【冒頭発言】
財務官)既に昨日、G7・G20等々の片山大臣が出席をしました一連の会議の模様や片山大臣の発言について、皆様にはご説明をしていますので、今日は何か特定の会議というよりも全体の振り返りのようなこと、概括的なことを申し上げたいと思います。今申し上げたとおり、本日で一連の会議は概ね終了しましたが、まず今回のIMF・世銀年次総会は、1991年以来35年ぶりのタイ・バンコクでの開催となりました。タイは1990年代後半にアジア通貨危機に見舞われた国であり、そういう意味ではASEAN+3の金融協力の中でチェンマイ・イニシアティブというものがありますが、まさにそのチェンマイという名前にも表れているとおり、ASEAN+3における金融協力のスタート地点になった場所、国でもございます。足元、世界経済は、中東紛争をはじめとする地政学的な緊張、サプライチェーンの混乱、自然災害の激甚化・頻発化など、様々なリスクに直面しているという状況でございます。そうした中、今回片山大臣は、非常に過密日程の中で何とか出張することができ、G7・G20にも参加し、今回世銀・IMF合同開発委員会の議長に就任しました。1974年の開発委員会発足以来史上初めて日本から議長が選出されるということでありますので、既に次の議長というようなことでいろいろな形であちらこちらからお声がけをいただきましたし、昨日の開発委員会の終わりには次期議長として片山大臣から一言挨拶もすることができたということで、改めてこうしたことも含めて、日本として総裁のお力も得まして非常にプレゼンスを発揮することができたのではないかと思ってございます。
また、バイ面会においても、昨日片山大臣からご紹介申し上げましたけれども、最近新しく大臣に就任されました韓国や、逆に就任から時間がたち今G20の財務大臣の中でも大変経験の長いインドのシタラマン大臣、ホスト国のタイの副首相兼財務大臣など、いろいろな方々とバイでもお目にかかりまして協力関係を、先ほどのASEAN+3やインドとの日印の二国間関係も含めて、再確認できたのではないかと思ってございますので、そういう意味で非常に有意義であったと考えてございます。
今後、引き続きG7・G20双方における議論に日本としてもさらに積極的に参画をしていきます。今年はASEAN+3の財務・金融トラックにおいては日本がフィリピンと共同議長ということでございます。そして先ほど申し上げたように今回新たに開発委員会の新議長にも片山大臣が就任したということでございますので、日本のプレゼンスが一層高まりました。植田総裁をはじめとした日本銀行のお力もお借りしながら、引き続き様々な国際課題の解決に向けて日本としてリーダーシップを一層発揮できるように努められればと考えており、今週のバンコクにおける一連の会議を通じて、日本としては大いに成果のある1週間になったのではないかと思っているところでございます。
総裁)会合での議論の内容については財務官の方から様々なご説明があったとおりでございます。私からは一言だけ、G20では中東情勢あるいはAI関連需要の動向等を受けた経済・物価等への影響あるいは動きを含め、世界経済や金融システムなどについて議論が交わされたということをご報告させていただきます。
【質疑応答】
問)植田総裁と財務官それぞれ質問があるのですが、まず今回の会合全体ということで財務官には、今回はアジアでIMF総会開催という歴史的な意義がある会合だったと思うんですが、アジアとIMFというのはかつてのアジア金融危機のスティグマがあった、それを解消するいいきっかけになったとは思うんですけれども、具体的に新しい関係を構築できたのではないかという印象を抱かれたかどうか、そして新しいIMFとアジアの関係、どういったもので、日本はそこでどういう役割を果たせるのかという点についてと、もう1点あるのが、そうは言っても金融市場でAI債務に対する懸念から株価が大きく調整したりしております。こういった金融システムをめぐるリスクが世界経済及び日本の金融環境でどう影響を与えそうなのか、一連の会合を踏まえたご所感も踏まえて伺いたいというのが財務官への質問です。
植田総裁には、今回のG20、IMF総会では世界経済のショックに対する頑健性についていろいろな声が出た一方で、旺盛なAI需要によるインフレ圧力が話題になったと思います。今回の会合での議論は10月の展望レポートでの議論や今後の利上げパスについての議論にどう影響するのでしょうか。日銀は物価の上振れリスクの高まりを重視して9月に利上げしましたが、こうやって世界的に高まるインフレ圧力を考えると、また近いうちにさらなる追加利上げが必要な環境というふうにお考えでしょうか。
財務官)まずはアジア通貨危機もあり、その当時におけるIMFに対するトラウマ、あるいはスティグマのようなものがいまだに残るASEANの国々において、今回の総会がそういう環境を変えるきっかけになったかというご質問だと思いますけれども、今回の年次総会に限らず、実はこの数年、あるいはかなり長年の間、ASEANの国々、あるいはより広く東南アジアのいろいろな国々とIMFとの関係をより生産的にしていくために実は様々な取組をしてきていまして、それはまさに先ほど少し申しあげたASEAN+3における取組ということにも大いにつながるわけですけれども、IMFというのはアジア通貨危機のときにIMFの融資に伴う様々な、我々の世界で言うところのコンディショナリティという、お金を貸すに当たっての、借りる側の国がこういう政策にコミットしてください、こういう改革を実行してくださいという、約束事のようなものがかなり厳しいのではないかと当時議論になりました。そのような融資はもちろんIMFの重要な活動ですけれども、それ以外にもIMFでやっているような、これは日本もやっていますけれども、4条協議と呼ばれるような、これはIMFの世界ではサーベイランスと言いますが、要はそれぞれの国の経済状況や、金融市場の状況、あるいは金融システムの状況などについて、私はよく定期的な人間ドックだと言っていますが、1年に一度定期的にどのような状況なのか、何かリスクはないのか、逆に何を改革するべきなのかといったことをIMFが専門家の目で、中立的な立場から当局と議論をした上でいろいろな見立てをアドバイスをしてくれる、こうしたサーベイランスというものもあります。それから、いわゆる技術支援あるいは能力構築といった、資金面以外で各国の政策の能力、あるいは政策そのものの改善をサポートするような、技術支援的な取組というのもIMFの重要な取組です。実は、別にトラウマがあるからということではなくて、幸いにしてアジア通貨危機以降は東南アジアの国は非常に急速な発展も遂げて、もう一度IMFから融資を得なければいけないということには基本的になっていないわけですが、だからといってIMFとの関係が全然何もないということではなくて、むしろサーベイランスはもとより、技術支援の方ではかなり色々な、生産的で前向きな関係構築といった活動が実際になされています。能力構築の世界は、実は日本がIMFの中でも最も熱心に取り組んできた活動で、IMFきってのサポーターとなっています。これはIMFにも常日頃から感謝を頂いていますけれども、そういった関係を構築してきているので、今回のバンコクでの年次総会をきっかけに今までと何か違うフェーズになるというよりは、これまでもずっと取り組んできたこうしたIMFとASEAN諸国、あるいは東南アジアの国々との前向きにして生産的な関係をある意味確認しつつ、一層次につなげていく、そういう重要な、さらなるステップになったというのが私自身の受け止めであります。
それから2点目のお尋ねの足元の金融市場の状況等々についてですが、もちろんこれは私の立場で足元の金融市場がどういう動きか、原因も含めてあまりコメントや評価のようなことを言うのは差し控えますが、当然のことながら今に限らず、いつであってもこれは常に金融市場の状況をしっかりと注視をして、決してそういったおかしなリスクが顕在化しないようにしっかりと取り組むというのが、当然のことながら我々の最も重要な仕事でありますから、引き続きいつものようにそういった観点でしっかりと遺漏なきように取り組むということに尽きるかと思います。
総裁)世界経済のインフレ圧力のようなものについて何か示唆があったかどうか、それが私どもの今後の政策にインプリケーションがあるかどうかというご質問だったと思いますけれども、まずインフレ圧力そのものについては、私どもしばらく前から、円安に加えて中東情勢とAI関連の動向というものを注視するということを申し上げてきたとおりです。特に中東とAIは世界全体に影響する話で、したがって、詳しく私どもも分析してきましたし、今回の様々な会合で世界の政策担当者と議論したわけですが、我々とその他の政策担当者の間で大きな食い違いはないという印象を持ったところです。あえて申し上げれば、AI関連の需要動向について、私どもが見ていたよりも、やや心持ちしっかりしている、需要そのものですね、というふうに見てらっしゃる方が少し多いかなというふうに思ったところです。こうしたことの私どもの政策への含意ですけれども、基本姿勢を申し上げることにとどまりますけれども、基調的な物価上昇率が2%に近づいている中で、一方で金融環境がいつも申し上げているとおり緩和的な状態が続いているということですので、基本的には引き続き政策金利を、経済・物価・金融情勢に応じてですけれども、引き上げて、緩和度合いを調整していくというふうになると考えています。その上で、タイミングやペースについては、今申し上げたような中東、AI関連の需要の動向、あるいは為替相場の動き、これを見ながら私どもの見通しの確度やその周りのリスクを点検しながら検討していくということです。9月の決定会合後の会見で申し上げたことと重なりますけれども、その際に、基調物価が2%にかなり接近しているという中では、基調物価の上昇率を2%程度で安定させていくという観点がこれまでよりも重要になってくるというふうに考えております。そういうことを考えつつ、適切に政策を判断してまいりたいと思っております。
問)植田総裁に伺います。若干、今の質問と関連するのですが、一連の会議やバイ会談で様々な政策当局者の方と意見交換されたと思うんですけれども、私も10月30日に新しい展望レポートが出るっていうことを念頭に伺いたいんですけれども、先ほど、AI需要のところがもともと見ているよりは心持ちしっかりしてるっていうような所感をおっしゃってらっしゃいましたけれども、中心的見通しやリスク要因の記述を考えるときに、これまでのシナリオを変更するような必要性というか、新しい発見みたいなところっていうのはあったのでしょうか。あと、基調物価上昇率に関してなんですけれども、こちらも今まで展望レポートで、2026年度後半から27年度にかけて2%目標と整合的な水準になるっていうふうに見通しを示してこられましたけれども、10月会合で26年度後半というところに入ってきます。ここの記載ぶりというのはその見通し期間に入ってきたところで変える可能性はあるとお考えでしょうか。
総裁)私どもの中心的な見通しを変えるようなニュースがあったかどうかという点ですけれども、まず9月の決定会合後の日本経済周りのデータを見る限りは、おおむね私どもの見通しどおりに動いているというふうに考えています。今回の会合で様々な意見交換をしましたけれども、そういうことと矛盾するような重要な情報がもたらされたというふうには考えておりません。それから基調物価の判断について、10月の決定会合でどういうふうに記述するかということですけれども、今のところ2%にかなり近づいているっていう表現ぶりでありますけれども、これをどういうふうにするかということについては、これは申し訳ありませんが、10月の会合でそこまでに得られた情報を基に、政策委員の間でしっかり議論して結論を出したいと思っております。
問)植田総裁に私も2問ほど質問させてください。まず1問目なんですが、今回の一連の会合ではベッセント米財務長官が欠席されましたので、対面でお話しする機会はなかったと思うんですけれども、アシュビルのG20以降の機会で何かコミュニケーションをとられるような場面はあったのかというのを伺いたいのが1点です。もう1つは先ほどの質問にも関連するところなんですが、基調的な物価上昇率が2%に達している、こういった判断を次回、今月の会合でも一部同じ政策委員の方とお話しされるかなと思うんですけれども、もし物価上昇率が2%に達していると判断された場合、それは金融政策を判断する上でどのようなインプリケーションがありますでしょうか。例えば、比較的速いペースで利上げを進める必要があるですとか、そういった意味を持つことなんでしょうか。
総裁)ベッセント長官とはアシュビル以降、コミュニケーションは特にとっておりません。それから2番目は、基調物価に関する表現ぶりをどうするかということは先ほどのご質問もあったところですけれども、それは10月の決定会合の議論を待たないと、何とも私から今の時点では申し上げられません。ただし、既にかなり基調物価は2%に近づいているということは私も含めて申し上げてきたとおりで、それは前回の会合で、ある種、政策の局面が変化したということであるというふうに申し上げてきています。その意味は先ほどもちらっと申し上げましたけれども、これまでは基調物価を少しずつ2%に近づけていくという意味で上がる、下から来ていますので、という方向の動きを容認してきたわけですけれども、今後は2%におおむね近いということで、これ以上上がるということは容認できない、2%近辺で定着していくということを政策の大きな目標にするという姿勢に、最近局面が変化したということでございます。
問)植田総裁にお伺いさせてください。先ほどもこれまでのG20、G7とかの会合を踏まえてお話もありましたけども、植田総裁として一連の日程を振り返って、今回の成果として挙げられる部分というのはどういったところになるのか、例えばどういった意見交換をしたっていうところが大きな示唆を得たとか、その辺り、成果として捉えてらっしゃる部分があればお願いします。
総裁)具体的なことはなかなか申し上げられないので、抽象的な一般論になってしまいますけれども、先ほど来申し上げてますような中東情勢あるいはAI周りの動き、こういうことが世界経済、日本経済、あるいはそれぞれのインフレ動向にどういうルートを通じてどういうふうに影響するのかということについて、私どもも海外の政策担当者も様々な意見、情報を持ってるわけですが、それをお互いに議論して情報を交換し合う、それによって我々の判断をよりしっかりしたものにする、そして次の政策に役立てていく、こういう場として私どもは活用させていただいてますし、それは海外の政策担当者も同じであるというふうに思っています。
問)植田総裁に2問質問させてください。今回ベッセント氏は欠席されましたが、FRBのウォーシュ議長は出席しましたが、何かコミュニケーションなどはあったんでしょうかというのが1点。もう1点が中立金利についてですけれど、政策金利1.25%到達してますが、中立金利にはまだ相応の距離があると考えていらっしゃいますか。その辺りの少し考えをお伺いしたいです。
総裁)ウォーシュ議長とはもちろん立ち話や会合の中の意見交換を含めて、様々な意見交換をいたしました。具体的な内容については差し控えさせていただきます。それから中立金利に関してですけれども、これはこれまでも申し上げていますとおり、はっきりとこの辺にある、ここにあるっていうことを申し上げられるような材料があるわけではない一方で、これまでの利上げの累積的な効果、金融環境及び経済・物価へどういう影響が累積的な効果として出てきているかということを見ながら、一歩一歩判断していきたいというふうに考えています。
(以上)

