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「公的債務管理政策に関する研究会・報告書」のポイント

「公的債務管理政策に関する研究会・報告書」のポイント

   
はじめに
 

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 我が国の公的債務は巨額に上り、また多岐にわたっているため、そのあり方は金融資産選択やマクロ的な資金循環に大きな影響を与えるとともに、市場における金利変動を通じて財政や投資家の財務等に大きな影響を及ぼす可能性がある。このため、公的債務管理政策の目的、対象範囲、そのあり方等について整理しておくことが重要になっている。

  
1.公的債務管理政策の意義及び役割
 
公的債務管理政策の目的
 

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 必要な財政資金の調達において、リスクを適切な水準に抑えた上で、中長期的視点から政府の資金調達コストを最小化することが基本である。

   
財政・金融政策との関係
 

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 健全な財政政策及び適切な金融政策が行われることが、公的債務管理政策が有効に機能するための前提であり、公的債務管理政策がその代替になり得るものではない。

 

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 公的債務管理当局は、政府の資金調達額や債務残高に対する市場のシグナルを適切にフィードバックし、財政政策の意思決定過程に活かされるようにすべきである。

 

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 公的債務管理当局と中央銀行が緊密な意思疎通を行い、金融市場に対する認識を共有しつつ政策運営を行っていくことが重要である。

   
公的債務管理と資金循環
 

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 我が国の資金循環に健全な市場機能が活かされるようにするためには、公的資金仲介を量的に圧縮するとともに、公的信用補完の範囲を限定・明確化することが求められる。

  
2.公的債務管理政策の対象範囲
 
総論
 

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 公的債務管理政策は、狭義の国債(JGB)だけでなく、中央政府がコントロールする債務(FB、特別会計借入金、政府保証債務)全体を対象として立案することが必要である。

 

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 公的債務管理当局は、それ以外の公的債務(郵貯・簡保、公的年金、地方債等)についても適切にモニターし、それにより得られた情報を分かり易い形で提供していくことが求められている。

   
郵貯・簡保、公的年金
 

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 郵貯・簡保は、国債保有・運用状況についてより積極的に情報を開示し、公的債務管理当局との間で情報交換を図るべきである。また、郵貯・簡保は、偶発債務のリスクが拡大し、または顕在化することのないよう、リスク管理や事業運営を適切に行うとともに、その運用姿勢が金融市場に攪乱的影響を及ぼさないよう努めるべきである。

 

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 公的年金積立金については、その運用姿勢が金融・資本市場に大きな影響を及ぼさないよう、米国の社会保障信託基金の例に倣い、非市場性国債による運用も視野に入れるべきである。他方、郵貯・簡保については、郵政公社が民営化されることにより政府保証が付されなくなれば、民間会社として自主的な資金運用が行われることが基本となるものと考えられる。

   
地方債
 

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 地方債については、国による財政的措置等の結果、その金利に発行体の事業内容や財務状況等が必ずしも反映されていないとの指摘があることから、国がどこまでコミットしており、どこからが地方公共団体の自己責任かを明確にする必要がある。また、財政融資資金等による地方債引受けについて対象分野・事業毎に更なる縮減・重点化を図る必要がある。

   
特殊法人等の債務
 

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 特殊法人等の債務は公的な施策を実施するための資金調達であることから、公的債務管理当局としては、自己資金調達手段による分まで含め、特殊法人等の債務全体について分かり易い形で情報提供していくことが求められる。

  
3.公的債務管理のあり方
 
リスクの分析
 

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 公的債務管理当局においては、金利変動リスク等について一層高度な定量分析を行うことにより、政府の資金調達に伴うコストとリスクの相関関係を把握し、それを国債発行計画の策定等に活用していくべきである。

   
金利変動への対応
 

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 仮に想定していた以上の金利変動が生じ、金融機関に国債の評価損による損失が発生した場合においても、それは金融機関自身の資産・負債管理による自己責任に帰するべきものであり、それをことさら政府が軽減するように配慮することは望ましくない。

   
国債保有構造に関する課題
 

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 我が国の国債保有構造は、公的部門による保有が多く、また、民間部門にあっては、預金金融機関に偏在しているとの特徴がある。国債市場の安定性を向上させる等の観点から、今後とも、一層の商品性の多様化等を進め、保有者層の多様化を図ることが必要である。

   
市場への説明責任のあり方
 

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 市場における公的債務管理政策に対する信頼性を維持するため、諸外国の例も参考にしながら、公的債務全体について現状や政策を概観できる「債務管理レポート(仮称)」を毎年作成・公表すべきである。

   
公的債務管理政策を行う組織体制
 

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 財務省理財局においては、機構面の拡充に加え、職員の専門性の向上を図る必要がある。また、国債管理政策の企画部門では、中央政府がコントロールする債務全般を対象として公的債務管理政策を立案するとともに、市場への説明責任を果たしていくことが求められる。

   
公的債務管理に関する市場との対話の強化
 

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 国債の安定消化を図るため、国債市場の流動性を維持・向上させ、主要諸外国で導入されているいわゆるプライマリー・ディーラー制度を参考にしつつ、我が国においてもこうした制度を早急に導入することが望ましい。

 

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 また、中長期的視点から、公的債務管理政策や国債市場のあり方について、高い識見を有する民間人の意見を諮問するための会合(「日本版アドバイザリー・コミッティー」)を設けることを検討すべきである。

   
(以 上)