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コラム 経済トレンド91

未婚化の進行とマッチングアプリ
大臣官房総合政策課 調査員 山口  晶子/高根  孝次
本稿では、日本における未婚化の現状と課題を分析した後、その解決策となり得るマッチングアプリの活用と課題について考察する。

国内で進行する未婚化
国内の未婚率は、1980年以降上昇しており、足元では高止まり状態となっている(図表1 男女別未婚率の推移)。
未婚化が進行しているものの、依然として34歳以下未婚者の約9割弱が「いずれ結婚するつもり」と回答しており、結婚意思の喪失から未婚率が上昇したわけではなく、他の要因が影響しているとみられる(図表2 将来の結婚意思)。
未婚化進行の背景の一つには見合い結婚の減少が考えられる。見合い結婚に代わり、恋愛結婚が主流となることで(図表3 恋愛結婚・見合い結婚の構成率の推移)、多くの人が結婚相手を自ら探す必要に迫られるようになった。中でも、結婚に至るまでの「未婚→交際→結婚」のフローにおいて、各ステップの実現確率の調査によると、最初の「未婚→交際」のステップにおける実現確率は29.5%と「交際→結婚」よりも低く、ハードルが高いことが窺える(図表4 未婚→交際→結婚のフローにおける実現確率)。

図表1.男女別未婚率の推移
図表2.将来の結婚意思
図表3.恋愛結婚・見合い結婚の構成率の推移
図表4.未婚→交際→結婚のフローにおける実現確率

未婚化進行の背景にある未交際化
未婚者のうち、現在交際者がいない者の割合は足元では増加傾向にあり、未婚化だけでなく未交際化も進行していることが窺える(図表5 未婚者のうち、交際者がいない割合の推移)。
恋人がいない理由の回答としては、多くの人が「出会いがない」「異性との出会いの場所が分からない」ことを挙げており、恋人を自ら探すにあたっての最大の障壁であると言える(図表6 恋人がいない理由(複数回答))。
恋人を欲している未婚者のうち、恋人をつくるにあたって理想とする出会い方に関して、職場や学校・サークルを通じた日常生活の中での出会いを求める層が6割を超えている(図表7 最も理想とする出会い方)。その理由は必ずしも明確ではない(図表8 職縁を望む理由(複数回答))が、相手の性格について深く知る機会や、自分と同じ価値観の人と出会うことのできる機会が、職場や学校・サークル以外でも存在すれば、多様な出会い方が選択肢に含まれていくことになるだろう。

図表5.未婚者のうち、交際者がいない割合の推移
図表6.恋人がいない理由(複数回答)
図表7.最も理想とする出会い方
図表8.職縁を望む理由(複数回答)

拡大するマッチングアプリ市場
婚活サービスを通じて結婚した人の割合は増え続けており、上昇起因となっているのはマッチングアプリに代表されるネット系婚活サービスである(図表9 婚活サービスを通じて結婚した人の割合)。今後もオンラインでの婚活マッチングサービス市場は拡大するとみられ(図表10 国内のオンライン恋活・婚活マッチングサービス市場規模)、出会いのプラットフォームとしての魅力はさらに増すであろう。
マッチングアプリのメリットとしては、他の出会い方と比較して、出会うことが可能な人数が膨大であることに加え、金銭的コストが低いことが挙げられる(図表11 主な婚活サービスの特徴(一例))。また、ネット上でのやり取りが主であるため時間的制約が少なく、外出を自粛するコロナ禍でも婚活が可能であることも足元での利用者の増加に繋がったと考えられる。
恋人を作るにあたっての最大の障壁であった「出会いがない」ことやコロナ禍での制約をデジタル技術の活用でクリアしたという点で、マッチングアプリは画期的なサービスと言える。しかし、マッチングアプリの利用者が増える一方で、足元で婚姻率の低下傾向に歯止めをかけるまでには至っておらず(図表12 婚姻件数及び婚姻率(人口千対)の推移)、その活用には更なる工夫が必要であろう。

図表9.婚活サービスを通じて結婚した人の割合
図表10.国内のオンライン恋活・婚活マッチングサービス市場規模
図表11.主な婚活サービスの特徴(一例)
図表12.婚姻件数及び婚姻率(人口千対)の推移

マッチングアプリの課題
マッチングアプリの利用に際して、大量の出会いが提示されることで逆に相手を選べなくなってしまったり、一人にアプローチするためのコストが低減したことで特定の相手に拘るインセンティブが働きづらいなど(図表13 行動経済学から見たマッチングアプリの課題)、安価で大量の出会いが逆に非マッチングを起こしている可能性がある。
また、結婚相手の条件として重視する項目としては、男女ともに「人柄」が挙がるものの(図表14 結婚相手の条件として重視・考慮する項目)、マッチングアプリで相手を探す際には「経済力・職業・学歴・容姿」といったネット上の文字と画像で伝わる項目が主に着目される。そのため、限られた評価軸での魅力ある人物に人気が集中し、登録者が増えても全体でのマッチング率は低水準に留まる可能性が考えられる。
事業者側が人柄や趣味・嗜好を含んだ軸から出会える対象を意図的に絞ったり、対面で気軽に出会えるようなサポートが既に行われているが(図表15 マッチング率向上のための、事業者側の工夫例)、マッチング率向上のためには多様な評価軸を持って相手と向き合うことやその促進が利用者と事業者の双方に求められるであろう。

図表13.行動経済学から見たマッチングアプリの課題
図表14.結婚相手の条件として重視・考慮する項目
図表15.マッチング率向上のための、事業者側の工夫例

(出典)厚生労働省「人口動態統計」、国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」、総務省「平成27年国勢調査」、日経VALUE SEARCH「ブライダル関連サービス」、リクルートブライダル総研「少子化課題における解決優先度に関するレポート」「恋愛・結婚調査2019」「婚活実態調査2021」「自律的出会いの提言レポート2017」、マッチングエージェント「国内オンライン恋活・婚活マッチングサービスの市場調査」、ニッセイ基礎研究所「コロナ禍における少子化対策」

    (注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。