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新米課長補佐の目から見る激動の国際情勢(第3回)―米中対立を軸とした国際秩序の再編―

前*1国際局地域協力課国際調整室 庄中  健太

貴重な紙面を頂戴し3か月間にわたり連載しているが、惜しむらくは今回が最終回。過去2回の寄稿で書いてきたように、2020事務年度の財務省国際調整室は、新型コロナウイルス感染症(第1回参照)や、米国大統領選挙(第2回参照)を始め、国際情勢を動かす様々な出来事に直面してきた。加えて、世界はデジタル技術の急速な発展等によっていよいよ複雑化している。
今回は、こうした事情を背景とした米国及び主要各国の政治情勢や、中国への対応を軸とした今後の国際秩序の行方について、米中両国において留学生活を経験した筆者の視点から概説していきたい*2。

1.米国バイデン政権の政策
米国では、2020年11月に実施された大統領選挙の結果、4年続いた共和党のトランプ政権が幕を閉じ、民主党のバイデン政権が発足した。バイデン大統領は、トランプ政権下で顕在化した米国社会の分断を修復すべく、党派を超えた米国の結束を訴え、新型コロナ対策、経済再建、人種、気候変動の4分野を政権の優先課題として設定した。同時に、「米国第一主義」(America First)を掲げる等、保護主義・孤立主義的な色彩が強かったトランプ政権の外交方針を転換し、国際協調を重んじる姿勢を示した。他方、対中政策についてはトランプ路線を概ね継承し、引き続き厳しい姿勢を見せている。

(1)多国間主義
多国間主義を重視するバイデン大統領は、就任初日の2021年1月20日から、パリ協定への復帰や世界保健機関(WHO)からの脱退撤回を決める大統領令に署名し、米国を国際的枠組へ復帰させるとともに、トランプ政権における単独行動主義からの政策転換を明確に打ち出した*3。バイデン大統領は、外交演説において「米国は各国との同盟関係を修復し、再び世界に関与していく」と表明し、就任から半年以上が経過した現在も、G7や北大西洋条約機構(NATO)といった価値観を共有する国々との連携を強化し、日本や豪州等の同盟国との協調を重視する外交スタンスを継続している*4。

(2)対中強硬姿勢
他方、中国については、「戦略的競争相手」と位置付けたトランプ政権の対中強硬路線を踏襲している。ブリンケン国務長官は中国を「国際システムに深刻な挑戦をする唯一の国」と見なし、対中強硬姿勢を堅持するメッセージを発した*5。バイデン大統領は米中対立を「民主主義と専制主義の対立」と位置付け、同盟国と結束して対応する姿勢を示しており、就任直後の3月には、「対中包囲網」の構築を狙い、日米豪印戦略対話(QUAD)*6のバーチャル首脳会談を開催した。また、人事面では米国家安全保障会議(NSC)でアジア政策を統括するポストとして「インド太平洋調整官」を新設し、対中強硬派のキャンベル元国務次官補を起用したことも衆目を集めた。
バイデン政権の具体的な対中政策を見ると、まず、知的財産権の侵害等の中国の不公正な貿易慣行を背景に、トランプ政権時に発動された対中制裁関税を継続している。また、安全保障上の懸念からファーウェイ等の中国製通信機器を排除する方針についても、トランプ政権時に禁じた政府調達や補助金を受け取る通信会社との取引のみならず、米国内市場からの徹底排除を決定した。台湾については、G7サミットや日米首脳会談において、台湾海峡の平和と安定を強調し、通商面では米台貿易協議をオバマ政権以来約5年ぶりに再開する等、米台関係の強化を図ることで中国を牽制した。さらに、人権問題について、香港の選挙制度変更やチベット・新疆ウイグル自治区に対する人権侵害に対して懸念を表明している*9。また、新型コロナウイルスの発生源について、武漢の研究施設から流出したとする説に信憑性があるとして、WHO総会において再調査を呼びかける*10等、対中圧力を強めている。
ただし、先端技術や人権等の分野で対中強硬姿勢を維持する一方、バイデン政権が重視する気候変動分野*11については、習近平国家主席を気候変動サミット*12に招待したり、ケリー特使*13が訪中し米中両国の協力を明記した共同声明を発表する等、中国との妥協や協力関係を模索する姿勢も見られる。

コラム1:米国の外交政策の変遷
2017年から始まった米国トランプ政権は、内政においては大型減税*7や大規模インフラ投資等を実施し国内の雇用創出を図る一方、外政においては「米国第一主義」の理念の下、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉、パリ協定、イラン核合意といった国際的な枠組みから次々と離脱した。また、世界貿易機関(WTO)の上級委員の委員選任を拒否し、さらにはWHOからの脱退も宣言した。ただし、こうした米国の孤立主義的外交方針は、歴史を振り返れば殊更珍しいものではない。
かつて米国は「モンロー宣言」(1823年)によって欧州諸国との相互不干渉を打ち出していた。また、ウィルソン大統領の唱えた国際連盟についても、議会に否決され*8、参加が叶わなかった。戦間期には、戦争に対する米国の関与を回避するため、漸次にわたり「中立法」を制定した。
第二次世界大戦後は国際連合の創設を主導し、ソ連に対抗するために日本や欧州と協力する国際協調主義に転換するが、冷戦終結後に唯一の超大国となった後は、再び孤立主義的外交へと傾斜していった。特に、G・W・ブッシュ政権は、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を拒否し、京都議定書から離脱する等、多国間の枠組みを軽視した。その後国際協調路線を打ち出したオバマ政権ですら、シリア内戦への介入を拒否し、米軍予算を縮小させ、沖縄の海兵隊を一部撤退させる等の政策は、単独主義的との指摘もある。

2.国際情勢の行方と対中姿勢

(1)英国の「脱欧入亜」
英国では2000年代以降に経済回復が進むと、EU域内、特に東欧諸国からの移民流入の増加*14やEUへの拠出金負担等を巡り、EUに対する国民の不満が高まっていた。こうした不満を背景に*15、2016年6月、英国のEU離脱(ブレグジット)の是非を問う国民投票が行われた。その結果、離脱派が過半数を獲得したため、英国は1973年から半世紀近く加盟していたEU*16を離脱する運びとなった。国民投票の結果を受け、メイ首相、ジョンソン首相の下でEU離脱交渉が行われ、2020年1月末に英国はEUを離脱し、その後に設けられた移行期間*17についても同年12月31日に終了したことで、EU単一市場及び関税同盟からの完全離脱を果たした。ブレグジットが与えた影響として、まず、年明け直後には通関手続の復活による物流の混乱が見られた。また、ブレグジットに伴い英EU間の金融規制の同等性が失われることで、英国とEU市場との直接的な接点がなくなり、シティに拠点を置く金融機関が流出する等、国際金融センターとしてのロンドンの地位が相対的に低下することが危惧された。ただし、現在のところ大きな影響は生じておらず、ロンドンはその優位性を引き続き維持している。
次に英中関係について見ると、2015年のキャメロン政権時には、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加をG7で最初に表明する等、英中は蜜月関係にあった。しかしながら、2020年初頭より中国の新型コロナへの初動対応を巡り対中懐疑論が高まっていたところ、同年6月末に中国で「香港国家安全維持法」が施行されたことは、英国の対中認識を覆す決定打となった。これに対し英国は、「一国二制度」を保障し、香港の高度自治を50年間保障するとした「英中共同声明」(1984年)に反するとして強く反発した*18。こうした中、2020年7月、英国は国家安全保障会議において、自国企業によるファーウェイの5G向け設備の購入を禁止し、2027年までに5G通信網からファーウェイを排除する方針を発表した。ジョンソン政権は、米国やその他の民主主義国家と連携し、中国に対して引き続き対抗する姿勢を維持するものと見られる。
ブレグジットの動きと並行して、英国は近年インド太平洋地域に軸足をシフトしつつある。2016年、メイ首相は「グローバル・ブリテン」を標榜したが、価値観を共有する国々と連携し、インド太平洋地域における関与を深めようとする英国の狙いが見て取れる。その後、英国はジョンソン政権の下、2020年10月には日英包括的経済連携協定(EPA)を締結し、また2021年に入ると発足メンバー以外として初めてCPTPP*19への加入を正式に申請した。さらに、中国への対抗を念頭にG7を「民主主義10か国」(D10)に拡大する構想を掲げており、2021年のG7サミットにもインド・豪州・韓国を招待した。安全保障面においても、ファイブ・アイズ*20との連携を含め機密情報の共有拡大を日本に呼びかけ、また、最新鋭空母クイーン・エリザベスを含む空母打撃群を東アジアに派遣することを決めた。今後QUADや「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP:Free and Open Indo-Pacific)といった枠組み・戦略等に対しても何らかのアプローチがあるのか、歴史的転換点を迎えた英国のインド太平洋戦略が注目される。

(2)欧州各国の対中姿勢
欧中関係を見ると、貿易額は順調に増加し、中国からEUに対する直接投資残高も右肩上がりであった。2020年の統計*21を見ると、EU加盟国の輸入相手1位は中国であり、全体の輸入額の2割強を占めている。また、輸出についても米英に次ぐ第3位の輸出先であり、全体の輸出額の1割を占めている。こうした経済環境を受けて、欧中は2000年代から「包括的戦略パートナーシップ」(Comprehensive Strategic Partnership)と称する良好な関係を築いていたが、中国の「一帯一路」構想(The Belt and Road Initiative)への不信感、国営企業優遇の産業政策や、5G技術分野等における影響力拡大を背景に、EUは対中政策の見直しを図り、2019年の欧州首脳会議では「異なる統治モデルを推進する体制上のライバル(systemic rival)」と位置付けるに至った*28。さらに、2020年半ば以降、中国が新型コロナの発生源解明に応じないことへの不信感に加え、香港の統制強化や新疆ウイグル自治区における人権侵害、さらには南シナ海での一方的な現状変更の試み、法の支配の軽視等への懸念もあり、欧州各国の中国に対する猜疑心は高まっていった。こうした中、2021年3月、EUはウイグル族への人権侵害を理由に、1989年の天安門事件以来約30年ぶりに対中制裁を発動した*29。これに対し中国は即座に報復制裁を科す法律を制定したが、EUは返す刀で中国との包括的投資協定(CAI)の批准プロセスを凍結し、人権重視の強硬姿勢を示した。このように、近年、欧州の中国を見る目は厳しいものへと変化している。以下、欧州主要国の対中姿勢を概観する(英国については上述)。
フランスは、分野に応じては中国と協調関係を築いてきた。例えば、優先課題とする気候変動問題に関しては、米国のパリ協定離脱に危機感を強めており、最大の温室効果ガス排出国である中国を国際的枠組に巻き込むべく、国際自然保護連合(IUCN)やCOP26の場を用いて協力関係を構築する姿勢を見せている。他方、途上国開発に関しては、パリクラブを主催する立場から、中国による債務の問題について野放図にせず、然るべき圧力をかけている。また、2020年以降、新型コロナや人権問題への態度等から中国への警戒を強め、ファーウェイを5G通信網から排除することを決める等、米国や英国等と足並みを揃えている。
中国との経済的結びつきが強いドイツは、2005年から続くメルケル政権の間、通商関係を発展させ、また「一帯一路」構想がもたらす戦略的な利益に期待を寄せる等、中国と緊密な関係を保ってきた。しかし、2016年以降中国による基幹産業の買収*30が相次ぎ、国内において安全保障上の危機感が共有されると、2017年には外国企業による投資規制を強化し、当局の審査権限を拡充する等、非互恵的関係にあった中国に対抗する姿勢を示し始めた。また、2020年9月には「インド太平洋指針」を閣議決定し、中国のインド太平洋地域への関与について警戒するとともに、日豪といった自由で民主的な価値観を共有する国との関係強化を打ち出した。他方、対中強硬姿勢を強める米・英・仏といった国と比較すると、ファーウェイ排除には及び腰である等、ドイツの対中スタンスは穏健的に見える。
イタリアは、コンテ政権時の2019年3月、G7参加国として初めて中国の「一帯一路」構想に参画する覚書に署名する等、中国と緊密な関係を築くことで、中国によるインフラ投資を呼び込み、国内の経済成長を促すことを企図していた。新型コロナの感染が欧州で真っ先に拡大したイタリアは、マスク等の医療物資支援に消極的であったEUや欧州諸国の対応に不満を抱き、対照的に、即座に手厚い支援を提供した中国の対応を歓迎した。ただし、5G分野や香港問題についてはEU諸国と足並みを揃える等、中国と一定の距離を置いている。また、2021年2月にドラギ政権に移行すると、中国を「専制国家」であり「民主主義国家と同じ価値観を共有していない」として、「一帯一路」への参画を見直す可能性にも言及するなど、対中認識の転換が図られつつある。
中東欧諸国における動きは、中国の「一帯一路」構想における欧州の玄関口という意味で、地政学的に大きな意味を持つ。2012年、中東欧16か国*31は中国との間に「16+1」*32とする枠組みを作り、中国からのインフラ投資を含め、経済・金融面での協力について年1度の首脳会合を行い、中国との関係を強化していた。こうした非EU加盟国も含む中東欧諸国の動向は、東西に格差を抱えるEUに楔を打ち込み、結束を揺るがす動き(トロイの木馬戦術)として警戒されていた。

コラム2:欧州統合への道
欧州統合の理念は、第一次世界大戦後に提唱された「汎欧州主義」(Pan-Europeanism)に端を発する。この理念は日本人の母を持つ日系オーストリア人リヒャルト・クーデンホーフ=カレルギー(和名:青山栄次郎)によって提唱され、第二次世界大戦後に具体化された。フランスのシューマン外相*22は、軍事産業の基盤資源であり独仏紛争の火種*23である石炭と鉄鋼の共同管理を西ドイツ(アデナウアー首相)に提案し、1952年、仏・西独・伊・ベネルクス3国で欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)が発足した。その後、同6か国(インナー6)で2つのローマ条約が締結され、1958年に、共通関税政策と資本・労働力移動の自由化等を取り入れた欧州経済共同体(EEC)及び原子力の共同開発・管理のための欧州原子力共同体(EAEC)が設立され、域内での市場統合が目指された。1967年にはECSC、EEC、EAECの運営機関が統合され、欧州共同体(EC)が発足した。英国はEECに対抗し、1960年、EEC非加盟の7か国*24で欧州自由貿易連合(EFTA)を設立したが、1973年にECに加盟することとなり、EFTAを脱退した*25。冷戦が終結し東西ドイツが統一されると、1992年、EC加盟12か国*26はマーストリヒト条約を締結し、通貨統合(単一通貨ユーロ*27の創設)と共通外交・安全保障政策(CFSP)の導入を規定し、ECを欧州の政治統合を目指す欧州連合(EU)へと発展させることとなった。EUは「超国家性」(Supranationalism)を有し、加盟国から一部主権を移譲され、独自の法令や司法審査によって私人を拘束することが可能である。また、独自財源を持ち、予算編成、課税、共通債発行を通じた財政運営を行っている。さらに、ユーロ圏においては金融政策についても通貨発行権を持つ欧州中央銀行(ECB)が担っている。
2012年、「欧州の平和と調和、民主主義と人権の向上に60年以上にわたって貢献した」として、EUにノーベル平和賞が授与された。ただし、EUは大規模な共同体ゆえ、国家・民族・言語・宗教等の違いはもとより、独仏といった経済大国からクロアチアやブルガリアのような旧共産圏の小国、またギリシャやイタリアのような膨大な債務残高を抱える国まで、加盟国間の経済力・財政力にも大きな格差が存在し、移民問題や債務問題等、引き続き複雑な問題が燻り続けている。

写真:クーデンホーフ=カレルギーが印刷された切手

(3)豪州の対中姿勢
豪州は、中国のWTO加盟(2001年)を端緒に資源や農産物の輸出先を中国に大きく依存する経済構造となっており、2015年には豪中FTAを締結し、AIIBにも原加盟国として参加する等、中国とは経済面において蜜月関係にあった*33。しかし、2016年以降、中国が南シナ海における影響力を強めると、豪州は中国共産党による内政干渉への懸念等を背景に中国を念頭に置いた法整備を進め、2018年には世界に先立って5G通信において政府調達からファーウェイを排除したことで、豪中関係は悪化の一途を辿っていった。そうした中、2020年4月、豪州(モリソン首相)が新型コロナの発生源について国際的検証の必要性を提起したことに中国が猛反発し、豪中間の対立が先鋭化した。これを受けて、中国は即座に豪州産牛肉の輸入一部停止、豪州産大麦へ反ダンピング関税措置等を発動し、対抗した*37。豪州はこれら中国による関税措置を不当としてWTOに提訴したが、中国も対抗して豪州をWTO提訴する報復措置*38を取っており、豪中の応酬は経済戦争の様相を呈している。
また、豪州は2021年より、安全保障上の観点から基幹インフラ事業における中国の影響力を排除すべく、新たな外国投資審査制度や、州や大学等が外国政府との間に締結した協定を政府が見直すことを可能とする「外国関係法」を導入した。実際、これに基づき、ビクトリア州政府と中国が締結した「一帯一路」構想に関する契約を撤回したり、北部準州政府が中国企業と結んだダーウィン港の99年間の賃借契約についても、利用制限を含め見直しを検討するとした。これに対し、中国は豪州との経済対話の無期限停止を決定する等、豪中関係は過去最悪と言われるまでに冷え込んでいる。
こうした豪中関係に鑑み、豪州にとっては対中依存度を低下させることが喫緊の課題であり、貿易投資やサプライチェーンを多様化するためにも、日本との関係を含むインド太平洋戦略がより重みを増してくるものと考えられる。

コラム3:欧州ポピュリズムの趨勢
英国によるブレグジットは、政治・経済の両面において欧州の統合を進め、拡大を続けてきたEUの理念に対し、三行半を突き付けた象徴的な出来事であった。しかし、反EUの機運は英国に限らず、欧州各国において顕現していた。2010年のギリシャ債務問題端を発する欧州債務危機では、危機に陥った債務国はEUから厳しい緊縮を求められた。また、2015年にはシリア内戦の影響で欧州難民危機が発生し、EUによって各国に難民の受け入れ数が割り当てられたが、自らの生活が脅かされる危機感を抱いた人々によって各地で移民排斥運動が起きた。このように、国家の主権を超越するEUや、それらを是認する既成のリベラル政治に対する大衆の不満を背景に、エリート層への批判や、反EU・反移民といった排他的ナショナリズムを主張するポピュリズムと呼ばれる動きが欧州各地で跋扈した*34。例えば、フランスでは2017年、極右政党である「国民戦線」のルペン党首が大統領選挙で決選投票まで駒を進め*35、2019年欧州議会選挙では「国民連合」(「国民戦線」から改称)がフランスの第1党となった。イタリアではEUの財政規律に反対する「五つ星運動」が2018年の総選挙で第1党となり、また、極右政党「同盟」は2019年の欧州議会選挙でイタリアの第1党となっている。なお、両党は2021年に発足したドラギ内閣において連立政権を組織している。さらに、EUのリベラリズムを否定する、オルバン首相率いるハンガリーやカチンスキ党首(与党「PiS」)率いるポーランドが、新型コロナからの復興のための欧州復興基金の合意に関し、「法の支配」に関する条件で最後までEUとの対決姿勢を崩さなかったことは記憶に新しい。
とまれ、今後各国においてこうした動きが強まれば、EUの安定は盤石とは言えない。2021年9月にはドイツで連邦議会選挙が予定され、欧州のアンカーであったメルケル首相が引退する見込みである。また、フランスでは2022年に大統領選挙を控えるが、現在、極右のルペン候補が現職のマクロン大統領と支持率で拮抗している。英国では、2021年5月に行われたスコットランド議会選挙において独立派が過半数の議席を獲得し、スコットランドの独立機運が再び高まっている*36。中国の影響も含め様々な楔が点在する欧州において、分断と統合の動きがどのように進展するか、今後の趨勢が注目される。

(4)日本の対中姿勢
日本にとっても、中国は最大の貿易相手国であり、地理的には隣国である。日中関係は、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件(2010年)や、日本による尖閣諸島国有化(2012年)等を受けて、1972年の国交正常化以降最悪と言われる状況にまで悪化した*39。ただ、その後の安倍政権が長期化すると、2017年以降は関係改善の軌道に乗り、2020年4月には習主席の国賓としての訪日が予定*40される等、日中関係は「新時代」へと突入しつつあった。しかし、新疆ウイグル自治区等に対する人権侵害、「香港国家安全維持法」の制定、南シナ海における威嚇的な行動、新型コロナウイルスの発生源を巡る調査への対応等により中国に対する世界の不信感が高まると、日本の世論も中国に対して厳しい目を向けるようになった。
さらに、米国がバイデン政権に移行し、米国の対中強硬姿勢がより鮮明になったことで、同盟国である日本も、安保・経済両面において米国に歩調を合わせた厳しい態度で中国に対峙することが期待される。バイデン大統領就任直後の2021年3月には、東京にて日米安全保障協議委員会(2+2)が開催され、ブリンケン国務長官、オースティン国防長官が訪日し、中国を念頭に日米同盟の結束を内外に示した。
一方で、中国は「地域的な包括的経済連携」(RCEP)*41に参加していることに加え、米国が抜けたCPTPPにも加入意欲を示しており、経済面では引き続き日中の強固な結びつきが期待される。日本国内においても、中国を過度に刺激し日中関係を悪化させることは避けたいとの思惑も引き続き見られる。

コラム4:中国のエコノミック・ステイトクラフト
「エコノミック・ステイトクラフト」(ES:Economic Statecraft)は、かつて日米貿易摩擦を巡り、米国が「通商法301条」を用いて日本に圧力をかけたように、「経済ツールを活用して地政学的国益を追求する手段」*42である。日本ではまだ馴染みのない言葉だが、近年では中国による経済外交にその特徴が散見され、米豪やEUを始めとする主要国においても、サイバーセキュリティ対策やサプライチェーンの脱中国化といった対応が進められている。
中国の経済外交に対し、各国の反応は区々である。米国はトランプ政権時、中国との関税合戦で徹底抗戦し、安全保障上の懸念からファーウェイ等の中国製先端技術を締め上げた。豪州も、石炭やワイン等で制裁関税を科されるも、中国依存経済からの脱却を図りつつ、対中強硬姿勢を継続しているのは上述の通りである。日本に対しても、2010年の尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件の直後、中国はレアアースの輸出規制を行ったが、日本はこれを教訓にレアアースの省資源化や代替化を推し進めた。
他方、中国のESに屈する国も見られる。2010年、ノルウェーのノーベル委員会が中国の民主活動家である劉暁波氏にノーベル平和賞を授与すると、中国政府は内政干渉として強く反発し、通関規制によってノルウェー産サーモンの輸入を激減させた。事実上の制裁を科されたノルウェー政府は、以後中国の人権問題については口を閉ざし、叩頭よろしく最大限の配慮を示すようになった。また、中国は近年途上国の開発支援に積極的に乗り出しているが、「債務の罠」によって返済が持続不可能となった国が戦略拠点として重要なインフラ権益を中国に譲渡し、周辺地域の安全保障が脅かされる事態も起こっている*43。
このように、中国に経済安全保障を脅かされ国際秩序のヘゲモニーを掌握される事態を警戒し、マルチの枠組みにおいても、価値観を共有する国々との連携を強化することに加え、投資の透明性や債務の持続可能性を確認する「質の高いインフラ投資に関するG20原則」*44や債務返済の「共通枠組」*45の合意等、中国を巻き込んだ取組が進められている。

3.米中による覇権争い

(1)米中対立の経緯
1972年のニクソン訪中以降、歴代米国政権は中国に対し「関与」(engagement)政策を取ってきた。これは、中国が経済発展すれば、次第に政治的にも自由化が進み民主主義が浸透するという前提に立脚しており、自由貿易や反テロ等の観点から米中の協力関係を構築することで、米主導の国際秩序の下、中国が変革することが期待されていた。
中国は2001年のWTO加盟を契機に市場開放を推し進めた結果、豊富な労働力も相まって「世界の工場」としての地位を確立した。その後、世界金融危機に際しても世界経済を牽引し、2010年には日本を抜き世界第2位の経済大国になる等、大国としての自信を強め、国際社会での存在感を増していった。しかしながら、米国の期待するような政治の自由化は実現せず、それどころか、共産党支配による社会統制を強め、憲法改正によって国家主席の任期(2期10年)を撤廃する等、自由化・民主化に逆行する動きを重ねた。加えて、経済面・軍事面におけるルール無視の振る舞い*46によって安全保障環境を脅かし、影響力を拡大させた。
これらの出来事は米国を失望させ、2018年以降、米国は対中「関与」政策を否定し、中国に対抗する方向へと舵を切った。実際、発足当初は中国との対話姿勢を見せていたトランプ政権が、「関与」による中国の取り込みを断念し、厳しい非難や強硬措置を実行し始めたのもこの頃からである。通商分野では、貿易赤字解消のため、2018年7月から4度に及ぶ対中制裁関税措置を立て続けに実施し、ほぼ全ての中国製品に対する関税を引き上げた。また、この頃から中国の持つ人工知能(AI)、ビッグデータ、5Gといったハイテク技術やサイバー面での対応も進展した*49。さらに、「航行の自由」(FON:Freedom of Navigation)作戦の強化等、台湾にも接近した。バイデン政権となっても「関与」を放棄した対中強硬姿勢は変わらず、むしろ人権問題の追及や多国間主義による国際協調により、中国への対抗を一層強めている。

コラム5:デジタル人民元
2008年、サトシ・ナカモトと名乗る人物が発明した仮想通貨(暗号資産)「ビットコイン」は、国家や中央銀行から干渉を受けない自由な送金を可能とするデジタル通貨として世界に衝撃を与えた。ただし、ビットコインには価値の裏付けがなく、価格が不安定であるという難点があった。その後、2019年にFacebook社がステーブルコイン「リブラ」を発表した。リブラは複数の法定通貨バスケットに連動させ、100%の裏付け資産を持つことで、価値の安定を企図した。しかし、30億人近いユーザーを有し時価総額1兆ドルを超えるFacebook社が、国家から独立したデジタル通貨を発行するという野心的な計画は、通貨主権の侵害を警戒*47する各国政府や中央銀行によって骨抜きにされた*48。
こうした民間主体のデジタル通貨に対し、2020年以降、中央銀行によるデジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)発行の検討が急速に進展した。CBDCは法定通貨の一形態であり、価値が安定している点が特徴である、中国では深圳や蘇州で「デジタル人民元」の大規模な社会実験が行われ、2022年北京冬季五輪でも国外からの来場者を巻き込んだ実証実験を行う予定となっている。
中国はデジタル人民元による人民元の国際化を狙うが、仮にデジタル人民元が「一帯一路」参加国等によってクロスボーダー決済にも用いられることになった場合、取引データが中国当局によって管理されプライバシー侵害や監視等に悪用されるリスクや、米ドル覇権の切り崩しにより米ドルによる経済制裁が無力化される恐れ、さらに自国通貨への信認が低い国の通貨がデジタル人民元に取って代わられる可能性等が考えられる。こうした懸念を念頭に、主要国においてもCBDC開発に関する検討が進められているほか、2020年10月や2021年6月のG7財務大臣・中央銀行総裁声明においても、CBDCに関して、透明性・法の支配・健全なガバナンスを確保する必要性に言及している。

(2)「中国の夢」
2021年7月、中国共産党は結党100周年を迎えた。1949年に建国された中華人民共和国は、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、「三つの代表」*50及び科学的発展観を全党・全人民の行動指針とし、中国共産党が領導するイデオロギー国家である。
中国は鄧小平体制の下、1978年から「改革開放」を推し進め、計画経済から市場経済体制へ移行した。しかし、経済の自由化を達成し、世界第2位の経済大国となった後も、共産党による一党独裁の政治体制は一切自由化されることはなかった。中国は現在もマルクス・レーニン主義の下、経済成長を実現し、技術革新で世界をリードし、国際社会で影響力を発揮しており、多くの国民は安定した経済成長と生活水準向上をもたらしてきた現状の政治体制に満足している。中国共産党の統治理念であり歴史的使命は「中華民族の偉大なる復興」であり、「中国の夢」を実現することである*51。中国共産党による社会統制は、こうした国家のイデオロギー的な正統性と密接不可分であるため、リベラルデモクラシーの立場から、政治的自由化と経済成長を結びつけて説明し、中国に価値観転換を迫る試みは、到底受け入れられるものではない。
さらに、2017年10月に開催された中国共産党第19回代表大会(第19回党大会)では、これらの理念を継承・発展させる形で「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」が中国共産党規約に盛り込まれ、権威主義的体制は一層強化された。第19回党大会では、建国100年(2049年)を念頭に「総合国力と国際影響力においてリーダー国家となる」として、事実上、米国に比肩する強国を目指すことが表明された*52。一方で、習主席は中国の現状を依然として「世界最大の発展途上国」と規定し、発展途上国の立場から、他の途上国に寄り添い連携することで、米国を始めとする先進国と対峙していくという従来の立場を堅持した。なお、「核心的利益」とする台湾については、一国二制度の適用を主張した他、2019年には武力行使の可能性にも言及し、米国による台湾介入を牽制している。
こうした独自の理念の下、中国は近年国家の統制を一層強めるとともに、対外的には「一帯一路」構想を通じて途上国支援を進めたり、新型コロナ危機に際しては「マスク外交」を展開する等、独自の国際貢献路線を歩み、途上国への影響力を強めていった。また、習主席の標榜する「社会主義現代化強国」の2049年までの実現に向けて、米国の覇権や既存のリベラル国際秩序に挑戦する動きが見られるようになっていった。

写真:5200機のドローンによる中国共産党100周年記念ショー(騰訊視頻)

(3)日本の立ち位置
このように米中が激しく対立する状況を踏まえ、日本は如何なる立ち振る舞いが求められるのか。日本にとって、米国は自由、民主主義、人権の尊重といった基本的価値観を共有するのみならず、外交・安全保障を大きく依存する同盟国である。対して中国は、米国が主導する現状の国際秩序に満足せず、2021年7月には「国際秩序の擁護者」として「歴史の正しい側に立ち、人類進歩の側に立つ」と宣言している*53。
2021年4月の日米首脳会談は、バイデン大統領にとって、対面で行われた最初の首脳会談であり、象徴的な意味合いを持つ。共同声明では、中国を念頭に、台湾海峡の平和と安定の重要性や半導体を含む機微なサプライチェーン構築での連携が確認された。
目下の国際情勢を鳥瞰すると、今後、米中を軸とした国際秩序の再編が行われていくと考えられる。中国は2028年にはGDPで米国を上回り世界1位の経済大国になると見られている*54。ただし、1人当たりGDPでは先進国の水準には遠く及ばず、格差や不均衡は依然解消しそうにない。加えて、今後少子高齢化が急速に進む。中国は2021年にも65歳以上の人口が14%を上回り「高齢化社会」に突入し、さらに2050年までに人口の約3分の1(4億8700万人)が高齢者になると予測されている*55。他方、生産年齢人口は減少を続け、「3人っ子政策」を推進するも出生率*56の改善は難しい状況である。米国も出生率は低下傾向*57ではあるものの、移民の流入等によって人口は引き続き増加することが見込まれており、人口・経済力ともにアドバンテージを保ち続けると見られる*58。こうした米中のパワーバランスの趨勢にも留意しつつ、米国主導の既存の秩序か、中国主導の新たな秩序か、各国は旗幟を鮮明にしながら、あるいはバランスを取りながら、外交・安保・経済政策等を選択する。
中国に対抗するための外交構想FOIP、そしてFOIPを実現するための枠組みQUADは、いずれも日本の安倍首相(当時)が提唱し、米豪印といったインド太平洋地域の価値観を共有する国々を巻き込んできただけに、日本には自由で開かれた国際秩序の実現のための更なる貢献やリーダーシップが求められる。そのためにも、安全保障に関する受け身の姿勢を脱し、当事者としてのビジョンを描き、米中の狭間で自律的に行動できるか、日本の覚悟が問われる。

筆者略歴
庄中  健太(しょうなか  けんた)
財務省大臣官房秘書課 船橋利実財務大臣政務官秘書官
2013年財務省入省。主計局、高松国税局、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局を経て、北京大学、イェール大学に留学。2020年7月より国際局国際調整室にて欧米等先進国の政治・経済情勢の分析、財政当局の二国間協議等を担当。2021年7月の人事異動に伴い大臣政務官秘書官を拝命。

*1)激動の国際情勢に思いを馳せつつ、この度の人事異動で新米課長補佐は国際局を離任することとなった。国際局も課長補佐ポストも初めての経験であり、右も左も分からぬ若輩者に関係各位から温かいご指導を多数賜ったことを、この場を借りて改めて感謝申し上げる。
*2)本寄稿における意見は筆者個人の見解であり、所属する組織を代表するものではない。なお、本稿の記述内容は原則として2021年7月10日時点の状況に依拠する。
*3)この他、新型コロナ対策、環境保護、イスラム圏諸国からの入国制限措置の撤廃等を決める多数の大統領令に署名した。
*4)財務省関連では、イエレン前FRB議長が財務長官として指名され、国際金融分野についても多国間主義が志向された。例えば、国際課税分野については、経済協力開発機構(OECD)やG7・G20といったマルチの枠組みにおいて、法人税の最低税率を15%以上とする国際課税ルールを提案し、130の国と地域で大枠合意を取り付けることに成功した。また、いわゆるGAFAMといったグローバルに活動する巨大IT企業に対して新たな税負担を求めるデジタル課税についても、強硬な反対姿勢を示していたトランプ政権の方針を転換し、導入に向けた国際的合意の実現に貢献した。
*5)ブリンケン国務長官は米中関係について「必要に応じ競争的(competitive where it should be)、可能な場合には協力的(collaborative where it can be)、そうしなければならない時には敵対的(adversarial where it must be)」と発言し、中国に対して「adversarial」と踏み込んだ表現をしている。
*6)日米豪印4か国による安全保障等で協力する戦略対話の枠組み。
*7)法人税率を35%から21%へ、また、個人所得税の最高税率を39.6%から37%へ引き下げた。
*8)国際連盟の設立が含まれたベルサイユ条約の承認について、賛成49、反対35で否決された。(条約の承認には、上院の3分の2以上(67票)の賛成が必要。)
*9)例えば、国務省が発表した年次報告書において、新疆ウイグル自治区での中国による人権侵害を「大量虐殺」(genocide)と明記した。(出典:U.S. Department of State, ”2021 Report to Congress Pursuant to Section 5 of the Elie Wiesel Genocide and Atrocities Prevention Act of 2018 (P.L. 115-441),” July 12)
*10)WHOは2021年3月、新型コロナの起源に関して「研究所から流出した可能性は極めて低い」と結論付ける報告書を公表したが、これに対して日米英等14か国は、調査が客観性を欠き不十分であることを懸念する共同声明を発した。
*11)トランプ政権時には気候変動の科学的根拠が否定され、オバマ政権時に導入された各種環境規制が緩和・撤廃されていった。翻ってバイデン大統領は、気候変動対策を外交・安全保障政策の中心と位置付け、政権の優先課題として取り組むこととしている。具体的な政策を見ると、上述の通りパリ協定に復帰した他、2035年までに電力部門での二酸化炭素排出をゼロとし、さらに2050年までに温室効果ガス排出をネットゼロとする目標を打ち出している。
*12)バイデン大統領が主催。40の国・地域の首脳らを招待し、2021年4月22日(地球の日)にオンラインで開催した。成果として、主要国から気候変動対策への強力なコミットを引き出すとともに、米国の多国間枠組への復帰を印象付けた。
*13)バイデン大統領は、気候変動担当大統領特使を新設し、ケリー元国務長官を任命した。
*14)2004年以降EUが東欧諸国にまで拡大(第5次拡大)したことを背景に、EU域内から英国への移民は増加を続け、国民投票が行われた2016年には20万人近くにまで達していた。(出典:Office for National Statistics)
*15)キャメロン首相はEU離脱反対派であり、国民投票の実施を公約とした背景には、否決によってEUに対する不満を抱える保守党内を結束させる狙いがあったとされる。
*16)1973年の加盟時は前身のEC(欧州共同体)。その後、1992年にマーストリヒト条約(欧州連合条約)が調印されたことで、ECを基盤としてEU(欧州連合)が発足した。(コラム2参照)
*17)ブレグジットによる混乱を避けるため、EU離脱後に移行期間が設けられた。その間、英国は様々な面でEU加盟国と同等の扱いを受けることとなっていたが、移行期間が終了するまでに通商協定を締結し通関手続きを整理する等、英EU間の将来関係を交渉し合意する必要があった。
*18)2020年7月、英国は香港市民(BNO旅券保持者)の英国永住権の申請や市民権獲得を許可するとともに、中国との犯罪人引渡条約を停止した。
*19)2017年1月に米国がTPPからの離脱を表明したため、米国以外の11か国で新たに「包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定」(CPTPP:Comprehensive and Progressive Trans-Pacific Partnership)を合意し、2018年12月に発効した。
*20)米国、英国、豪州、カナダ、ニュージーランドのアングロサクソン5か国による情報共有の枠組み
*21)Eurostat“China among the EU's main partners for trade in goods, 2020”(25, March 2021)
*22)ロレーヌ地方出身のドイツ系フランス人。ロレーヌ地方は第一次世界大戦以前はドイツ領であり、ベルサイユ条約によってフランスに割譲された。
*23)独仏国境沿いの炭鉱地帯であるアルザス、ロレーヌ、ルール、ザール地方の領有権を巡り、独仏間で戦争が繰り返されてきた。
*24)英国の他、オーストリア、スイス、ポルトガル、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーが加盟。
*25)英国、オーストリア、ポルトガル、スウェーデン、デンマーク、フィンランドはECの加盟に伴いEFTAを脱退している。なお、現在のEFTA加盟国はスイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインであり、いずれもEU非加盟国。
*26)ECSC原加盟国(フランス、西ドイツ、イタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)に加え、1973年に英国、デンマーク、アイルランド(第1次拡大)、1981年にギリシャ(第2次拡大)、1986年にスペイン、ポルトガル(第3次拡大)で12か国となった。なお、1990年に東西ドイツ統一により旧東ドイツがECに編入している。
*27)EU加盟国27か国のうち、ユーロ導入国は19か国(2021年7月現在)。
*28)European Commission and HR0VP contribution to the European Council”EU-China—A strategic outlook” (12, March 2019)
*29)中国当局者4名と1団体を対象として、EU内の資産の凍結や渡航禁止措置を講じた。
*30)特に、2016年に中国企業の美的集団(MIDEA)が世界トップのロボットメーカーであるドイツ企業のKUKAを買収したことはドイツ国民に衝撃を与え、中国への危機感を抱かせる契機となった。
*31)発足当初の中東欧諸国メンバーは、ブルガリア、クロアチア、チェコ、ハンガリー、エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スロベニアのEU加盟11か国、及び、アルバニア、ボスニアヘルツェゴビナ、マケドニア、セルビア、モンテネグロのEU非加盟5か国の計16か国。
*32)2019年にギリシャが加わり「17+1」と呼ばれるようになったが、2021年6月にリトアニアが離脱した。
*33)さらに、中国は豪州にとって最大のサービス輸出先であり、豪州は観光や留学産業についても中国マネーの恩恵を受けている。
*34)ブレグジットについてもこの流れの延長線上にあり、2019年の欧州議会選挙では、英国はブレグジット党が2大政党を抑えて第1党となっていた。また、2016年の英国のEU離脱決定と時を同じくして、米国でも反移民を掲げるトランプが大統領選挙に勝利したことで、反グローバリズムは世界的な潮流となりつつあった。
*35)ルペン候補は第1回投票においてマクロン候補と3%程度の得票差にまで迫った。
*36)2014年9月、スコットランドにおいて、英国からの独立の是非を問う住民投票が実施されたが、賛成44.7%、反対55.3%で否決され、英連邦への残留が決定した。なお、2016年に実施された英国のEU離脱を問う国民投票において、スコットランドは賛成38.0%に対して反対62.0%とEU残留派が多数であったこともあり、ブレグジット決定を機に独立の機運が再燃した。
*37)さらに、中国は2020年10月には豪州産綿花の輸入停止措置、翌11月には豪州産ワインへの反ダンピングの制裁関税ついても立て続けに発動した。
*38)豪州が中国からの輸入品に対して課している鉄道車輪部品、ステンレス製水槽等の反ダンピング関税措置に対して撤回を要求するもの。
*39)例えば、2010年9月の漁船衝突事件を受け、首脳会談のあるべき雰囲気を日本側が壊したとして、中国は同年10月に予定されていた日中首脳会談を直前で拒否した。また、2012年9月の尖閣諸島国有化以降、中国各地で反日暴動が発生し、現地の日系スーパーや工場等が略奪・放火等の被害に遭った。政治レベルでは、2011年12月の野田首相・胡錦涛国家主席の会談以降、2014年11月の安倍首相・習近平国家主席の会談まで、約3年間にわたり首脳会談が実現しなかった。
*40)その後、新型コロナウイルスの感染拡大により、延期が発表された。
*41)日中韓、豪NZ、ASEAN10か国の計15か国が参加する自由貿易協定で、2020年11月に署名された。2021年末にも発効が見込まれ、世界人口及びGDPの3割を占める巨大な経済圏が誕生することになる。
*42)國分俊史(2020)「エコノミック・ステイトクラフト経済安全保障の戦い」日本経済新聞出版
*43)「債務の罠」によって、中国は、ジブチに対しては軍事基地を建設し、スリランカに対しては港湾権益を中国企業が99年間借用する契約を締結した。いずれもアジアと欧州を結ぶ海路の要衝であり、地政学上重要な役割を果たす。
*44)2016年のG7伊勢志摩サミットにおいて「質の高いインフラ投資推進のためのG7伊勢志摩原則」が合意され、その後2019年のG20大阪サミットにおいて「質の高いインフラ投資に関するG20原則」が承認された。
*45)2020年11月のG20財務大臣・中央銀行総裁会議で承認され、非パリクラブ債権国(中国等)が、パリクラブ債権国(先進国)と同じ条件で債務救済を合同で行うことを初めて約束した。
*46)南シナ海における独自の境界線設定による領有権や海洋権益を法的根拠なく主張し、人工島に基地を建設し軍事拠点化を試みたり、サイバー手段を用いて機微情報を窃取したりする等の行為。
*47)中央銀行の独占する通貨発行益が奪われかねないという懸念。また、リブラはサイバーセキュリティや資金洗浄対策等の規制監督上の懸念から発行が問題視された。さらに、金融政策の効果や金融安定性にも影響を与えかねず、国際金融体制への脅威と見なされた。
*48)2020年4月、リブラは複数の法定通貨に連動させて発行する仕組みを断念し、米ドル等の単一の法定通貨建ての安全資産を100%裏付けとする計画に変更することを発表した。また、同年12月には名称も「ディエム」へと改称した。
*49)例えば、2018年8月には「2019年国防権限法」(NDAA:National Defense Authorization Act for Fiscal Year 2019)が成立し、ファーウェイ等の政府調達が禁止された。
*50)「江沢民共産党総書記が2000年2月の広東省視察の際、共産党創立から70余年を総括した重要な結論として発表した理論。共産党が人民から支持される理由は、党が労働者階級の先鋒隊として革命、建設、改革の各時期を通じ、(1)中国の先進的な社会生産力の発展の要求(2)中国の先進文化の前進の方向(3)中国の最も幅広い人民の根本的利益を――の3つを常に代表し、正しい政策方針を示して、国家と人民の根本利益を実現するために努力してきたからだ、とする考え方」(出典:人民網日本語版)
*51)2012年に習近平最高指導者が中国共産党第18回党大会において発表した。
*52)さらに、2049年までに「世界一流の軍隊」を保有することについても目標に掲げている。
*53)中国共産党世界政党指導者サミットにおける習近平総書記の基調演説(2021年7月6日)より。
*54)The Centre for Economics and Business Research(2021)“WORLD ECONOMIC LEAGUE TABLE 2021-A world economic league table with forecasts for 193 countries to 2035,” December 2020, 12th edition.
*55)新華社「中国の高齢者人口、2050年には総人口の約3分の1に」(2018年7月21日)
*56)2020年の中国の合計特殊出生率は1.3であり、日本の1.34を下回った。(出典:中華人民共和国国家統計局「第七次全国人口普査主要数拠」(2020年5月11日)、厚生労働省「人口動態統計」(2020年6月4日))
*57)2020年の米国の合計特殊出生率は1.64であり、6年連続で低下し、過去最低を記録した。(出典:Centers for Disease Control and Prevention(2021)“Birth:Provisional Data for 2020,” May 2021)
*58)2050年代には米国のGDPが中国を再逆転すると予測されている。(出典:日本経済研究センター「長期経済予測」)