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財務省・日本銀行共同記者会見の概要(令和4年2月18日(金曜日))

【冒頭発言】

財務官)恐れ入ります。ジャカルタからご報告申し上げます。まずは夜遅くなってしまいまして、申し訳ありません。かなり会議が長引いたこともありまして、この時間になってしまいました。
 17日、18日の2日間にわたって、「共に回復し、より強く回復する」「Recover Together、Recover Stronger」こういったテーマを掲げるインドネシアが議長を務める最初のG20財務大臣・中央銀行総裁会議が開催されました。世界経済、パンデミックへの対応、国際課税、低所得国支援を含む国際金融、気候変動対策、金融セクターといった幅広い課題について議論が行われまして、その成果はお手元に配付した声明に取りまとめられております。
 今回の会合はインドネシア議長の下での初めてのものでありますので、私からはインドネシア議長下における今後の作業の予定、この1年どういうことをやっていくのかということを含めて、主なポイントをご説明申し上げます。
 まず、世界経済であります。回復が続いているものの新たな変異株の出現等が回復のペースに影響を与えているとされています。また供給の混乱等によるインフレ圧力が世界経済の見通しにリスクをもたらしているとされました。さらに、地政を巡る緊張(geopolitical tensions)を含むグローバルなリスクを引き続き監視することとされました。こうした中でパンデミックによる影響に対処するため、引き続き全ての利用可能な政策手段を用いること、他方、経済回復の継続に伴って政策支援を適切に修正して、より的を絞ったものにしていくこととしています。また各国固有の状況に適切に配慮して、よく調整され、計画され、コミュニケーションのとられた回復を支えるための出口戦略(exit strategy)へのコミットメントを確認いたしました。パンデミックへの対応、これについては特に低・中所得国等における新型コロナワクチン等の確保に引き続きコミットをいたしました。
 また、昨年設立に合意したG20財務・保健合同タスクフォースは、財務省と保健省の間の連携体制の発展を目指すこととされ、10月に予定されるG20財務大臣・保健大臣会合会議に報告書を提出することになりました。
 また、パンデミックに対するPPR、予防、備え及び対応、これについては適切かつ持続的な資金調達を確保するための金融ファシリティを設立するための方策について、タスクフォースによる報告書を4月に評価することになりました。
 国際課税につきましては、昨年合意された国際課税パッケージの迅速な実施を確保するために、詳細な実施計画で定められた工程に沿って、多国間協定の策定等にコミットいたしました。
 国際金融については、1つにはCBDC、中央銀行デジタル通貨が国際通貨金融システムに与えるマクロ金融上のインプリケーションに対する理解をさらに深めるため議論を継続すること、2つ目に、IMFに対して2020年春会合までに、新たな基金であるRST(強靱性・持続可能性トラスト)を設立して、2022年の年次総会までに稼働させるために加盟国に協力を求めること。それから3つ目、債務問題については、これは本当に非常に白熱した交渉、もう何十時間も、一番激しい交渉になりましたけれども、日本の議論への貢献もありまして、債務措置に関する「共通枠組」(Common Framework)について、適時かつ秩序立った方法で連携して実施する取り組みを強化すること、こういった点で合意をいたしました。
 気候変動については、ネットゼロに向けたポリシーミックスは適切な場合には炭素に価格付けを行う仕組み等を含めまして、財政、市場、規制の幅広いメカニズムを含むことを確認いたしました。またこうした取り組みについて、G20でさらなる技術的作業を受けて、協調を継続する予定であります。
 また、今後トランジションのためのファイナンスに関するハイレベルの枠組みの策定、トランジションというのは脱炭素化への着実な移行でありますけれども、そのためのファイナンスに関するハイレベルの枠組みの策定に向けた作業を行うことに合意をいたしました。
 金融セクターについては、暗号資産市場がグローバルな金融安定をもたらす潜在的な恩恵とリスクについて、包括的な方法で引き続き評価し、対処することに合意いたしました。
 G20/OECDコーポレートガバナンス原則、これは世界唯一のコーポレートガバナンスに関する国際基準(International standard)になりますけれども、これの見直しについては、OECDによる進捗報告を歓迎して、7月のG20財務大臣・中央銀行総裁会議には、OECDからの見直しの草案についての報告がされる見込みとありました。
 このように今回のG20では、様々な分野で議論が進むとともに、今後インドネシア議長下で予定される具体的な作業も特定されるなど、多くの成果が得られたものと考えてございます。
 冒頭の私からの発言は以上となります。なお、質疑応答には、日本銀行の清水理事もご参加されますので、金融政策等にかかるご質問については清水理事にもご質問いただければと存じます。私からは以上でございます。

【質疑応答】

問)神田財務官にご質問したいと思います。今回会議が大分予定の時間より長くかかったようですけれども、今回ウクライナ情勢をめぐって、何かウクライナ問題での議論が紛糾して会議が長引いたとか、何かそういった事情とかはあったのでしょうか。

財務官)ウクライナにつきましては、関係するところで言いますと、先ほど申し上げましたとおり、今回の声明の中で、地政を巡る緊張を含め、グローバルなリスクを引き続き監視することとされていますというふうにまとめられてございます。もっとも各国の具体的な発言には言及しないこととなっていますので、個別具体の議論の内容についてはコメントを差し控えますが、もちろんこういったことについての議論もなされましたが、これが特に今回長引いたという主因では必ずしもなかったような記憶でございます。
 とにかく先ほど申し上げたように、あらゆる分野、最近はG20で扱いますし、特にその中では気候変動とか、あるいは債務問題のような非常に利害が対立し、調整に非常に困難を要するようなものも少なからずございますので、そういうものを併せて大変これまでにないような長い交渉になりました。
 以前からいろいろな事務的な調整はするんですけれども、火曜日、水曜日と代理レベルのものがあって、木、金と大臣レベルがあったわけですけれども、並行してずっとこのコミュニケの調整があって、これ本当に毎日朝3時、4時まで続くような、最後の日も相当にぎりぎりの調整をする結果、なかなかコミュニケのいわゆる採択ですね、予定どおりの時間には終わらなかったんですけれども、最後こういったインドネシアの最初の会議にとって立派な成果が、その努力のかいがあって得られたものではないでしょうか。

問)現地のインドネシア国営テレビの方から質問をいただきましたので、英語でいただきましたので、司会から日本語の方で紹介させていただきたいと思います。
 2問ございます。1問目でございますが、インドネシアと日本の協力関係について改善すべき分野は何ですかという質問でございます。

財務官)ありがとうございます。非常に大切なご質問だと思います。インドネシアとの間には、本当に長年にわたる協力の歴史がございまして、1958年の国交樹立以降、特定の分野だけじゃなくて本当に様々な分野で、官民を挙げてインドネシアの発展に貢献している機会を有り難く、また誇りに思っております。経済協力では累積で500億ドルを超える公的な支援を行ってきていまして、日本はインドネシアにとって最大の二国間援助国であって、また日本にとってインドネシアは最大のODA受け入れ国でございます。インドネシアの最初の地下鉄であるMRT、あるいはパティンバン港のインフラ整備、グランタスクの奇跡と呼ばれる改革にも尽力してまいりました。日系の民間企業による投資もインドネシアの発展に大きく貢献してまいりまして、約2,000社の日本企業がこの国で活躍させていただいていて、約720万人の雇用を生み出し、GDPの8.5%に貢献、その24%は日系企業による産品となってございます。
 経済成長を続けるインドネシアが、いわゆる中所得国の罠に陥らずに、持続的な成長を実現するには、インドネシアが地域の生産輸出拠点となることが重要であります。日本はそのためにパティンバン港の建設・運営をはじめ、官民で協力をいたしておりますけれども、日本からの投資をさらに呼び込み、日・インドネシア間で本当にウィン・ウィンの関係を築いていきたいと思っております。
 また、ビジネス投資に加えて人の往来の活性化にも高い関心を持っておりますので、日本は少子高齢化が進み、そしてインドネシアは若い人口が増え続けておりまして、人的協力を進めることでシナジー、相乗効果が期待できます。
 現在、残念ながらコロナ禍によって、人の往来が厳しい状況ですけれども、就労、留学、観光といった各分野で、人的交流を深めていきたく、そのためにもコロナ禍が早く終息して、自由な交流が飛躍的に伸びることを願っている次第でございます。

問)インドネシア国営テレビから2問目でございます。G20諸国、特にインドネシアへの投資機会についてどのようにお考えでしょうか。

財務官)インドネシアに投資する日本企業は、インドネシア市場の今後の成長性に期待しております。世界第4位の2億7,000万人の人口を有して、長期的な人口増加も見込まれることから、今後の経済成長が期待されています。
 また、自動車産業をはじめとするサプライチェーンの蓄積によって、生産輸出拠点としてのインドネシアを高く評価している企業もございます。他にも日本のインドネシアへの投資は、自動車、運輸、インフラ、不動産など、様々な分野にわたりまして、日本企業がこれらの分野に投資してきたのは、技術や品質などの面で強みがあるからであります。
 さらにインドネシアの経済成長と所得水準の向上に伴って、インドネシアの人々の新たなニーズに対応した製品、サービスのニーズが高まっております。今後エネルギー転換の必要性が高まり、カーボンニュートラルに向けたエネルギー転換の過程においても、新たな投資機会が生まれることを期待しております。
 インドネシアが他国と比較して、さらに競争力を高めるには投資環境の整備が課題であります。インドネシア政府はオムニバス法などを通じて、投資環境の改善に努めているところ、インドネシアの競争力向上がさらに進むことを期待しております。インドネシアがパンデミックから回復し、インドネシア政府が投資環境を改善することができれば、日本の投資は必ず戻ってくるし、今後増加していくことを確信しております。

問)仮訳の中で、地政学リスクのところなんですけれども、声明で発生中のという地政を巡る緊張や発生中の地政を巡るリスクという表現がありますけれども、これは一部報道で”current”が入るのか入らないのかというようなところが議論になっていたという話もありましたけれども、発生中のという言葉は入った形で採択されたという理解でよろしいでしょうか。

財務官)おっしゃるとおりで、正確に言うと、monitor major global risks、それにincluding from geopolitical tensions that are arising、that are arisingなgeopolitical tensionsから生じるものを含めた大きなglobal risksをしっかりと監視しなければいけないということで、皆が念頭にあるものはしっかりreferされていると考えられます。

問)あともう1点なんですけれども、インフレ率の上昇のところで、これは清水さんにお伺いした方がいいのか、中央銀行のくだりで必要なところにおいて物価の安定を確保するため、それぞれのマンデートに沿って行動すると。これは黒田総裁、それぞれの物価、各国の物価情勢に応じて金融政策をするんだと、それはBISなどでもかねがね主張しているところだというふうにおっしゃっていましたけれども、これは欧米では正常化に向けた動きが出てきていますけれども、日本の状況、物価情勢を踏まえれば、日銀の金融緩和の姿勢、とっている姿勢に関しては各国の理解を得られたという形でこういう文言になっているという理解でよろしいでしょうか。

清水理事)では、私の方から回答させていただきます。今ご指摘のとおり必要に応じてと言いますか、各国、各地域の状況に応じて金融政策を運営していく、ないしはインフレに対応していくということが議論の結果として採択されているところです。その中身については、やはり日本において、他の諸外国、特に高いインフレ率が生じている米国や英国といった地域に比べると、CPIも0.2%ということで落ち着いていますので、そういったことを踏まえて日本は日本に応じた形で金融政策を運営していく、すなわち、当面緩和的な政策を粘り強く行っていくということで理解を得られたと認識しています。

問)まず、神田財務官にお伺いしたいんですけれども、先程、一番白熱したのが債務問題だということでした。今回の会議が延びた理由も、そこが一番大きな理由だったのと、2時間近く延びた理由、一番長くなってしまった議論というのが何だったか、まず教えてください。

財務官)どれかというのではないですね。2時間じゃなくて、正確に言うと数十時間延びたと、僕らの印象ではそうで、毎晩朝3時、4時までやっていましたから。それはもう債務に限らず、あらゆる分野で新しい分野にチャレンジしようとして、当然それでネガティブな国もあれば、頑張ってやりたい国もあるし、それを本当にフィージブルにするためには、いろいろな調整をしなければいけなかったので、野心的な分それだけやはり時間がかかるし、ものによっては次回以降に議論を持ち越すものも出てきたんだと。
 かなりいろいろ、先程申し上げたとおり、今回ストレートな成果が出るというより、第1回目の会合ですから、これから半年、1年かけてやっていく、言ってみればアジェンダセッティングという性格の会議になります。まさに、言ってみれば、今後こういうことをやるんだというものの陣地取りみたいなところもあって、したがって最初に少しでも協働を築ければ、今後大きな成果を持っていくこともできるし、あるいは喫緊の課題についてそこの取っかかりができれば、世界に対して貢献できる一方で、全く入らなかったら、なかなかこの1年間アジェンダにもならない可能性もあるわけで、そういった意味で、非常に世界の状況が流動化して、あるいは新しいチャレンジが出てきていることに加えて、1回目の会議だったということも、1つの要因だったのかもしれません。

問)もう1点、会議の中で、インフレの話、地政を巡る緊張の話、それからコロナ対策の話で、特に日本政府として強調して伝えたことはどんなことでしょうか。

財務官)強調といいますか、1つは世界経済全体に対しての影響をどういうふうに評価するかという中で、ある意味対立するというよりはコンセンサスなどは非同期的って置いていますけど、要するに”asynchronous”という言葉なんですけれども、4行目の、非常にばらばらなんですね。だから非常に難しい、しかもインフレ1つとっても程度が違う、ものすごく抑えなきゃいけない大変な状況のところから引き続きデフレのところもあるわけでありまして、しかもその要因が様々であると。ここで並べています供給の混乱、需給のミスマッチ、エネルギー価格、その国によって違うわけです。当然その産油国といいますか、資源国と消費国では違いますし、それから地政学の影響の持たせ方も国によって違う中で、それぞれの対応も非常にcalibrateしなきゃいけない。
 他方で大事なのは、過去のいろいろな経験もありますので、しっかりと混乱がないように公然としなきゃいかん、それが2パラの真ん中辺にある、よく調整される部分ですね、well-calibrated、well-planned、well-communicated、exit strategies、要するに、これからだんだんとまた押し込んでエグジットしていく中で、しっかりとマーケットとのコミュニケーションを含めて、あるいは各国当局の中で共生をして混乱のないようにやっていくというのが極めて重要であって、これは恐らく、まさにコミュニケに書かれているとおり、全体としてのコンセンサスになったんじゃないかなと感じます。

問)2点あるんですけれども、1つがインフレの高まりで議論の中で、アメリカというか先進国の金融の引き締めが進められようとしていることについて、新興国などから懸念とかというのは出されたのでしょうか。声明の中にもそういった文言というのは入っているのかということが1つ。
 もう一つちょっと確認なんですけれども、ウクライナの緊迫化については、経済に与える影響というものが直接ウクライナという地名も出された上で議論されたのでしょうか。

財務官)ウクライナが議論されたかというのは、申し訳ありません個別の議論はお互い言わないことになっているので、コメントできないんですけれども、ただテキストに今起こっている地政を巡る緊張というのは、読めば明らかじゃないかなという気がいたします。

清水理事)コミュニケに書いてありますように、やはりインフレが高まってきている環境ということを踏まえて、そのスピルオーバーの効果、ある意味、金融の環境がタイトニングされた結果として、それが周囲の国ないしは地域に与える影響についてもしっかり注意を払っていく必要があるという点と、また金融政策のところにも、しっかりとコミュニケーションをとっていくことが必要であるという議論があり、ここは全体的に共有された認識であると思います。

問)先程の質問にありましたけれども、先進国の金融政策に絡んでですけれども、議論の中で、アメリカが来月にも利上げかと言われている環境がありますけれども、そのあたりを具体的に指摘して議論というのはなされたのでしょうか。それとも、そういうところは名指しはせずに議論されたのでしょうか。

清水理事)私からお答えします。各国それぞれに自分たちの国ないしは地域の状況を説明した上で、こういう形で金融政策ないし財政政策をやっていくということを、それぞれが発表しつつ、また議論を行っていますので、米国についても、また欧州についても、先程申し上げたとおり日本についても、現状の認識と政策運営上の考え方というのは、それぞれに説明があったところです。

問)G7の方では、先日財務相の共同声明で、ウクライナの情勢に関して、経済制裁も用意というような、割と強い文言での声明が出ていると思うんですけれども、今回、先程具体的にはという話ありましたけれども、ロシアへの経済制裁という意味の文言に関して、先日のG7に関しての声明について何らか議論があったような状況でありましたでしょうか。

財務官)議論の中身は申し上げられないですけれども、声明にはそういったことは書かれてございません。

(以上)