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13. | 我々は、金融分野においても、インターネット上における金融取引を始めとして、様々な変革が進展しつつあることを認識する。政府が、この革新による効率化や利便性の向上を最大化する適切な環境の整備に努めていくことが重要である。 |
| IT革命の金融サービスへの影響 |
14. | 金融分野は、情報やデータというデジタル化されやすいものを扱う産業であるため、ITの影響を最も受けているとともに、その利用が最も進んでいる分野の一つである。具体的には、金融分野においては、IT革命により以下のような変化が起きている。 |
| a) | 電子金融取引においては、スピーディ、低コスト、広範囲のコミュニケーションを特徴とするインターネットの活用により、飛躍的な取引コスト削減と顧客利便の向上が可能になっている。 |
| b) | 電子金融取引は、時間的・距離的制約をなくして、越境取引を容易にし、地球規模での顧客に対してサービスを提供することを可能にしている。 |
| c) | 伝統的な金融サービス間の垣根を越えるサービスを含む「仮想総合金融モール」、消費者が一ヶ所で自らの金融取引についての総合的な情報を得ることを可能にする「情報統合(aggregation)」など、新たな金融サービスの提供が可能になっている。 |
| d) | この他、IT革命やグローバル化、あるいはこれらに伴う競争的環境の中で、リスクのアンバンドリング、ディリバティブ取引の発達、異業種から金融業への参入など、革新的な動きが見られる。 |
15. | 我々は、電子金融取引、特に業者対顧客(BtoC)の取引は、インターネットを中心としたオープン・ネットワークを通じて行われることから、取引の安全確保、消費者保護、プライバシーなどとの関連で、多くの課題をもたらすことに留意する。 |
| 金融監督・規制 |
16. | 我々は、金融の規制・監督は、利用される技術に対して中立的であること(technology neutral)を旨としつつ、上記のような電子金融取引の特性に対応していくことが必要であることを認識する。その目的は、民間の主体性を損なうことなく市場の公正性を維持することにあるべきである。. |
17. | 消費者が電子金融取引の安全性に信頼を持つことが重要である。我々は、コンピューターへの不正侵入(hacking)を防止するためのシステムの開発、データの安全性を確保するための暗号や電子署名の使用を奨励するべきである。さらに、我々はインターネット上の信頼性の高い決済制度の整備を確実にする必要がある。クレジット・カードなど既存の決済制度の安全性は引き続き重要である。 |
18. | 電子金融取引における消費者保護については、現在金融サービスの利用者が享受している保護の水準が引き続き確保されることが重要である。一般投資家へのディスクロージャー、勧誘・販売時の説明及び情報提供、顧客への書面交付、紛争解決などの分野におけるルールは、ルールの適用の仕方を調整する必要はあろうが、インターネット上で行われるビジネスにも適用されるべきである。また、個人に関する情報の移転が極めて容易になることから、プライバシー保護の政策を強化することが必要である。 |
19. | 我々は、各国の現状も踏まえつつ、金融規制に係る原則の策定や執行面での国際的協調を進展させなければならない。我々は、この観点から、電子金融取引の監督・規制に関する原則やガイダンスの策定に関して、バーゼル銀行監督委員会、IOSCO(証券監督者国際機構)、IAIS(保険監督者国際機構)が行っている作業を歓迎する。我々は、今後、以下の理念に沿って、上記機関による更なる作業が行われることを慫慂する。 |
| a) | 電子金融取引などの取引の態様を問わない、一貫性のある監督・規制 |
| b) | より複雑なビジネス環境における透明な監督・規制と、新たな展開の実情に不断に適応していく柔軟性 |
| c) | 健全性に関するリスクを生じさせない範囲内で、技術革新を不当に抑制することなく、電子金融取引の潜在的可能性を促進 |
| d) | 電子金融取引の特性に即した取引の安全と利用者保護 |
| e) | 越境取引等の増加に応じた監督当局間の連携の強化 |
20. | 我々は、FSF(金融安定化フォーラム)において、将来のあり得べき作業の基礎として、電子金融取引の金融の安全性への影響等を含めた論点整理が行われていることを歓迎する。 |
21. | 金融機関の経営陣及び取締役は、電子金融取引の発展から生じるリスク及び課題を理解する必要がある。金融規制・監督当局者も、新たな進展に対処するために必要な知識及び能力を持つようにしなければならない。この観点から、我々は、我々の関係当局に対し、監督官をIT関連の知識及び能力に関して訓練するための手法及び方法を向上させ、十分な監督資源(supervisory resources)がこの問題に用いられるようにすることを求める。我々は、途上国における規制・監督官の育成への技術支援についても考慮すべきである。 |
| 金融ビジネス特許 |
22. | コンピューターやインターネットを通じた金融技術の革新に伴って、金融サービスの分野においても、いわゆるビジネスモデル特許の取得が増えている。我々は、金融におけるITの発達によって、金融ビジネス特許についての政策が金融市場における革新や競争にとって意味を持ちうることを認識する。ビジネスモデル特許の取扱いについての共通の理解を促進するとの観点から、国際的な取組みが必要である。 |
23. | この点に関して、我々は、現在行われている我々の特許専門家によるビジネスモデル特許についての共同作業を歓迎し、更なる発展を期待する。我々は、我々の金融専門家に対し、我々の特許当局と会合し、お互いに関心を有する問題が国際的なレベルで扱われているかどうか、またどのように扱われているか、及び本分野において国際協力がどのように進展しているかについて議論するよう要請した。 |