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貧困削減と経済発展(G7蔵相から首脳への報告)

貧困削減と経済発展

G7蔵相から首脳への報告



(2000年7月21日 沖縄)

[仮訳] 



貧困削減と経済発展
(G7蔵相から首脳への報告) <仮訳>

 

A.発展への包括的アプローチ 
1.グローバリゼーションの急速な進展による国際経済の劇的な変化に伴い、開発途上国がグローバリゼーションによる恩恵を受ける機会や世界経済システムにおいて何らかの役割を果たす機会を持つように国際社会が行動をとることは、極めて重要である。戦略的かつ徹底的な方法で積極的なアプローチをとる主要な目的は、これらの国々による持続的な貧困削減や経済発展を達成するための努力を支援し、2015年までの貧困人口割合の半減という国際開発目標を達成することである。
2.持続可能な成長の重要性は、貧困削減に必要な条件として経験上示されている。全ての開発パートナーは、2015年の目標を達成するために必要な力強い成長をもたらす優先事項に、焦点を絞るべきである。これら優先事項は、マクロ経済の安定化、民間部門の発展の促進、良い統治の促進、社会開発への投資、貿易自由化の加速、金融部門の強化を含むべきである。
3.貧困との戦いにおいて成長は非常に重要であるが、成長の恩恵のより公平な分配にさらなる注意が払われなければならない。このためにも、制度の構築、教育と技術の発展、伝染病との戦いなどを通じた健康の改善といった、適切な社会政策が不可欠である。これらは、貧困緩和とより大きな社会的公平のための基盤である。社会的投資は、より長期的には高い見返りを確実にするものである。
4.世界的な貧困と戦うためには多面的なアプローチが必要である。これを達成するため、国際開発目標を中心に、貧困国が貧困国自ら包括的貧困削減戦略を策定する必要がある。これらの戦略においては、貧困削減と経済成長に必要な、社会政策と経済政策のリンクが非常に重要となろう。これらの戦略は、透明性、説明責任、無駄な支出の削減及び良い統治を強調するべきである。また、これらの戦略は、市民社会を含む参加型のプロセスを通じて発展するべきである。国際金融機関及び二国間ドナーは、技術的支援を通じたものも含め、貧困国がこれらの戦略を策定し実施するのを支援すべきである。
B.HIPCに対する債務救済
5.重債務貧困国(HIPCs)にとって、拡充HIPCイニシアティブを通じた債務救済は、貧困削減と経済発展との好循環を構築する上で極めて重要である。昨年ケルンにおいて、我々は、貧困削減に必要な資金を供給し、より早く、より広く、より深い債務救済を実施すべく、本イニシアティブの開始に合意した。我々は、昨年秋の国際社会による本イニシアティブの承認を歓迎する。
6.それ以来、本イニシアティブの実施が進められている。9ヶ国が既に決定時点に到達し、新たな枠組みの下で名目価値で総額150億米ドル以上(現在価値(NPV)で総額86億米ドル)の債務救済が行われるところである。本年末までには、さらに最大11ヶ国が決定時点に到達できるであろう。本イニシアティブの進捗の詳細は、付属文書において述べられている。
7.我々は、世界銀行及びIMFと緊密に協力し、貧困削減戦略の策定を開始することにより、早急にこのプロセスに乗り出し、それにより債務削減の恩恵を受けることを、未だそうしたことを行っていないHIPCs諸国に対して促す。我々は、経済改革の進捗や債務救済を貧困削減に結びつける必要性に留意しつつ、ケルン・サミットで示された目標に沿って、出来る限り多くのHIPCs諸国が決定時点に到達できるよう、ともに行動していく。この点で、我々は、現在多くのHIPCs諸国が、貧困削減を妨げ債務救済を遅延させる軍事対立に巻き込まれていることを懸念する。我々は、これらの国が、対立への関与を終了させ、速やかにHIPCプロセスを開始することを求める。そのような場合には、我々は、これらの国が債務救済に備えそれを推進することを支援するための努力を強化する用意がある。
8.我々は、世界銀行及びIMFが、本イニシアティブの迅速かつ効果的な実施に向けた努力を継続するよう促す。この関連で、我々は、本年4月の世界銀行とIMFによる共同実施委員会の設立を歓迎するとともに、同委員会が本イニシアティブの実施を効果的に進め、個別国の状況につき定期的に情報を提供するよう強く要請する。
9.我々は、本イニシアティブの効果的実施のために必要とされる国際金融機関の財源の確保における進捗に留意する。我々は、パリクラブ不参加国を含むすべての多国間及び二国間債権者の、効果的かつ早期の参加を促す。IMF及び世界銀行の債務救済の費用の負担のための財源は特定され、他の国際金融機関の資金需要への大きな貢献も約束されている。我々は、国際開発金融機関の、内部資金の最大限の活用を通じた、本イニシアティブへの積極的な参加を強く要請する。我々は、ラテンアメリカ及びアフリカのHIPC諸国の債務救済を促進するための資金の確保についての最近の進展を歓迎する。
10.我々は、既に約束した財源をできる限り早急に利用可能とするとの我々のコミットメントを再確認する。この関連で、我々は、債権者間の公正な負担の分担の重要性を認める。我々は、二国間ドナーによるHIPC信託基金への新たな貢献を促す。
11.我々は、本イニシアティブの枠組みの中での二国間債務の削減についての我々のコミットメントを再確認する。この関連で、我々は、パリクラブの枠組みにおける措置に適格な商業債権を100%免除することを約束した。我々は、G7以外のいくつかの国も100%の債務免除を実施する旨表明したことを歓迎するとともに、その他の債権国がこれに続くことを強く求める。
C.債務救済を越えて
12.政府開発援助は、貧困国による貧困削減と経済発展の努力を支援し促進する上で重要であり続けるであろう。このような関係において、我々は、最近の援助水準の減少傾向の反転を歓迎する。拡充HIPCイニシアティブの適用国が再び過度の債務負担に直面しないようにするために、我々は、これらの国々に対して、政府開発援助の大半を無償の形で提供することを約束した。
13.適切な政策運営を行う国への経済援助が成長を高め社会状況を改善させることは、経験上示されている。援助国は、経済改革や貧困削減に本格的に取り組んでいる貧困国に、より効果的に援助を向けることにより、その役割を果たすことができる。援助国はまた、十分に検討された受入国主導のプログラムを支援する場合に、援助をより良く調整することにより、また、支援手続きを簡素化し実行可能な場合には支援手続きを調和させることにより、援助の効果を向上させるべきである。
14.責任ある融資の実施を確実にするために、援助国が非生産的な支出を抑制するとのコミットメントを再確認することは極めて重要である。このような関係において、我々は、OECDに対し、輸出信用部会を通じて、HIPCsや他の低所得開発途上国への輸出信用が非生産的な目的で用いられることがないようにするための強化措置をレビューするよう求める。このレビューの結果は、公表されるべきであり、関連する既存の各国の規則や規制のレビューを含み得る。我々は、OECDがこの作業を出来るだけ早期に完了することを促す。さらに、我々は、国際金融機関や他の二国間ドナーによる、貧困国が資源の生産的な使用を確実にするための健全な債務管理政策を遂行するように促すための努力を歓迎する。
15.環境や健康のような国際公共財は、優先的な配慮に値するものであり、国際金融機関、特に世界銀行及び地域開発銀行、さらに二国間ドナーの強い関与を必要とする。国際公共財への国際社会の関与は、効果的であるためには、比較優位や優先順位の設定の原則に基づいてなされるべきである。
D.貿易・投資環境の改善
16.貿易・投資の成長と経済成長との間の密接な関係に鑑みると、貿易・投資は、効果的な貧困削減と持続可能な経済成長の促進に決定的な役割を果たすであろう。我々は、HIPCsとその他の低所得開発途上国に世界貿易に参加させ、これらの国々の国際市場へのアクセスを向上させる方法を見つけなければならない。我々は、これらの国々も貿易自由化の恩恵を受けることが出来るよう、次期WTOラウンドがこれらの国々の関心事項を積極的に取り上げていくようにすべきである。我々はまた、グローバルな経済への更なる統合に向けた歓迎すべき第一歩をしばしば意味する、WTOのルールに沿った形でのこれらの国々の間の地域協力を促進すべきである。我々は、関連する国際機関、特にWTOと世界銀行に対し、最貧国における貿易関連の能力の構築を支援する努力を強化するよう求める。我々はまた、生産的な投資を促進するような環境を創出するための貧困国の努力を支援するべきである。
E.グローバル経済への速やかな統合
17.グローバリゼーションとIT革命の急速な進展に鑑みれば、最貧国を含む開発途上国にとって、ITの新たな進歩の恩恵を利用し、デジタル・ディバイドを防ぐことは、重要である。国際社会が、人的資本への投資などITに関連するものも含めた能力や制度の構築を強調することが重要である。
18.より長期的には、すべての開発途上国が発展のはしごを上がっていく能力を持つようにする必要があろう。多くの国々において、国内貯蓄と民間資本フローは、既に開発の資金手当ての面で重要な役割を果たしている。上昇した水準での安定的な民間の投融資にとって適切な環境を整えることは、持続可能な発展を達成するための鍵である。
19.予見可能な将来においては、多くの開発途上国は譲許的な援助に依存し続けるであろうが、国際金融機関は、これらの国々が将来的にグローバルな金融市場に参加していく道を検討するべきである。その目的は、開発途上国の孤立から統合、成長そして発展への歩みを支援する道標を提供するものでなければならない。

 

附属文書 重債務貧困国(HIPC)イニシアティブ:進捗状況

1.昨年ケルンにおいて開始された拡充HIPCイニシアティブは、HIPC諸国のためにより早く、より広く、より深い債務救済を実施すること、及び、債務救済の恩恵が貧困削減のために使用されると目的とする。HIPCプロセスにおける債務救済、経済及び社会政策の改革、貧困削減の連関は、包括的な貧困削減戦略ペーパー(PRSP)の策定を通じてもたらされる。PRSPは、市民社会を含む参加手続きを通じ、また国際金融機関やドナーの協力を得て、HIPC国自身によって策定される。
2.9ヶ国(ベナン、ボリビア、ブルキナファソ、ホンジュラス、モーリタニア、モザンビーク、セネガル、タンザニア、ウガンダ)が本イニシアティブの下で決定時点に到達した。この9ヶ国につき、名目価値で150億米ドル以上(現在価値で86億米ドル)の債務救済が合意された。これは、従来の債務救済メカニズムによるものに加え、平均で、債務国の債務残高の概ね45%の削減となる。この数字は、我々がケルンで合意した政府開発援助(ODA)債権の削減や、本イニシアティブの下で債務削減を受けるHIPC諸国に対する適格な商業債権の100%免除という我々のコミットメントにより、更に増加する。
3.IMFと世銀の最新の見通しによれば、今後、更に最大11ヶ国(カメルーン、チャド、象牙海岸、ギニア、ギニアビサウ、ガイアナ、マラウィ、マリ、ニカラグア、ルワンダ、ザンビア)が本年末までに決定時点に到達し得る。これにより、本イニシアティブの下で合意されたものとして、名目価値で総額350億米ドル前後(現在価値で200億米ドル前後)の債務救済がなされる。この額もまた、ODA債権の削減や、適格な商業債権の100%免除という我々のコミットメントにより増加する。
4.これらの国の決定時点のタイミングは、彼らの貧困削減戦略の策定の進捗において示されるその国の貧困削減や経済成長へのコミットメントや、IMFプログラムの履行状況次第である。
5.20のHIPC諸国が残っている。これらのうち、
-4ヶ国(アンゴラ、ケニア、ヴィエトナム、イエメン)は、より高い拡充HIPC債務削減のための債務状況の基準を満たすと見込まれていない。
-2ヶ国(ガーナ、ラオス)は本イニシアティブの下での救済を求めないことを決定している。
-IMFプログラムがある2ヶ国(マダガスカル、サントメプリンシペ)は、パリクラブ債権国からナポリターム(67%)の債務救済を受けているものの、十分な実績を達成していない。
-12ヶ国(ブルンジ、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、コンゴ共和国、エチオピア、リベリア、ミャンマー、ニジェール、シエラレオネ、ソマリア、スーダン、トーゴ)は、現時点で、決定時点到達に必要なIMFの貧困削減成長ファシリティーのプログラムに合意していない。これらの国々が決定時点に向けて進むことのできる速度は大きく異なるだろう。これらのうち10ヶ国は紛争の影響を受けている。いくつかの国は政情不安やマクロ経済の不安定を経験している。このような状況の中で、多くの国が、経済成長に向けた政策の枠組みの中で債務救済により利用可能となる資金が貧困削減のために活用されることを確保するHIPCの枠組みにコミットできないでいる。