日 時:令和元年11月8日(金)13:30~16:00
場 所:財務省4階 第4会議室
出席者:川村座長、神作委員、高田委員、宮本委員、家森委員
(一社)日本プライベート・エクイティ協会 木村会長、漆谷事務局長
(一社)全国地方銀行協会((株)常陽銀行) 秋野常務取締役
グローバル測位サービス(株) 小澤社長
(株)岩手銀行 藤元企業財務支援室長
静岡ガス(株) 小杉取締役常務執行役員、谷口海外事業部マネージャー
(株)日本政策投資銀行 地下取締役常務執行役員、高澤執行役員経営企画部長
金融庁
議事要旨:
日本プライベート・エクイティ協会、全国地方銀行協会、特定投資業務のユーザーであるグローバル測位サービス、岩手銀行、静岡ガスから資料に沿って説明を行い、それぞれに対して質疑応答を行った。その後、委員による自由討議を行った。その主な内容は以下のとおり。
(成長資金供給市場の現状)
〇 政府・関係機関の役割はあくまでも市場の機能不全の是正と民業の補完にあり、本来のリスクマネー供給者たる民業と競合することなく、役割分担を持って協業することが、健全な市場メカニズムの形成に不可欠。
〇 我が国におけるバイアウトマーケットは投資家の裾野を広げながら順調に拡大している。事業再編に伴うカーブアウトや事業承継ニーズが大きくなってきており、LBO、メザニンファイナンスも足元で拡大中。
〇 金融規制が厳しく資金がタイトなころは、銀行が長い資金を折り返して出しており、疑似エクイティになっていた。不良債権問題以降抑えられたが、いまもう一度疑似エクイティ的な手法が必要と考えている。そのためにローンを転がすのがよいか、劣後債・優先株で入れた方がいいのかは、対象企業ごとに色分けをしながらやらないといけない。ローンを転がすのは基本的にはあまり良いことだとは思っていない。
(特定投資業務の評価)
〇 特定投資業務が民間PEファンドと競合する事例は昨今聞かれず、民業との棲み分けに配意した極めて規律高い運営がなされている。
〇 我が国の民間VCの大型化が進んでいない中、民間資金の補完としての新領域・新産業創造への投資促進という観点で、DBJの特定投資業務の役割は大きい。
〇 リスクマネー供給の取組みが進んでいない銀行においては、DBJとの共同ファンドを通じた投資事業のサポートはありがたい。また、取組みが進んでいる銀行においても、ノウハウ共有・案件取組み機会の拡大・リスクシェアの観点で、長期的・中立性のあるDBJとの協働は非常に有用。
〇 DBJが地域企業・地方銀行と共にリスクマネーを供給する仕組みとなっている特定投資業務は、リスクマネーの量的補完という観点に加え、地域におけるリスクマネーの出し手の育成という観点からも大変ありがたい。
〇 多くのPEファンドは東京にオフィスがあり、効率性の観点からも地方にはなかなか手が回らない。そのため地方ではリスクマネーが足りておらず、この点、特定投資業務の役割は極めて大きい。全国の支店網を生かした小回りの利く地域活性化のための投資活動は、他の政府系機関で代替できない活動であり、高い呼び水効果を生んでいる。
〇 DBJは投融資案件での協働、勉強会の開催等を通じたナレッジの共有、人事交流等、様々な面で役立っているとの意見が多い。特定投資業務の執行には全く問題がなく、人的交流も含めウィンウィンの関係にある。
〇 DBJへの出向経験者が地銀ではなかなか経験できないグローバルな視点でのプロジェクトファイナンスなど様々なノウハウを学び、銀行に戻ってから企業再生スキームでの事業評価や、ファンド案件の発掘・営業店のサポートなどを通じて還元している。今後もパートナーとして新たな収益機会につながる知識を共有してほしい。
〇 共同ファンドの投資審査はDBJのやり方で行っており、その審査の内容や投資委員会の資料を銀行の審査にも役立てている。
〇 DBJには株主として、経営的なアドバイスや、株主間契約を含めた株主間の調整をしていただいている。調査機能を生かして、経営方針や市場の動向などについて助言してもらっており、事業計画を見直しや収益のシミュレーションなどにおいて、DBJの役割は非常に大きい。また、新事業展開にあたって、DBJの広いネットワークに期待している。
〇 DBJとは従来から信頼関係があり、一緒にやらせていただいた。DBJからのファイナンススキーム等についての適切な助言、リスクマネーの供給がなければ、この事業はなしえなかった。ここで得た経験やネットワークをもとに現在、海外事業の拡大に取り組んでいる。
〇 中立的な第三者によるモニタリングが不可欠であるが、この点において特定投資業務モニタリング・ボードの存在は大きく、厳格な規律とガバナンスに大きく貢献している。今後も当該業務の目的に照らした適切なモニタリングとパフォーマンスや効果のレビューを行い、実効性の確保を図るとともに、経済環境や産業構造の変化に応じて機動的な特定投資業務の見直しがなされる体制維持を期待。
(成長資金供給の促進を図るための取組)
〇 ①民間ファンドへのLP出資並びに民間ファンドとの共同投資促進による民業補完機能の強化、②地域におけるリスクマネーの供給機能の発展のための、地域プレーヤー(地域民間ファンド、アドバイザー、コンサルティング、プロ経営者等)との協調や活用・育成を通じた地域のエコシステム活性化に向けた取り組み、③民間、あるいは民間のみでは対応しきれない、国家の長期的戦略に資する先端的イノベーション領域への投資強化(LP出資、民間との共同投資を優先とし、例外的に単独直接投資)の3点を提言する。
〇 PE領域においては、大企業のカーブアウトや大型の事業承継案件といった大規模案件はDBJに入ってもらい共同投資で量的補完してほしい。
〇 地域においては事業承継が喫緊の課題。既に事業承継に特化したファンドを立ち上げ、DBJとの協働ではなく単独GPとして運営している銀行もあるが、そのような銀行が今後増えたとしても案件の増加が今後見込まれることを踏まえれば、LP出資等を通じて量的補完とノウハウの提供をしてもらえるとありがたい。
〇 規模の問題から、ノウハウがあっても地方銀行が単独でファンドを設立してGPとしてまわしていくことは難しい。今後も多彩な金融サービス、ノウハウを持っているDBJとパートナーとしてやっていきたい。
〇 地域発のイノベーション・起業支援を地方銀行と協働で行うことで、地域経済の新陳代謝の促進を図ってほしい。また、公的セクターのPPP案件やPFI案件、地域におけるBCP対策を一緒に取り組みたい。
〇 ノウハウを一度移転したら終わりではなく、常に新しい技術が開発されるため、DBJから継続的に最新のノウハウを共有してもらいたい。
〇 ノウハウ移転の成果を図る尺度として、勉強会の回数、人材育成数、共同でGPとして組成したファンド数や案件数、経済的なリターンなどを利用することも考えらえる。
〇 地域におけるリスクマネー供給の促進、その先にある地域活性化には引き続き取組む必要があり、また地域案件は中長期的な視点で取組まなければならない案件も少なくないため、特定投資業務の継続は必要。
(以上)