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国の債務管理に関する研究会(第10回)議事要旨


国の債務管理に関する研究会(第10回)議事要旨

.日時 令和8年5月26日(火)15:00~16:30

.場所 財務省 国際会議室

.内容

1.当局からの報告

2.個人向け国債の販売動向等について

  (株式会社SBI証券 澤村真一債券部長)
3.タームプレミアムについて

  (三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社 大島一宏チーフエコノミスト)

  (三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社 大塚崇広シニア債券ストラテジスト)



まず、理財局から、令和8年度国債発行計画、保有者層の多様化に向けたIR活動の取り組み及び個人向け国債の販売動向等について、説明が行われた(資料1(PDF:1198KB))。



▶理財局からの説明概要は以下のとおり。

・1点目は、年央ヒアリングの実施についてである。資料1のp.2は昨年12月の発行計画策定時に公表した資料であり、左側中央に年央ヒアリングの導入について記載がある。これは、昨年11月4日の本研究会で議論いただいた国債の安定消化のための方策に関して、市場環境の変化への柔軟性を高めるために、年度の途中で発行計画を点検する機会があってもよいのではないかというご意見を複数いただいたこと、その後、PDや投資家からも賛同の声が大変多かったことから、導入することとしたもの。6月頃を目途に実施するということで、初回の年央ヒアの時期も近づいているが、有効な機会として活用していきたい。

 

・2点目は、海外IRの実施状況についてである。令和7事務年度では、オンラインも活用しつつ、従前からJGBに高い関心を持っている投資家とは継続的なコミュニケーションを実施するとともに、新規の先についても、スモールミーティングの活用等により、効率的に接点をつくっていくという方針の下、IRを積極的に実施してきた。海外投資家からは引き続き高い関心が示されているが、当局とのより積極的な対話を求める声があったほか、例えば、配信されたヘッドラインを中心に情報を得ているような投資家に財政政策やマーケット状況等が十分理解されていないように感じられる場面があるなど、様々な課題も認識されたところである。

 

・これを踏まえ、令和8事務年度においては、例えば幹部クラスの対話を通じた海外投資家とのリレーションの一層の強化や、本日のような研究会や発行計画公表といったイベント直後におけるメール配信、オンライン説明会の実施等により、情報ラグやミスコミュニケーションの解消を推進していくことも一案と考えている。引き続き、オープンかつタイムリーなIRの実施を通じて、海外投資家と対話を行い、対話で得た声を活用していきたい。

 

・3点目は、個人向け国債の販売状況や販売促進に関するアンケート結果等についてである。資料1の6ページの個人向け国債の発行額について、左側の図表のとおり、足元では金利上昇を背景に増加傾向にある。商品別では、これまで主流であった変動10年に比べて発行金利が高くなった固定5年の割合が増加している。また、右上の図のとおり、中途換金を含めた償還額が落ち着いていることもあり、個人向け国債の発行残高は増加傾向にある。一方で、右下の資金循環統計のグラフのとおり、国債の保有者は、日銀を除けば機関投資家が中心であり、家計による保有は全体の1%台と低い水準にとどまっていることから、引き続き保有促進の余地があると認識している。

 

・資料1のp.7には現在の家計向け商品の一覧を掲載している。大きく分けて、元本割れしない、すなわち中途換金時には国が額面で買い取る個人向け国債が3商品、時価変動がある、すなわち、通常の利付債と同様に中途換金の際は金融機関が時価で買い取る新型窓口販売国債が3商品ある。このうち、左側の個人向け国債については、赤字で示したとおり、保有者層の拡大を図る観点から、令和8年12月募集分より、マンション管理組合や学校法人、中小企業等、金融商品取引法上の特定投資家ではない法人や団体にも販売対象を拡大し、商品名も「個人向け国債プラス」へと変更する予定である。

 

・保有者層の多様化が一層重要となっていることから、個人向け販売の促進策について、幾つかの金融機関から意見を聞いている。多種多様な御意見があったところだが、資料1のp.8に主な意見をまとめている。

 

・まず、個人向け国債を販売する金融機関の方々から、既存商品の商品性の改善について、基準金利からの利率調整値や中途換金制限の見直しに関する意見があった。また、新商品の導入に関しては、物価に連動したものや超長期債、利払いのあり方、ボーナスクーポンつきのものなど、様々なアイデアをいただいた。

 

・その他、税制や積立購入の仕組みの導入等についての意見や、現行の手数料水準が顧客への説明に係る窓口の負担やシステム対応の費用対効果に見合っていないという意見、預金流出についての懸念も一部で示された。

 

・次に、アセットマネジメント会社からは、現在の金利水準は十分魅力的であり、市場実勢並みの利回りが提供されれば、割引債や超長期債にも一定の需要が見込まれるといった意見や、既存の10年物価連動債は商品性が複雑であり、個人向けにはより分かりやすい設計が必要であるといった意見、税制への期待や投資信託への組入れ、投資商品としての国債の認知度向上や情報発信の強化についての意見があった。

 

・上記のように、金融機関からは既存の商品の商品性の改善や新商品の導入、販売手法の見直しを含め、様々な改善余地が指摘されたところである。

 

・資料1のp.9では、個人を対象とした販売促進策に関する調査結果を報告している。本調査は、計1万人に対して、金融商品の購入経験者・未経験者、性別、年代別にばらつきがないように行っている。

 

・まず、既存商品の改善策としては、税制措置のほか、口座引き落としや積立方式、利回り改善に対するニーズが高い結果となっている。なお、積立方式に関しては、実施に当たり疑問点があれば、金融機関から金融庁に御相談いただきたいところであるが、個人向け国債の積立投資が金融商品取引法上の累積投資契約の対象となり得る旨、理財局から金融庁に確認済みであり、個別の金融機関において、ニーズを踏まえつつ取組みを進めることが可能な状況となっている。

 

・また、新商品については、元本が物価に連動するタイプの商品への関心が最も高く、満期が短い商品や複利運用が可能な商品、満期10年の固定商品へのニーズもあった。さらに、40代以下の層では、超長期で高利回りを得られる商品に対して一定のニーズが見られたところである。

 

続いて、株式会社SBI証券の澤村真一債券部長より、「個人向け国債の販売動向等について」(資料2(PDF:2416KB))について説明が行われた。次に、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大島一宏チーフエコノミストおよび同社の大塚崇広シニア債券ストラテジストより、「タームプレミアムについて」(資料3(PDF:1140KB))について説明が行われた。その後、意見交換が行われた。

 

▶ メンバーからの意見の概要は以下のとおり。

・財務省からの説明について、令和8年の12月募集分から名称を個人向け国債プラスに変更して、販売対象を非営利法人等へ対象を拡大する動きというのは、国債保有層の多様化に向けた前向きな一歩であると見ており、これまでの議論を反映したものと大変評価している。

 

・資料2について、幾つか提案があったうち、今、個人向け国債プラス・新型窓販・店頭取引という3つある中で、1つは個人向け国債プラスと新型窓販国債を一本化する。あと一つは店頭取引で、元本保証割れリスクをテイクできる人たちはそちらに流れるという大きな流れについて、特段違和感ないと思う。

 

・今後さらなる議論としては、やはり中途換金時の元本保証があるかどうかという点と、固定・変動のどちらの金利なのかという点、その2つの軸があると考える。

 

・前者については、最初の個人向け国債で新型窓販と一本化した上で、中途換金時の元本保証があるという形にすればクリアになると思う。元本保証がないものについては、店頭取引のほうだけにして、投資家にそちらに行ってもらうということですっきりすると思う。

 

・後者については、議論の余地があると思う。例えば、ハウスホールド・ファイナンスの分野でも、固定・変動のどちらが良いのかというのは、家計が直面する金利と所得の相関などが非常に重要になるため、住宅ローンの話などもそうだが、必ずしもコンセンサスは学術的にもない。そのため、考え方のスタート地点としては、やはり各年限において固定と変動のどちらの選択肢もあるというのが、一番出発点としてはいい考え方だと思う。

 

・ただその上で、例えば年限が短いものについては、その商品をそろえることのコストとベネフィットを比べて、変動を出すメリットは小さいという考え方もあるだろう。一方、超長期債については、例えば固定にしてしまうと、金利が実際に上昇した局面において一気に中途換金が増えてしまうなどのリスクもあると思うので、基本的には、上記の考えをベースにしつつ、年限ごとに固定・変動のコストとベネフィットを検討していくのが良いだろう。

 

・個人向け国債の販売について、インフレ連動債については、あったほうが良いと思う。やはり我が国においては、金融資産が預金に偏っている下で、足元のインフレ動向などを見ると、やはりインフレヘッジとしてインフレ連動債を提供するということは、変動金利でサポートできるということもあるが、やはり元本自体がインフレに連動する商品設計のものを提供することが有意義だと考える。

 

・資料3の11ページにあるタームプレミアムの推計結果について、仲介金融機関のJGB保有ストックにある仲介金融機関に銀行が入っているのか、それともディーラーだけなのかまた、これがプラスであるということは、結局何を意味しているのか。証券会社だけであれば証券会社のマーケットメイク機能などを代理しているのか、銀行も入っているのであればほかのものを代理しているのか、読み方が変わってくるため気になった。

 

 

・資料2について、かねてから、インフレ連動型の個人向け国債があれば今の社会は喜ぶだろうと思っている。そうした商品の需要について、顧客対応などからどのような印象を持たれているのか。

 

・資料2のp.16にある超長期の個人向けの国債に関する提案について、これは元本保証ではないという理解でよいか。そうだとすれば、なかなか商品設計上難しいのではないかと思う。需要動向についても、超長期であれば20年が念頭にあるのかと思うが、そういった需要が現場感覚では存在するということなのか。

 

・資料3のp.10について、日銀の保有量を考慮したことがあるのか。日銀が持っているとボラティリティが下がるというふうに直感的に感じるが、タームプレミアムに日銀保有がどのように効くのかということは非常に興味深い。研究する中で、日銀の保有をどう扱うかなというのは悩む点であり、以前日銀のレポートで出たように、日銀の保有のリスク量に変換して入れてみると有意に効いた。そのため、日銀の保有量についてどのような対応をされたのか気になっている。

 

・資料3にある日銀と発行体双方がどういった年限構成にするのかが重要なのかというのは全くそのとおりだと思う。JGB供給量について年限構成も入れた分析をしていたら、どんな結果だったか教えてほしい。

 

 

・資料2について、超長期債も今購入が増えていることがデータで示されていた。超長期債の場合は当然価格変動もあることを前提に、比較的投資経験のある方が買っているということだが、売却も行われているのか。

 

・資料3について、回帰分析の中で仲介金融機関、つまり証券会社の在庫ポジションを入れている。因果関係は特定していないと思うが、どちらを主に想定しているのか。タームプレミアムが拡大して在庫が増えることもあり得る、言い換えるとマーケットが混乱してくれば在庫が増えることもあり得る。ポジションが増えることとタームプレミアムの関係について、どのように考えるのか教えてほしい。

 

・個人向け国債の位置づけについて、預金代替としての個人向け国債という役割と、家計の投資ポートフォリオの一つの重要なピースとしての個人向け国債という役割がある。

 

・正直に言って、今、家計の金融資産に占める比率で見ても、JGBの発行額に対して占める比率で見ても極めて低い数字にあるということを考えたときに、米国などの海外の事例との比較においても、家計において一定の投資ポートフォリオの中のツールとして保有するべきではないかという考え方があると思う。一方で、今、個人向け国債の販売を拡大しなくてはいけないのは、日銀の買入れ・保有が減っているので、この代替として主に銀行が減らした分を個人で保有してほしいということでまさに預金代替の役割がそこで求められているということだと思う。

 

・家計のポートフォリオということを考えた場合には、日銀の買入れ・保有の減少という事象とは全く関係ない。結果的には預金から振り向けられるのかもしれないが、例えば今かなり家計も、米国株などまで含めて非常に高いリスクのアセットを持っている中で、全体としてのポートフォリオをどう組んでいくかという考え方にもなってくるので、そもそも求められる商品が違うのではないかと考える。

 

・その辺りをもう少し整理する必要があると考える。預金代替であれば、例えばインセンティブを付与し過ぎてしまうと、銀行預金が流出し過ぎてしまい、システム上の問題にも波及する可能性も考えられる。家計のポートフォリオ形成を促すのであれば、長期保有を促すような何らかの税制を含めた優遇措置も適しているように思う。

 

・このように考えると、年限の問題などもかなり整理されてくるのではないか。預金代替であれば、基本的には短い年限であって元本保証である商品が当然一つの結論として出てくるが、投資商品として考えるのであれば、もう少しリスクの高い商品が想定される。それに元本を保証するのは、そもそもポートフォリオ構成上必要があるのかという議論も出てくるだろう。

 

・澤村氏の発表では分かりやすいようにシンプルに統一するという考え方も示されていたが、それが正解なのかと聞かれれば若干違う考えを持っている。2つの用途にしっかり対応できるような商品設計が求められるのではないかと考えている。

 

・税制優遇などを考える上では、なぜ税制優遇が必要なのかという理論・理由が非常に重要になってくるはずなので、その点も含めて、考え方として整理する必要があると考える。

 

 

・個人向け販売の促進に関するスタートの議論ということだったが、これまでの本会合において、インフレや将来のことを考えた上で、機関投資家に変動利付債を導入するという話をかなり議論してから、システム対応等で実際発行されるまで時間がかかり、やっと来年、日の目を浴びるという状況かと思う。

 

・たたき台ということもあってあまりイメージがわかっていないので、今回の個人向け国債についてどれぐらいの時間軸を持ってどのように考えていこうとしているのか教えてほしい。

 

・個人向け国債について、販売を促進する上で重要なことは2点あると思っている。1つ目は、証券会社が熱心に販売するのではなくて、自然体で売れる商品であるべきだということ。やはり商品性という意味では、利率そのものが魅力的であることだと思う。利率さえよければマンパワーを使わずに売れるため、これが基本ではないか。2点目は、基本、キャッシュバックキャンペーンは禁止すべきだということ。収益性のない販売は持続可能とは言い難いので、そういう条件を最初から決めたほうが良い。金融リテラシーの育成のためにもそういったものをなくして、個人の方々が自ら知識をつけた上で商品を選んでいくのを育てていくことが重要だと考えている。

 

・家計におけるポートフォリオを実際考えていく中で、個人向け国債を一つのツールと位置づけて、国全体としての金融リテラシーの向上になるという意味での個人向け国債の役目は非常に大きい。本会合における個人向け国債のつくり方、発信の仕方は非常に重要である。

 

・魅力ある水準という意味での商品性について、現在取りそろえられている商品の中で工夫が必要だとすれば、それは固定の10年だと考える。基準金利からマイナス0.1%ぐらいが妥当ではないか。従来、固定3年が基準金利からマイナス0.03、固定5年が基準金利からマイナス0.05となっているため、同じロジックで説明するのであれば固定の10年を基準金利からマイナス0.1というのが一番分かりやすく、受け入れやすいと思う。分かりやすさが大事だという澤村氏の意見に賛同であり、購入する側の理解、そして売る側も苦労せずに売れるところでは、固定の10年の見直しが一番妥当だと考える。

 

・変動の10年をもう一度見直すという澤村氏の提案には賛成である。過去、基準金利マイナス0.8だったことを踏まえると、ある程度納得感があるのは、この変動を見直すのであれば0.8に戻すことではないか。最も発行額を伸ばせるという意味では固定10年ではないかと考えている。

 

 

 

・国債の確実かつ円滑な発行が今後もテーマとなる。本日のようなタームプレミアムの議論が重要であり、構成要素を理解していくことが重要だと考える。

 

・近年、超長期債の発行を減らしてきた状況の中で、同ゾーンのプレミアムに関しては、大分落ち着きを取り戻した。30年債と40年債の複利のスプレッドも概ねゼロに収斂しており、これ以上減額すると流動性の低下という弊害が出てくる可能性がある。同ゾーンのタームプレミアムを観察しながらコントロールしていくことが重要だと思う。

 

・インフレ期待については、政策金利変更のパスが重要な論点となる。短期金利は十分な金利水準とボラティリティがないと、インフレ懸念が長期ゾーンに集中し、長期金利のボラティリティが増幅されやすい。短期・長期双方に適度なボラティリティを分散させることで、イールドカーブ全体で変動を吸収する構造が強化され、結果としてタームプレミアムの低下につながる可能性がある。

 

・本邦でQTが進んでいく過程で、資金が吸収され、債券の市中流通量が増える環境になっていく。一方で、預金取扱金融機関のリスク許容度は、規制強化により従前より限定的となった状況は変わらない。その為、リスク許容度のある主体に消化を促す必要があり、個人の国債保有比率を上昇させる必要がある。今回のテーマであった個人向け国債の拡充を通じて、様々な工夫により現在の国債発行量の1%程度の個人向け国債を2桁%程度まで発行増を目指していくべきと考える。

 

・預金取扱金融機関は、バランスシート全体でALM運営を行っており、資産・負債双方を踏まえた視点での評価が前提となる。金利ある世界に移行する中、足元では債券の含み損に焦点を当てた議論が増えているが、本来は含み損が金融システムに影響を及ぼすかという観点で整理されるべきである。例えば、低金利環境下での長期調達に見合う形で債券運用を行っていた場合、含み損のみを切り出した評価は適切とは言い難い。含み損の存在自体を過度に問題視する一面的な議論は、債券保有行動の抑制を通じて国債の安定的な消化にも影響を及ぼしかねないことから、ALM全体を俯瞰した議論が重要と考える。

 

 

・個人向け国債について、澤村氏の発表にあったが、購入単位の小口化と積立てが一番大事だと思う。その際に少額投資に対するシステム改修が課題になるだろうが、積立型の個人向け国債を導入するとして、その場合は個人の保有者を直接登記しなくとも、金融機関側がパススルーファンドをつくって、個人の保有者の名簿は金融機関が管理するような形でもよいのではないかと考えている。民間企業・民間金融機関の活力をできるだけ生かす形で、国民に国債を持ってもらうようにするとよいのではないか。

 

・個人向け国債の保有が増えて国債が広く国民に保有されることになると、みんなが債券投資家になるため、金融リテラシーに加えて財政というものも国民に身近に感じられるようになり、日本の経済政策についての議論がより一層深まる副次的効果もあるだろう。

 

・個人向け国債の金利が固定と変動のどちらなのかという点について、変動10年の今の金利のつけ方は若干違和感がある。マーケットの変動金利よりも有利なものが出てしまっているのはあまりよくないことであるため、個人向け国債の10年物も固定にしたほうがよいと考えている。金利のある世界では、イールドカーブの形状で長期金利と短期金利に乖離が生じるため、10年物も固定で個人向けの国債を出したほうが運用はしやすいと思う。

 

・そもそも原資産がない変動商品を個人向けに新しく財務省が出すのはなかなか難しいと考えており、そのようなことはしなくともよいだろう。元本保証つきで固定金利の商品を出すことは金利リスクを国が負うことになるため、現在10年物を変動金利で発行することになった経緯は把握していないという留保つきだが、個人向け国債10年物は固定にしたほうがよいと考えている。

 

・澤村氏から提案された超長期の個人向け国債の導入について反対である。元本保証が前提だとすれば、超長期では国側が負う金利コストが大きくなってしまため、やりづらいと考える。個人のポートフォリオマネジメントとしても、長期間のインフレ予測は難しいと思う。また、金利があまり高い個人向け国債が出れば、非営利法人を隠れみのにした裁定取引をするインセンティブが高まる点も気になる。そのため、個人向けに10年までの年限ですべて固定金利にするなど、単純な品揃えで個人向けの商品を提供するとよいと考える。

 

・インフレ連動債についても、あまり積極的にやらなくてよいのではないかと思っている。ベンチマークのインフレ率をどう定義するかが難しく、物価の研究で明らかになっているとおり、主観的なインフレ率は各個人の属性で異なる。そうすると、インフレ連動債を出したところで、各個人のインフレヘッジに資するとは限らないという問題が発生する。また、インフレ率を日本銀行がきちんとコントロールできて、今後2%に近い水準で推移すればインフレ連動債は持たなくてもよいことになる。原則としてはインフレ率は中銀がコントロールするという前提で、個人向け国債を設計してよいのではないか。

 

・資料3については、大島氏発表のとおり、仲介機関の状況を代理変数として考えるのは大変重要だと思う。

 

・JGBの供給量の係数については、JGBの供給量をネットフローで測っても、タームプレミアムとネットフローともにトレンドを持っているのではないかという点を踏まえると、いわゆるスプリアス・リグレッションといわれるバイアスがかかっている可能性があることが心配である。JGB供給量の係数をそのまま世に出してしまうと、「これは日銀が国債を買えば長期金利は下がる、タームプレミアムは下がることを示唆している」という本来の趣旨とはやや異なる解釈がされるのではないかと心配している。大島氏の発表のとおり、実務家の感覚に合った形でこのような統計分析を正しく解釈することが大事ではないか。

 

 

・個人への保有促進については、1. 富裕層の貯蓄手段として、変動金利はある程度インフレヘッジにもなることから、希望者に対し年金の支払いを個人向け国債とすること、2. 若者の間で認知度を高め、金融教育になるという点から、発行後1年は解約不可という商品設計の見直しも含め、希望者に対し奨学金の支払いを個人向け国債とすること、3. リスク性資産と安全資産を同時に積み立てるという点からNISAに組み込むこと、4. 祖父母から孫に譲渡する個人向け国債の相続税非課税制度の導入すること、を検討してはどうか。

 

・マンションの管理組合については、新築マンションなら最初の大規模修繕までに10年程度の積立期間があるため、一定規模の国債保有が見込めるのではないか。

 

・新窓販を含めると、個人が買える国債が6種類あるのは多すぎる。例えば2年物は新窓販にはあるが、個人向け国債にはない。個人投資家だけではなく、金融機関の営業職員の間でも混乱につながらないか。

 

・JGBのタームプレミアム上昇と国債格付けの関係についてどう考えるか。

 

・主要国全体でタームプレミアムが上昇しているから問題ないと考えるのか。

 

・主要国のソブリン格付けが同時期に引き下げられた場合のリスクについてどう考えるか。

 

 

・資料2について、全体としては、ご提案の方向性(特に積立サービスや税制優遇)はアンケートとよく整合していて非常に説得力があると思う。特にp.8の「個人向け国債をきっかけに債券デビューした口座」の比率が足元で急上昇している点や、p.17の保有者プロファイル分析は、リテール層の実像を捉えた貴重なデータだと感じた。

 

・資料1のアンケートでは、新商品ニーズの1位が「元本が物価に連動する商品」で、経験者33.6%、未経験者39.6%と他の選択肢を引き離している。一方、資料2のp.15では「金利上昇・インフレ抵抗力のある変動金利商品」という表現になっていて、個人向け物価連動債そのものへの言及は明示的にはない点が気になった。この部分については、「インフレ抵抗力のある変動金利商品」という表現に物価連動債も含意しているのか、それとも、変動金利商品と物価連動債は別物として整理されていて、変動金利商品の方を推しているということなのか。資料1のp.8のとおり、販売実務の観点から、物価連動債は商品性の説明が難しい、というアセットマネジメント会社からの声と似たような実感があるのか。

 

・資料1のアンケートで2位だったのが「期間6か月~1年程度で政策金利を上回る商品」(経験者23.4%、未経験者24.1%)。預金代替ニーズの強さを示唆する結果かと思う。資料2では、全体として「販売年限の長期化(家計部門による安定的な保有)」(p.14)という方向性が打ち出されていて、これは債務管理側の preferred-habitat 的な発想とは整合的であるものの、リテール顧客のニーズ側から見ると、短期の預金代替ニーズと長期保有の促進という、やや方向の違う2つの軸があるように思う。

 

・資料3の実証分析部分は、あくまで「方向感の確認」として位置づけられていると認識した。

 

・資料3のModel4で、JGB供給量の弾力性が最も大きいという結果は、政策インプリケーション(超長期減額の妥当性)と直結する重要な結果だろう。1つ気になったのは、供給量とTPは同時決定的な関係にもあり得るということ。OLSで推定された係数を「供給→TP」の因果として読んでよいかという点について、どう考えるのか。

 

・Koijen-Yogo の demand system のアプローチが示しているように、投資家セクターごとに需要弾力性が大きく異なるというのが近年の重要な発見だろう。資料3では「仲介金融機関JGB保有ストック」を入れているが、「仲介金融機関」一本に集約すると、たとえば「日銀の保有減(QT進行)が誰のバランスシートに移ったか」によってTPへの影響が変わる、という効果が捕捉できない懸念があるのではないか。

 

 

▶ 理財局からの説明 

・どのくらいの時間軸でどのように考えていくつもりかという点については、大変難しい問題である。ご意見のとおり、日銀のシステムと大きく関わってくる話である。そのため、まずは発行当局としてどういったラインナップだとどのくらい時間がかかるのかということは、日銀とよく話していく必要があると考えている。

 

・日銀とも協議しながら、スケジュールやロードマップのようなものをお示しできるよう、我々としても速やかに検討を深めていきたいと考えている。


 

(以上)



連絡・問合せ先:
 財務省 理財局 国債企画課 企画係
 電話 代表 03(3581)4111 内線 2565