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加藤財務大臣兼内閣府特命担当大臣、植田日本銀行総裁共同記者会見の概要(令和7年5月22日(木曜日))

【冒頭発言】

大臣)先程終了いたしました、G7財務大臣・中央銀行総裁会議について、その概要を御報告いたします。
 本日は、昨日に引き続きまして、AI、金融セクター、金融犯罪について議論を行いました。
 まず、AIのセッションでは、AIが生産性や金融の安定に与える影響が議論されました。私からは、AIが人口減少に伴う労働不足を如何に補い得るか、高齢者のIT活用力の相対的な低さが、高齢社会におけるAIの普及にどのような制約となるか、これをリ・スキリングによって如何に補い得るか、といった点について、今後の更なる分析の必要性を申し上げました。
 また、AIが金融の安定に与える影響については、ボラティリティ上昇や偽情報・誤情報の拡散による相場操縦等のリスクを指摘した上で、AIの健全な利活用の積極的な後押しが必要であることを申し上げました。
 次に、金融セクターについては、世界金融危機以降、その存在感が増している、「ノンバンクによる金融仲介」が有する金融安定リスクの特定に当たり、データギャップの解消が重要であること、地政学的緊張の高まりやAIの進歩に伴って、サイバーセキュリティのリスクが顕著に増大しており、G7当局間の連携の重要性が一層高まっていること、などを指摘いたしました。
 最後に、金融犯罪については、今般カナダ議長の下でG7が合意した「金融犯罪に対する行動要請」を歓迎いたしました。特に、日本国民の拉致を行っている北朝鮮の核・ミサイル開発の資金源とされる暗号資産窃取への深刻な懸念とその対応の必要性が明記されている点を評価した上で、この問題への実効的な対策の強化を求めました。加えて、日本は、「アジア・太平洋マネー・ローンダリング対策グループ(APG)」の共同議長として太平洋諸国を含む途上国への技術支援などに積極的な取組を行っていること、またキャパシティの低い国への配慮とリスクに応じた取組を求める声が出ているということを紹介いたしました。
 その上で、先程、2日間の議論の結果をまとめた共同声明が発表されました。G7が結束して世界経済の諸課題の解決に向けて協働していくということを、メッセージを通じて発出できたことは、非常に有意義であると評価をしています。
 共同声明の具体的な内容については、後程事務方からブリーフをさせていただきます。
 また、本日は、議長国カナダのシャンパーニュ大臣、イギリスのリーヴス大臣とのバイ面会も実施をいたしました。バイ面会を通じて、各国との関係をより深めることができたと考えております。

総裁)私ども日本銀行に関連するところに関して少しだけ申し上げれば、大臣のお話とちょっと重なりますが、世界経済に関して各国の通商政策等をめぐる不確実性の影響及びその背景にあるグローバルなインバランスの問題状況などについて議論いたしました。
 それから、不確実性の高さが経済・金融安定に及ぼす影響等について十分に注視し、中央銀行として引き続き物価安定に強くコミットしていくということについて、参加者と認識を共有したところでございます。

【質疑応答】

問)加藤大臣に伺います。先程の冒頭発言の中でも今回のG7の意義について少しお話がありましたけれども、もう少し詳しく、こういった議論が意義深かったとか、意義についてお話しいただければと思います。

大臣)昨日、今日にわたって世界経済、あるいは成長力、そして今日の課題などを含めて、まさに我々が取り組むべき課題について、かなり突っ込んだ議論を、G7、また国際機関なども交えてできたというように思っていますし、その成果というものを先程申し上げた声明という形で取りまとめて発出することができた。まさにこうした課題にG7が一致して取り組んでいくという強いメッセージを、こうしたことを通じて発信することもできて、大変有意義な今回の会合であったというように考えています。

問)大臣にまずお伺いしたいのですけれども、今回の共同声明でも為替についてのコミットメントを再確認していますが、その為替について今回G7ではどういった議論があったのかお願いします。
 植田総裁には、最近、ちょっとG7と離れてしまうんですけれども、超長期金利が大きく動いていて市場の注目が高まっています。その中で、日銀の植田総裁としてそういった動きについてどういうふうにご覧になっているのかということと、何か対応をされていくような考えはあるのかどうか、その点をお願いいたします。

大臣)声明において、2017年5月の為替相場についてのコミットメントを再確認すると書かれているところでありますけれども、それ以上、為替について議論があったわけではございません。

総裁)超長期金利の動きについてのご質問ですけれども、短期的な金利の動向については具体的にコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。
 ただ、もちろん、市場動向については、引き続きよく注意して見ていきたいというふうに思っております。

問)植田総裁に伺いたいんですけれども、米国の関税政策をめぐる不確実性というところをG20のときにもかなりご指摘があったと思うのですけれども、今回そのあたりの、各国の方々とお話をされての認識ですとか、何か変化を感じるところがあれば教えてください。
 大臣にお伺いしたいのが、今回2日間の議論の中で中国の過剰生産についても話し合われたと思うのですが、このあたりどういった議論があったのかということと、世界経済の不均衡というところをかなりコミュニケでも強調されていますけれども、どのような認識の一致があったかというのを振り返ってお伺いできればと思います。

総裁)まず関税政策ですけれども、ご案内のように、米中あるいは米英の間で一応前向きの動きがあったということが1つ言えるかと。また、ほかの参加国でもそういう評価はあったと思います。ただ、いずれにせよ、この2つの二国間の動きを含めて、先行き、関税について非常に不確実な状況が続いているということが1つと、それから、関税がどこに落ち着くにせよ、それが経済にどういうふうに影響していくかという点についても非常に大きな不確実性がまだ残っている、あるいはこれからデータを見ていかなくてはいけない局面であるというあたりは、私もそう思いますし、ほかの参加者も多くの方はそういう認識であったというふうに思っております。

大臣)会議での議論の我々以外の発言については控えさせていただいているところでありますが、今回のコミュニケ、別に中国の過剰生産ということを明示しているわけではありませんけれども、共同声明では、非市場的政策及び慣行が不均衡を悪化させ、過剰生産能力を助長し、他国の経済安全保障に影響を及ぼすことを念頭に、こうした政策及び慣行が市場で引き起こす歪みや、世界に及ぼす影響について、評価を続けることで一致をした。また、公平な競争条件の重要性や、同じルールに従わず透明性を欠いている国々からもたらされる損害に連携して対処することに合意をした。パラグラフで言うと6番目に言及しています。国際機関に対して、データの不足に対処しつつ、非市場的政策・慣行についての分析を更に求めることで一致をした。これはパラグラフ7に書かれておりますが、こうした認識がその中で確認されたということであります。
 それからグローバルインバランスの関係でありますけれども、今回の共同声明で、持続不可能な世界的なマクロ不均衡に対する懸念を共有するとともに、過度な不均衡に対処し、マクロの経済ファンダメンタルズを強化する必要性が強調されております。マクロ経済の不均衡の是正のため、各国は、それぞれの内需拡大や財政赤字の削減等に努める必要があると、これは日本が主張したことでありますが、それに沿ったものになっているというように評価しております。

問)先程の質問と少し重なるのですけれども、日米の財政支出に対する懸念自体に、G7やバイの機会で議論があったのかというところはいかがでしょうか。

大臣)会議でどこどこの国の財政赤字がどうのこうのというような議論は特になされていないということであります。
 ただ一方で、財政の健全化の必要性、これについては各国それぞれ、我が国もそうですけれども、意識をした中で発言があったというように捉えております。

問)加藤大臣にお伺いいたします。1つは今回のコミュニケで関税や貿易政策に端を発する不確実性、これについて不確実性を減じていくといいますか、克服することの大切さみたいなのがおそらく訴えられたと思うのですけれども、一番いい不確実性の除去は多分アメリカが関税をやめることだと思います。加藤大臣を含めて、日本の交渉団の皆さまがアメリカにトランプ関税の見直しを求めているのも同じ理由だと思うのですけれども、そのアメリカに対して関税を引き下げるべきだというような言及が、どうも私が見た限りはこのコミュニケから読み取れないのですけれども、これについてはどのようにお考えなのかというのを1つ教えてください。
 もう1つはロシアに対する言及なのですけれども、かつてといいますか、去年時点では違法であるとか、そのような厳しい言葉を使ってロシアを非難していたんですが、今回違法、イリーガルという言葉が今回のコミュニケからは落ちていますし、その辺のロシアに対して非常に、これまでのG7の厳しい姿勢が緩んでいるように見受けられるのですが、それについてはどのようなご見解か教えてください。

大臣)まず米国の関税でありますけれども、もちろん今回の共同声明では直接の言及はございません。ただ一方で、4月にワシントンで開催された会合において、国際機関より、貿易政策と経済政策の不確実性が高く、世界の成長の重荷になっているとの指摘があったという紹介がなされ、さらにG7として、経済政策の不確実性がピーク時から低下したことを認識しつつ、更なる進捗を達成するために協働していくことで一致したということが書かれているわけでありますので、まさに米国の関税問題を含めて、足元の経済政策の不確実性について、G7で共通の認識が得られ、またそれに対して協働していくという方向性が示されたという意味で、意義深いものであったというように考えております。
 それから、ウクライナの関係でありますけれども、文章としてはパラグラフ9のところで「残酷な戦争を非難し」という形で言及をさせていただいているところであります。
 まずロシアの制裁については、停戦を成し遂げるための進行中の取組を歓迎し、停戦が合意されなければ、G7は、更なる対ロシア制裁の拡大等のあらゆる可能性・選択肢を追求していくということが言及され、それが合意されたということでございます。
 また、ウクライナ支援についても、ウクライナへの揺るぎない支持を確認し、また、ウクライナの復旧・復興に際しては、民間資金の動員が重要であり、ロシアの侵略を支援した国の企業等がウクライナの復興事業から利益を得ることがないよう協力していくということで合意したということでありますので、こうした合意、共通認識を確認できたということは有意義であり、またそれが具体的にコミュニケという形で発出されたということ、これを大変意義あるものと考えています。

(以上)