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第30回EBRD年次総会日本国総務演説(令和3年7月1日 バーチャル形式)

第30回欧州復興開発銀行年次総会における元榮政務官総務演説
(2021(令和3)年7月1日(木)バーチャル形式)


1. はじめに

 議長、総裁、各国総務、並びにご列席の皆様、

 第30回欧州復興開発銀行(EBRD:European Bank for Reconstruction and Development)年次総会の開催にあたり、日本政府を代表して一言申し上げます。

 今回の年次総会は、ルノーバッソ総裁の下で迎える最初の総会であるとともに、EBRDの設立30周年に当たる節目の総会です。昨年10月に続くバーチャル形式となった本総会の準備を行ってきたEBRDスタッフのご尽力に、心から感謝申し上げます。この30年間で、EBRDの役割や支援対象は大きく変化しましたが、EBRDはこれまで柔軟かつ真摯に地域のニーズに応え、その務めを果たしてきました。

2. ポストコロナのより良い経済復興(Building Back Better Economies)

 新型コロナウイルス感染拡大によりEBRDの支援対象国も深刻な打撃を受ける中、EBRDが昨年3月に速やかに対応策(COVID-19 Solidarity Package)を決定・実行し、2020年に過去最高となる110億ユーロの年間業務量で各国を支援したことを評価します。

 ポストコロナの復興過程でも、EBRDにはその強みである中小企業支援や気候変動対応・デジタル変革等の分野で主導的な役割を果たすことを期待します。また、限られたリソースを効果的かつ効率的に活用する観点から、EBRDは引き続き、最大の移行効果が見込まれる地域・分野での支援に重点的に取り組むべきと考えます。具体的には、中央アジアやモンゴルを始めとする市場経済への早期移行段階の国(ETCs: Early Transition Countries)に対する支援を十分行うことを求めます。

3. EBRDの中期的な政策課題

 次にEBRDの政策について、日本として重視している①EBRD支援対象国の拡大と所得水準の高い国の卒業、②EBRDの気候変動対応、の2つの論点に関する日本の考えを申し上げます。

 まず、EBRD支援対象国の拡大について、日本は中期戦略(SCF:Strategic and Capital Framework 2021-2025)の合意に基づいて、引き続き建設的な議論を行っていく所存です。拡大の検討に当たっては、EBRDの付加価値や他の国際機関等との補完性について、しっかり議論していきたいと考えます。また、現在のEBRDの資本基盤の下で、その格付けを維持しながら活動地域を広げるためには、卒業の議論も並行して進めることが重要です。現在、卒業した国が危機等で再びEBRDによる支援が必要となった場合に一時的に支援対象国に戻ることを可能とする仕組み(PGOA:Post-Graduation Operational Approach)が議論されていることを支持します。

 次に、EBRDの気候変動対応に関して、EBRDが2022年末までに全てのプロジェクトをパリ協定に整合的にするとの決定を歓迎します。気候変動は世界的な課題であり、全ての国のあらゆる経済主体による取組みが不可欠です。気候変動への対応に当たっては、グリーンか否かの単純な二元論ではなく、間にある領域と目標に至る道筋を支援する、包摂的なアプローチが必要です。このアプローチを後押しするため、EBRDはトランジション・ファイナンスを促進すべきです。また、EBRDには民間資金の積極的な動員も期待しています。

4. 日本としてのEBRDへの貢献

 EBRDが非欧州諸国も含むグローバルな機関であることを踏まえ、ルノーバッソ総裁がその組織運営において非欧州諸国の声も反映させる努力をされていることを多とします。日本は第2位のシェアホルダーとして、積極的にEBRDのガバナンスに参画していく所存です。

 EBRDが支援対象国の多種多様で複雑なニーズに対して、柔軟かつ効果的に対応していくためには、EBRD職員の国籍を含む多様性を推進する必要があります。日本として、人材を通じたEBRDへの貢献にも更に力を入れたいと考えています。

 東京にあるEBRD代表事務所は、日本企業等との連携による案件形成はもとより、幅広い日本の関係者等の参画を得たビジネスの展開や、EBRDの更なる知名度向上に向けたアウトリーチやリクルートなどにおいても重要な役割を果たしています。日本の技術・知見をEBRDの支援に一層活用するため、同事務所がその機能を更に発揮していくことを期待するとともに、日本として最大限の協力をしていく所存です。

5. おわりに

 ルノーバッソ総裁の強いリーダーシップの下、EBRDが引き続きコロナ危機への対応をはじめとする足元の課題に能動的に取り組み、ポストコロナでもEBRDの強みを発揮して、主導的な役割を果たすことを期待しています。

日本は、EBRDが多様な付加価値をもたらす「グローバルな機関」であり続けられるよう、引き続き積極的に貢献してまいります。

(以上)