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神田財務官記者会見の概要(令和5年12月7日(木曜日))

【冒頭発言】

昨日と今日にわたって、ASEAN+3(日中韓)の財務大臣・中銀総裁代理会議を開催いたしました。私を含めた日本とインドネシアで共同議長を務めました。大変充実した議論、大変に白熱した議論の結果、多くの長年議論をしてきた極めて困難な課題で初めて合意ができた画期的なものとなりました。
 今回の会合の成果はお配りいたしました共同議長声明にまとめられております。様々な成果がございますけれども、5点だけハイライトしたいと思います。最初の3点はCMIMの機能強化に係るものであります。
 第1に、最大の成果ですけれども、ラピッド・ファイナンシング・ファシリティ、緊急融資ファシリティの創設にようやく合意ができました。議長として極めてまとめることが困難なプロセス、長いプロセスの交渉でありましたけれども、ついにCMIMの新しいファシリティを創設する画期的な合意が今日なされました。この新しいファシリティによりまして、メンバー国は自然災害やパンデミックなどの外生的なショックによって緊急の資金需要が生じた場合に、迅速に通常のCMIMのファシリティの上限の半分の金額をコンディショナリティなしに供与を受けることが可能となります。アジアは、つい最近のインドネシア、フィリピンの例を見ましても、非常に災害の多い地域でありまして、まさにこうしたファシリティを必要とする地域であります。また、先般のCOVID-19のパンデミックによって、こうしたファシリティの必要性を我々も痛感をした次第であります。
 第2に、地域金融セーフティネットの資金構造についての議論のロードマップに合意をいたしました。このロードマップ、来年2024年にIMFモデルを含む様々なオプションを軸に財源やガバナンスへの影響を検証して、2025年にオプションを絞っていく流れでございます。今後、じっくりとメンバー間で検討していきたいと思っています。
 第3に、CMIMのマージン、つまり金利ですね、この金利の見直しの議論。これも非常に長い交渉だったんですけれども、今回完了いたしました。これによりまして、IMFと同程度までマージンが下がりまして、借り手がよりCMIMにアクセスしやすくなります。
 第4にAMRO、すなわちASEAN+3マクロ経済リサーチオフィスの機能強化であります。今回新設するAMROの幹部ポストの所掌、さらには2024年半ばまでにそのポストの採用を完了することに合意ができました。AMROは域内の経済サーベランスを担っておりますけれども、新たな幹部ポストによりまして、増大するサーベランスに対するニーズへの対応が可能になります。
 最後に、災害リスクファイナンス、DRFであります。5月のインチョンでの大臣会合におきまして、災害リスクファイナンスはASEAN+3の定例議題に格上げがされました。今般、事務局の設置にようやく合意ができました。これによりまして災害リスクファイナンスの議論を安定的に推進していくことが可能になりました。
 このASEAN+3代理会合のほかにも、いろいろなバイ面会がありましたし、昨日6日には、日中韓の財務大臣・中央銀行総裁の代理会合も開催いたしました。中身は差し控えますけれども、極めて率直な意見交換が実施できまして、今後とも日中韓で緊密に意思疎通を図っていくこととなりました。
 私からは冒頭、以上でございます。

【質疑応答】

問)今回、緊急融資ファシリティの創設に合意したということなんですが、改めてこの意義を教えていただきたいのと、来年春、閣僚会合が開かれますが、それに向けてどのように進めていくかなど教えていただければと思います。

答)意義ですけれども、CMIMというのはアジアの金融の安定のためにみんなでつくった大事なものですけれども、例えば、残念ながら前回のCOVID-19の苦境の中で発動されることがありませんでした。やはり自然災害、あるいはパンデミックみたいなものがいつ起こるか分からない、そのときのバランス・オブ・ペイメントの需要に即座に応えるようなファシリティの必要性というのは、メンバー国が切望しているものでありまして、何とかつくろうというような話というのは過去からあったのですけれども、各国から色々なニーズがあり、なかなか条件が折り合わない中、今回初めてまとめることができました。今後ですけれども、来年の春に行われる予定の大臣・総裁会議で正式に創設予定で、今回創設自体は合意できましたし、それから制度設計にも原則合意できたわけですけれども、さらに具体的な中身を確定させるために、これからは韓国とラオスが共同議長になりますけれども、その下で日本も最大限のサポートをしながら一刻も早い実現に向けて議論を進めていきたいと考えております。

問)財務官が今お話ししていただいたことの確認なんですけれども、今回はあくまで緊急融資ファシリティの創設に合意したということで、来年5月にやる本会合というか、閣僚級会合で具体的な制度設計を詰めていくという流れでいいかどうかということが1つと、もう1つ、先ほどこれまで必要があったけれども条件面でなかなか折り合わなかったというお話があったんですが、差し支えのない範囲でどういったところが各国の焦点だったのか、相違点を埋めるための焦点だったのかというのを教えていただけますか。

答)まず1つ目ですけれども、今回、創設に合意しました。ただ、形式的といいますか、法的といいますか、こういう組織をつくりますよと決めるのは通常閣僚レベルでやるということで、別に創設に問題があるということはありません。制度設計の方もイン・プリンシブル・アグリー、原則合意というところまで来ておりますけれども、まだ細かいところを詰めなければならないこともありますし、それから今申し上げたとおり、正式決定、いわゆるエンドースみたいなことは大臣・総裁のレベルで行われる必要がありますので、原則合意ということになっているのですが、基本的な制度設計は大筋合意できております。
 それから何が問題かというのは、交渉ですので具体的なことは差し控えますけれども、ものすごく一般論で申しますと、借り手の方はなるべく条件などが緩い方がいいわけですね。コンディショナリティ等無しで直ちに大量の額を借りられるように、自分たちの使い勝手がいいようにしてほしい、と。他方で、資金の出し手の方にも限られたリソースしかありませんから、しっかりと有効に使われるように、無駄に使われないように、フィージビリティの中で何ができるかということを考える必要があるわけです。また、それに伴って、先程も申し上げたCMIMのマージンの話、これは今回まとまったのですけれども、本体でさえ、やはり金利水準をどうするのかというのは非常に長い交渉が行われてきたわけです。これも全く一般論ですけれども、当然、借り手の方は安い方がいいだろうし、貸し手の方はリスクをとるわけですから高い方がいいというのは全ての金融に一般的に言われることですので、こうした形で無数にいろいろな論点があって、極めて複雑な交渉でありました。
 コンフィデンシャリティの部分もありますので、全てを書くことはできなかったのですけれども、例えば、今日お配りした共同議長声明の次のページに制度設計の公開できる部分を載せています。目的をどうするのかというのも、どれだけ幅広くやるのかとかありますし、それから利用のところ、コンディショナリティの関係がありますけれども、どういう条件の場合があるのか。それから金額ですね。どれぐらいの金額にするのか。それから、満期はどうするのか。ここに書いてあるものだけでも無数の論点があるわけでありまして、非常に複雑な交渉でありましたけれども、誰がどういうスタンスをとっていたかというようなことについては、今回合意できたものですから、控えさせていただければと思っております。

問)2ページ目のところで、ショックに関して自然災害やパンデミックなどを含むが、これらに限定されないということが書かれていますけれども、あとほかにどういったことが想定され得るというふうに考えればよろしいでしょうか。

答)それは起こってみないと分からないですね。あえて自然災害やパンデミックだけじゃないよという趣旨でこれを書いていて、ほかにもいわゆるエグゾジナスショックで大変なことになることは恐らくあり得るんだろうと思います。だから、逆に言うと、これは下にありますような脆弱な経済のファンダメンタルズとか、国内政策運営、要するにまずい、だらしない経済運用をしていたから、例えば外貨ポジションがまずくなっちゃったと、それは助けられませんよと。ただ、自然災害やパンデミックに限らず、本当にどうにもならない突発的な外的ショックだったら対象になり得ますよという趣旨で書いてあります。

問)今回ASEAN+3ですけれども、年末に首脳レベルで日ASEANがあると思うのですが、今回の会議で日ASEANの首脳レベルにつながるものというのはあったのでしょうか。

答)それはこれからですね。日ASEANの首脳会議に持っていくというか、繋げていくものもあるかもしれませんし、当然ASEAN+3のプロセスというのはこれからもずっと続くわけですから、そちらの方でプレイアップする可能性もあります。それについてはまだ、日ASEAN首脳会議も準備を始めているところですので、どうなるかというのはまだ申し上げる状態ではございません。

問)今の会議の話とは直接関係ないのですけれども、今回の会議では休憩時間に石川県のお菓子とか、そういうのが配られたと思うんですけれども、もし可能ならお客様の反応といいますか、あとは地方でこういった会議を開く意義というのを伺えればと思います。

答)お世辞を言っても仕方がないので率直に申し上げますが、非常に好評でした。石川県にも強力にサポートしていただきましたし、それから地元で言えば、私共財務省の出先機関である財務局にもお手伝いいただいて、みんなで非常にいい歓迎ができたと思っています。お客様方、200人近くアジアの要人が来たわけですけれども、ことごとくホスピタリティへの感謝といいますか、謝意をおっしゃっていましたし、お食事も地元の新鮮な魚介類を含めていい料理を出していただくとともに、地元のお酒も出して、それもことごとく好評だったと思っています。何よりも非常に高いホスピタリティですね、地元の方々に歓迎してもらったという感じで皆さんに捉えていただけたのは、非常によかったと思います。
 地方でやることというのは、いろいろなメリットがあります。おもてなしするのにホテルや日本が誇る伝統を見ていただいてということで、よりいい雰囲気で議論ができるだけじゃなくて、日本の文化・伝統・歴史に対して理解が深まれば、それは世界における日本の地位の向上、あるいはより平和な社会への1つの貢献になると思います。あえて申し上げると、地方でこういう国際会議をやりますと、国際的な問題、あるいは国際協調の重要性、グローバリゼーションの進展などへの考えを深められる、地方にとってのよい機会になるというメリットもあるでしょうし。様々な利点がある中で、ほかの国も必ずしも首都ではなくて、自慢できる地方都市で開催することは少なくない状態であります。

問)細かいことで恐縮なんですけれども、今回議長声明という形になっていまして、要は日本とインドネシアの2カ国の声明ということだと思うんですけれども、デプュティでこういう形で出していただくのは珍しいと思うんですけれども、これが議長声明であって、いわゆる共同声明でなかった、そこの違いというのがもしあればお願いします。

答)それは今まさにおっしゃったとおりで、通常代理レベルでは出さないのですね。ただ、今回は非常に画期的なものがまとまったので、それを1つの成果としてしっかりと皆さんに報告するとともに、一種のアンカーですね、こういうふうに公表することによって次の段階に進めるようなステップになるだろうということで皆で議論して、ただ、これまでに代理で議論をしていきなり声明とかを出したことがないのに、いわゆるジョイントステートメント、共同声明を発表するというのもちょっと大変だろうということで、議長声明ぐらいにしようと、そういう感じだったと思いますね。だから別に、揉めたから議長声明になったということではありません。

(以上)