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新々 私の週末料理日記 その48

1月△日日曜日
年末から家内が不在である。娘が配偶者の転勤で米国ダラスにいて、その出産の手伝いに行っているのだ。日本に戻ってきて出産すればいいじゃないかと、こちらは勝手なことを思うのだが、娘やその配偶者は米国で出生すれば二重国籍になるからと言う。子供が米国籍だとその親もグリーンカードが取得しやすいらしいとのたまうのだから、どうやら連中は日本の将来を信じていないらしい。それも理解できなくはない、昨今の経済財政事情ではあるが…。
それはともかく、そういう事情で家内がしばらく不在なので、その間好きなように過ごせるわいと内心ほくそえんでいたのだが、年末年始は結構家事が大変だ。大掃除は手抜きするにしても神棚仏壇ぐらいは整えなくてはいけない。ごみの収集日も気にしなくては。勤務先が12月30日まで通常営業なものだから年末ぎりぎりまで出勤なので、宅配便の受け取りも大変だ。そんな中で、何と冷蔵庫が壊れてしまった。夜飲んでご機嫌で帰宅して、飲み物を取ろうと冷蔵庫を開けたら庫内が生ぬるい。正月に向けて買い込んでいた食品類が大被害である。急いでパソコンを開いて、インターネットで冷蔵庫を注文する。職場の同僚が給湯器故障で交換を頼んだら、半導体不足による供給難で4月まで待てと言われたという話を思い出して、大いに気を揉んだのだが、幸い数日後に配達してもらえることになりほっとした。しかし深夜に、これまで大事にストックしていた食品、それは溶けてどろどろになったアイスクリームだったり、解凍されて液が染み出した冷凍肉やらべとべとになった魚の開きだったりするのだが、それらを、涙を呑んで廃棄するものと玄関の土間に出して冷蔵庫の到着を待つものに分けて処理する作業には、つらく厳しいものがあった。
そうやって何とか冷蔵庫の更新は完了したのだが、それを米国滞在中の家内に報告したら、なぜついでに洗濯機も一緒に更新しなかったのかとお叱りをいただいてしまった。やれやれ。ともあれ、多少の苦労はあったが、上述の職場の同僚の給湯器のことを考えれば、数日のうちに冷蔵庫を更新できたのは幸いであった。
ところで、近年サプライチェーンの混乱ということをしばしば耳にするようになった。一昔前には、経済のグローバル化によって供給制約によるモノ不足はもはや生じないのではないかと思われていたのだが、何故か近頃の方が昔よりモノ不足がよく起きるような気がする。半導体が、私には何故なのかよくわからないけれども、世界的に不足して、極東の小国で真冬に給湯器の交換工事ができないことになっている。自動車を注文しても納車は半年待ちらしいし、ハンバーガー店のポテトまでが発売中止になったとやら。
誰かが言っていたが、昔と違って今は物の流通過程で在庫をぎりぎりまで圧縮する一方、オンタイムでの配送が当たり前になっているから、こういうことが起きるのだそうだ。なるほど、一昔前は工場、卸、小売りのいろんなところに在庫が隠れていて、いざとなると倉庫から出てきたわけか。あるいは、今は一日で配送されるところが昔は1週間も2週間もかけて配送されていたから、文字通りの流通在庫がたくさんあったから、しばらく待てば物が届いたということなのか。いやいや、昔は物が店頭になければ届くまで3月でも半年でも待つのが当たり前で、そんなことでガタガタ言わなかったということなのか。
どうであれ、サプライチェーンの精緻化は便利なご時勢をもたらしてくれたが、精緻さは同時に脆弱さでもあるということのようだ。首都圏の鉄道網は、私鉄や地下鉄の相互乗り入れのおかげでずいぶんと便利になったが、神奈川県で事故があると埼玉県や千葉県までダイヤが大きく乱れるようになった。この話とサプライチェーン云々は、ちょっと似ているかもしれない。
閑話休題。正月明け以降、家内の不在をいいことに、家で食事をする日は、すき焼き、餃子+にらチャーハン、魚の西京焼き+豚しゃぶ、厚揚げ+納豆オムレツ+もり蕎麦、ステーキ+ガーリックライス、中華火鍋もどき+ラーメン、鮭のちゃんちゃん焼きと自分の好きなものを食べ続けている。昨日は鶏のもも肉を、しょうがを利かせた中華味の鍋物にして食べた。今晩は久しぶりにカレーにする予定だ。昨日の鍋物の汁を残してあるので、これを活用した残り汁カレーにする。
夕方になったので、まず玉ねぎを刻み、炒め始める。いい色になってきたところに鶏肉を入れ、さらに炒めたところにカレー粉をたっぷりと振り入れ、さっと炒め合わせる。そこに鍋物の残り汁を入れ、お湯も足してじっくり煮込む。この間に頂き物のさつま揚げをオーブントースターで温め、冷蔵庫からビールを出す。昨晩糠に漬けておいたきゅうりも取り出し、早速に一杯やる。新品の冷蔵庫から出したビールいと美味し。さつま揚げに柚子胡椒をつけてまた美味し。
そろそろカレーの鍋に戻る。麺つゆとおろししょうがで味を調えたら片栗粉でとろみをつけて完成。カレー用の皿を取り出すのが面倒なので、昼にうどんを食べた丼に飯を盛り、飯が埋没して見えなくなるまでカレーをたっぷりとかけて食べる。我ながらおいしくできた。豆腐のかけらやら白菜の切れ端など、普段カレーではお目にかからないものが混じっているところがよろしい。山盛りのカレーをさらにお代わりして、大いに満足する。
食後は例によってソファに寝そべり、ネット配信で1967年の日活映画「対決」を観る。小林旭演ずるちょっとふざけた流れ者と高橋英樹演ずる一本気なやくざの組み合わせがなかなかよろしい。東映の実録路線とはちょっと違う任侠娯楽映画に熱中しつつ、デザートにきんつばを2個も食べてしまった。このところ欲望のままに食べ続けているなあ。我ながら驚く。そういえば1年前に作った背広のズボンが随分きつくなった気がする…。

鶏のしょうが味中華風鍋物やがてカレーのレシピ(2人分)
〈材料〉 鶏もも肉3~400グラムのもの3枚(皮を外し食べやすい大きさに切る。鍋物用とカレー用に2:1に分けておく)、長ねぎ1本(斜め切り)、白菜1/8(堅いところと柔らかいところに分け、硬いところは短冊に切り、柔らかいところは一口大にちぎる)、木綿豆腐1丁(8~10等分)、椎茸6個(石突を切り、4等分にスライス)、えのきだけ1袋、しょうが1片(半分はみじん切りにして鍋物に使い、残りはカレー用におろして使う)、おろしにんにく大匙1、中華スープの素、オイスターソース、花椒、一味唐辛子、玉ねぎ大1個(カレー用に薄くスライス)、カレー粉、水溶き片栗粉(片栗粉大匙2、水大匙4)、めんつゆ
(1)鍋物用の鍋に、サラダ油、ごま油各大匙1をひき、弱火で鶏皮を炒める。テフロン加工でない鍋の場合、焦げつきやすいので頻繁に動かすこと。
(2)鳥皮がきつね色になったら取り出してしょうがのみじん切りとねぎを加え、1分ほど炒めてから、鶏もも肉と白菜の堅いところを加え、花椒と一味唐辛子を振り、中火にしてさらに3分炒める。
(3)湯適量(鍋の大きさにもよるが1~1.5ℓぐらい)を加え、豆腐と椎茸を入れ煮立てる。(テフロン加工の鍋の場合、熱いときに湯を注ぐとテフロン被膜を傷めることがあるので、いったん火を止め、少し冷めてから湯を入れた方がよい。)
(4)沸騰する寸前で火を絞り、おろしにんにく、オイスターソース大匙2を加えてから、粉末中華スープの素で味つけする。
(5)味が決まったら鍋を卓上コンロに移し、早速に食す。好みで花椒、一味唐辛子を振る。
(6)具が減ってきたら、えのきだけ、白菜の柔らかいところを加える。スープが減ったら湯とスープの素、オイスターソースを加える。
(7)締めの雑炊または麺類を作るときも、翌日のカレー用にスープを一定量(5~600CCぐらい)残しておく。

翌日のカレーの作り方
(1)フライパンにサラダ油大匙1をひき、玉ねぎを中火で炒める。きつね色になってきたら鶏もも肉を加え3分ほど炒め、弱火にしてカレー粉大匙5を加えてよく混ぜる。
(2)鍋の残りを加えて煮立てる。具材との関係で水分が足りないようなら湯を加える。
(3)沸騰寸前で火を絞り、おろししょうがを入れ、味見しながらめんつゆ適量を加えて味を調える。
(4)一旦火を止め、水溶き片栗粉を入れ、よく混ぜながら再度過熱してとろみをつける。