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世界銀行グループの国際開発協会(IDA)第20次増資ローンチイベントにおける鈴木財務大臣のスピーチ(令和4年9月13日)


1.はじめに
 会場にお集まりの皆様、こんにちは。オンライン参加の皆様、おはようございます。こんにちは。こんばんは。本日、多くの皆様を東京にお迎えし、IDA第20次増資のローンチイベントを開催できることを光栄に思います。

 昨年12月に開催されたIDA第20次増資最終会合では、新型コロナウイルス感染症による未曽有の危機への対応に向けて、IDAの歴史上、最大規模の930億ドルの増資パッケージに合意し、国際社会が一致団結する強い姿勢を示すことができました。早い段階からIDA20の前倒しの議論を強く支援してきた日本として、会場の皆様の努力により、この歴史的な合意に至ることにできたことを嬉しく思います。今回のローンチイベントを通して、IDAの役割や意義が、日本を含む、世界中に発信されることを期待しています。

 IDA20の最終合意から9か月が経ちましたが、新型コロナウイルス感染症による影響や、気候変動、債務問題、食料問題が続いています。更に、今年に入ってロシアのウクライナ侵略による直接的・間接的な影響により、事態は一層厳しく複雑化しており、特に最貧国や脆弱国において大きな影を落としています。このような中で、世界の問題に対処するIDAの重要性は更に増しています。

2.開発課題
 本日はこの場をお借りして、日本がIDAとともに取り組むべきと私が考える開発課題について3点述べさせていただきます。

(1)気候変動
 第1に、気候変動です。2050年までに「ネット・ゼロ」を実現させるためには、途上国の積極的な参加が不可欠であり、一足飛びに再生可能エネルギーへの移行が困難な途上国が、現実的な道筋で「ネット・ゼロ」に向けて歩めるよう支援することが重要です。日本は、世界銀行グループとも連携しながら、途上国の個別の事情に即した脱炭素化を引き続き支援していきます。

 また、特にIDAの支援する国々は、気候変動がもたらす災害に脆弱であり、気候変動への「緩和」だけではなく「適応」が重要です。私の出身地である岩手を含め、日本は様々な災害からより良い復興を果たしてきました。防災の知見も生かして、途上国の気候変動対策に貢献していきます。

(2)債務
 第2に、債務問題です。新型コロナウイルス感染症や、足元の食料エネルギー問題により、低所得国や脆弱な中所得国の債務問題は深刻さを増しています。こうした中、IDAが、これら諸国への資金支援を一層強化していくことを期待します。また、債務の透明性・正確性の向上の取組みを確実に進めることが重要です。債権国による世銀・IMFへの債権データの共有を含め、IDAが債権国に働きかけていくことを期待します。また、低所得国に対する財務の持続可能性、債務管理の強化に関する取組みを更に推進することを期待します。

(3)国際保健
 第3に、国際保健です。依然続く足許のコロナ禍への対応のみならず、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの普及を含む、将来の保健危機への予防、備え、対応を一体的に強化しなければなりません。より強靭で持続可能な国際保健システムの構築には、財務・保健関係者間の一層の連携強化も必要です。引き続き、財務・保健の双方の知見を有する、世銀グループの中心的役割に期待します。

 3.結語
 現在、世界は複合的課題に直面していますが、グローバルな問題はグローバルにしか解決出来ず、一国の取組だけで成功することはありません。孤立や分断ではなく、人類社会が共同し、国を超えて、知恵も経験も共有して、課題解決に取り組んでいくことが、人類が歴史から学んできた英知です。

 そのような多国間主義に基づき、国際開発金融機関が設立され、途上国の開発において重要な役割を果たしてきました。中でも世界銀行は、最高の英知と経験を集結させた国際公共財として、80年間に渡り機能してきました。

 IDA20は、複合的な危機に苦しむ世界に希望を届ける歴史的合意になりました。ターニングポイントにある国際社会の中で、世界銀行グループと各国が連携をすることで、IDAがより一層、重要な役割を果たしていくことができると確信しています。

 今こそ歴史的合意を実行に移すときです。東京でその決意を皆様と共有して、私からの挨拶を終わります。ご清聴ありがとうございました。