財政投融資制度の抜本的改革に係る議論の整理 (資金運用審議会懇談会検討会) |
|
(1) 財政投融資制度の改革の方向 |
||
|
財政政策の中で償還等の必要な有償資金を用いて国の各般の施策を効率的、効果的に実施する仕組み、将来においても重要 | |
社会資本などの提供 | ||
外部経済をもたらす財等への投資の奨励・誘導 | ||
貸付期間に応じた固定金利の長期資金の供給による民間金融市場の補完 |
|
民業補完の徹底や償還確実性の精査、コストとベネフィットの十分な比較といった点を踏まえ厳格に限定 |
|
従来の郵便貯金・年金積立金の全額が義務預託され、潤沢な資金が自動的に流入する制度から、特殊法人等の施策に必要な資金だけを能動的に市場から調達する仕組みへと抜本的な転換を図ることにより、特殊法人等の改革、効率化の促進にも寄与 |
(2) 主な対象分野・事業 | |
|
その多くは欧米主要国における有償資金を活用した制度の対象分野(住宅、中小企業、社会資本整備、地方公共団体など)と同様 |
→ | 有償資金の活用が適切なものであるかどうかについて、住宅、中小企業、農林水産業、社会資本、環境、産業・技術、国際協力、地方、といった対象分野・事業ごとに、それぞれ不断の見直しが必要 |
→ | 見直しに際し、政策コスト分析を適切に活用 |
|
今後、金融システム改革の進展に伴い、民間金融機関の役割・機能が拡大 |
→ |
民業補完という使命に立ち、その必要性が薄くなったもの、あるいは民間金融機関が十分対応できるようになっているものは除外 |
(3) 資金調達 |
|
→ |
その際、以下の点を実現 |
必要な額だけを能動的に調達 |
|
(1) 財政投融資計画の位置づけ |
|
現 行: | いわゆる財投三表として、財政投融資資金計画、財政投融資原資見込、財政投融資使途別分類表を作成、国会に参考資料として提出 |
改革後: |
政府の信用供与の態様に着目して、投資、融資、保証に区分し、制度上もその位置づけを明確化し、財政投融資資金計画、財政投融資原資見込、財政投融資使途別分類表について、よりわかりやすく統一性・一覧性をもった形で整理 |
(1) 財政投融資計画の一層の統一性・一覧性の向上 |
|
郵便貯金及び簡易生命保険の積立金による地方公共団体に対する貸付け |
|
→ |
財政投融資計画において、その総額を統一性・一覧性をもった形で表示 |
政府保証 |
|
→ |
国の保証の全体像を明らかにするための工夫について、更に検討 |
財投債の発行に伴い、財政投融資原資見込の表記方法について検討 |
|
郵便貯金及び年金積立金の自主運用に伴い、財政投融資使途別分類表についても簡素化 |
(注) |
財政投融資の対象となっている特殊法人等が民間金融市場において個別に発行する政府保証のない公募債券(いわゆる財投機関債)については、法人自らが自力で市場から資金を調達するものであることから、政府の信用供与である財政投融資(投資・融資・保証)には含まれないこととなるが、財政投融資との関係がよくわかるよう、何らかの形で表示するための工夫について更に検討 |
|
(1) 議決形式 |
|
現 行: | 資金運用部資金の長期(5年以上)運用等として国会の議決(予算の一部) (原資ごとの構成:資金運用部資金、簡易生命保険の積立金、産業投資特別会計、政府保証債・政府保証借入金) |
改革後: |
財政投融資の性格が、郵便貯金・年金積立金等の全額預託義務に基づいて受動的に集まった公的資金の統合運用から、市場原理にのっとり、真に必要な額だけを能動的に調達した資金による投融資活動(国が行う資源配分機能を有する投資、融資、保証)へ変化することになるため、これらを踏まえ改革後の国会議決の受け方について、今後更に検討 また、財投債の発行限度額についても国会の議決 なお、新しい資金運用部における必要な資金の調達と、貸付け等にはタイミングのずれが生じるが、これを調整するために行われる市場運用については、金融・経済情勢の変化に的確かつ弾力的に対応することができるような仕組みとするとともに、ディスクロージャーの一層の充実等について検討 資金運用部特別会計、産業投資特別会計のあり方、仕組み等についても今後更に検討 |
(2) 国会提出資料 |
|
現 行: | 財政投融資資金計画、財政投融資原資見込、財政投融資使途別分類表(いわゆる財投三表)、予算及び財政投融資計画の説明 |
改革後: | 現行の資料に加え、国会の一層の審議充実に資するため、わかりやすく一覧性を向上させる観点から、参考資料やディスクロージャーの充実を検討 |
(3) 弾力条項の取扱い
|
|
(1) 財政投融資の貸付金利 |
|
現 行: | 貸付期間にかかわらず同一の金利水準 |
改革後: | 基本的には、貸付期間に応じ、国債の市場金利を基準として設定 |
→ |
わかりやすく透明性をもったルールにのっとり、市場金利の動きに対応 |
→ |
資金調達面の状況を踏まえつつ、金利リスク等の適切な管理を行いながら、例えば10年ごとの金利見直し(10年変動金利)の選択も可能とするなど、貸付金利を多様化 |
(2) 調達金利 |
|
現 行: | 預託者の事業の運営に対する「配慮」による金利上乗せ、政令に利率を規定 |
改革後: | 財投債による市場条件での調達 |
(3) 資産・負債管理(ALM) |
|
現 行: | 郵便貯金の日々の預入等により、流動性は比較的豊富であるが、負債サイドは操作可能性が少なく、債券運用等による資産・負債管理 |
改革後: | 財政投融資に必要な額だけを財投債により調達するため、効率的運営の観点から余裕資金は必要最小限 |
→ |
十分な流動性を確保しつつ、適切な資産・負債管理を行うことができるよう運用・調達手段を整備 |
○資金運用: | 短期の運用資産を必要最小限保有し、流動性を確保 |
→ |
金融技術の進展等に機動的に対応できるよう、新しい資金運用部のリスク軽減につながる手段を充実 |
○資金調達: | 円滑な市中消化のため財投債は平準的に発行する一方で、融資の実施時期は事業により偏り |
→ |
両者のタイミングのずれを調整し、資金繰りを円滑に行うため、融通証券の発行等について検討 |
|
(1) 財投機関債の発行にあたっての留意点
|
→ | いわゆる「暗黙の政府保証」に依存した安易な財投機関債の発行が行われないよう、市場の評価が適切に行われるための条件整備を進める必要
|
(2) 市場関係者の見方
|
→ | 財投機関債の発行による市場のチェックという本来の効果が発揮されるよう、政府の信用とは切り離された形で、各機関に対する市場の評価が適切に行われるため、ディスクロージャーの強化、格付けや外部監査の活用、補給金等の取扱い、破綻及びその処理のルール、財政投融資改革の移行期における経過的な取扱い、等の点に関し、更に検討を進めていく必要
|
(3) 発行に向けた検討状況
(4) 法制審議会倒産法制部会
|
|
政府保証債の発行にあたっての留意点
|
政府保証を付すことにより、政府・国会のチェック機能が働きやすくなる、 | |
直ちに政府保証なしで財投機関債を発行することが困難な機関について、それが可能となるまでの過渡的な期間において、政府保証を付すことにより、各機関の将来の自立を促す可能性がある、 |
等のメリットを踏まえ、具体的検討が必要
|
(注1) | ドイツの公的金融機関である復興金融公庫については、これまで機関責任という考え方に基づき、その発行する債券に政府保証が付与されていないにも拘わらず最終的な償還責任は政府が負うこととされていたが、昨年より、市場において当該債券がより適切に評価されるよう、明示的に政府保証が付されている。 |
(注2) | なお、以上は財政投融資計画に計上される政府保証債についての記述である。 |
|
(1) 財投債の性格
|
→ | グローバルスタンダードである国連の国際的基準(SNA)上、一般政府の債務には含まれない(建設国債等の普通国債の利払い及び償還の財源は将来の租税) |
|
→ | 国が最終的な償還責任を負うという点では国の債務に他ならず、この意味で国債 |
(2) 財政面(財政規律を確保するため、財投債の性格にふさわしい仕組みを工夫)
|
各年度の財投債の発行額に対する国会の議決 | |
財投債の会計制度上の取扱い(特会債とするか、資金債とするか等) | |
減債制度や償還計画の要否 | |
国会審議の参考資料 等 | |
(3) 市場面(国債に関する既存のインフラストラクチャーをできるだけ活用)
|
我が国の例(現行の国債、政府短期証券)においても、発行根拠法及び発行する会計の別にかかわらず一体のものとして発行 また、地方債証券も、会計別(普通会計・企業会計等)により区分せず、一体のものとして発行 |
|
欧米諸国においても、国が行う資金調達は、資金の使途にかかわらず同一の債券で一体的に調達 | |
法的な債務者は、財投債も他の既存の国債も日本国政府であり同一(信用力も同じ) | |
我が国債券市場の発展を促進 | |
債券先物市場をはじめとする消化・流通等に関する既存の国債のインフラの活用により、市場参加者や国の新たなコストを抑制、行政改革の方向にも適合 |
|
(1) 財政投融資改革の円滑な実施に向けた適切な経過措置 |
財政投融資: | 償還までの期間が長く、かつ大きな融資残高 住宅、中小企業融資等を通じ、国民生活に密着 |
→経過措置として、 既往の貸付けの継続にかかわる資金繰りの確保 市場に与える影響に十分配慮した財投債の発行等 について、今後、具体的に検討 |
○ |
中央省庁等改革基本法(平成10年6月成立)等において、上記経過措置が必要な旨明記 |
(2) 郵便貯金・年金積立金の自主運用
|
→ |
安全確実な運用(公的資金という性格に鑑み、資金運用の対象について一定の制約) |
→ |
民間金融市場に与える影響に十分配慮し、市場を攪乱しないように運用 |
|
|
|
→ |
資源配分機能を有するこのような資金供給は、財政政策の一環として、財政投融資の枠組みの中で、国会のコントロールの下適切に実施する必要
|
|
→ |
資源配分機能を有する地方公共団体への資金供給については、国会のコントロールの下に行われる必要(財政投融資計画の中に統一性・一覧性をもって計上、予算による国会の議決、市場原理に則した政府が定める統一的貸付条件、が必要) |
|
(1) 政策コスト分析の枠組み
(2) 政策コスト分析の意義
|
→ |
今後、政策コスト把握に加え、ベネフィットについても正確に把握していく必要があるが、政策コスト分析の導入はそうした方向への重要なステップであり、分析結果の公表に際しては、当該事業のベネフィットについてもできる限りわかりやすい形で示すことが必要 |
|
(1) 特殊法人等の規律確保 |
国民にわかりやすい形での民間の基準を上回る一層のディスクロージャー 平成9年に成立した「特殊法人の財務諸表等の作成及び公開の推進に関する法律」に基づき情報公開を実施 |
→ |
今後も一層の充実に向け検討 |
会計制度 特殊法人等の会計制度については、「企業会計原則」に準拠した「特殊法人等会計処理基準」にのっとり実施 |
→ |
今後とも、できる限り「企業会計原則」に沿って会計処理の一層の適正化を図り、財務諸表をよりわかりやすくするための工夫を推進 |
客観的な評価・監視の仕組みの確立 |
→ |
外部監査等の積極的活用
|
→ | 中央省庁等改革における政策評価の枠組みの積極的活用
|
(2) 財政投融資全体の規律の確保
|
→ | 国会に対する予算添付資料等のほか、「財政金融統計月報」の財政投融資特集、毎月「資金運用部月報」を公表、毎年「財政投融資リポート」を作成、毎年「財政投融資ブックレット」を作成、インターネットにおいても「財政投融資リポート」等を随時掲載、といったディスクロージャーに努めているが、さらにその向上を推進 |
|
→ | 現金主義から発生主義への変更により、バランスシートの動きをより的確に把握、財務の透明性、明瞭性の一層の向上 |
→ | 将来の金利変動等に備えるための準備金、引当金についても検討 |