【冒頭発言】
まず令和6年度予算の概算につきましては、先程の臨時閣議で決定をいたしました。概要を申し上げます。令和6年度予算については、一般会計歳出総額は対前年度当初で2.3兆円減となる112.1兆円となっており、その内容について申し上げれば、先般成立した令和5年度補正予算と合わせて、歴史的な転換点の中、時代の変化に応じた先送りできない課題に挑戦し、変化の流れをつかみ取るための予算となっております。
具体的に申し上げますと、こども未来戦略に基づく加速化プランの迅速な実施、我が国周辺の厳しい安全保障環境等への的確な対応や防衛力の着実な強化、医療・福祉分野の現場で働く方々の処遇改善をはじめとした物価に負けない賃上げの実現に向けた取組の推進等に必要となる予算を盛り込んでおります。
また骨太方針に基づき、歳出改革の取組を進める中で、69.6兆円の税収を見込んでおり、これらの結果として、新規国債発行額は34.9兆円と対前年度0.7兆円の減となりました。
それから令和6年度財政投融資計画につきましては、成長力強化に向けた重要分野への投資や、国際環境の変化に対応するための海外投融資等を行うこととしております。
令和6年度税制改正の大綱も本日の閣議で決定をいたしております。
本日の閣議決定を踏まえ、今後、来年の通常国会への予算案等の提出に向けて作業を進めてまいります。
2点目でありますが、今朝の閣議におきまして、物価・賃上げ促進予備費1兆1,311億円の使用を決定いたしました。これは重点支援地方交付金の仕組みを活用して、低所得者支援及び定額減税を補足する給付を実現するためのものです。
予備費使用に関する詳細につきましてご質問があれば、事務方にお尋ねいただきたいと思います。
冒頭私からは以上です。
【質疑応答】
問)今回の2024年度当初予算案では、日銀の金利政策修正に伴う金利上昇を受けて、国債の想定金利が見直されました。日本ではゼロ金利状態が20年ほど続いてきましたが、今後金利のある世界に戻った場合、膨大な量に膨らんだ国債の利払費が増加し、財政を圧迫する懸念があります。今後の金利上昇局面においては、日本の財政運営はどうあるべきか、大臣のお考えをお聞かせ願います。
答)令和6年度予算編成に当たっては、利払いのための財源が不足することがないように、直近の金利動向を踏まえつつ、過去の金利急上昇の例を総合的に勘案して、積算金利を1.9%に設定したところであります。この積算金利の設定や国債残高が増加していること等によって、利払費は令和5年度当初予算より1.2兆円増加しております。
ご指摘のように、今後金利のある世界に戻った場合、今後も金利が上昇し利払費が増加すれば、財政状況の悪化により財政運営に影響を及ぼし、政策的経費が圧迫される恐れもあると認識をいたしております。
政府といたしましては、こうしたリスクを最小化しなければならない、そのためにメリハリある予算編成や重要政策課題についての安定財源の確保を通じまして、国債発行をできるだけ抑制をして、将来にわたる利払費を抑える努力をしていく必要があると、そのように考えております。
令和6年度予算においては、特定目的予備費の大幅な減額や各分野における徹底した歳出改革などによりまして、新規国債発行額を前年度に比べて0.7兆円減額し、国債残高の増加を抑制しておりますが、引き続きこうした努力を継続し、利払費の増加が予算編成に及ぼす影響を極力抑制してまいりたいと、そのように考えております。
問)今年の骨太の方針で、歳出構造を平時に戻していく、そういった内容が盛り込まれた中での当初予算編成だったと思います。その意味で、今お話しいただいたところともちょっとかぶりますが、大臣として、改めて今回の予算をどのように評価されるかお聞かせいただけないでしょうか。
答)骨太の方針にもございますとおりに、コロナ禍等も一応落ち着きを見せてきたという中で、歳出の平時化を図っていくということだと思います。
今回、一般会計総額を2.3兆円減額できましたが、その背景は特定目定予備費の減、これが4.0兆円、それから防衛力強化資金への繰入れの減、これが3.4兆円あったと、こういうことでありますが、新型コロナや物価高騰など経済社会を取り巻く不確実性を見極めた上で、予備費の在り方、こうしたものを検討して減額を判断したこと、これは一定の意義があったというふうに思っております。また、例えば診療報酬については、全体としては増額とするものの、診療所の良好な経営状況等を踏まえ、適正化・効率化を行うなど、予算全体におけるメリハリ付けなどを通じまして、徹底した歳出改革を行うことができたものと、そのように考えております。
このような取組により、実際に歳出規模を減額させることで、新規国債発行額についても、対前年度で減額することができたわけでありまして、財政健全化に向けた1つの道筋というものは示すことができたのではないかと、そのように思っています。
問)予算案と税制も含めてなんですが、今回の一連の流れの中で、やはり総理もおっしゃるとおり、賃上げというのが急激に議論の中で重要な事項として持ち上がったと思います。この診療報酬の議論もあるんですが、賃上げということであれば、ある意味、財政健全化よりも賃上げの方を優先しているかのような印象を受けているんですが、賃上げの重要性というのを、財政健全化と比べてどういうふうにお考えなのか、改めて大臣のお考えをお聞かせください。
答)財政健全化というのは、これはもう基本的なものであると、このように考えております。その中で、その時々に要請される政策、そういうものを財源の裏付けをもって実行していかなければならない、こういうことだと思います。
ご承知のように、岸田内閣におきましては、賃上げを重点政策の柱の一つとしているところであります。今回の診療報酬改定に当たりましても、政府全体で賃上げを行うということ、もちろんこれは医療分野もそうでありますけれども、特に公定価格等で、政府自らができるところにおいては、やはり率先してやっていかなければならない。一方において、賃上げによって保険料が増大することによって、可処分所得が減ってしまうということにも注意しなければいけない、この2つをどうバランスを取るかという、そういう判断だったと思います。そういう中で、ご承知のように、本体については0.88%プラスということで、その中身も確実に医療従事者の皆さん方、これは看護師さんや理学療法士などのコメディカルの方も含めて、そこにきちんと賃上げが行われるような、そういう仕組みにもなっているところでございます。
今の政策の要請という中で賃上げは大切であると思います。そして冒頭申し上げましたけれども、財政規律を守っていくという視点、これはもう基本的なものであって、そこを押さえながらも必要なものに予算を付けていくということ、そうした結果、こういうような形になったと、そう思っています。
問)関連して、こども予算の財源を見るときに、支援金を負担するときの1兆円の財源として、国民負担を増やさないようにするということで、通常で考えると、社会保険料を額として1兆円減らすのかなというふうに考えがちなんですが、実際は賃上げに使われたものは、その中から控除される。賃上げ分が上がったとしても、社会保険の実質負担が増えたというふうに考えないという説明にはなっているかと思うのですが、この関係について、賃上げ分は社会保険料の我々の負担増には当たらないという考えはなぜなのか、改めて説明していただければと思います。
答)こども未来戦略においては、公費節減効果につきまして、1.1兆円程度確保を図るということにしております。これは社会保障関係費等の歳出の目安の下での歳出改革により、こども・子育て関連予算を国・地方で年平均0.18兆円程度増加させてきた実績を踏まえまして、そうした努力を2028年度まで継続することを前提としております。
2024年度予算におきましても、薬価等改定や前期高齢者納付金の報酬調整などの医療保険制度改革など、歳出の目安の下で同様の取組を継続した結果生じた0.19兆円の公費節減効果を活用して、こども・子育て予算の追加を行いました。
実際、その歳出改革による財源確保については、目安の額だけ歳出は増加する姿になりますが、広く社会保障分野においては様々な財政需要が求められておりまして、また物価上昇を背景に予算単価の上昇も見込まれる中、歳出増を一定程度に抑制することができたこと、これがこども・子育て政策のための財源、これをしっかりと確保できたものと、そのように考えております。
問)予算編成についてなんですけれども、確かに歳出規模は前年より減ったんですけれども、大臣がおっしゃったように、内訳を見ると、積んでいた予備費の減額などは大きいと思います。またコロナ禍以前と比べると、やはり巨額の予算編成となっている中、実際にこの予算編成のプロセスでメリハリが効かせられたと大臣ご自身は考えていらっしゃるのか。また併せて、プライマリーバランスの黒字化目標の期限も近づいていると思うんですが、予算編成を踏まえて、現在のPB目標についてのお考えを聞かせてください。
答)今回、2.数兆円減額をすることができました。その要因、背景については、先程申し上げたところでありますし、ご指摘もあったところでございます。
率直に言って、財政需要が増えていく中で、特に社会保障関係費等が増えていく中において、今までは一方的に毎年予算が増えていくという中を、例えば防衛費の話とか、予備費を減額したとか、そういう背景はありますけれども、しかし一方的に今まで伸びてきたものを、これを減額することができたということは、歳出削減努力をした結果であると、そのように私は思っているところでございます。
そして予算のメリハリということもございましたが、こども・子育てや防衛力整備の強化、科学技術振興など、社会課題の解決でありますとか成長力の強化に必要な予算につきましては、過去最高額の予算を措置するなど、重点化をしたということであります。一方で、財政需要が高まる中においても、重複投資の排除でありますとか、長期契約の活用など予算の適正化や効率化を通じた歳出抑制の努力についても、引き続き行ってきたところでございます。そういう意味では、メリハリの付いた予算というものも、我々は目指していたわけでありまして、その形は示すことができたのではないかと思っています。
今般の予算の内容を踏まえた国・地方のPBにつきましては、これは毎年そうなのでありますけれども、年明けに内閣府から示されることになっているわけでありまして、まだ現時点で財政健全化目標への影響について、具体的にお話しすることはできない段階にあるということは、ご理解いただきたいと思います。
その上で、令和6年度予算における一般会計PBがマイナス8.3兆円となるなど、財政状況は引き続き厳しい状況にありますけれども、先程申し上げましたような役割を終えた緊急時の財政支出を平時の支出に戻していく努力、それに加え潜在成長率の引上げや社会課題の解決に重点を置いたメリハリの効いた予算編成を行うこと、そして重要政策課題につきましては、それに対応した安定財源を確保するとの方針の下で、歳出・歳入両面における様々な取組を行った結果、新規国債発行額も減額することができたわけでありまして、先程も申し上げましたが、財政健全化に向けた1つの道筋は示すことができたのではないかと、そう思っております。
問)今お話を伺っても、財政の健全化に向けて様々な努力をされていますけれども、今回定額減税があったことで、本来だったらもっと増えたはずの税収が前年とほぼ同額だったり、あるいは地方交付税交付金等への歳出が増えたり、そういった影響が出ています。改めて財政健全化に与えた今回の定額減税をどのように評価されますでしょうか。
答)令和6年度税収の見積りの基礎となっております政府経済見通しでは、今般の定額減税の効果も織り込まれて政府経済見通しが出されていくために、定額減税がなかった場合の税収の見込額、これを正確に計算することは困難でございます。
機械的に計算すれば、令和6年度税収の見込額69.6兆円に今般の定額減税の実施による減収額のうち所得税分2.3兆円を加えた71.9兆円程度になるのではないかと、機械的に計算すれば、定額減税なかりせば、そういうことになったのではないかと、そのように思います。
また定額減税の実施がなかった場合における国債発行額につきましては、地方交付税交付金等を含む歳出面に与える影響があることから、明確にお示しすることは困難であるわけでありまして、この点はご理解をいただきたいと思います。
問)財政健全化を進めていく中で、今回定額減税があったことについては、どのように評価されますか。
答)政策というものについては、いろいろな面から評価をしないといけないんだと思います。やはり今回は賃上げをするということ、現にこの春闘では3.58%の賃上げがあったわけでありますが、しかし、なお物価の上昇に追いついていないという状況の中で、今回定額減税を実施するということでありまして、そうした政策効果、物価上昇に追いつかない賃金の家計を下支えするという意味でございます。
したがいまして、さっきのご質問にも関わると思いますが、我々にとって財政健全化というのは、これはもう基本中の基本といいますか、もう根っこにあるものでありますが、しかしそれをしっかりと踏まえつつも、その時々に必要な政策を打っていかなければいけないと、それにはやはり一定の財源が必要になるということですから、全体を考えた中で、今回はこういう措置が取られたというふうに理解しております。
問)関連して定額減税について伺います。今回、定額減税と低所得者への給付を合わせて計5.5兆円規模と、かなり大きな規模となりました。与党の税制改正大綱では、定額減税について今後賃金・物価の状況を勘案し、必要があると認めるときは所要の家計支援の措置を検討するという文言が盛り込まれ、追加の実施に含みを持たせていますが、大臣として定額減税は1回限りとすべきかどうか、お考えをお願いいたします。
答)これはまさに、与党の税制改正大綱に書かれていることを踏まえて、来年度以降判断すべきものであると。適切なもので判断するということで言えば、いろいろなやり方があるんだと思います。全て給付金でもいいわけですし、それから減税ということになるのかもしれません。しかもそれを両方含めてやるかやらないかも、そのときの状況によるということでありますので、まさにこの税制改正大綱に書いてあることに沿って判断するということだと思います。
(以上)