日 時:令和6年10月22日(火)15:45~18:00
場 所:財務省3階 第2特別会議室
出席者:家森座長・有吉委員・武田委員・丸田委員(対面)、津曲委員(オンライン)
(一社)全国銀行協会 安地企画委員長((株)三井住友銀行 常務執行役員)
(一社)日本ベンチャーキャピタル協会 郷治会長
インキュベイトファンド(株) 赤浦代表パートナー
出光興産(株) 石田上席執行役員経営企画部長
(株)日本政策投資銀行 村上取締役常務執行役員、高澤取締役常務執行役員、
成清執行役員経営企画部長、春日執行役員業務企画部長
金融庁
議事要旨:
全国銀行協会、日本ベンチャーキャピタル協会、インキュベイトファンド、出光興産から資料に基づき説明を行い、委員による自由討議を行った。主な内容は下記のとおり。
(成長資金供給市場の現状)
〇 国内リスクマネー市場は、GX・ディープテック分野で案件が大規模化・長期化するとともに、主要産業の国内回帰の動きが活発化し、重要物資のサプライチェーン強化の動きが進むなど、資金需要が拡大している。民間金融機関の資金供給も中長期的には拡大していく見込みだが、足元の需要の伸びに追いつかず、需給ギャップが継続・拡大している状況。
〇 スタートアップの市場規模はここ10年で大きく成長。以前はレイターステージの資金需要が大きかったが、近年はディープテック分野が拡大する中、よりリスクが高く、投資に時間のかかるシード・アーリーステージに活発に資金供給が行われ、ベンチャーキャピタルの投資ステージの過半を占めている。
〇 ベンチャーキャピタルが設立するファンドサイズを見ると、より大規模な資金が求められるディープテックに資金を供給するにはまだ小ぶりという印象であり、米国と比べ、機関投資家・海外投資家からの資金も少ない。また、大学発スタートアップの資金調達の伸びが顕著であるが、大半が首都圏に集中している状況。
〇 GX分野は、現時点で水素やアンモニアといった各燃料の市場形成の時期や市場規模が見通せない中、技術開発やサプライチェーンの構築に当たって巨額の投資が必要であることに加え、市場が未成熟であるが故に投資回収期間が長期化せざるを得ない。
〇 ディープテック分野は、バイオや量子コンピューター、核融合など、商用化に向けた大規模な研究開発や設備投資が必要となり、より長期での支援が求められる。
(特定投資業務の評価)
〇 DBJによる特定投資業務を通じた資金供給に関して、そもそも民間によるエクイティ供給量が圧倒的に不足しており、民業圧迫の懸念は感じていない。
〇 海外では、デッドとエクイティの中間に当たるいわゆるメザニン資金を供給するプレイヤーが多くいるが、日本ではメザニン資金を供給する民間金融機関が少ない。DBJがメザニン資金としてリスクマネーを供給することで、それが呼び水となり、民間のデッド・エクイティが引き出されており、民間金融機関がリスクを取り切れない場合に、特定投資業務を通じて、リスクマネー供給の質的・量的補完が適切に行われている。
〇 GX投資は1件当たり1,000億円を超える大規模な案件が増加しており、民間金融機関が資金供給を行うに当たっては様々な制約がかかる中、DBJによる特定投資業務を通じたリスクマネー供給は非常に心強い。
〇 DBJは、GXやディープテックといった専門分野にも明るく、政策目的を重視しつつもリターンもしっかりと追求しており、非常にレピュテーションが高いからこそ、出資をするとなった場合の呼び水効果が高い。また、ファンドに資金を投じるだけでなく、役員派遣やファンドの運営体制に係るアドバイスといったハンズオン支援、持ち前の顧客基盤を活用した販路開拓サポートなど、業界全体のレベルアップに貢献している。
〇 地域においては、1つ1つの案件の規模が小さいことから大手金融機関では手が出しづらく、ベンチャーキャピタルによる投資もいまだ限定的。こうした中、地域金融機関が単独で支援を行うことが難しい場合に、DBJが地域金融機関と協調・連携しながら、積極的にリスクマネーを供給しており、地域活性化に貢献している。
〇 リスクマネー需要の拡大に民間の資金供給が追い付いておらず、サプライチェーン強靱化など、一部の分野は民間ではどうしてもリスクが取り切れない側面もある。また、スタートアップ支援の文脈では、業界育成の観点でもDBJによる支援が必要な状況であり、引き続き、特定投資業務を継続してもらいたい。
〇 GXのうち、例えば、水素・アンモニア分野では、国による支援制度を含め、投資決定から回収までに10年を超えることが一般的と考えられているほか、ディープテック分野のファンドを創設する場合には、通常10年とされている運用期間を超えて、15年程度まで期間延長が認められるケースも見られる。こうした中、特定投資業務において、今後、GXやディープテックといった分野での案件の長期化にも対応できるよう、回収期間の長期化を検討してもらいたい。
〇 現在、特定投資業務で3つの重点分野を掲げているが、地域活性化もDBJ法の政策目的に規定されている重要な政策課題。新たな枠を作るというよりも、これら重点分野を通じて、地域活性化の取組にも力を入れていくとよいのではないか。
〇 ユニコーンとなりうるスタートアップを育成していくためには、時間をかけて十分に成長した上での新規株式公開(IPO)が可能となるよう、セカンダリー市場を整備するとともに、早期IPOをした場合でも、IPO前後で変わらず伴走支援を行うクロスオーバー投資を拡大していく必要があり、DBJにはこうした市場・投資家の育成を進めてもらいたい。
〇 GX・ディープテックといった新たな投資分野で案件の大規模化・長期化が進む中、今後、特定投資業務としてこうした分野に対応していくに当たっては、必要となるリスクバッファの大きさや、資金供給の運用上の制約についても検討していく必要があるのではないか。
(以上)