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IMF・世界銀行春会合およびG20財務大臣・中央銀行総裁会議等の概要(2021年4月6~9日、テレビ会議形式)

国際局国際機構課長 今村  英章/国際局国際機構課 齋藤  浩暉
国際局開発機関課長 田部  真史/国際局開発機関課 山本  麻莉乃

4月6日から4月9日にかけて、G7財務大臣・中央銀行総裁会議(G7)、G20財務大臣・中央銀行総裁会議(G20)、国際通貨金融委員会(IMFC)、世界銀行・国際通貨基金(IMF)合同開発委員会(DC)が、いずれもテレビ会議形式で開催された。一連の会議では、ワクチン接種の拡がりや各国の経済対策の効果により世界経済の見通しが改善している中で、コロナ危機からの確実でよりよい回復を果たすために国際社会として何をすべきか、が議論の中心となった。
以下、各会議の議論の概要を紹介したい。

1.G7財務大臣・中央銀行総裁会議(2021年4月6日)
G7は、今年1月に議長がアメリカからイギリスに交代した。イギリスは、財務トラックの優先課題として、以下を掲げている。
・雇用を守り、世界経済の回復をサポートする。
・経済のデジタル化に伴う課題に対し、国際的な解決策を見出す。
・世界全体として排出量ネットゼロ目標を達成できるようサポートする。
・世界の最も脆弱な国々に対し、必要な手を差し伸べる。
イギリスはこれまで2月、3月にも会議を開催し(3月は財務大臣のみ)、マクロ経済政策のあり方や低所得国への支援パッケージについて議論を行ってきた。今回は3回目の会議であった。
今回の会議では、排出量ネットゼロに向けた取組が主な議題となった。麻生財務大臣からは、気候変動に対する途上国の取組を支援するため、世界銀行など国際開発金融機関の活用と民間資金動員の二つが重要である旨を強調した。また、気候関連財務情報開示について、日本は、プライム市場上場企業に対して気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に基づく開示を求めるコーポレートガバナンス・コードの改訂案を公表したことを紹介した。

2.G20財務大臣・中央銀行総裁会議(2021年4月7日)
G20については、昨年12月に議長がサウジアラビアからイタリアに引き継がれた。イタリアは、人々(People)、地球(Planet)、繁栄(Prosperity)の3つの「P」の下、財務トラックについては、以下を優先課題として挙げている。
◆保健危機への対応
◆投資や成長の促進
◆グローバルな金融の安定
◆脆弱国への支援
◆公正かつ透明な税システム
◆地球環境の保全
◆金融セクター(サステナブル・ファイナンスを含む)
イタリア議長下で2回目の開催となる今回の会議では、世界経済、低所得国支援、国際課税、気候変動などについて議論が行われ、会議後に、議論の成果をまとめた声明が発出された。あわせて、G20として協調してパンデミックに対応していくためのG20行動計画について、昨年10月に続いて2度目の更新がなされ、承認された。
声明では、まず世界経済について、見通しは改善しているが、回復は各国間・各国内でばらつきがあり、新たな変異株の拡大やワクチン接種のペースの違いなど、大きな下方リスクにさらされていることを確認した。その上で、女性、若者、非正規労働者など、最も影響を受けた人々の経済的な傷跡の問題を含め、拡大する格差に対応することを表明した。更に、必要とされる間は、全ての利用可能な政策手段を用いるとの決意を再確認した。
また、為替について、為替レートは経済のファンダメンタルズを反映するという従来の考え方を明確化した。
貿易については、開かれた公正な、ルールに基づく貿易の重要な役割を認識し、保護主義と闘うとのコミットメントを想起した。
低所得国支援については、IMFの特別引出権(SDR)(注)の新規一般配分、債務問題、国際開発協会(IDA)の増資、の3つを含む包括的な具体策を示している。

第一に、SDRについては、G20として6,500億ドルの新規一般配分に合意した。その上でIMFに対して、SDRの使用に係る透明性・説明責任の強化策、先進国のSDRの活用策を策定するよう要請した。透明性・説明責任の強化は、G7やG20等での日本の主張を反映したものである。
第二に、債務問題に関しては、2020年4月に合意した債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)について、2021年12月末まで最後の延長を行うことに合意した。また、「DSSI後の債務措置に係る共通枠組」(「共通枠組」)に基づく債務措置の実施にあたって、債権者委員会の来る初回会合への期待を示すとともに、参加する全ての公的二国間債権者は、開かれた透明性ある形で交渉すべきことを確認した。加えて、民間債権者等が、「共通枠組」に参加する公的二国間債権者と少なくとも同程度の条件で債務措置を実施することの重要性を強調している。更に、債務データの質・整合性の強化、開示の改善に向けて、IMF・世界銀行の提案の進捗に期待する旨を表明した。
第三に、IDAについて、第20次増資を1年前倒しし、2021年12月までの合意を目指すことを歓迎した。第20次増資の前倒しは、今後IDAの資金不足が見込まれる中で、日本がその必要性を強調してきたものである。
国際課税については、2021年半ばまでに、グローバルなコンセンサスに基づく解決策に合意することに引き続きコミットしていることを確認した。
最後に気候変動について、サステナブル・ファイナンスの動員の重要性を認識するとともに、サステナブル・ファイナンス・スタディ・グループを作業部会に格上げすることに合意した。

(注)国際的な流動性を創出するため、IMFが創出し、加盟国に配分する合成通貨。配分されたSDRは、SDR金利を支払うことで米ドル等の自由利用可能通貨に交換可能。

3.国際通貨金融委員会(IMFC)(2021年4月8日)
国際通貨金融委員会(注)においては、世界経済の動向や、経済回復を後押しするためのIMFの取組等について議論が行われた。特に世界経済については、コミュニケにおいて、金融の脆弱性の高まりは、世界の金融環境が急速に悪化した場合、リスクをもたらす可能性があるとの認識が示されるとともに、今般の危機が長引く傷跡をもたらし、貧困及び不平等を悪化させる可能性があるとの懸念が示された。
麻生大臣からは、ワクチンの接種開始により世界経済の見通しは改善しているものの、依然高い不確実性が存在していること、日本では感染症が比較的抑制されており、経済も本年中にはコロナ前への水準に回復する見込みである旨を述べた。
IMFの低所得国支援については、まずSDRについて、新規配分を支持しつつ、SDRの使用における透明性、説明責任向上のための手当が行われることを歓迎した。また、譲許的資金について、利用限度額(アクセスリミット)の引上げや例外アクセスの上限撤廃など、低所得国向け融資制度の改革案を支持するとともに、大災害抑制・救済基金(注)について、実施済みの1億ドルの貢献に加えて、更なる資金貢献を前向きに検討する用意がある旨を表明した。債務問題に関しては、DSSIの延長を歓迎するとともに、DSSIを実施した全ての債権者が、「共通枠組」に基づく債務措置を透明かつ確実に実施することの重要性を指摘した。更に、債務措置に至る前の平時から債務の透明性と正確性を確保するため、世界銀行・IMFによる債務データ突合作業を支持する旨を表明した。
最後にIMFの資金基盤に関して、IMFはクォータを基礎とする機関であるべきだが、借入資金は、IMFが急速に変化する国際金融状況に対応するための優れた選択肢であり、恒久的なIMFの財源として位置付ける必要があることを指摘した。更に、こうした借入資金の提供を含む加盟国の自発的貢献を、クォータ計算式に組み込むことを強く要請した。

(注)国際通貨・金融システムに関する問題についてIMFに助言および報告することを目的として1999年に設立。以降、春・秋の年2回開催。今回は第43回目。
(注)感染症の流行等の影響を受けている低所得国に対して、IMFへの債務返済の支援を行う基金。

4.世界銀行・IMF合同開発委員会(DC)(2021年4月9日)
世界銀行・IMF合同開発委員会(注)においては、新型コロナウイルスによる危機が続く中で国際社会が直面している開発上の課題等について議論が行われた。
麻生大臣からは、新型コロナウイルスの感染拡大が継続する中で、国際社会が連携して一刻も早く危機から脱却するとともに、将来を見据えて、次の危機への備えを強化しつつ、持続可能な社会と成長の土台の構築に取り組み、強靭な復興を目指すことの重要性を強調した。
新型コロナウイルスの危機からの脱却に関しては、COVID-19 Vaccines Global Access(COVAX)を含む、Access to COVID-19 Tools Accelerator(ACT-A)の4つの柱である、ワクチン、治療、診断、保健システムの強化にかかる支援をさらに推進することへの期待を述べるとともに、途上国政府が国内でワクチンを普及させる際に必要となる能力の強化やコールドチェーンを含む医療設備・機材の整備等を支援するため、「保健危機への備えと対応に係るマルチドナー資金(HEPRTF)」への追加拠出を表明した。
次の危機への備えの強化に関しては、日本がかねてから重視してきたユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成がより一層重要になっていることを強調した。UHCの達成に向けては、栄養の側面から取り組むことの重要性を指摘し、12月に東京で開催する栄養サミットに向け、世界銀行グループと連携して途上国支援に貢献していく旨を表明した。更に、気候変動により自然災害へのリスクが高まっている中で、防災の取組みも一層重要である旨を強調した。
持続可能な社会の構築の観点からは、気候変動への対応と債務の透明性・持続性の確保が重要であるとの考えを示した。気候変動に関しては、途上国が脱炭素化と経済成長を両立させながら貧困削減に取り組む必要がある中で、民間資金も動員しつつ、各国の実情を踏まえた緩和策と適応策双方への適切な支援を行うことの重要性を強調した。また、債務に関しては、DSSIの最後の延長に係るG20及びパリクラブの合意を歓迎するとともに、「共通枠組」について、DSSIを実施した全ての債権者による透明かつ確実な債務措置の実施と、その他の公的二国間債権者及び民間債権者による、コンパラビリティ原則に基づく措置の確実な実施の重要性を強調した。更に、世界銀行がIMFと共に、債務データ突合を通じて、債務データの透明性・正確性の確保に努めることを慫慂した。
成長の土台となるインフラへの投資に関しては、復興段階にある途上国の力強い成長を実現するため、世界銀行に設置されている信託基金の活用を通じて、引き続き支援を進めていく考えを示した。
最後に、途上国が危機からの脱却と強靭かつ持続可能な復興を達成する上で、世界銀行グループの役割が極めて重要となる中、麻生大臣からは、日本が昨年10月の開発委員会でその必要性を指摘したIDA第20次増資の前倒しが合意されたことを歓迎しつつ、本年12月までの合意に向けて国際社会が連携して取り組むことの重要性を強調した。併せて、国際復興開発銀行(IBRD)及び国際金融公社(IFC)についても、危機対応と強靭な復興に向けた支援が求められている中で、日本として、両機関の増資に係る払込みを前倒しし、危機下において、両機関が全力で途上国支援に取り組めるよう、引き続きサポートしていく旨を表明した。
DCコミュニケにおいては、全ての国に対する安全かつ効果的なワクチンの配布や、UHCを備えた強固な保険システムの重要性を強調するとともに、日本が指摘した諸点を含む、グリーンで強靭かつ包摂的な開発と、持続可能な開発目標(SDGs)に向けた支援を促進することとされた。また、IDA第20次増資の1年前倒しを歓迎し、本年12月までに合意されるIDA増資が、強固な政策枠組みの下、IDAの支援対象国のグリーンで強靭かつ包摂的な回復を支えることへの期待が表明された。

(注)開発をめぐる諸問題について世界銀行・IMFに勧告及び報告を行うことを目的として1974年に設立。以降、春・秋の年2回開催。今回は第103回目。