【冒頭発言】
まずG7では、世界経済、ウクライナ支援、及びサプライチェーンの強靱化について議論を行いました。
私からは世界経済の下振れリスクの顕在化や金融・資本市場の調整といったシナリオに備える必要があること、日本は、関税措置の早期見直しへ、引き続き米国との率直かつ建設的な協議を継続していくこと、またIMFが指摘しているように過度な経常収支の不均衡の解消に当たり関税は適切な手段ではなく、各国のマクロ経済不均衡の是正が必要であること、などを申し上げました。ウクライナについては、その公正かつ永続的な平和の実現に向けた努力が行われている今こそ、G7の揺るぎない結束を示し続けることが必要と述べました。
サプライチェーンの強靱化についてはG7に加えて、オーストラリア、韓国の参加を得て議論が行われ、私からは、エネルギー移行に必要な重要鉱物を対象としてG7日本議長下で立ち上げたRISEを推進することを含め、G7及び同志国がさらに共同して取り組んでいくことの重要性を申し上げました。
次にG20について、2日目となる本日は、アフリカの成長、サステナブルファイナンスのセッションでリードスピーカーを務めたほか、金融セクターの議論を行いました。
アフリカの成長については、脆弱な組織、インフラの不足、マクロ経済の脆弱性といった課題に包括的に取り組むことで低所得国が直面する高い資金調達コストを是正していく必要があること、質の高い労働力を確保する観点から国際保健の推進も重要な課題であること、などを述べた上で、日本が来月に横浜で開催予定のTICAD9について紹介をいたしました。
サステナブルファイナンスについては、自然災害に対する保険のカバーが十分でないことが災害発生時の迅速な復旧を妨げ、経済や財政にも影響を与えていることを指摘し、その国際的な対応につき、今後もG20が議論を主導していくことへの期待などを申し上げました。
金融セクターのセクションでは、ノンバンク金融仲介(NBFI)に係るリスクへの対応について議論したほか、昨今の暗号資産を取り巻く事情を踏まえ、日本は今年6月に法改正を行ったことなどを私から紹介いたしました。
G20での2日間の議論の結果については、共同声明が先ほど議長国から公表されました。世界経済が直面する高い不確実性と様々なリスクに、G20が結束して対処していくという観点から、共同声明を発出できたことは非常に有意義であると評価をしています。
最後に、本日はカナダのシャンパーニュ財務大臣、及びオーストラリアのチャーマーズ財務大臣とのバイの面会を実施いたしました。
【質疑応答】
問)先ほど非常に有意義だとおっしゃった共同声明なんですが、2月は発出を見送られていて、4月も出ていないですが、今回発出できたということは何がどういう形で作用してこれに結びついたか、どう受け止めていらっしゃるか聞かせていただけますでしょうか。
答)今ご指摘がありましたように南アフリカが議長をされたという中では最初の共同コミュニケになったと承知をしています。この共同声明に至った経緯はまさに関係者方の、特に南アフリカのリーダーシップが発揮され、またやはり各国がこの時点で共同声明を発出することの意義というものを認識して、あらゆる知恵を総動員して共同コミュニケの作成に至ったということでありまして、まさにこの状況の中で共同声明を発出することの必要性があるということ、これがまず認識されたことが共通の基盤にあると私は認識しています。
問)具体的にどういった必要性からでしょうか。
答)まさに世界的、この共同声明を読んでいただくと世界経済の現状等について記述されているわけで、こういった現状の中の時だからこそ、まさにG20が結束して今の様々な課題に当たっていかなければならないという意味においては、その中身をしっかりと対外的に発表していくということが非常に重要だと、こういうことだと考えています。
問)2点お伺いします。1点目ですが、ベッセント米長官について、今日本にいらっしゃると思いますが、G7、G20の場で本日ご本人から、例えばリモートだとか、そういった形で意見を表明するような場面があったのか、それに加えまして、各国で事情は違うと思いますが、G20よりもほかの業務を優先していることについて大臣はどう思われますか。
答)まずG7について、今朝ベッセント長官はオンラインで参加をされました。それからベッセント財務長官がG20等、今回参加されなかったということは、これはアメリカ側の判断かと思います。アメリカの代表として我が国で開催されている大阪・関西万博のナショナルデーに代表団の団長として出席をされているということであります。
問)もう1点ですが、G20と離れてしまい恐縮ですが、2日後に参院選を控えてまして自公過半数割れですとか、それに伴う財政弛緩の懸念が背景になっておりまして債券市場では今週1週間、特に激しい動きが見られたかなと思います。G20の場でも大臣、市場の安定性の重要性を訴えていた場面もあるかと思いますが、改めて財政をさらに圧迫するような政策の提言をどうお考えであるか、そして債券市場の動向についてのお考えをお聞かせください。
答)まず債券市場については様々な、前の記者会見でも申し上げていますように現在の経済の動向等々、様々な要因がそこに反映されているわけなので、今この水準を我々がこういう理由だということを申し上げるのはこれまでも控えさせていただいているところであります。ただマーケットにおいては、やはりこれからの財政運営に対する様々な懸念がこうした金融市場に反映されているのではないかと指摘がされている声があることは我々も十分承知をしているところでありますので、引き続きそうした市場の声には丁寧に対応しながら国債管理政策をしっかり運営するとともに、やはり市場の信認というのは非常に大事でありますから、それに向けて財政の健全化に向けてもいろいろ講じていくというのが私たちの立場であります。
問)アメリカの関税で重ねて質問させてください。アメリカの関税について懸念を表明されまして、多くの国もやはりアメリカの関税について温度差があり、発言があったかと思います。今回、共同声明に関税や、アメリカの関税という言葉が正面から載っていないということについての評価というのをどのように受け止められているのかということを教えてください。
答)昨日も申し上げましたが、今日のG7含めて、多くの国から米国の関税については発言があったところですし、また、私も冒頭申し上げたとおりの指摘をさせていただきました。その上で、共同声明はご指摘のように米国の関税政策という言葉は直接言及されておりませんが、貿易に関しては、世界経済は不確実性の高まりと貿易の緊張を含む複雑な課題に直面しているということ、あるいは貿易上の課題を前進させるための世界貿易機関(WTO)の重要性を認識し、WTOで合意されたルールは国際貿易体制の不可欠な要素であること、こういったことが盛り込まれているということであります。
問)G20の意義や役割について質問させてください。ロイター通信の報道によると次期議長国のアメリカがG20の簡素化で、首脳会談、リーダーのところと財務相会談の2つのトラックのみで、ほかの保健とか環境、エネルギーといった閣僚会議をやめようというような報道がなされています。大臣は厚労相も務められていたと思いますが、改めてそういったG20の役割や意義ということと、減らすというようなことについてどのようにお考えかということを教えてください。
答)G20そのものは、ベースはまずサミットということで首脳会合、これが基本にありまして、あとどういう会合をするかというのはそれぞれ主催国、議長国の判断でこれまでも、かなり広範にやっている場合もあるし、それと比べれば絞ってやっていたケースもあったと承知をしていますので、そこは次の議長国であるアメリカが、これまでの議論も踏まえながらご判断されるということではないかと思います。ただ、現時点でどういう形のアレンジメントをするかということは一切聞いておりませんので、それ以上聞いていない話について言及するというのは控えたいと思います。
(以上)