第35回欧州復興開発銀行年次総会における日本国総務演説
(2026年6月6日(土)於:ラトビア・リーガ)
1. はじめに
議長、総裁、各国総務、並びに御列席の皆様、
第35回欧州復興開発銀行(EBRD:European Bank for Reconstruction and Development)年次総会の開催にあたり、日本政府を代表し、ラトビア政府、そしてリーガ市の皆様の温かい歓迎に対して、心から感謝申し上げます。
総会を主催したラトビアは、特にデジタル分野で世界をリードする国の一つです。日常生活を含め、幅広い分野でデジタル化を進めていることが、EBRDの支援対象国における経済成長やガバナンス改革等の良いモデルとなることを期待します。
2.中東情勢関係
中東情勢の影響は、EBRDの支援対象国を含むアジアやアフリカにおいて顕著になっています。世界経済及び金融市場の混乱が一刻も早く収まることを期待します。
危機への対応及び危機からの回復に当たっては、肥料不足が今後の食糧生産に与える影響などにも留意しつつ、エネルギーや食糧・物流の安定化、インフラ整備等を支援していくことが重要です。この観点から、中東情勢の影響を受けたヨルダンやレバノン等の国や地域に対して、50億ユーロの投資を行う方針をEBRDが4月に発表したことを歓迎します。こうした取組が地域の経済的回復、更には強靱な経済成長を後押しすることを期待します。
こうした困難な状況においても、開発の取組を継続していくことが重要です。この度、日本は、国際協力機構(JICA)からEBRDへ7年間で最大10億ドルの貢献を行い、EBRDの多くの支援対象国において現地通貨建ての融資等を行う基金である「Japan-EBRD Initiative for Development Acceleration and Inclusion (JIDAI) Special Fund」を設立することでEBRDと合意しました。現地通貨建て融資等により、支援対象国における通貨のミスマッチの縮減、為替変動などの外部ショックへの強靱性の強化や、民間主導の経済成長の促進を支援します。
また、危機時の影響を受けやすい中小企業を支援することも重要です。日本は、昨年8月に横浜で開催したアフリカ開発会議(TICAD9)で日本信託基金の下に設立した「アフリカ特別枠(STAR)」を通じて、サブサハラ・アフリカの中小企業の金融アクセス改善や競争力強化等への支援を開始しています。EBRDには、こうした資金をアフリカの発展のために有効に活用することを期待します。
こうした支援を行うに当たっては、EBRDが、日本を含めたパートナーと、相互に補完的な形で取り組むことも期待します。日本は4月、アジア・太平洋地域のエネルギー・資源供給力を更に強化するため、100億ドル規模の「アジア・エネルギー・資源供給力強靱化パートナーシップ(POWERR Asia)」を発表しました。EBRDが、日本や、アジア諸国及びアフリカ諸国とそれぞれ強いパイプを有するアジア開発銀行(ADB:Asian Development Bank)やアフリカ開発銀行(AfDB:African Development Bank)と連携し、それぞれの比較優位を活かしながら効果的かつ効率的な支援を実施することを期待します。
3.ウクライナ
4年を超え長期化するロシアの侵略は、ウクライナに甚大な被害をもたらしており、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙です。
戦争が継続する厳しい状況下にもかかわらず、ウクライナ政府が積極的に改革努力を続けてきていることを踏まえ、国際通貨基金(IMF)の新たな拡大信用供与措置(EFF)プログラムが承認されたことを歓迎します。その上で、ウクライナ政府には引き続き、改革に取り組むことを求めます。
ウクライナ支援は、EBRDの重要な優先事項であり、日本としてウクライナに対する揺るぎない支援を改めて表明します。
日本は、ウクライナの2026年前半の財政ニーズに対応するため、ロシアの凍結資産から生じる特別収益により返済される融資(ERAローン)を一部前倒しして供与しました。また、ウクライナの継続的改革を後押しすべく、世銀融資に対する信用補完の45億ドルの追加を決定しました。
ウクライナの今後の復興には、現在の戦時下においても経済活動を維持することが重要です。民間セクター支援を主要業務とするEBRDの役割は非常に大きく、ロシアによる侵略以降、EBRDが97億ユーロ以上の資金を動員し、エネルギー安全保障や重要インフラを中心とした支援を着実に実施していることを歓迎します。
日本としても、先に述べた財政支援に加え、ウクライナの経済活動維持も支援しています。具体的には、EBRDに設置した日本信託基金を通じ、ウクライナの女性や退役軍人への職業訓練等の雇用支援を含めた、労働力確保・生産性向上の支援を行っています。本年2月には、ウクライナを含むEBRD支援対象国への技術支援を行う同基金に約1100万ユーロを追加拠出しました。
こうした取組を続けていくに当たり、ウクライナ支援は、欧州を超えた志を同じくする国々による共同の取組であることを強調します。日本は、EBRDが長年堅持してきた開かれた調達及びアンタイド援助の原則を重視しており、特にウクライナ支援において、全てのドナーに対し、これらの原則の堅持を求めます。今後、国際開発金融機関(MDBs)を通じて提供されるドナー支援については、MDBsの利益に反する主体を除き、他の出資国の主体に不利となるような調達上の制限が課されるべきではありません。日本企業は、特に本格的な復興の段階において、事業運営の効率性及び有効性の向上に貢献し得ると強く確信しています。
4.EBRDと日本の協力
EBRDの支援対象国が中東、アジア、アフリカまで広がりを見せる中、ますます多種多様で複雑化するニーズに効果的に対応し、質の高い支援ができる体制をしっかりと整える必要があります。
そのためには、EBRDの職員の構成において、日本からの人材を含め、国籍を含む多様な背景を持つ職員の採用、登用を推進することが極めて重要です。また、日本企業を含め、各国の企業が有する様々な技術、知見をEBRDの支援プロジェクトに活かしていくべきです。
EBRD東京事務所が、日本とEBRDの橋渡しとなり、日本の人材、技術、知見がEBRDの支援対象国で一層活用されることを期待します。
5. 結語
ルノーバッソ総裁は、2020年の就任以降、新型コロナウイルスによるパンデミックやロシアによるウクライナ侵略、中東情勢等、世界経済に影響を与える幾多の困難に立ち向かい、大きな成果を上げてこられました。現在、世界が様々な要因で一層の不確実性に直面している中、EBRDの果たす役割の重要性は更に増しています。ルノーバッソ総裁の強力なリーダーシップの下、EBRDが開発支援、市場経済への移行支援、公平で競争力のあるビジネス環境の構築を始めとしたその使命の遂行に邁進することを期待します。
日本は引き続き、資金面のみならず、政策面・人材面でもEBRDの取組を後押ししていく考えです。
(以 上)

