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第60回AfDB・第51回AfDF年次総会 日本国総務寄稿(令和7年5月27日 於:コートジボワール・アビジャン)

第60回アフリカ開発銀行・第51回アフリカ開発基金年次総会日本国総務寄稿
(2025年5月27日(火) 於:コートジボワール・アビジャン)

1.はじめに

議長、総裁、各国総務、並びに御列席の皆様、

今般のアフリカ開発銀行(AfDB:African Development Bank)グループ年次総会のホスト国であるコートジボワール政府に対し、日本政府を代表して心より感謝申し上げます。


2.アフリカの開発課題

アフリカは成長の機会に満ちた大陸です。豊富な天然資源や、平均年齢が若く、他地域に比べてひときわ高い増加率を誇る人口に恵まれています。今後数十年にわたる高成長に向けた強固な経済基盤を構築する大きな可能性を秘めていることに疑いの余地はありません。

経済の変革と持続的な発展を達成するため、アフリカ諸国が自らの能力を十分活用できるよう支援することは、AfDBの重要な使命です。その観点から、今般の年次総会のテーマ「アフリカ自身の資本をアフリカの発展のために」は時宜を得ており、また、的を射たものです。


3.AfDBへの期待

アフリカの発展にはインフラが必要であり、インフラの構築には資本が必要です。これは単純ですが、改めて着目すべき主張です。

第一に、アフリカの持続的な発展のためには、道路や港湾などの物理的なインフラだけでなく、制度・ガバナンス、能力構築、投資環境整備、財政・債務管理、調達といった「ソフト」インフラが必要です。日本が長きにわたり提唱してきた「質の高いインフラ投資」も、こうした要素を包含しており、資本を動員し、より良く機能させることに資するものです。AfDBが質の高いインフラ投資に関する様々な支援を提供することを期待します。

第二に、資本という概念には、金融資本のみならず、人的・自然資本まで幅広い要素を含みます。特に、熟練労働者、熱意のある起業家、初等教育を受けた若者の重要性を強調します。自律的な成長の鍵は、政策的な取組により、こうした資本をレバレッジすることにあります。例えば、アフリカの増加する人口は、保健、教育、社会保護のための十分な政策が整備されてこそ、初めて成長のエンジンたり得ます。同様に、豊富な天然資源を有するアフリカ諸国は、重要鉱物の採掘のみならず、その生産や製造を含むサプライチェーン全体に関与の対象を広げてこそ、競争力を得ることができます。金融資本も民間セクター主導の成長に不可欠であり、民間資金動員に向けた取組が必要です。

今回提案されているアフリカ開発基金(AfDF:African Development Fund)第17次増資(AfDF-17)の戦略フレームワークは、ハード・ソフト双方のインフラに注力するという点で道理にかなったものです。この戦略フレームワークの下、AfDF-17が、質の高いインフラ、自然災害への強靱性、食糧安全保障、保健ファイナンス、債務透明性など既存の優先分野の骨格を維持すると共に、サプライチェーンの強靱性やデジタル・トランスフォーメーションといった新たな課題に取り組んでいくことを期待します。日本はAfDF-17増資交渉の成功に貢献することをお約束します。


4.日本のアフリカ支援

日本は、アフリカの発展のためにアフリカ自身の資本をより良く機能させるため、AfDBと連携して取り組んでいます。その事例をいくつか紹介します。

第一に、日本とAfDBは、2006年に「アフリカの民間セクター開発のための共同イニシアティブ(Enhanced Private Sector Assistance for Africa:EPSA)」を立ち上げ、民間セクター開発の達成に向けて上流から下流まで包括的な支援を行ってきました。我々は、現在EPSAのアップグレードを検討しているところです。

第二に、グリーンで気候変動に強靱なインフラのギャップを埋めるための資金をスケールアップすべく、日本は第一号ドナーとして「アフリカにおけるグリーンインフラのためのアライアンス(Alliance for Green Infrastructure in Africa:AGIA)」に1,000万ドルの貢献を行いました。2030年までにアフリカで3億人に電力を提供することを目指す世銀との共同イニシアティブ「ミッション300」の成功に向け、AfDBがAGIAを活用することを期待します。

第三に、アフリカで増大する債務の脆弱性を解消しなければなりません。日本は、債務関連の契約を含む法的アドバイスの提供に十分な実績を有する「アフリカ法的支援ファシリティ」に7.9百万ドルの貢献を行いました。

第四に、日本はAfDBと共に、アフリカの投資・ビジネス環境整備に取り組んでいます。AfDBのフラッグシップイベントである「アフリカ投資フォーラム」を通じ、スタートアップを含め、日本企業が有する技術が活用されることを期待します。東京に所在するAfDBアジア代表事務所は、地域の民間セクターとの対話の更なる促進のために重要な役割を果たしています。

最後に、本年8月に横浜で開催予定の第9回アフリカ開発会議(TICAD9)で皆様をお迎えできることを楽しみにしています。この機会を捉えて日本の財務省は、アップグレードされたEPSAを含め、アフリカ開発のための新たなイニシアティブを発表予定です。また、我々は、アフリカ開発のための国際開発金融機関(MDBs)・日本の開発金融機関・民間セクターのパートナーシップを更に強化することを目的としたハイレベルイベントを開催予定です。


5.結び

結びになりますが、過去10年にわたりアフリカの発展に多大なるご尽力をされたアデシナ総裁に心より敬意を表します。アデシナ総裁は、「High 5s」の取組の大いなる進展、迅速かつ効果的な新型コロナ危機への対応、G20 の「MDBsの自己資本の十分性に関する枠組の独立レビュー」の実施、三度にわたるAfDF増資及びAfDB一般増資の成功裏の妥結など、大きな成果を上げられてきました。次期総裁が、同様の献身、プロフェッショナリズム、情熱をもって、AfDB加盟国を更なる高みに導くことを期待します。日本は引き続き、AfDBがアフリカ、更には世界の人々に積極的に関与していくことを期待します。

以上