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令和4年度概算要求基準の概要

主計局総務課主計官 渡邉  和紀

1.令和4年度概算要求基準の基本的な考え方
日本の財政は、少子高齢化に伴う財政の悪化という構造的な課題に直面している。社会保障制度の受益と負担のアンバランスを正すため、着実に改革を進めていかなければならない状況にある。
一方で、経済面についても、人口減少・少子高齢化の進行、生産性と成長力の伸び悩みなど、数多くの課題への対応が求められている。また、依然として世界の経済社会に甚大な影響をもたらしている新型コロナウイルス感染症への対応も喫緊の課題である。
こういった状況を踏まえれば、これまでの改革努力を継続・強化し、経済成長と持続可能な財政を両立させることが急務である。
このため、令和4年度予算においては、「経済財政運営と改革の基本方針2021」(以下「基本方針2021」という。)及び「経済財政運営と改革の基本方針2018」で示された「新経済・財政再生計画」(以下単に「新経済・財政計画」という。)の枠組みの下、手を緩めることなく本格的な歳出改革に取り組んでいく方針である。このような基本的な考え方の下、「令和4年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について」(以下「令和4年度概算要求基準」という。)が本年7月7日に閣議了解されたところである。
令和4年度概算要求基準は、平成26年度から令和2年度までの7年間の仕組みと基本的に同様としつつ、「新経済・財政再生計画」の内容を踏まえたものとしており、具体的には、
1)予算の総額について、概算要求基準において決定するのではなく、予算編成過程において決定する仕組みとしている。
2)裁量的経費については、前年度予算よりも削減した額を要求することとしつつ、「基本方針2021」等を踏まえた諸課題に対応するため、「新たな成長推進枠」として別途要望を可能とする等、弾力的な仕組みとしている。
3)予算編成過程においては、歳出全般にわたり、これまでの取組を基調とした効率化を行い、施策の優先順位を洗い直し無駄を徹底して排除しつつ、予算の中身を大胆に重点化していくこととしている。
令和4年度概算要求基準のイメージは下図のとおりであり、その具体的内容については2.以降で説明する。

図表.令和4年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について

2.要求・要望について
(1)年金・医療等
年金・医療等に係る経費については、前年度当初予算額に、高齢化等に伴ういわゆる自然増(6,600億円)を加算した範囲内で要求することとしている。
年金・医療等に係る経費について、「新経済・財政再生計画 改革工程表」に沿って着実に改革を実行していくことを含め、合理化・効率化に最大限取り組み、「新経済・財政再生計画」において示された「社会保障関係費については、基盤強化期間においてその実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸びにおさめることを目指す方針とされていること、経済・物価動向等を踏まえ、その方針を継続する」との考え方を踏まえつつ、その結果を令和4年度予算に反映させることとしている。
(2)地方交付税交付金等
地方交付税交付金等については、「新経済・財政再生計画」との整合性に留意しつつ要求することとしている。
(3)義務的経費
義務的経費については、前年度当初予算額の範囲内で要求することとしている。その上で、聖域を設けることなく抜本的な見直しを行い、可能な限り歳出の抑制を図ることとしている。
なお、義務的経費を削減した場合には、同額を裁量的経費に振り替えて要求できる仕組みとしている。
(4)その他の経費
その他の経費(裁量的経費)については、前年度当初予算額の90%(「要望基礎額」)の範囲内で要求することとしている。
(5)新たな成長推進枠
令和4年度予算においては、グリーン、デジタル、地方活性化、子供・子育てへの予算の重点化を進めるため、「基本方針2021」及び「成長戦略実行計画・成長戦略フォローアップ」(令和3年6月18日閣議決定)等を踏まえた諸課題について、「新たな成長推進枠」を設け、前年度当初予算におけるその他の経費に相当する額と要望基礎額の差額に100分の300を乗じた額及び義務的経費が前年度当初予算額を下回る場合にあっては、当該差額に100分の300を乗じた額の合計額の範囲内で要望できる仕組みとしている。

3.予算編成過程における検討事項
令和4年度予算編成過程においては、施策・制度の抜本的見直しや各経費間の優先順位の厳しい選択を行うことにより、これまでの歳出改革の取組を基調とした効率化を行う。また、「新たな成長推進枠」において要望された経費については、「新経済・財政再生計画」における歳出改革努力を継続するとの方針を踏まえ措置する。
消費税率引上げとあわせ行う増(これまで定められていた社会保障の充実及び「新しい経済政策パッケージ」(平成29年12月8日閣議決定)で示された「教育負担の軽減・子育て層支援・介護人材の確保」をいう。)については、前年度当初予算の例に基づき要求するものとし、その対前年度からの増加の取扱いについては、予算編成過程で検討することとしている。
さらに、「基本方針2021」で示された「子供の貧困、児童虐待、障害、重大ないじめなど子供に関する様々な課題に総合的に対応するため、…こうした機能を有する行政組織を創設するため、早急に検討に着手する」及び「将来の子供たちに負担を先送りすることのないよう、応能負担や歳入改革を通じて十分に安定的な財源を確保しつつ、有効性や優先順位を踏まえ、速やかに必要な支援策を講じていく」との方針を踏まえた対応についても、予算編成過程において検討することとしている。

4.要求とりまとめ結果
上記の概算要求基準を踏まえ、期限である8月末日までに各省庁から提出された令和4年度一般会計概算要求・要望の総額は、約111.7兆円となり、8年連続で100兆円を超えることとなり、前年度当初予算額(新型コロナウイルス感染症対策予備費を除く)と比較すると約10.0兆円(9.9%)の増となった。また、「新たな成長推進枠」による要望については、約4.4兆円となった。
今後、提出された概算要求の内容を精査していく。令和4年度予算は、「新経済・財政再生計画」における「基盤強化期間」と同様の歳出改革努力を継続することとされており、経済・財政一体改革を着実に推進するために、計画に沿った歳出改革等に確実に取り組む必要がある。
以下には、「令和4年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について」の本文及び「令和4年度一般会計概算要求・要望額」を添付する。