間金融機関が関与せず中銀が一元的に管理する形態、民間金融機関が仲介機能を果たす形態、また、民間金融機関が発行した「通貨」を中央銀行の資産で裏付ける形態、の3つに分ける方法がある*20。更に、CBDCが使用される場面に着目し、中央銀行・市中銀行間で用いられるホールセール型と、個人や企業が日々の決裁に用いることができる、リテール型に分類することもある*21。上記80か国においても、これらの仕様が並行して実施又は調査・開発されている。
さて、国がCBDCを導入したりその導入を検討するに際しては、金融包摂、支払・決済機能の効率性や頑健性向上、様々な目的がある。その中でも、地下資金対策上のセキュリティ向上を明確に目的として謳っている国が、前出のバハマである*22。2017年にFATF地域機関の相互審査を受けたバハマは、11の行動指標の内、過半数の6つで最低のレーティングとなる等厳しい評価を受け、グレイリストに掲載されてしまった*23。その後の改善努力が認められ、同国は2020年にリストから外されたが、CBDCの発行は、地下資金対策を更に強化するプロセスの一環として位置付けられたものである。
暗号資産が経済に自生的に広まっていくのに対抗する形で、地下資金対策に配意し、強いセキュリティ上の仕様を備えたCBDCを、より利便性の高い形で浸透させることで、相反する政策目的を高いレベルで均衡させようという発想は、極めて魅力的なものに映る。他方ここにおいても、CBDCによって「地下資金対策が可能」と言った場合に、現実にどれだけの実態が伴っているのか、慎重に見極めねばなるまい。具体的には既に論じた通り、第一に、顧客管理等の「水際対策」だけでは不十分で、実際に不正が疑われる取引が行われた後での、追跡可能性までが担保されていなければならない。第二に、その追跡可能性は、アプリケーション・インターネット・実世界のそれぞれのレイヤーにおいて実現され、つまり、最終的には取引に関わる者まで辿り着けなければならない。発行当局が、ウォレット開設時にID提示を要求する等の運用をしていることを以って、地下資金対策上の問題はない旨主張していたとしても、いざ犯罪捜査等の段階になって、関連する人物に辿り着けるのかは全く別問題なのである。そして前述の通り、CBDCというのは抽象的な概念規定であって、制度的建付け及び技術的仕様の双方において、極めて多様なデザイニングが可能である。どのような設計の場合に、各々、どの程度の追跡可能性が法的・技術的に担保されるのか、今後、より詳細な検討が必要となろう。
この際、常に立ち返るべきは、冒頭の掲げたトリレンマである。当然ながらCBDCの導入及びその制度設計の検討は、地下資金対策の観点のみから決せられるものではない。セキュリティの観点を徹底し、地下資金対策を可及的に強化しようと思えば、世の中のあまねく全ての取引について、一円単位まで当局の追跡可能性を確保することが望ましいことは、言うまでもない。しかし、この場合には取り扱う機関である中銀や市中金融機関等の事務負担が大きくなると同時に、個々人の日々の経済活動について、市民のプライバシーをどのように保護するのか、政府の権限への歯止めや情報流出へのリスクに対処する制度設計を如何に行うのか、といった点が問題になろう。実際、バハマの事例、そして中国のデジタル人民元においては、一定額未満の取引については匿名性が確保される制度設計となっている。これは、トリレンマのバランスをどこで均衡させるかという、極めて重い政策判断を伴うものだ。デジタル資産を巡る論点は、ともすればテクノロジーの問題として矮小解釈されがちであるが、実は技術論の先で究極的に問われるのは、我々の社会の理念に関わる、政治的な価値選択と均衡点の模索である。これは、ことによってはテクノロジーの問題以上の、厳しい問い掛けと言えよう。

写真:バハマのCBDC利用促進のための、広報用公式ウェブサイト。


2.おわりに
発展し続ける地下資金対策
今般の連載にとって最終章となる今回に、デジタル資産と地下資金対策という、最も今日的なテーマを選んだ。これは、地下資金対策が既に態様の確立したものでは全くなく、現在進行形で発展を続けるものであることを象徴する存在である。しかし、この枠組みが発展を続けている、また続けなくてはならないのは、何もデジタル資産のような新しい現象に対応する為だけではない。以前見た国籍ロンダリングのような問題は、従来より潜在的に存在していた問題ではあるが、地下資金対策の側が未だ対応できていない内に、そのリスクが顕在化してきた例と言える。この意味では、地下資金の巨大なフローを捉えようという国際社会の営為は、あらゆる意味で正にワーク・イン・プログレスの企てなのである。日本としても、FATF基準への遵守を目指すことはあくまでもボトムラインに過ぎず、より良い地下資金対策の枠組みを築いていくべく、積極的に国際的な議論に貢献していかなければなるまい。しばしば出現する、あらゆる政策分野に共通する罠は、議論が専門化・技術化する過程でそれに関わる人々が自覚なく視野狭窄に陥り、ディテールが自己目的化してしまうことである。巨大隕石が衝突しようとしているのに気付かず、惑星の上で僅かな領土を巡る内輪の戦争にうつつを抜かすような愚に陥っていないか、どの国も不断に自己検証を繰り返す必要があるだろう。
そして、今や国家間のルール・メイキングは、その射程に収められる民間セクターの国際的競争力にも大きく影響する、経済戦略としての側面も否定できない。今日、欧州が自動車産業等に関わる環境政策を戦略的に主導していることは、その最たる例である。幸いにして我が国は、地下資金対策のルール・メイキング機能を担うFATF本体のメンバーであると同時に、OECD、G7といった先進国間の枠組みにも名を連ね、また、ASEANプラス3や東アジア共同体、APEC等の地域的枠組においても、主導的役割を担っている。これは、地下資金対策の制度作りにおいて、日本が国際的な議論をリードできる立場にあるということに他ならない。このようなアドバンテージを十分に活かせるよう、あるべき地下資金対策に向けて、まずは国内での制度理解を深め、それに根差した将来的議論を充実させていくことが求められる。この瞬間も還流し続ける地下資金との闘いにおいて、主体性・能動性の欠如こそが、最大の内なる敵なのである。

謝辞
今回の連載は当初の想定を遥かに超え、期間としてちょうど1年、分量は全体で100ページを超える、大部のものとなった。まずは、このような異例のボリュームの紙幅を下さり、また、長期に亘る毎月の校正作業に根気良くお付き合い頂いた財務省文書課広報室に、感謝申し上げる。
そして今回の連載執筆に当たっては、多くの方から貴重なご知見や資料提供を頂いた。
法曹界からは、犯収法・外為法をご専門としている中崎隆弁護士と、特に頻繁に意見交換させて頂いた。また、米国制裁法の中島和穂弁護士、反社対応の竹内朗及び大野徹也弁護士からは、豊富な実務経験と職業的使命感に裏打ちされた、貴重なお話しを伺うことができた。アカデミアからは、防衛大学校・石井由梨佳准教授には、国際公法の俯瞰的観点から、有益なご助言を数多く頂いた。没収については、刑法学の東京大学・樋口亮介教授、慶応義塾大学・佐藤拓磨教授、同志社大学・川崎友巳教授を中心としたエキスパートの方々との、一連のブレイン・ストーミングは、考えをまとめるにあたって貴重な糧となった。その他にも、以前法務省の研究会でも席を並べさせて頂いた東京大学・加藤貴仁教授(商法)、また、租税法関係では同神山弘行教授及び一橋大学・吉村政穂教授にも、大変有益なインプットの機会を頂いた。元国連安保理北朝鮮制裁パネル委員・竹内舞子氏とは、現在ご研究の拠点を置かれているニューヨークに筆者が赴いた際に対面でお会いし、制裁関係の議論にお付き合い頂いた。なお、これらの方々の内複数名が、筆者の大学学部時代からの友人関係であったり、そこから更にご紹介を頂く形で、今回ご連絡を取らせて頂いたものである。20年越しでの貴重なご縁を、大変有難く感じている。
現職の霞が関や日銀職員の方々については、逐一お名前を上げることはできないが、筆者が前職からともに働いていた、財務省国際局調査課の同僚達をはじめ、所属省庁及び年次の上下を問わず、多くの皆様にお世話になった。OBでは、それぞれご在任中は筆者の上司でもあった、国際通貨研究所・渡辺博史理事長、EY税理士法人・角田伸広会長、同ストラテジー・アンド・コンサルティング・福島俊一氏、また、筑波大学・鈴木英明客員教授に御礼を申し上げたい。更に、国籍・民族も経歴も様々なIMFの同僚、世界税関機構(WCO)の職員、国際的NGOであるTransparency Internationalの方々等、日本人以外の方にも多くのご協力を頂いた。NGOという意味では、WWFジャパン及びTRAFFICにおいて、野生動物の違法取引を注視している北出智美氏とは、官民の垣根を越えて継続的に意見交換をさせて頂いた。加えて広く民間セクターの括りでは、ブロックチェーン技術にお詳しい盛本マリア氏(現在グーグル社所属)には、ビジネスには必ずしも直結しない筆者からの質問に、忍耐強くお答え頂いた。
紙幅の関係もあり、これらの皆様から頂いたご知見の内、論稿に反映できたものはごくごく一部である旨は、お詫びせねばならない。また、論稿中に万が一誤り等があれば、それは例外なく筆者の責に帰すべきものである点、厳にお断りしておく。繰返しになるが本論稿の執筆動機は、地下資金対策を巡る議論が時として技術的細論の隘路にはまり込み、そもそもの大きな制度的沿革の理解や、俯瞰した立場からの政策的検討が置き去りになっているのではないか、との問題意識からであった。その意味では、この世界に全くなじみがない人にも、逆に長く身を置いて詳細に通じている読者に対しても、提示すべき視座は実は同じなのだと考えている。更に、ともすれば無機質・無味乾燥に思われるこの分野の話を、血の通った人間社会の営為として伝えることも、執筆に至る目的の一つであった。本論稿が、そのような問題意識に多少なりとも叶う内容になっていたなら、幸いである。
※本稿に記した見解は筆者個人のものであり、所属する機関(財務省及びIMF)を代表するものではありません。


*1) 志波和幸『仮想通貨取引のマネーロンダリング対策の現状~過渡期にある仮想通貨市場を踏まえ~』国際金融1319号、2019年4月1日
*2) 羽渕貴秀『Q&A FATF「改訂暗号資産ガイダンス:ステーブルコインやNFT等デジタル資産の概念を整理」』金融財政事情、2022年1月4日
*3) 一国が対外的な通貨政策を取る時に、(1)為替相場の安定、(2)金融政策の独立性、(3)自由な資本移動、の3つのうち、必ずどれか一つをあきらめなければならないというもの(出典:国際通貨研究所HP)。
*4) 染谷豊浩・白井真人・佐藤雄一『「アナリティクス」の活用でマネロン対策の高度化を:「経験ベース」の顧客リスク格付けの定期的な見直しに有効』金融財政事情、2020年11月20日
青木武『マネロン対策におけるAIの活用』金融財政事情、2019年9月2日
白井真人『疑わしい取引検知のカギを握る的確なシステム対応:業務要件の十分な検討、システムの計画的導入が必須』金融財政事情、2018年9月24日
*5) 『ブロックチェーンを用いた金融取引のプライバシー保護と追跡可能性に関する調査研究』金融庁・三菱総合研究所、2019年3月20日
*6) 複数の送金元からのコインをプールした上で、それを再配分する方法であり、ビットコイン、ダッシュ、イーサリアムといった多数の暗号資産で利用可能。第三者たる仲介者(タンブラー)が複数の出元のカネを振り混ぜた後、それぞれの希望の宛先に送金する仕組み。暗号資産においては、この仲介者はミキシング・サービス事業者という形をとっている。この他に、実際の送金元にダミーの送金元を複数加えることで送金元を特定できなくする、リング署名と呼ばれる技術もあり、これはモネロにデフォルトで搭載されているもの。これについては、理論的には全ての署名をしらみつぶしに調べて行けばいつかは真の送金元にたどり着けるが、ダミー送金元はたくさん入れ込むことができる上、複数の主体を介在してこのプロセスを繰り返せば、送金元をたどる分岐点は指数関数的に増えていくことになり、現実問題としては始まりの真の送金元に到達することは不可能である。
*7) ブロックチェーン上に記録する取引を最小限に留め、それ以外の取引をブロックチェーンの外側(オフチェーン)で行う仕組み。これにより、ブロックチェーン上に記録されるのは最初と最後の取引のみであり、途中の取引履歴は記録されない。この技術は、元来はブロックチェーンでのデータ処理にかかる負荷を減らすことで取引の高速化・低手数料化を図り、少額取引も含め、暗号資産の使い勝手を良くする目的で開発されたが、匿名化の目的でも広く用いられている。
*8) 一義的にはライトニング・ネットワークと同様、スケーラビリティ向上を目的としたもの。複数のトランザクションについての計算を、いわば入口と出口の「帳尻を合わせる」だけの計算に集約し、検証負荷を下げる(トランザクション・カットスルー)等の方法を取る。この過程でブロックチェーン・データの不要な部分は削除してしまうため、結果として取引経路の再識別は困難となる。
*9) 技術概要を比喩的に説明すると、手紙が何重にも封筒に入れられており、一番上の封筒には次の転送先の郵便局(中継ノード)のみが書いてある。その郵便局に送達されると、そこで初めて外側の封筒を開くことができ、次の送付先を見ることができるような仕組みになっている。それを繰り返すことで、最初の通信元のIPアドレス及び通信内容は、中継ノードを含めた第三者から見えない状態となる。インターネット自体、元来は軍事目的で開発された技術であることは良く知られているが、そこでの通信を匿名化するオニオン・ルーティングの技術も、90年代から米軍関係の研究機関で開発が行われたものである。そしてこの技術は、現在では悪名高いダークウェブを支える基盤としても知られる。
*10) Midterm report of the Panel of Experts submitted pursuant to resolution 2464(2019), Panel of Experts, 1718 Sanctions Committee(DPRK), United Nations Security Council
加藤もえ『北朝鮮制裁専門家パネルによる第3回中間報告書の概要』CISTEC Journal No. 185, 2021年1月
*11) 山岡浩巳『マネロン規制は「金融のデジタル化」が広げた新たな地平:金融取引の利便性向上と犯罪抑止の両立が重要な課題に』金融財政事情、2019年9月16日
*12) Updated Guidance for a Risk-Based Approach:Virtual Assets and Virtual Asset Service Providers, FATF, October 2012, P.17-18
*13) FATFは2014年の段階から仮想資産に係る調査等を行っていたが、これを踏まえ2018年10月、勧告15及び用語集にVA/VASPの要素を導入。2019年6月、勧告15に係る解釈ノートを改訂し、基準適用の態様を明確化。2019年6月には関連ガイダンスを策定し、2021年10月には同ガイダンスを改訂(前掲)。これらの動きはG20財務大臣・中央銀行総裁プロセスともリンケージを持たされている。また、我が国は2017年に仮想資産に係る包括的な法律を一早く制定した(以下参照)。
岡田瞳『仮想通貨交換業者におけるマネロン・テロ資金供与対策のあるべき姿:国際的要請も高まるなかで、リスク管理態勢の整備は急務』金融財政事情、2018年3月19日
*14) 筆者の所属するIMFも、かかるFATF基準の中での暗号資産への対策強化を各国に慫慂している。
Nadine Schwarz, Ke Chen, Kristel Poh, Grace Jackson, Kathleen Kao, Francisca Fernando & Maksym Markevych, Fintech Notes:Virtual Assets and Anti-Money Laundering and Combatting the Financing of Terrorism(1), Some Legal and Practical Considerations, October 2021
Nadine Schwarz, Ke Chen, Kristel Poh, Grace Jackson, Kathleen Kao, Francisca Fernando & Maksym Markevych, Fintech Notes:Virtual Assets and Anti-Money Laundering and Combatting the Financing of Terrorism(2), Effective Anti-Money Laundering and Combatting the Financing of Terrorism Regulatory and Supervisory Framework – Some Legal and Practical Considerations, October 2021
*15) Second 12-Month Review of the Revised FATF Standards on Virtual Assets and Virtual Asset Service Providers, FATF, July 2021
FATFが2020年から実施している、各国における暗号資産に係るAML/CFTの取組状況フォローアップ。
*16) FATF(2021), op.cit., P.18-19, 39-40
*17) Central Bank Digital Currency Tracker,Atlantic Council(https://www.atlanticcouncil.org/cbdctracker/)
*18) 『中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み』日本銀行決済機構局、2022年4月13日
*19) 前掲・日本銀行決済機構局(2022)
*20) Gabriel Soderberg(in collaboration with Marianne Bechara, Wouter Bossu, Natacha Che, Sonja Davidovic, John Kiff, Inutu Lukonga, Tommaso Mancini-Griffoli, Tao Sun & Akihiro Yoshinaga), Fintech Notes:Behind the Scenes of Central Bank Digital Currency, Emerging Trends, Insights, and Policy Lessons, IMF, February 2022
*21) 『中央銀行デジタル通貨:デジタル通貨の躍進と通貨の未来』KPMGあずさ監査法人、2021年2月
*22) IMF(2022), op.cit.
*23) Anti-Money Laundering and Counter-Terrorist Financing Measures – The Bahamas, Mutual Evaluation Report, CFATF, July 2017