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国際金融アーキテクチャーの強化(G7蔵相から首脳への報告)<仮訳>

国際金融アーキテクチャーの強化 




(G7蔵相から首脳への報告)<仮訳>

 



国際金融アーキテクチャーの強化 
(G7蔵相から首脳への報告)<仮訳>
 

A.序

1.1997年にアジアで端を発した一連の危機以降、世界経済の状況は安定し、その拡大の見通しは改善している。しかしながら、国際金融の環境が急速に変化しつつあること、特に民間資本市場の規模や重要性の高まりによって生じた機会と課題に鑑み、国際社会は、世界の持続的な成長と繁栄の基礎となる国際金融システムの安定性を一層促進するという課題に引き続き取り組んでいかなければならない。
2.我々7か国の蔵相は、昨年のケルン経済サミットに対して、国際金融アーキテクチャーの強化に関する報告書を提出し、改革に向けて多くの具体的な提案を示した。その後、大きな進展があった。
a)多くの開発途上国が、金融セクターの強化、適切な外国為替制度の採用、債務管理の改善、国際的に合意されたコード及び基準の採用などにより、金融の安定性を高めるための努力を行っている。また、多くの国は、金融市場に提供する情報に対して相当の投資を行っている。
b)IMFは、国際的に合意されたコード及び基準を評価するための枠組みを実施し、また、危機の予防及び解決における民間セクターの関与(PSI)に関する我々のアプローチを実践的なものとする観点から、必要な手段を講じてきた。また、民間セクターの投資家及び貸し手は、最近のIMF主導のプログラムのファイナンシングにおいて関与を強めている。更に、IMF理事会は、為替制度、資本規制についての各国の経験、その他の重要な問題点について議論を深めてきた。より多くの文書を公表するなど、IMF及び国際開発銀行(MDBs)の透明性も著しく改善されている。
c)IMF暫定委員会は、恒久的な「国際通貨金融委員会(IMFC)」に改組された。
d)金融の安定性を高め、市場の機能を改善し、システミック・リスクを減少させるために、金融安定化フォーラム(FSF)が昨年創設された。我々の要請に沿って、FSFは高レバレッジ機関(HLIs)、資本移動、オフショア金融センター(OFCs)について検討を行い、今春報告書を発表した。また、FSFはコード及び基準の実施について作業を行い、この作業についての報告書を最近公表した。
e)ブレトン・ウッズ機関からなる制度的フレームワークの中で、システム上重要な国々の間の対話のための非公式メカニズムとしてG20(20カ国蔵相・中央銀行総裁会議)が創設された。G20蔵相・中央銀行総裁会議の第1回会合は昨年12月ベルリンで成功裏に開催された。次回会合は今年10月にモントリオールで開催される。
3.本報告書において、我々は、ケルンで特定した改革プログラムを進めつつ、国際金融アーキテクチャーを強化するための努力をどのようにして更に促進するかについて議論する。ケルンで示された改革プログラムの多くの分野を実施するにあたっての国際金融機関(IFIs)の主導的役割に鑑み、この報告書では(i)IMF改革-特に融資制度改革、コード及び基準の実施の推進、ガバナンスとアカウンタビリティーの向上、民間セクターの関与、(ii)国際開発金融機関(MDBs)改革、(iii)高レバレッジ機関(HLIs)、オフショア金融センター(OFCs)及び国境を越えた資本移動によって引き起こされる課題への対応、(iv)地域協力、に焦点を当てる。
4.我々は、ケルン・サミットで支持された幅広い範囲の施策に加え、本報告書で掲げた全ての措置を実施することを決意する。我々は、国際社会のその他のメンバーとともに、着実な進展に向けた作業を行う。

B.IMF改革

5.我々は、変化しつつある国際金融の環境、特に民間の国際資本市場の重要性が高まりつつあることに鑑み、国際社会がIMF及びその他の国際金融機関の役割と機能を引き続き検討していくことが極めて重要であると考える。我々は今秋のプラハにおける次回IMFC会合及びIMF・世銀年次総会において、本件について更に検討することを望んでいる。
IMF改革の主要な原則
6.中央銀行総裁を交えた4月のG7会合において、我々は以下の主要原則を掲げた。これはIMF改革を進める上で、IMFの役割に関して我々の間で共有された理解を反映するものである。
a)世界の持続的成長の重要な前提条件であるマクロ経済及び金融の安定を促進する上で、IMFは中心的な役割を果たすべきである。IMFは、また、将来の課題に対応できるよう進化し続けるべきである。
b)IMFは全世界的な国際機関であり、上記のような目的に関する共通の関心に基づき、全加盟国とのパートナーシップの下でその役割を果たさなければならない。
c)IMFとその活動が、効果的に機能するためには、公衆に対して透明であり、加盟国に対するアカウンタビリティーを果たし、経験からの教訓や外部からの独立の評価をよく反映するものでなければならない。
d)各国の強力な政策を促進するとともに、危機に対する各国の金融の脆弱性を減少させるため、危機を予防し、持続可能な成長のための堅固な基礎を確立することはIMFの作業の中核であるべきである。加盟国における経済・金融状況及び政策に対するサーベイランス、及び、国際的に合意されたコード及び基準の実施は、これらの目的を達成するための主要な手段である。
e)IMFの融資業務は、市場へのアクセスが当面は見込まれない国も含め、適切な場合には全ての加盟国を支援する柔軟性を維持しつつ、国際資本市場の現実を反映するよう適合し続けていくべきである。IMFの融資業務は、各国が脆弱性を減少させるために予防的な施策を採ることを促すとともに、危機時を含め、国際収支の調整のための一時的かつ適切に条件付けられた支援と、長期にわたる使用を避けつつ限定された状況において構造改革を支援する中期的資金を供与していくべきである。
f)IMF融資は、国際的な投資のリスク及びリターンについての評価を歪めるべきではない。このために、IMFは、民間債権者による責任ある行動の促進に役立つよう、危機の予防及び解決の双方において民間セクターの関与を確保するための適切な措置を採るべきである。
g)世界銀行は貧困削減のための中心的な機関であるが、貧困削減と成長の達成のための主要な手段であるマクロ経済の安定についてはIMFが責任を有している。IMFは、貧困削減戦略に各国とともに取り組んでいくにあたって、自らの努力と世界銀行の努力を統合しつつ、貧困削減成長融資制度(PRGF)を通じた最貧困国におけるマクロ経済の安定の支援を図るという、極めて重要な役割を有している。
これらの原則は、我々が今秋のプラハの年次総会前に具体的な措置を実施するための作業を行う際、IMF理事会、IMFC、その他の会議における今後の議論において、IMF改革に関する我々の努力を導き続けるべきものである。
危機の予防のためのサーベイランスの強化
7.4月のG7会合で我々が強調したように、強力なサーベイランスが、世界経済及び国際金融アーキテクチャーを強化するIMFの努力の中心に位置しなければならないことについては国際社会にコンセンサスがある。この観点から我々は、グローバリゼーション、大規模な民間資本移動、及び、国際的に合意されたコード及び基準に関する形成されつつある枠組みに照らし、IMFサーベイランスの性格及び範囲に関する大きな質的変化の重要性を再確認する。
a)IMFはサーベイランス作業を行うにあたり、マクロ経済政策、資本移動、マクロ経済安定性に影響を与える構造問題、中でも金融セクターにおける構造問題、及び、持続不可能な制度を避けるよう各国に促す目的で為替レート、に引き続きその焦点を絞るべきである。
b)IMFは、サーベイランスの過程の主要な一部として、国の流動性及びバランス・シートに関するリスクの指標を開発し、体系的に使用するための作業を引き続き行っていくべきである。我々は、IMFがこれらの指標を関連する説明資料とともに、定期的に公表し始めるべきであると考える。
c)IMFは透明性及び情報の流れの促進に重要な役割を有している。我々は、特別データ公表基準(SDDS)に合致した、広範で、時宜を得た、質が高く正確な情報を各国が公表することを促すためのIMFの努力を支持するとともに、4半期毎の公表を通じたこの点での加盟国の成果を強調するとのIMFの決定を歓迎する。我々は、また、特に4条協議後のパブリック・インフォメーション・ノーティス(PIN)のより一般的な利用、国際基準の遵守状況に関する報告書(ROSCs)を通じ、IMFのサーベイランスの透明性を高めるための更なる行動についても支持する。この観点から我々は、4条協議の事務局報告書を公表するとの原則を支持するとともに、この分野におけるパイロット・プロジェクトに関するIMF理事会のレビューの結論に期待する。
国際的なコード及び基準の実施
8.我々は、以下のように国際的に合意されたコード及び基準の実施を促進するための努力を強めていくことを決意する。
a)我々は、IMFが各国による国際的な基準及びコードの遵守状況を評価する上で主導的かつ調整的な役割を有していることを確認し、国際基準の遵守状況に関する報告書(ROSCs)やIMF・世銀共同の金融セクター評価プログラム(FSAP)を通じた、この分野におけるIMFの現在進行中の作業を歓迎する。我々はまた、30カ国以上の国がROSCsモジュールを受け入れるとコミットしたことや、FSAPプログラムを拡大するとの最近のIMF・世銀の決定についても歓迎する。我々は、金融システムの安定性評価(FSSA)に関する報告書の自発的公表の形式についての検討を期待する。
b)我々は、コード及び基準の評価プロセスが、金融安定化フォーラムの基準集の中で強調された12の主要なコード及び基準を対象範囲とし、モジュール方式で実行されるべきであることに合意する。IMF及び各国当局は、適切な場合、国際基準設定機関と協議しつつ、各国の経済改革計画全体の枠組みの中で、各国による基準実施の優先順位付けに責任を有するべきである。信頼性を高めるため、我々は各国が基準を採用することを明確に公表し、行動計画を発表し、IMF主導の評価プログラムに参加するよう促す。この観点から、我々はG20の蔵相・中央銀行総裁及び西半球蔵相によるコミットメントを歓迎する。
c)我々は、コード及び基準の遵守を促進するにあたり、市場インセンティブ及び公的インセンティブについて取り組むことが重要であることに合意する。この関連で、我々はコード及び基準の実施にあたっての各国の意図や進展についてのディスクロージャーや透明性を高めることが必要であることを強調する。我々は、IMFがコード及び基準の遵守状況についての評価の結果を公表することを確保するとともに、これらの評価を定期的な4条協議のサーベイランス・プロセスに一体化させるための作業を継続するよう求める。我々は、市場インセンティブ及び公的インセンティブ―特に規制及び監督によるインセンティブ-の促進に関する、金融安定化フォーラム(FSF)の更なる作業の結果に期待する。我々はまた、IMFに対してコード及び基準の遵守を促進するための方策を更に検討するよう求める。我々は、プラハでの今年の年次総会において、コード及び基準の実施のための全体的な枠組みについて更なる進展があることを期待する。
d)我々は、コード及び基準の促進プロセスに関し、広範な国々がオーナーシップを持つよう促すための更なる努力が行われれば、コード及び基準の実施のための作業は最も効果的であることに合意する。コード及び基準の実施のための行動計画を各国が作成するにあたり、IMF及び世銀は支援を行うべきである。我々は、国際金融機関、金融安定化フォーラム、国際規制・監督機関とともに作業を行い、新興市場国や開発途上国に対してこの分野の技術支援及び研修を供与することに合意する。
e)各国によるコード及び基準の遵守状況についての整合的かつ客観的な評価に資するため、責任を有する機関及び当局間で、定期的で透明かつ建設的な対話及び協力がなければならない。この目的から、我々はIMFに対して、関係機関からのインプットがIMFのサーベイランス・プロセスへ最も効果的に統合するにはどうするのが最も良いのかについて決定し、また、報告するため、関係機関による会議を主催するよう求める。
IMF融資制度改革
9.我々は、IMFの融資業務が、各国固有の状況に照らし、市場へのアクセスが当面は見込まれない国も含め、適切な場合は全ての加盟国を支援する柔軟性を維持しつつ、引き続き資本市場のグローバリゼーションに適合していくべきであることを改めて強調する。従って、我々は、民間資本市場への持続的かつ安定的なアクセスの拡大を各国に促す、合理化された、インセンティブに基づくIMFの融資構造の実現に向けて、早期の進展が見られることに優先度を置く。
10.IMFは既に融資制度の簡素化を開始した。今後、我々は、上記のアプローチと整合的かつ効果的なIMFの融資構造を創ることに引き続き優先度をおく。すなわち、
a)各国が危機を防止するために強力な事前の政策を採り、国際的に合意された基準と最善の慣行を遵守し、民間債権者と良好な関係を維持するための予防的な支援及びインセンティブを供与する。(現在の予防的クレジットライン(CCL)におけるように)
b)各国に民間資本への持続的なアクセスに向けた動きを促しつつ、一時的な国際収支不均衡や、限定的な状況における構造改革支援のための中期的ファイナンシングに対処する。(現在のスタンドバイ取極(SBA)及び拡大信用供与措置(EFF)におけるように)
c)モラルハザードを緩和するとともにIMFへの早期返済を促すような適切な条件で、IMFがシステミック危機に対して迅速にかつ適切な規模で対応することを可能にする。(現在の補完的準備融資制度(SRF)におけるように)
d)貧困削減と成長を志向するプログラムの促進が世銀の責務であることを踏まえながら、IMFの努力と世銀の努力とを統合しつつ、最貧困国における健全なマクロ経済政策を支援するにあたってのIMFの強力かつ的を絞った役割を維持する。(現在の貧困削減成長ファシリティ(PRGF)におけるように)
11.具体的には我々は、IMF融資制度改革が以下に基づき出来るだけ早期に行われることを期待する。
a)IMFの非譲許的融資の手数料(金利)は公平でなければならず、その根底にあるそれぞれの目的を反映するべきである。新しい手数料構造は、融資制度全体を通じてより整合的なインセンティブを確立し、民間資本へのアクセスを促し、長期の利用を防ぎ、IMF資金への不適切な大規模アクセスを防止し、従ってより効率的な利用に寄与するようなものでなければならない。全ての非譲許的融資制度について、その金利は、IMFの融資を受けている期間の長さに応じて段階的に引き上げるべきである。融資の規模が一定限度を超える時には、割増手数料を上乗せする可能性についても検討されるべきである。更に、IMF融資に継続的に依存する国に対しては、IMFは融資の前提条件をより厳密に適用するとともに、IMF資金の融資限度を制限するべきである。
b)我々はまた、IMF資金の借入国が持続可能な経済・金融の軌道に戻った場合に、早期返済を促すための措置の検討を期待する。
c)我々はIMFに対し、融資制度の見直しとの関連で、結果的に生じるいかなるIMF収入増についても、最貧国への支援に主眼を置きながら、現行の協定の枠組みの中での適切な使い道を検討するよう求める。
12.具体的なIMF融資制度については、
a)SBAは引き続き、短期支援を供与するための標準的な融資制度であるべきである。
b)EFFは中期的な構造改革が重要であるような限定的な場合に使われるべきである。EFFのより長期の返済期限は、当該国の構造的な国際収支の状況や民間資本へのアクセスが限られていることへの対応のために適切である。この融資制度は、民間資本へのアクセスを達成するために必要な構造改革を各国が時間をかけて行うことを支援するものであると期待される。
c)CCLについては、適用にあたっての適格基準を損なうことなくその実効性を高めるよう見直されるべきである。具体的には、
-CCLに係るコミットメント・フィーは廃止されるべきである。
-CCLの当初の手数料(貸出期間に応じた段階的引上げを行う前の基本的手数料)は、SRFの当初の手数料を下回るレベルに引き下げられるべきである。この関連で、累進的なCCLの手数料構造のあり方は見直されるべきである。
-CCLの発動については、適切なレビューが行われ、事前のコンディショナリティが完全に満たされていることを条件に、最初の引出しに関しては、事前に決定された限度内でより自動化するべきである。
-CCLの締結が承認された後、当該国が引き続き適格基準を満たしているか否かについて、少なくとも1年に2回の頻繁なレビューが行われるべきである。適格基準が最早満たされていないことが明らかになった時には、当該国はCCLを解約するよう求められるべきである。我々はIMFに対してこれらの場合について解約に関する適切な戦略を作成するよう求める。CCLを解約した国が国際収支困難に陥るリスクがある場合は、当該国は適切なIMFプログラムを締結するよう促されるべきである。
-コミットメント・フィーの廃止、当初の手数料の引き下げ、より自動化された最初の引出し条件に鑑み、高い適格基準が維持されるべきである。
d)SRFは、資本市場の信認危機に対して、モラルハザードを緩和するとともに早期返済を促すような適切な条件で、迅速かつ適切な規模で対応するための緊急手段としての性格を維持するべきである。
我々は、この簡素化された、インセンティブに基づく融資制度の枠組みを適切に導入するため、ここで提案された具体的な変更、及びその他の措置を実施するべく、IMFの他の加盟国とともに作業を行う。
13.今後、IMFの融資条件は、質の高い基準を遵守しつつ、より焦点を絞り、マクロ経済に関連する課題に対応していくべきである。IMFはその焦点を、マクロ経済政策、資本移動、マクロ経済の安定性に影響を与える構造問題、特に金融セクターにおける構造問題、持続不可能な制度を避けるよう各国に促す目的から為替相場制度、に当てるべきである。IMF主導のプログラムの成功は借入国のオーナーシップの強化にかかっている。
IMF資金のセーフガード
14.今春採用されたセーフガード評価のためのIMFの新しい枠組み、虚偽報告を防ぐために強化された措置、IMF資金を利用している国が国際基準に則った独立の外部監査を受けた財務諸表を毎年公表することへの要請は、IMF資金が適切に使用されることを確保するために厳格に実施されるべきである。
ポストプログラム・モニタリング
15.各国が強力な政策を維持しIMFの資金支援に再び依存する必要性が生じないようにするため、返済が終わるまでの間、IMFがプログラムの実施状況をモニターする能力を高めることが重要である。従って我々は、ポストプログラム・モニタリングに関し、手続き及び政策を強化するため、IMFが早急に行動することに優先度を置く。
ガバナンス及びアカウンタビリティの強化
16.我々は、IMFの透明性とアカウンタビリティーの向上に、引き続き高い優先度が置かれるべきであることを強調する。
a)IMFは引き続き文書の公表に努めるべきである。
b)我々は、四半期毎の資金取引計画を公表するとの最近の決定を歓迎するとともに、その資金運営や財務諸表を公衆によりわかりやすいものにするため、IMFに対して財務会計を簡素化するためのメカニズムを更に検討するよう促す。
c)個別国のプログラムを策定するプロセスにおいて、IMF理事会の関与が一層促進されるべきである。重要かつ機微なケースについては、早期の段階で理事会に概要が伝えられるべきである。
d)我々は、恒久的な独立評価部局をIMF内に設けることに向けた進展を歓迎し、プラハの年次総会の時までに、この部局が活動を開始するための措置がとられることを強く促す。我々は、その独立評価部局による評価の結果に関する報告が理事会に対して行われるとともに、IMFCに対してその活動状況に関する定期的な報告が行われることを期待する。
e)IMFが、国際金融システムにおけるグローバルな機関として、その正統性、信頼性、有効性を維持するためには、IMFの意思決定構造及び業務がアカウンタブルであり続けることが不可欠である。我々は、加盟国ごとのクォータを計算するためのフォーミュラの検討の努力が現在IMFで行われていることに留意する。このクォータは、世界経済の変化を反映するべきものである。
我々は、IMFの他のメンバーとともに、これらの提案について建設的かつ協力的に議論することを期待する。
危機の予防及び解決における民間セクターの関与(PSI)
17.我々は、最近のいくつかの国において、政策の改革及び経済の回復を図るためのIMFプログラムのファイナンスに債券保有者を含む国外の民間債権者が貢献してきていることを歓迎する。このことは、我々がケルンでの首脳への報告書において提示した枠組みを実践的なものとすることの重要性を確認するものである。
18.民間セクターの関与は危機の予防及び解決のために極めて重要であり、以下の措置を実施するために更なる努力を迅速に行わなければならない。
a)国際資本市場に参加している新興市場国及び民間債権者は、平時より、しっかりとした継続的な対話を確立する努力を行うべきである。
b)IMFは、より秩序だった危機の解決を促進するため、集団的行動に関する条項を含む適切な措置の使用についても促進すべきである。
c)G7の金融市場において新興市場国が発行した外債に、集団的行動に関する条項を含めることを促進するべきである。
d)世界銀行及び他の国際開発金融機関に対し、それらが保証を与えた国際ソブリン債または貸付においてこのような条項を入れるために作業するよう強く要請する。
19.危機の解決に向けて国際社会が採用するアプローチは、その国の経済の基礎的条件、債務支払いプロファイル、市場アクセスの実績、及びその負債の市場スプレッドによって示される、当該国の支払能力及び市場へのアクセス回復の見通しについてのIMFの評価に基づくべきである。
20全てのIMFのプログラムは、民間資金がどこから供給されるかについての想定を説明する章を含めて、その国の中期的な債務及び国際収支のプロファイルに関する分析を含む必要がある。
a)場合によっては、触媒的な公的融資と政策調整との組合せは、その国が完全な市場アクセスを早期に回復するために十分であろう。
b)場合によっては、債権者からの協力を得るために必要な自主的な取り組みを促すことに重点が置かれるべきである。
c)その他の場合、中期的な対外支払の維持可能性と整合的な諸条件に基づいた完全な市場アクセスの早期の回復は非現実的であると判断される際には、包括的な債務のリストラクチュアリングを含む民間債権者のより広範な関与が、プログラムに対し十分なファイナンスを提供し、実行可能な中期的な支払プロファイルをもたらすために必要かもしれない。
21.上記c)の場合、すなわち、債務のリストラクチュアリングまたは債務削減が必要となるかもしれない場合には、IMFプログラムは以下の運用ガイドラインに基づくべきである。
a)資金面での中期的な維持可能性に強い重点をおく。IMFがその国に必要とされる経済調整の適切な度合いを決定し、IMF及び当該国が、中期的に維持可能な債務支払プロファイルと整合的なファイナンシングに関する計画に合意する。
b)国際金融機関の資金供給において、国外の民間債権者と国外の公的債権者との貢献の間の適切なバランスを確保する。二国間の公的債権者(主にパリクラブ)からの貢献が必要な場合には、IMFのファイナンシングに関する計画は、二国間の公的債権者と国外の民間債権者の貢献の間の幅広い公平性をもたらす必要があるだろう。パリクラブは、もし関与する場合、パリクラブの合意と他の債権者との合意の間で望まれた公平性及び達成された公平性とを、当然、引き続き評価すべきである。
c)異なるクラスの民間債権者の取り扱いにおける公平性、及び全てのクラスの軽微でない債権者の関与を目指す。IMFは、中期的な維持可能性に加え、このような点を考慮し、民間債権者からの必要な貢献を確保する各国の努力をレビューすべきである。
d)債権者との交渉の責任は間違いなく債務国にある。公的な国際社会は、いかなる債務のリストラクチャリング及び債務削減に関する交渉についても、細部にわたる関与を行うべきではない。
e)各国に対して、中期的に維持可能な支払プロファイルと整合的な条件による、民間債権者からの必要な貢献を確保できない場合について、公的融資の条件も含め、プログラムに対して起こり得る結果について、手続き開始の時点においてより明確に示すべきである。このような結果には、当該国による追加的な調整をもたらすプログラム修正の必要性、または、公的融資の削減の選択肢、あるいは、逆に、ある国が、プログラムの他の要件を満たしている一方で、民間債権者と協力的かつ誠実に作業しようと努めている間支払いを一時停止している場合、IMFによる債務履行遅滞国に対する融資を、含み得る。
f)全ての関連する決定が行われたときに、IMFは、ケルンで合意された枠組みに従って、どのようにしてどのようなアプローチが採用されたのかを公に示すべきである。
22.我々は、各国及び市場参加者に対して一層明確にするため、今年の4月に合意された、IMFプログラムの策定にあたっての民間セクターの関与に関する我々のアプローチを実践的なものとすることについて、今年のプラハの年次総会までにIMFにおいて更なる進展があることを期待する。

C.MDBs(国際開発金融機関)の改革

23.我々は、開発途上国における貧困削減を加速することが、MDBs(国際開発金融機関)の中核的な役割であることを確認する。政策改革、投資プロジェクトや能力構築といったMDBsの業務の全ての側面において貧困削減に一層の焦点を当てるべきである。MDBsは、より効果的かつ一貫性をもってこうした使命を果していくため、以下のような変化する国際環境にその組織や業務を適合させることが必要である:貧困との闘いをより効果的なものとするために何が必要かについての新しい考え方、途上国における民間金融市場の成長、グローバリゼーションから生じる新しい機会と挑戦、そして援助資金全体の効率的な使用やMDBsの透明性や説明責任の向上に関する関係者のより強い関心。
24.経済成長は、一国が所得を高め貧困や不公平を削減していく能力の第一の決定要因である。開発が成功し、かつ公平度を高めるためには、良き統治、社会政策や貿易自由化を含む健全な構造・セクター政策、アカウンタブルで透明な制度、人的資本や公共財に対する投資も必要である。したがって、MDBsは、教育や保健のような社会的優先課題について貧困国を支援するばかりでなく、貧困削減にとって明らかに追加的な効果を持つ場合には経済・社会インフラストラクチャーの構築を支援するべきである。
25.MDBsは、新興市場国や中所得国における貧困削減にも大きな貢献を行うことができる。民間資金にアクセスのある国におけるMDBsの活動は、民間資金を排除しないように、より選択的であるべきである。同時に、新興市場国が一時的に資本市場へのアクセスができなくなった場合には、MDBsは、最貧層や最も脆弱なグループに対する大きな衝撃を緩和するための支援に、すばやく対応できるようにすべきである。
26.いずれの場合においても、MDBsの複数年にわたる業務の枠組みが確立されるべきであり、その中に基礎的な保健や教育、清潔な水、衛生といった中核的な社会投資に対する支援を増加させる明確なコミットメントを含むべきである。この枠組みは、適切な国別の融資残高上限を尊重すべきである。
27.MDBsは、借入国における良き統治や貧困削減への完全なコミットメントに高い優先度を置くべきである。各機関は、借入国のパフォーマンスをより重視しつつ、融資を配分すべきである。援助は政府が健全な政策にコミットしている場合にのみ貧困削減に効果があるというのが経験則である。この点で、我々は以下の点の重要性を強調する。
a)包括的開発フレームワーク(CDF)及び貧困削減戦略ペーパー(PRSP)は、借入国が強いオーナーシップを持ったプログラムの基礎になるべきである。
b)IDA12で合意されたような、パフォーマンスに基づく融資の仕組みは、全てのMDBsのプログラムに適切な形で適用されるべきである。
28.さらに、MDBsは、途上国支援の幅広いアプローチの中に、能力構築や構造改革・制度改革への支援を含むべきである。とりわけ、各機関は、
a)国内貯蓄を増加させ、民間資本の流入を助けることにより、借入国自身の全体的な資金調達能力を拡充するように努め、
b)透明性、説明責任、法の支配、貧困層に対する適切な社会的・人的な投資を確保し、貧困削減を妨げる制度的・構造的問題に対応し、
c)借入国による金融危機の防止・対応を支援するため、金融セクターを強化するべきである。
国別援助戦略(CAS)は、途上国に対する効果的かつ効率的なMDBsの支援のための包括的手段であり、MDBsは、その質を改善し、その範囲を拡充することに取り組むべきである。こうした戦略は、借入国におけるガバナンスや法・制度・規制の枠組みなどの政策環境を十分考慮すべきである。公的支出審査は、同戦略の重要な構成要素であるべきである。全てのCASで、その国の金融セクターやガバナンスを評価すべきである。
29.MDBsは、民間セクターとの競合を避け、触媒的な役割を引き受け、その活動を明確に開発効果や体制移行効果を持つプロジェクトにより集中すべきである。従来MDBsが資金を供給してきたようなプロジェクトに民間セクターが益々資金を供給するようになるにつれ、より多くの公的資源が社会セクターや公共財への投資に利用可能となろう。
30.MDBs、とりわけ世界銀行は、感染症や環境問題のような開発に密接に関連するグローバルな問題への関与を深め、国際公共財の提供を進めるべきである。この点で、譲許的財源の稀少性に鑑み、国連機関(たとえば、世界保健機構(WHO)や国連共同エイズプログラム(UNAIDS))を含む様々な国際機関及び民間機関の間での優位性を注意深く検討すべきである。
31.MDBsは、公的機関としての役割やそれぞれの開発の使命を明確に定義し、量や利益を重視するアプローチではなく、選択的で質を重視するアプローチを強調すべきである。民間セクターに資源を提供するMDBsは、この点で、その役割、組織、業務をより明確に定義すべきである。
32.MDBsは、以上のパラグラフに掲げられている原則や変化する国際金融環境に照らして、開発及び貧困削減の使命を果たすために利用可能な融資手段を改めて見直すことが重要である。この点で、我々は、異なるタイプの支援ごとに金利に格差を付けるべきかという問題を含め、融資金利政策の包括的な見直しを直ちに開始することを要請する。MDBsは、また、より広い範囲の国々がMDBsの専門性から裨益し続けることができるよう、融資業務と非融資業務をある程度分離する可能性を検討すべきである。
33.最貧国に焦点をあてたMDBsによる譲許的融資は、貧困削減において極めて重要な役割を有している。MDBsの譲許的財源の補充は、公平な負担の分担の原則に基づくべきであり、また、我々は新しいドナーが積極的に参加することを奨励する。
34.援助の質は、場合によっては、世銀及びいくつかの地域開発銀行との間の健全な競争により改善する可能性がある。しかしながら、これらの機関は稀少な援助資源の効率的な使用を確保するため、協力と協調を強化することが重要である。世銀により開始されたCDF及びPRSPは、二国間及び多国間のドナーの協調において有益な手段たり得る。世銀と地域開銀は、各地域開銀の状況を考慮に入れつつ、両者の協調とより密接なパートナーシップを形成するため、覚書(Memoranda of Understanding)を締結すべきである。これに関して、我々は、世銀とアフリカ開発銀行の間での最近の合意を歓迎する。現場での協力はとりわけ重要であり、この点で、世銀の業務の現地化の進展と、この現地化の過程が地域開銀との協力に与える影響とプロジェクトや運営の質に与える影響について、包括的な見直しを行うことを歓迎する。
35.IMFと世銀は、異なる使命を持ち、それらを尊重する必要がある。しかしながら、両者が扱う諸問題はますます相互に関係し、いくつかの国では両者の活動は相互依存している。この点で、両者は、効率性や情報の交換を改善するために、密接に協力し続けるべきである。このためには、それぞれの責任と活動をより明確に定義し、また、一層効果的な協力の仕組みを継続的に形成していくことを必要とする。
36.最後に、我々は、MDBsが出資国やMDBsの活動によって影響される人々に対するより一層の説明責任を負うことを求める。したがって、我々は、この目標に向けたMDBsの最近の大きな進展を支持する。しかしながら、情報公開、公衆の参加や出資国への説明責任のような重要な分野においては、追加的な進展が明らかに必要である。
a)市場に与える影響に適切な注意を払いつつ、より広範囲な業務関係文書、特に全ての国別戦略と評価報告書は公表されるべきである。
b)独立の監視委員会が、全ての機関において適切な形で設置されるべきである。
c)各機関は、プロジェクトの提案が理事会に提出される前に、各機関の政策を完全に遵守しているかを確認するためのコンプライアンス・ユニットを設立すべきである。
d)各MDBsのモニタリングや事後評価の機能、内部的な財務管理、調達方針・手続き、そして監査手続きは強化されるべきであり、全てのMDBsは強力で独立した評価部門を有するべきである。

D.高レバレッジ機関、資本移動、及びオフショア金融センター

37.我々は、本年3月に発表された金融安定化フォーラム(FSF)の高レバレッジ機関(HLIs)、資本移動、オフショア金融センター(OFCs)に関する各作業部会の報告書に盛り込まれた提言を実施することが重要であることを強調する。この関連で、我々は、IMF、世銀、その他の機関が、FSFの作業部会の様々な提言を実施するにあたって積極的に貢献することを求める。
38.システミック・リスクの一因となり、市場のダイナミクスに影響をもたらし得るHLIsの活動から生じる潜在的な結果に対する懸念に対応するため、以下の措置の実施を促進することが重要である。
a)HLIs及びHLIsの取引相手によるリスク管理の改善。
b)HLIs及びその債権者によるディスクロージャーの強化を含む、金融機関によるディスクロージャーの慣行の改善。我々は、全ての国・地域がHLIs等に対するディスクロージャーの要請の妥当性を検討し、必要な場合には、その国・地域に存在する主要なヘッジファンドがディスクロージャーの要請に従うことを確保するために、法律や規制について適切な改正を行うことを求める。現在、オフショアセンターは規制を受けていないヘッジファンドの多くを受け入れているため、この提言は特にオフショアセンターに適用されるべきである。
c)HLIsの債権者となっている金融機関に対する各国当局による規制及び監督の強化。
d)HLIsの活動により引き起こされるシステミック・リスク及び市場のダイナミクスに関する懸念に鑑み、金融市場におけるHLIs等の活動に対する当該国によるサーベイランスの強化。
e)主要な外国為替市場の参加者による、外国為替取引のための既存の良い慣行に関するガイドラインのレビュー、及び比較的小規模な経済において市場参加者によって採択される可能性のあるモデル・ガイドラインの発表。
f)市場インフラの改善
我々は、追加的な措置が必要かどうかを決定するため、これらの措置及びその実施についてレビューを行う。この観点から、我々は、FSFが、現在規制を受けていないHLIsへの直接規制について、3月の報告書作成時に検討を行ったが、提言には至らなかったこと、しかし、FSFは今後のレビューの上、もし既に提言された措置の実施によっても懸念が払拭されていないとされた場合には、直接規制が再検討されることを強調したことに留意する。
39.各国が債務に係るリスクを適切に管理することも重要である。この関連で、我々はIMF及び世銀によって行われている作業を歓迎するとともに、短期の外貨建て債務により生じるリスクに特別の注意を払いつつ、また、民間セクターの債務から生じる脆弱性を含む資本勘定危機に対する各国の脆弱性を考慮に入れつつ、公的債務及び外貨準備の管理のためのガイドラインを早急に策定することを強く要請する。効率的な国内債券市場の創設も重要である。短期の資本フローへの過度のエクスポージャーによるリスクを減らすため、銀行システムにおけるプルーデンシャルの観点からの制限が適切である場合もある。
40.国際基準を十分に満たさず、従って国際金融システムに対して潜在的な脅威であるオフショア金融センターについては、我々は、対応を優先すべき国・地域がFSFによって特定されたことを歓迎するとともに、IMFに対してこれらの国・地域についての具体的な評価を早急に行うよう強く促す。我々は、リストに載った全ての国・地域に対して、例えば、関係する国際基準を実施していくという意図を公表すること、これらの国際基準の遵守状況について一定の支援を得ながら自己評価を実施すること、最終的には詳細な行動計画を作成して特定された問題点に対処すること、などを通じて、基準の実施状況を改善するとのコミットメントを明らかにするよう強く促す。
41.大規模かつ急激な国際資本移動によってもたらされるリスクに対応するためには、各国が健全なマクロ経済政策を追求すること、市場の機能を高めるための構造改革を進めていくこと、金融システムを強化すること、整合的で信頼性の高いマクロ経済政策及びその他の措置によって支えられた適切な為替相場制度を選択すること、よく順序立った資本勘定の自由化を行うこと、必要ならばその他の適切な政策を採ることが引き続き重要である。
42.金融システムの信認に関して各国の預金保険制度が寄与する役割は極めて大きいという認識のもと、我々は、預金保険スキームに関するFSFのガイダンス作成の更なる進展に期待する。
E.地域協力
43.以上議論したとおり、国際金融システムの安定のためには、加盟国に対するIMFのサーベイランス及び適切な資金支援が重要である。これに加え、IMFの加盟国は、地域レベルで、国際貿易・投資を通じた共通の利益や地域内での危機伝播のリスクに対する共通の懸念に鑑み、世界経済におけるIMFの目的や任務を支援する形で、地域内でのサーベイランスや資金支援の協力を強化することができる。このような地域協力は、地域の安定を改善させることができ、従って世界経済の安定にも寄与し得るものである。
44.この関連で我々は、地域協力について様々なレベルで最近進展が見られることを歓迎する。アジア地域では、地域サーベイランス及び二国間のスワップメカニズムを含む資金協力のための枠組みが拡大した。北米では、3カ国によるスワップ取極がサーベイランス及び定期的な経済協議のプロセスとともに維持されている。
45.より強化されたサーベイランスを通じた地域協力は、国レベルでの政策枠組みの強化を通じて金融の安定性に寄与し得る。各国へのIMFプログラムを支援する形で国際金融機関により供与される資金を補完するような地域レベルでの協調的な資金取極は、危機の予防及び解決に有効であり得る。
46.制度上異なる文脈ではあるが、欧州における経済及び金融の統合メカニズムや通貨統合もまた、世界の経済及び金融の安定に貢献している。