日 時:2024年10月17日(木)16:00~18:00
場 所:財務省4階 第1会議室
出席者:家森座長、有吉委員、武田委員、津曲委員、丸田委員
(株)三井住友フィナンシャルグループ 國部取締役会長
((株)日本政策投資銀行特定投資業務モニタリング・ボード 議長)
(株)日本政策投資銀行 村上取締役常務執行役員、高澤取締役常務執行役員
成清執行役員経営企画部長、春日執行役員業務企画部長
金融庁
議事要旨:
開会挨拶の後、委員による互選により座長の選出を行った。続いて、事務局及び(株)日本政策投資銀行(DBJ)から資料に基づき説明を行った。その後、特定投資業務モニタリング・ボード議長からモニタリング・ボードにおける議論の説明と委員による自由討議を行った。主な内容は下記のとおり。
(成長資金供給市場の現状)
〇 国内リスクマネー市場は、市場規模の拡大につれ多様なプレイヤーが登場してきている。他方、スタートアップやGX、サプライチェーン強靱化といった観点でリスクマネーの重要性は高まってきており、諸外国と比較しても、依然として供給量が不足している。
〇 民間金融機関は、従来の単純なデットの貸出から様々なリスクをとるように変化してきている。ただ、民間金融機関だけで取り切れないリスクや、計量が難しいリスクも引き続き存在するのに加え、GXやスタートアップ等の新たな投資領域については、予見可能性が難しく、また案件の大型化・回収までの長期化が見込まれる等、新たな課題も出てきている。
〇 地域では、事業の改善・維持にシニアローンが向けられることが多く、成長投資に資金が向いていかない。地域の企業からは、地域金融機関からのリスクマネー供給は増加しているものの、依然として不足している状況にあるとの声が聞かれている。
(特定投資業務の評価)
〇 特定投資業務モニタリング・ボードは、①政策目的との整合性を含む実績評価、②民業の補完・奨励及び適正な競争関係の確保等の監視の観点から審議しており、全体として特定投資業務の運営に問題はないと評価している。また、政策評価について、2020年の法改正時の意見を踏まえ、OECDが使用している評価手法を特定投資業務向けにカスタマイズし、2021年以降、自己評価を行っており、規律ある運営に貢献している。
〇 特定投資業務全体の累積損益を見てもパフォーマンスが出ており、評価できる。こうした背景には、DBJ自身の審査ノウハウや知見の蓄積に加え、投資業務にあたる社内の万全な体制や民間金融機関とのネットワークといった強固な土台があると考えられる。
〇 民間金融機関から民業圧迫の声は聞かれず、むしろ呼び水効果の一層の発揮を含め、多くの期待が寄せられている状況。民間金融機関は国際金融規制によりリスクマネー供給に限界がある中、DBJがより長期かつ収益性の判断が難しい案件に率先して資金供給を行うなど、民間との棲み分けがうまく図られてきている成果ではないか。
〇 エネルギー安定供給や各国間の産業競争の激化、生成AIをはじめとした技術進化と世界情勢が大きく変化しており、特定投資業務の3つの重点分野(サプライチェーン強靱化、GX、スタートアップ・イノベーション)は、こうした潮流ともマッチしている。
〇 地域では、収益性が相対的に低いながらも長期資金が求められる案件が存在しており、大手金融機関等が手を出しづらい中、特定投資業務の存在が非常に重要。他方、特定投資業務がいまだ地域に浸透しきっているとまでは言い難い。
(今後の成長資金供給促進に向けた議論)
〇 現状、GX・ディープテックなど様々な分野で、長期・大規模の資金が必要とされてきている。特定投資業務が、今後、こうした分野にリスクマネーを供給していくことは、政策目的との整合性の観点からも重要であり、ぜひ継続してもらいたいが、現行の回収期間では政策効果が実現できない可能性もあり、回収期間の長期化を検討してはどうか。
〇 特定投資業務の3つの重点分野と地域経済の自立的発展に資する取組を掛け合わせ、進化させていくことが重要ではないか。また、特定投資業務の地域への浸透を加速させていく必要があるのではないか。同時に、地域金融機関では人材・ノウハウが不足しており、DBJが有するナレッジの共有・発信にこれまで以上に取り組む必要があるのではないか。
〇 案件数が増えていることに加え、今後、各案件の大型化・長期化も想定される中、リスク管理や案件創出に関して、体制面に問題はないか。
〇 2014年に成長資金の議論をスタートして以来、いまだリスクマネーが足りない状況が継続している。DBJが民業補完をしつつも、国全体・各地域において、民間によるリスクマネー供給を増やす仕組もあわせて考えていく必要があるのではないか。