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福井でつくろう、福井をつくろう
~未来につなぐ ふくい魅える化プロジェクト~

福井

福井市総務部まち未来創造課 主査 酢谷 泰大

1.福井市の概要
福井市は、福井県の県都であり、人口約26万人、面積536.41km2、日本三名山の1つである白山を望み、荒々しくも美しい日本海など、豊かな自然に恵まれています。
一方、JR福井駅を中心とした商業・行政機能に加え、住環境・子育て環境が充実していることから、合計特殊出生率が全国の県庁所在地の中でトップクラスであるなど、自然と都市が共存した住みよさ抜群のまちです。
また、2024年春には、北陸新幹線の福井開業を控えています。市街地では複数の再開発事業が進行しているほか、県外へのプロモーションなども進めており、今後、一層のまちなかのにぎわい創出が期待されています。

写真1:2024年には北陸新幹線が延伸

2.未来につなぐ 
ふくい魅える化プロジェクト
全国的に少子高齢化の進展や東京一極集中の傾向が続く中、福井市においても少しずつ人口が減少しています(国勢調査 2010年:266,796人→2020年:262,328人)。
そこで、移住の促進や関係人口の拡大による、地域を超えた"新しい人の流れの創出″を目指し、2016年から「未来につなぐ ふくい魅える化プロジェクト」を開始しました。
このプロジェクトでは、「福井でつくろう、福井をつくろう」をテーマに、まちの魅力や価値の可視化を図りながら、新たな事業を創造するプログラムであるXSCHOOL(エックススクール)を始め、福井にお試しで居住する日本海トライアルステイ、多様な価値観を共有し、これからのまちの在り方を考えるセミナーを開催するXSESSIONS(エックスセッションズ)など多岐にわたるプログラムを、毎年少しずつ見直しを加えながら行っています。
これらの取組を通して、地域内外の人材が出会い、混ざり合う機会を提供することで、着実に関係人口の輪が広がってきています。

写真2:全国から集まったXSCHOOL参加者

3.INTERWEAVE(インターウィーブ)
~県内外の人材と地元パートナー企業がともに未来を織りなすプログラム~
令和3年度からは、新たなプログラムとして、地域内外のさまざまな人材が集い、地元パートナー企業がおかれている社会的状況や抱えている課題から、将来の地域活性化につながる新事業の創出を目指すINTERWEAVE(インターウィーブ)を開催しています。
このプログラムでは、20代~40代の俳優、税理士、学生など多様なバックグラウンドを持つメンバーが地元福井のパートナー企業とチームを組成し、90日間に渡りプロジェクトづくりに取り組みました。
県外からの参加者は実際に福井市に足を運び、地元パートナー企業へのフィールドワークなどを通して、福井の歴史や文化、産業などについて理解を深めました。
それを踏まえ、オンラインツールを活用して定期的に協議を行い、それぞれが持つ多様な視点を織り交ぜながら、地元パートナー企業の未来を見据えた事業の創造に取り組みました。
令和4年2月の成果発表会では、これまでの自社ブランドの一新を目指し、将来の優良顧客となる若者の獲得に向けたマーケティング戦略や、全国で活躍する商品開発者を集めたコミュニティづくりへの提言など、多様な人材が集い、交わったからこそ生まれる、未来視点のプロジェクトが多数発表されました。

写真3:多様な視点を織り交ぜ新事業創出を目指すINTERWEAVE

4.おわりに
令和3年度に開催したINTERWEAVEは、約90日間で事業創造に取り組むプログラムでしたが、終了後も本格的な事業化に向けた関係性は続いています。
令和4年4月には、プログラムを共同運営した東京に拠点を置く一般社団法人が福井拠点を開設したほか、参加者が本プログラムへの参加を契機に起業するなど、更なる展開につながっています。
今後は、これまでの「ふくい魅える化プロジェクト」で築いてきた人材との関係性を一層深めていくとともに、新たな関係人口の創出・拡大を進めながら、地域内外の人材と地元企業との共創を起点に、引き続き、持続的な人の流れづくりにチャレンジしていきます。

写真4:INTERWEAVEの参加者たち

INTERWEAVEで新たな人の流れを!地方創生コンシェルジュ 北陸財務局福井財務事務所長 大塚 美樹
福井市では、“人の流れを創出する”ために「未来につなぐ ふくい魅える化プロジェクト」で、多彩なプログラムを実施してきており、令和3年度からは、地域企業と外部人材が新事業創出に取り組むINTERWEAVEを開催し、成果を挙げているところです。
北陸新幹線の敦賀延伸開業を2年後の2024年春に控え、県都福井市の玄関口であるJR福井駅周辺では複数の再開発事業が進んでおり、にぎわい創出に向け街並みが大きく変わろうとしています。
人と街が織りなす新たな福井市に是非ご期待ください。

通称「世界平和大観音像」の国庫帰属及び処理について

近畿

近畿財務局 管財部

1.はじめに
昨今、特に地方では、人口減少などに伴う空き地・空き家問題や所有者不明土地問題など、いわゆる引き取り手のない不動産の問題が深刻となっており、地方自治体をはじめとした地域社会はその対応に迫られている。
こうした状況を踏まえ令和3年4月に「民法等一部改正法」や所有者不明土地の発生予防を目的とした「相続土地国庫帰属法」が公布され、相続又は遺贈により土地所有権を取得した相続人が、土地を手放して国庫に帰属させることが可能となった。
新たな制度により空き地・空き家問題や所有者不明土地問題などの発生予防が期待できることや相続人が土地を手放し国庫に帰属させることが可能となることで、土地利用の円滑化が進むことが期待されている。
近畿財務局(以下、「当局」という。)では、これまで相続税物納や国庫帰属など、様々な制度に基づき数多くの不動産を引受けてきたが、本稿では、当局がこれまでに経験したことがない、大規模かつ特殊な財産が国庫帰属に至った経緯や現状等について紹介する。

2.通称「世界平和大観音像」
今回紹介する通称「世界平和大観音像」(以下、「観音像」という。)は、兵庫県の淡路島に所在する財産であり、当該地域を管轄する当局が担当することとなった。
【財産の概要】
所在地 兵庫県淡路市釜口字里2457番1ほか
引受日 令和2年3月30日
土 地 19,071.04平方メートル
建 物 観音像(高さ約100メートル)
十重の塔(高さ約32メートル)
山門
観音像は、淡路島の北東部、兵庫県淡路市に所在する巨大な建物で、地元出身の事業家が昭和57年に観光施設として建設。観音像内部に美術館や博物館等が設置されたほか、敷地には山門や十重の塔などが設置され、当時は淡路島の観光名所として大いに賑わった。
しかしながら、バブル経済崩壊後、観光客が減少し、加えて、平成18年に所有者の死亡に伴い施設が閉鎖され、以後管理者不在のまま放置されてきた。

写真:世界平和大観音像、十重の塔及び山門
写真:淡路島位置図

3.国庫帰属に至った経緯
土地及び観音像等の各建物は、所有者の遺族が相続を放棄したことにより相続人が不存在の財産となった。
相続人不存在となった場合、まず利害関係人等からの申立てに基づき、家庭裁判所(以下、「裁判所」という。)において相続財産管理人(以下、「管理人」という。)が選任され、管理人による相続人調査、清算等一定の手続きを経て、残余財産がある場合は国庫に帰属する。観音像については、その財産の規模や特殊性などから、関係者において長期に亘り協議が行われ、当局が管理人及び裁判所から相談を受けたのは、所有者が亡くなってから12年経過後の平成29年であった。
しかし、これほど大規模かつ特殊な不動産が国庫に帰属する事案は全国的に例がなく、管理人や裁判所と累次に亘り調整を行い、現地調査による財産の確認や物件特定作業などを進めた。
およそ2年の期間を要したが、清算手続きが完了し残余財産が確定したことにより、国庫帰属に至ったものである。

写真:国庫帰属財産の範囲

4.観音像等の解体撤去
観音像は、所有者の死亡後現在に至るまで維持・修繕が行われておらず、老朽化や台風等の影響により外壁が剥落するなど、近隣住民に被害を与えかねない非常に危険な状態であった。
国庫帰属後は、当局が所有者として適切に管理する必要があることから、老朽化した観音像をはじめとする各建物をどのように管理するべきか、管理人及び裁判所との調整作業と並行して検討を続けてきた。
その結果、近隣住民の不安を解消するためには、これらの危険な建物を早急に撤去するとの結論に至り、国庫帰属後速やかに解体撤去工事に着手するため、大手ゼネコンや解体事業者から幅広く意見を聴きつつ、適切な施工方法等の検討を進めるとともに予算措置に向けた対応も進めた。
観音像が国庫に帰属した後、令和2年6月に山門と十重の塔の解体撤去工事に係る契約を行い、同年11月、無事に工事が終了した。
続いて最も懸念される観音像の解体撤去については、巨大建物のため慎重に進める必要があったことに加え、騒音対策等を含め、近隣住民の安全確保を考慮し、令和3~4年度の2か年をかけ実施することとした。
約2年に及ぶ観音像の解体には、近隣住民の理解や協力が不可欠であったことから、本格着工に当たり当局と施工業者による説明会を開催。工事に伴う騒音や排水対策など周辺環境に与える影響について説明を行い、近隣住民の方々の理解を得られるよう努め、令和3年6月に工事着工した。
令和4年4月現在、観音像の周囲には、足場が組み上げられ、外壁モルタルを剥がす作業を進めながら、観音像の頭部から順に骨組みの鉄骨を切り離し、クレーンで吊り降ろす作業が進んでいる。順調に進めば、足場を組んでいる観音像本体は令和4年6月頃に解体が終了。その後、同年11月頃に台座及び基礎まで解体し、埋戻し工事を行い、令和5年2月に工事を完了する予定。
この間、メディア等からの問い合わせが多数寄せられ、頻繁にニュース等で報道されるなど、あらためて関心の高さに驚いたが、無事に工事を終えられるよう、引き続き施工業者と連携し対応していきたい。

写真:外壁の剥落
写真:解体撤去工事の模様

5.解体撤去後の跡地利用について
観音像の解体を巡っては、物珍しさからテレビ、新聞、雑誌等で数多く取り上げられたが、解体撤去後に残る広大な土地の活用方法についても関心が寄せられている。
当局では、地元の淡路市や兵庫県とも連携し、地域経済の活性化に繋がるような有効活用策を模索していきたいと考えており、淡路市と当局が中心となり勉強会をスタートさせた。
まずは、地域に関わる様々な主体から跡地活用に係る提案・要望の声を収集し、地域にとってより良い活用プランを策定したいと考えている。

6.おわりに ~引き取り手のない不動産に関する問題への対応~
当局では、今後、相続土地国庫帰属法の施行に伴って増加が見込まれる、引き取り手のない不動産等に関する相談や問題について、関係機関と連携し、課題解決に向け積極的に取り組んでいきたい。

環境と産業の調和から有明海の再生に向けて!

鹿島

鹿島市 総務部 地方創生担当理事 松林 聡

1.鹿島市の概要
鹿島市は、佐賀県の西南部に位置し、東には有明海が広がり、西は多良岳山系に囲まれ、森里川海干潟が一体となった自然環境に恵まれたところです。人口27,915人(令和2年国勢調査)を有する本市は、海苔や温州みかんの生産などが盛んであるほか、高い技術力を持ったものづくりの中小企業が数多く存在し、伝統工芸品には織物の鹿島錦(佐賀錦)があります。
観光面では、年間300万人の参拝客が訪れる日本三大稲荷の祐徳稲荷神社や古くから酒造りが盛んで10万人が訪れる酒蔵ツーリズム(5酒蔵)、干潟上でのオリンピックと言われる鹿島ガタリンピックなどがあり、豊富な地域資源が本市の魅力となっています。
また、肥前鹿島干潟は東アジアにおけるシギ・チドリ類の重要な渡り鳥の中継地、および越冬地であり、国際的にも重要な湿地として2015年にラムサール条約湿地として登録がされました。その登録を受け、2016年に産官学の市内各団体で組織される「鹿島市ラムサール条約推進協議会」を立ち上げ、環境省の地域循環共生圏プラットフォーム構築事業に採択されるなど、有明海の環境保全・再生に向けた活動を行っています。
そうした中で、人口減少、少子高齢化が進むとともに、新型コロナウイルス感染症の影響での交流人口の減少や毎年起きる豪雨災害など、持続可能な自治体の実現に向けたさらなる飛躍が求められる状況にあります。

写真:有明海(干潟)鹿島ガタリンピック

2.地域循環共生圏の全体構想
有明海を取り巻く現状は、赤潮、貧酸素水塊の発生により環境が悪化し、二枚貝をはじめとする干潟に生息する生き物の減少、漁獲量は低迷し、海苔養殖が主流となっています。こうした状況の中、有明海の人の営みと干潟生物の生態系との調和や干潟と干潟を支える鹿島市全体の自然との関係性を見つめなおし、将来の地域や子供たちに受け継いでいくためのあり方を考えながら、自然環境の保全・啓発・利活用を図ることを目的に「鹿島市ラムサール条約推進協議会」が発足しました。市が事務局となり、登録地後背池での農業従事者を会長とし、区長会、地区振興会、商工会議所、観光協会など産業団体、環境団体、佐賀大学等、約20名の構成メンバーに加え、活動を支えるSDGsパートナーとして県内金融機関やマスコミ、市内企業など50団体がプラットフォームを構築し、有明海の環境保全に取り組んでいます。

3.肥前鹿島干潟基金増額プロジェクト
地域で環境とお金を回す仕組みづくりということで、平成28年度に肥前鹿島干潟基金増額プロジェクトを立ち上げました。家庭から出る生ゴミや、海岸清掃で集めたヨシや草などを堆肥として使用し生産した作物や加工品をラムサールブランド認証品とし、それらを購入した代金の一部が有明海の保全・再生に使用されるという、極めて地域循環に資する取り組みです。ラムサールブランド認証品としては、減農薬栽培の「ラムサール米」や耕作放棄地を活用し育てた「放牧牛」など10数種類が登録されており、学校給食や市内飲食店等でもメニューとして提供し、購入者も食べて応援することで、「美味しいものは、美しいになる」につながっています。また、肥前鹿島干潟基金は、募金・協賛金・寄付、グッズ販売、ブランド売上のほか、令和3年度よりラムサールブランド認証品をふるさと納税の返礼品としたことから寄附が激増しています。

写真:ラムサールブランド認証品~地元の人が地元の産品で地元の環境を守る~

4.令和3年度地域循環共生圏事業の取組み「~一粒で二度おいしい作戦~」
(1)棚田の耕作と日本酒造り
荒廃が進む鹿島の棚田を次世代に残すため、棚田米を活用した日本酒造り事業を行っています。棚田は災害時には土砂災害を防ぎ自然ダムの役割を果たしており、飯米を原料とした日本酒で付加価値を付け、農家収入のアップに寄与する新たなビジネス展開「3年後の鹿島も守る酒」を図っています。また、その酒粕・ワラ・みかん粕などをみかん荒廃園の放牧牛のエコフィードとしており、耕作放棄地対策や豪雨・土砂災害対策、新たなビジネス展開に繋げる取組みとなっています。

写真:グリーンインフラとしての付加価値をつけるうえでの科学的評価、地域の自然を活かしたストーリー作りや商品企画

(2)自然との共生と観光・地域振興(エコツアー)
ヒドリガモによる海苔の食害が深刻となるなど、自然との共生が求められています。カモ誘導の実証実験をビジネスマッチングで公募し、LED投光器での照射による誘導に成功しました。また、使用したLED投光器をイルミネーションとして有効活用できることから干潟沿いの石畳へのライトアップを実施し、約200名の集客を図るなど、ラムサール事業に対する認知度アップとなりました。今後は、ナイトツーリズムとしての観光スポット化を図ることとしています。
肥前鹿島干潟(ラムサール登録地)までの交通手段として、シェアサイクルの導入のほか、トゥクトゥクを使った実証実験を行うなど、駅周辺の周遊エコツアーを開催しています。将来的には肥前鹿島駅整備計画と連動し、グリーンスローモビリティの導入を図り、肥前鹿島干潟のゼロカーボンパークを目指しています。

(3)地域に根差した活動
干潟の美化と参加者の社会貢献への意識を高め、地域のより良いコミュニティ構築を図るために、ボランティア活動での清掃活動にスポーツの要素を取り入れた「スポGOMI」「ガタピカ」のイベント開催や「潟を踏もうぜプロジェクト」を実施しています。
また、海の森事業として、豊かな森林を作り育てることが豊穣の海に繋がるとして、市条例で3月21日を記念日(山の日)と定め、植樹や自然体験やクリーン作戦など自然環境保全に対する市民への啓発活動を実施しています。また、市内全小学校での環境教育プログラムや県立鹿島高校での地域とつながる高校魅力づくりプロジェクトでの環境教育などにも取り組んでいます。
このように有明海環境保全を通じたローカルSDGsの推進に尽力する「鹿島モデル」は、地域資源を活用した独自性の高い取り組みと考えています。地域循環共生圏実現に向けて、域内外への発信により、企業版ふるさと納税を活用した市外企業との連携など、更なる拡充を図っていきたいと考えています。

写真:とにかく干潟にきてもらおう!「ガタピカ」

地域循環共生圏の実現に向けた取組に期待!
地方創生コンシェルジュ 福岡財務支局総務課企画調整官 小林 貴博
「森里川海」と干潟が一体となった自然環境や豊富な地域資源が魅力の鹿島市。一方で多くの課題があるのも現実。地域の課題は国の課題の先取りでもあり、同市では地域資源を活用した独自性の高い取組みを開始。
こうしたローカルSDGsの推進に尽力する「鹿島モデル」が地域課題、ひいては国の課題解決に結びつくことを期待しています。