【質疑応答】
問)本日、来年度から5年間で総額43兆円の防衛費の内訳などを示した安保3文書が閣議決定されました。また本日決定した与党税制改正大綱にその財源の一部を法人税とたばこ税の増税、復興特別所得税の転用による組み合わせで確保する方針が示されました。防衛費の大幅な増加により企業や国民の負担も増える方向ですが、それぞれの決定事項について大臣のご見解をお願いいたします。
答)今ご質問にございましたとおりに、先程の閣議におきまして、国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画からなる、いわゆる「3文書」を閣議決定いたしました。
これら「3文書」の策定に当たり、総理からも、防衛力の抜本的な強化に向け、内容、規模、財源を三位一体で検討していくとの方針を繰り返し申し上げてまいりましたが、国家安全保障会議のほか、有識者会議や与党における議論を経て、政府としての具体的な方針をお示しをし、決定することができたと、そのように思います。
今般決定いたしました防衛力整備につきましては、規模と内容ともに、これまでの水準とは次元が異なるものと認識をいたしております。我が国の予算においても、防衛関係費は社会保障関係費に次ぐ大きな規模となり、まさに安全保障と財政の両面で、歴史的な転換点になると考えております。
こうした中で、防衛力を抜本的に強化し、これを将来にわたり維持・強化するため、歳出改革、決算剰余金の活用、税外収入を活用した防衛力強化資金の設置といった、様々な工夫を先行して行った上で、それでもなお不足する財源について、国民の皆様に税制での協力をお願いしたいとの総理の指示を踏まえまして、政府内だけでなく、与党においても集中的に議論をしていただきました。
今般、与党税制改正大綱におきまして、税制の具体的な内容も決定していただきましたが、今後の予算編成や国会審議等を通じまして、防衛力強化の内容・規模・財源の3点につきまして、ご理解とご納得を得られるよう、政府一丸となって丁寧な説明を尽くしてまいりたいと考えております。以上が私の見解でございます。
問)防衛費増額の財政に与える影響をお尋ねします。大臣は先日の閣議後会見で2025年度のプライマリーバランス黒字化計画は堅持する旨の発言をされました。ただ防衛費の一部を建設国債で調達するような検討もされていると思います。また剰余金を防衛費に充てると今度は補正を組むために多くの国債発行が必要になる、そういった恐れもあると思います。防衛費の増額はやはりプライマリーバランスに一定の影響を与え得ると思うのですが、どのようにお考えでしょうか。
答)今回、この防衛力を抜本的に強化するということで、先程来申し上げたようなこと、歳出・歳入の改革、歳出削減ですね、そういうことを十分した上で、足らざるところを国民の皆さんにご負担を願うという、そういうことを申し上げたわけでありますが、そこはしっかりと財源手当ができていると、そういうふうに思ってございます。
一方において、やはりこの財政規律を守るということ、これはもう極めて重要なことでありますので、一定の影響はもちろんあるということなのかもしれませんけれども、2025年度プライマリーバランス黒字化に向けて、しっかりと取組を進めていきたいと思います。まさにこの増える部分についての財源措置というものはしっかりやっているということでございます。
問)2点伺いたいんですが、まず防衛費の財源のところでなんですけれども、法人税、所得税、たばこ税の部分については、来年度の税制改正法案の提出は見送られるような状況かと思うんですが、歳出が先行して法的な裏づけがないまま、ある意味見切り発車することになると思いますが、その現状をどう受け止められるかということを教えてください。これがまず第1点です。
2点目、今日午前だったかと思いますが、3大臣会合で薬価の改定について合意されたかと思います。今回不採算品と新薬で特例的な加算がなされるかと思いますが、これまで社会保障費の抑制は大きく薬価に頼ってきた部分もあるかと思うんですけれども、前回の改定よりも削減幅は恐らく小さくなると思いますが、この辺りの問題をどう捉えていらっしゃるか教えてください。
答)まず最初のご質問でございますが、岸田総理が検討を要請した1兆円強の増税について、今回の税調では、具体的な増税の時期等は決定しなかったというご指摘のとおりでございます。
本日決定された与党税制改正大綱において、総理から指示のあった「税目」「方式」とそれから「施行時期」に関する具体的内容、これは、私はしっかり提示されているものと、そういうふうに考えます。
その上で、もとより総理からは、令和9年度に向けて、複数年かけて段階的実施、それから来年度からの国民の負担増は行わないとの指示もありまして、与党税制調査会において、法人税率等の詳細内容については、今後改めて年明けに議論されると、そういうふうに理解しているところでございます。
それから3大臣合意、薬価改定に関するものでありますが、令和5年度薬価改定について、本日、官房長官、厚生労働大臣、そして財務大臣で合意をいたしました。
毎年、市場価格に合わせた薬価の引下げを行っていくこと、これは国民負担の引下げという観点からも重要な取組であると考えています。また今回の薬価改定では、不採算品や革新的な新薬に対する特例を設けて、安定供給の問題、イノベーションに配慮した対応を行うこととしております。
年末に向けまして、予算編成作業の大詰めを迎えていますけれども、引き続き、関係省庁と連携して、必要な歳出改革に取り組んでまいります。
今回薬価調査をしたところ、乖離率が2年前とは違って少し縮まっていたということが、2年前の効果に比べて少し低くなったというふうに理解をしております。
問)今回法人税の増税というところが1つポイントになったと思いますが、政府としても賃上げについて進めている中で、経産大臣からも賃上げを損なわないようにというところが、かなり発言があったと思いますけれども、今回バランスとして、財務大臣の受け止めをお願いします。
答)今回の法人税率の引上げについても、企業活動については、特に中小企業等に対する配慮というものがなされているというふうに私は思っております。
今般の与党税制大綱において、防衛力強化に係る財源といたしまして、法人に追加的な負担をお願いするわけでございますが、先程申し上げました一定の配慮ということについて言いますと、具体的には法人税額に対して4~4.5%の付加税を課すということとしておりますけれども、令和3年度においては、法人の申告所得金額が過去最高を記録するなど、企業業績が好調である中で、法人税率に換算をいたしますと、1%程度のご負担をお願いするものになります。こういう点を考えますと、企業活動にも一定の配慮がなされていると、そういうふうに考えております。
加えまして、地域経済・雇用を支える中小企業には、所得2,400万円程度まで付加税が課されない仕組みとすることで、特に配慮されているものと、そういうふうに承知をしております。
全体として、付加税の対象となります法人数は、全法人の約6%になると、こういうことでございます。
いずれにいたしましても、賃上げは重要な政策課題でありまして、税制上も令和4年度税制改正においては、賃上げ税制の大幅な拡充を行ったところであります。政府としても、こうした制度を通じて企業の構造的な賃上げの実現に取り組んでまいりたいと思っております。
問)所得税の部分についてお伺いします。確かに復興所得税を引き下げて、一方で1%の新しい防衛目的のための新たな付加税をつくるということで、少なくとも2037年までは2.1%という税率のまま進むと思うんですけれども、その先38年以降については、復興特別所得税の延長分というのが、本来37年までで終わる部分について、今度38年以降期間延長という形であると思います。これは、総理は国民の所得税の負担の追加はない、増やさないというような趣旨のことをおっしゃっていたと思いますが、それとの整合性というか、期間延長分については実質的な負担になるのではないかという、そういう懸念というのもあるのかと思うんですけれども、その点についてどうか、これが1点。
あともう1点、一方で1.0%の新しい付加税の防衛の方は、これは当分の間というふうになっているんですけれども、防衛費、恒常的な財源というのが必要な観点からすると、この当分の間というのは恒久化し得るのではないかというような見方もあるんですけれども、この点についてその当分の間というのは一体どういうことをイメージされているのか。
答)2番目の方からお答えしますと、私のイメージでは、いよいよ令和5年度の予算から始まるわけです。様々な工夫をするという中において、先程申し上げたような法人税の付加税方式とか、そして今ご指摘の震災復興にかかわる上積みの2.1%の部分の取扱い等をやっていくわけでありますけれども、これをまず進めていかないと。先々のことは、やはり巡航速度に入っていって、令和9年度以降ずっと続けていくわけですから、そのときの財源確保の状況を見ないと、今の段階でこれがどういう扱いになるかというのは、まだはっきり言えないということがあるんだと思います。
それから1つ目のご質問について言えば、総理のご発言は、今の厳しい経済状況等を考えましたときに、新たな負担につながるような、そういうような所得税の引上げということは考えないという、私はそういうふうに受け止めております。
実際のところ、上乗せ2.1%のうち1%について、その分復興の方は下がるわけですけれども、新たな負担は発生しないということなので、総理の発言との整合性は取れているんだと、そういうふうに思います。
そして復興について言えば、これは特に福島におきましては、廃炉あるいは福島国際研究教育機構の構築など、長い道のりをこれからもとっていくわけでございまして、まさに国が前面に出てしなければいけないと。こうした支援がしっかりできますように、東日本からの復旧・復興に要する財源を、引き続き、責任を持って確保するものとされております。
私も岩手県出身でございますけれども、被災地の方には、やはり心配する向きが率直に言ってありますので、こういう点につきましては、丁寧に説明して、復興財源を引き続きしっかり責任を持って確保するということをご理解いただきたいと思っております。
問)先の話になってしまうんですが、岸田総理は子ども・子育て予算の倍増という発言もされているわけですけれども、新たな財源は当然、来年度以降検討されるわけですけれども、現時点で何か具体化されているような財源の案だとか、今回かなり防衛費によってバッファーの部分が削られたかと思うんですけれども、兆円単位の恐らく財源が必要となってくるかと思いますけれども、この辺について現時点ではどのような状況か教えてください。
答)ご指摘のとおり、子ども政策を力強く進めていくためには安定財源、これが必要であるわけでありまして、これにつきましては、国民の皆様の理解を得ながら、社会全体で負担の在り方を含めて幅広く検討を進めていくこととしております。
その上で、本日開催をされましたが、全世代型社会保障構築会議の報告書が取りまとめられまして、当該報告書に基づいて、今後、政府として、財源を含めた諸施策の検討を着実に進めていくということでございます。
まず、足元の課題といたしましては、令和5年度予算案があるわけでありますけれども、その中におきまして、出産育児一時金の大幅な増額について、必要な安定財源の確保を含め調整をしてまいります。
そして、来年の骨太の方針を来年取りまとめるわけでありますが、その骨太の方針では、将来的な子ども予算の倍増を目指していく上での当面の道筋について、必要な安定財源の確保を含めお示しをしていくこととなると、そのように承知をしております。
問)先程の法人税のところでもう一度解説をいただきたいのですけれども、法人税の税率に換算すると1%程度の負担になるという、そういう理解でよろしいのでしょうか。
答)結構です。
問)あと、先程おっしゃっていた法人税の対象となるのは、何に対する6%になるんですか。
答)付加税の対象法人数は、全法人の約6%となります。
問)防衛費に関連して、増税の時期が2024年以降に先送りされたことによって、あと法案化も来年以降に持ち越しになったということで、マーケットからはなし崩し的に国債発行になるのではないかという意見もありますけれども、国債以外の財源できちんと確保できるのかということを、マーケットに向けて、いま一度確認をお願いします。
答)今、新たに伸びる部分について国債を使用することは考えておりません。
ただ現行中期防の上に乗っかるわけでして、現行中期防内の予算につきましては、これはもう国債を発行してやっております。
しかしこれから上に伸びていく部分については、国債の発行は考えていないということであります。
問)それは現在の中期防の計画の範囲、5年間、2027年度までの話ですよね。
答)そうですね。
問)2028年度以降はどういう考え方になるのでしょうか。
答)総理が国債について、これまで一連の指示の中でおっしゃってきたのは、将来にわたり、強化された防衛力を安定的に支えるためのしっかりとした財源措置と位置づけることは、国債については困難とこう言っておりますが、これは今度のGDP対比2%にするというところで、上に乗っかるわけですね。今まで1%だった、そこから上に乗っかるところの部分について、そのように述べておられるということでございます。今までの中期防内の予算、その中には国債も含まれているということであります。
問)先程、伸びる部分については、国債は発行しないということでおっしゃっていたかと思うんですけれども、これはあくまで赤字国債であって、伸びる部分の一部というのは建設国債を使うという理解でよろしいでしょうか。
答)いえ、違います。建設国債を、この防衛費対象にするかということについては、今時点で、まだ明確に決まっておりません。
(以上)