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「国際金融アーキテクチャーの強化」に関する蔵相報告書の概要

「国際金融アーキテクチャーの強化」に関する蔵相報告書の概要
(2000年7月8日 福岡)

 

ケルン・サミットへの国際金融アーキテクチャーの強化に関する蔵相報告書以後、本分野において大きな進展があった。
今回の報告書においては、ケルンで特定した改革プログラムを進めつつ、国際金融アーキテクチャー強化のための努力を促進する施策について議論する。
両報告書に掲げられた全ての措置を実施することを決意し、国際社会のその他のメンバーとともに着実な進展に向けた作業を行う。

 

(1) IMF改革
危機予防のためには、IMFのサーベイランスの強化が重要であり、その焦点をマクロ経済政策、資本移動、マクロ経済安定に関連する構造問題(特に金融セクターの構造問題)、及び為替相場制度に絞っていく。
国際的に合意されたコード及び基準の実施を促進していくことが重要であり、IMFは、その遵守状況を評価する上で主導的かつ調整的な役割を果すべきである。
IMFの融資制度は、引き続き資本市場のグローバリゼーションに適合し、各国に対して民間資本市場への持続的かつ安定的なアクセスを促すよう見直されるべきである。
IMF資金の長期の利用や不適切な大規模利用を防止し、より効率的な利用に寄与するように、全ての非譲許的融資制度の手数料(金利)については、貸出期間に応じて段階的に引き上げられるべき。また、融資の規模が一定限度を超える場合には、割増手数料を上乗せする可能性も検討されるべき。更に、IMF融資に継続的に依存する国については、融資の前提条件をより厳密に適用するとともに、IMF資金の融資限度を制限すべき。
SBA(スタンドバイ取極)は、短期支援のための標準的な融資制度であるべき。
EFF(拡大信用供与措置)は、中期的な構造改革が重要であるような限定的な場合に使用されるべき。
CCL(予防的クレジットライン)については、コミットメント・フィーの廃止、当初手数料の引下げ、一定条件の下での発動の自動化等により、その実効性を高めるべき。
SRF(補完的準備融資制度)は、資本市場の信認危機に対して、迅速かつ適切な規模で対応するための緊急手段としての性格を維持すべき。
IMFの融資条件については、その焦点をマクロ経済政策、資本移動、マクロ経済安定に関する構造問題(特に金融セクターの構造問題)、及び為替相場制度に絞るべき。
IMF資金が適切に利用されるためのセーフガードの強化と、プログラム期間終了後、IMF資金の返済が終わるまでの間のポスト・モニタリングの向上を図るべきである。
IMFの透明性アカウンタビリティーの向上は、引き続き高い優先度が置かれるべき課題である。IMFが、グローバルな機関として、その正統性、信頼性、有効性を維持するためには、IMFの意思決定構造及び業務がアカウンタブルであり続けることが不可欠。各加盟国のクォータを計算するためのフォーミュラの検討の努力が現在IMFで行われていることに留意する。このクォータは、世界経済の変化を反映すべきものである。
最近のIMFプログラムにおける民間債権者の貢献を歓迎するとともに、民間セクターの関与が危機の予防及び解決において引き続き重要であることを確認する。全てのIMFプログラムには、民間資金がどこから供給されるのかについての想定を含め、その国の中期的な債務と国際収支のプロファイルに関する分析が必要である。このような分析の結果、債務リストラクチャリングや債務削減が必要となった場合には、IMFプログラムは、民間債権者と公的債権者の間の幅広い公平性などを内容とする運用ガイドラインに基づくべきである。

 

(2) 国際開発金融機関(MDBs)改革
貧困削減をMDBsの中核的な役割と位置付け、これに向けた取組みを一層強化すべきである。
民間資金にアクセスを持つ国へのMDBsの支援は、より選択的に行なわれるべきであり、民間セクターとの競合を回避する必要がある。
MDBsは、途上国の統治の問題(ガバナンス)や途上国自身の貧困削減に向けたコミットメントを重視すべきである。
MDBsは、途上国の能力構築(キャパシティ・ビルディング)や構造改革を支援すべきである。
MDBs(特に世界銀行)は、他の機関との比較優位に留意しつつ、感染症対策や環境対策といった国際公共財の提供を促進することにリーダーシップを発揮すべきである。
稀少な援助資金の効率的な利用のため、MDBs相互の協調を促進する必要がある。
MDBs自身のアカウンタビリティ透明性の向上を促す。

 

(3) 高レバレッジ機関、資本移動、オフショア金融センター
高レバレッジ機関の活動から生じる潜在的な結果に対する懸念に対応するため、高レバレッジ機関及びその取引相手によるリスク管理の改善、高レバレッジ機関を含む金融機関のディスクロージャーの強化、高レバレッジ機関の債権者金融機関に対する監督の強化など、金融安定化フォーラム(FSF)の提言の実施が重要である。
各国が債務に係るリスクの適切な管理、効率的な国内債券市場の創設など、資本移動に関するFSFの提言の実施も重要である。
国際基準を十分満たしていないオフショア金融センターについては、対応すべき優先国・地域がFSFによって特定されたことを歓迎し、IMFに対してこれらの国・地域について具体的な評価を早急に行うとともに、これらの国・地域自身が基準実施状況を改善するとのコミットメントを明らかにするよう強く促す。
大規模かつ急激な資本移動によってもたらされるリスクに対応するためには、各国における適切な対応、特に、健全なマクロ経済政策運営、構造改革、金融システムの強化、適切な為替制度の選択、よく秩序立った資本勘定の自由化、などが引き続き重要である。

 

(4) 地域協力
より強化されたサーベイランスを通じた地域協力は金融の安定性に寄与し得る。各国へのIMFプログラムを支援する形で国際金融機関が供与する資金を補完するような地域レベルでの協調的資金取極は、危機の予防及び解決に有効であり得る。
アジア北米における地域サーベイランス及びスワップ・アレンジメントの進展や、欧州における経済・金融統合メカニズム及び通貨統合を歓迎する。

(以 上)