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第78回 財務省政策評価懇談会(10月23日開催)議事録

日時    令和5年10月23日(月)10:28~11:42

場所    財務省第3特別会議室及びWEB会議

出席者

懇談会メンバー
(懇談会メンバー)

秋池玲子

ボストン・コンサルティング・グループ 日本共同代表

伊藤元重

東京大学名誉教授

江川雅子

成蹊学園学園長

百合

株式会社日本総合研究所理事長

和夫

阪急電鉄株式会社会長

田中直毅

国際公共政策研究センター理事長

座長吉野直行

慶應義塾大学名誉教授、金融庁金融研究センター長、
東京都立大学経済経営学部 特任教授

(敬称略、五十音順)

(財務省)

茶谷事務次官、宇波官房長、小宮主税局審議官

(国税庁)

住澤長官、中村審議官、長内監督評価官室長

(事務局)

目黒政策立案総括審議官、阪井政策評価室長

議題

 令和4事務年度国税庁実績評価書(案)について

議事録

 ○吉野座長
 それでは、皆さんおそろいですので、一、二分早いですけれども、ただいまから第78回財務省政策評価懇談会を開催させていただきたいと思います。
 今回は、新型コロナウイルス感染症の5類への移行に伴いまして、対面とオンラインの併用のハイブリッド形式で開催させていただきます。オンラインで御参加の方々は、音声が聞こえないなど何かトラブルがございましたら事務局まで御連絡をいただきたいと思います。
 それでは、早速ですが、議題に入らせていただきます。
 本日の議題は、国税庁の令和4事務年度の実績評価書(案)となります。
 最初に、目黒政策立案総括審議官から議題につきまして御説明をお願いいたします。

 ○目黒政策立案総括審議官
 令和4事務年度国税庁実績評価の概要につきまして、御説明をさせていただきます。
 お手元の資料、右下の3ページからが資料になっておりますけれども、お開きいただいて、右下に付していますページ番号の4ページというところ、横長の資料ですが、御覧いただければと思います。
 こちらは、国税庁の使命と実績目標等の体系図でございます。国税庁の実績評価におきましては、大小合わせて8つの実績目標、それから7つの業績目標、合わせて15項目を設定しているところでございます。
 今回の評価結果は、Sの「目標達成」が7項目、Aの「相当程度進展あり」が8項目となっております。括弧内は前事務年度の評定でございまして、また、緑色の四角で囲っているものが、前事務年度と異なる評定となったものを示しております。今回の評定結果は、前事務年度と比べて合わせて7つの目標がランクアップしているという状況です。
 次に、右下の6ページに飛んでいただきまして、ここから8ページまでは目標及び施策ごとの評定結果を前事務年度と比較した一覧となっております。前事務年度から評定が変更となったものに緑で色づけをしております。また、欄外に※印の表示がされているものは、前事務年度と異なる評定となった目標、それから、理由を付して評定を行った目標になりますので、次の方で御説明をさせていただければと思います。
 右下の9ページをお願いいたします。ここからは、評定が前事務年度と異なる目標の評定理由を11ページまで記載をしております。
 1つ目としまして、業績目標1-3-1、広報・広聴活動等の充実でございます。施策の指標の1つに、和光市にございます租税史料室の見学者の満足度を設定しておりますが、前事務年度は、新型コロナの影響で対面での説明ができないなどの理由によりまして、目標値を下回っておりました。
 一方、令和4事務年度におきましては、希望者に対する対面説明を徐々に開始し、見学者の関心に応じた細やかな説明などができるようになった結果、見学者のアンケート調査で上位評価を得た割合が目標値を上回りました。その結果、全ての施策で目標を達成したため、こちらの業績目標につきましては、「S 目標達成」とさせていただいているところでございます。
 次に、2つ目の業績目標1-4-3、不服申立てへの取組でございます。施策の指標の1つに審査請求の1年以内の処理件数割合を設定しておりますが、前事務年度は、経済取引の国際化・デジタル化の進展等を背景とした複雑困難な事件などにつきまして、裁決までに多くの時間を要する場合もございまして、目標値を下回ったため、「B 進展が大きくない」としておりました。
 一方、令和4事務年度におきましては、審査請求人や税務署等の協力を得ながら、更に早期処理に努めるとともに、審判所の本部・支部間で連携して進捗管理の徹底を行うことにより目標値を上回ることができまして、その結果、全ての施策で目標を達成したため、こちらの業績目標につきまして、「S 目標達成」とさせていただいているところでございます。
 次に、右下、10ページ、3つ目になりますが、実績目標(小)1-5、国際化への取組でございます。施策の指標の1つに開発途上国に対する技術協力の満足度を設定しておりますが、前事務年度は新型コロナの影響でお互いの国の行き来ができず、従来は対面で実施していた研修等をオンラインで実施せざるを得ませんでした。もともと対面での研修を希望していた方々からすれば十分な満足が得られなかったのが原因で、目標値を下回ったのではないかと分析をしております。
 令和4事務年度につきましては、新型コロナの状況が一定程度改善し、行き来ができるようになりましたので、対面の研修が増加したほか、オンラインの研修も活用するなど様々な方式で実施した結果、受講者のアンケート調査で上位評価を得た割合が目標値を上回りました。その結果、全ての施策で目標を達成したため、こちらの目標につきましては、「S 目標達成」とさせていただいているところでございます。
 次に、右下、11ページ、こちらは4つ目になりますが、実績目標(大)2、酒類業の健全な発達の促進でございます。施策の主要な指標として、日本産酒類の輸出促進の取組に係る指標を設定しております。こちらにつきましては、お酒の種類ごとに輸出を促進するターゲット国や地域を設定し、展示会や商談会を開催するといったものになります。
 前事務年度は、新型コロナの影響で行き来ができず、展示会が中止になり、商談会ができない地域があったことなどによりまして、目標値を下回りました。一方、令和4事務年度は行き来ができるようになりましたので展示会などが開催できるようになった結果、目標としているターゲット国に全てアタックすることができまして、その結果、全ての施策で目標を達成ということで、こちらの実績目標につきまして、「S 目標達成」とさせていただいているところでございます。
 次に、右下の12ページ、こちらは理由を付して評定を行った目標を記載しております。業績目標1-2-1、オンラインによる税務手続の推進でございます。中ほど、1番目の施策、オンライン申告の推進の評定は「b 進展が大きくない」となっておりますが、こちらにつきましては、一部目標未達成となった測定指標がありますものの、各税目におきましてe-Taxの利用率は全て前年より上昇している状況でございます。
 また、国税庁は今、あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会というものを目指して取り組んでいるところでございますが、例えば令和4年分の所得税の確定申告におきましては、自宅から納税者御自身によりe-Taxで申告した方の数は前年よりも大きく上回った状況でございます。
 そして、他の重要度が高い4つの施策の評定が、いずれも「s 目標達成」ないし「a 相当程度進展あり」であったことなどを総合的に勘案いたしまして、当該業績目標の評定は「A 相当程度進展あり」とさせていただいているところでございます。この取扱いにつきましては、欄外の(注)にございますとおり、評価マニュアル上、適切な理由を付すことで認められているものでございます。
 以上、全体を通じて申し上げますと、令和4事務年度は、新型コロナで導入した様々な工夫を継続する一方で、行動制限の緩和を踏まえて対面での業務が有効なものにつきましては対面に戻して対応するといった、機動的かつ柔軟に業務を実施してきた事務年度であったと言えるのではないかと考えております。
 次に、右下の13ページから14ページにかけましては、参考資料といたしまして、前回6月の懇談会でも委員の御関心の高かった国税庁におけるデジタル化に関する取組ということで、13ページが納税者の利便性の向上、「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会を目指して」の観点からの取組、それから、14ページが業務の効率化・高度化の取組などをまとめたものでございます。
 以上が令和4事務年度国税庁実績評価の概要でございまして、私からの説明は以上でございます。

 ○吉野座長
 御説明どうもありがとうございました。
 それでは、残りの時間、いつものように委員の方々から御発言をいただきまして、最後に財務省と国税庁の側から御回答、あるいは発言をいただくということにさせていただきます。
 それでは、あいうえお順で秋池委員から順次御発言をお願いしたいと思います。
 ミュートボタンを外して御発言いただきたいと思います。今日は、お一人7分ぐらいで御発言いただければと思います。よろしくお願いいたします。

 ○秋池委員
 今回の評価につきまして、全体に異論はございません。コロナ禍から回復するに伴って、このように確実に評価が上がるような取組が行われていることは極めて即応しているということでありまして、国税庁の皆様のお取組に大変敬意を深めているところであります。
 もちろん評価が上がったのは、コロナ禍が去ったからということだけではなくて、新しい取組を始め、検討して課題があってもそれを乗り越えて進めているということが非常に大きいと思っております。
 例えば最後に御説明がありましたオンラインでの申告のことなどもかなり進んできていると思いますし、中項目というか、小項目におきましては、bという評価も1つありますけれども、ルールに従って総合的にA評価にしたということについても適切であると思います。
 ここがb評価なのは、目標が高過ぎる部分もあるのかもしれませんが、オンライン申告も非常に使いやすくて分かりやすくなっていまして、よくある質問に対して説明があるところなども良いですし、スマホの対応が行われたということで、パソコンを持たないような方でもこれに取り組めるようになっているということもありまして、様々な技術を導入してセキュリティなどを確保しながらこの取組が行われているということは、非常に優れたことだと思っています。
 一方で、国税庁の人材がいらっしゃるからこそできることというのもたくさんあって、そういったことが前半の方の取組だと思いますけれども、もちろん申告も人がおられるからこそできるところでありますが、そういったところとのバランスが大変よく運営されたかと思います。
 国税庁は非常に大きな組織で、全国に人材を擁しているということで、地域においても頼られる組織であると思います。事業をやっている人たちや個人から頼られる場所でありまして、そういった中で新しい技術等を取り込みながら、だけれども、人でなければできないこと、人がいるからこそ安心と信頼をしていただけるようなことというのも含めて、さらなるお取組が進むことを願うところです。
 昨年度の評価につきましては、以上のような理由から適切であると考えております。
 以上でございます。

 ○吉野座長
 秋池委員、どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして伊藤委員、お願いいたします。

 ○伊藤委員
 政策評価が始まってから随分時間がたっておりまして、そういう意味では非常に安定的に継続されていることは非常に喜ばしく思っております。毎年こうした形で評価を積み上げていくことは大いに評価したいと考えております。また、今年の評価結果が昨年よりもかなり良くなっているということも大変喜ばしいことで、評価が向上すれば、努力が現場で続けられているというふうに理解しております。
 その上で、今日はちょっと1つ、大きな問題なのかよく分かりませんけれども、次元の違う質問をさせていただきたいと思います。それは私のコメントというよりも質問というふうに言ったほうがいいかもしれません。それは、時間軸の問題でございます。
 現在の政策評価の設定は、目標とその評価の年次計画を立てて、年に1回評価結果を公表しているわけです。政策が年次の中で回っているということを考えれば、この運営は自然なものであり、これを改めるべきだと言っているわけではありません。
 ただ、デジタル化が進み、いろいろなデータがリアルタイムで収集できるようになる中では、1年たった時点での評価を待つだけでなく、期間内でデータの数値を見ながら、政策を修正していくプロセスがあってもいいのかなというふうに考えています。
 EBPMにおいても、評価と政策決定のサイクルの重要性が指摘されているところでありまして、こうした点についてなかなか難しいということはよく分かっておりますけれども、どう考えたらいいか、というお考えをお聞かせいただければと思います。
 時間軸という意味では、今、年次内の短い時間の話をしましたけれども、年次を越えたもう少し長期での評価と政策修正の在り方についても、検討する価値があるのかなと考えております。これは私自身の反省も込めての発言でございますが、毎年こうした評価の議論をしながら、年次ごとに思考がぶつ切れになって、去年はどうだったのかなと思い出しながら、今年の議論をしているというのが現実なのだろうと思います。
 過去5年のトレンドはどこだったんだろうか、あるいはこれから数年先にどうなるべきなのか、もう少し長い期間での政策目標の流れについての議論も必要であろうかと考えております。政策目標を具体的に検討すれば、年次目標だけでなく、これから数年にわたって工程表などが必要な分野もあるかと思います。
 いずれにしても1年という区切りの中でやっているということ、それ自身は非常に自然なことで結構なんですけれども、年次内で何ができるのか、あるいは年次を越えてどういうことが必要なのかという時限の問題についても御議論していただければと思います。
 どうもありがとうございました。

 ○吉野座長
 伊藤先生、どうもありがとうございました。
 続きまして、江川委員、お願いいたします。

 ○江川委員
 私も、評価全体に関して賛同いたします。それぞれの項目に関してきちっと目標を定めて、その手続にのっとってやっていますので、それに関しては異論はございません。その上で2点コメントをさせていただければと思います。
 1つが、先ほど秋池委員も触れられたオンライン申告のことなんですけれども、それだけがbになっています。致し方ない面はあると思います。それから、全体の評定Aに関しても賛同いたすものではありますけれども、日本が諸外国に比べてデジタル化が遅れているということをかんがみて、更に改善すべきであり、頑張っていただきたいなと思います。
 それからもう1点は、業績目標1-4-3の不服申立てのところです。BからSに改善しているのは、これはあらかじめ定めたものに照らして適切だと思うんですが、評価指標が1か月とか3か月とか一定の期間に対応できたかということだけを指標にしていて、それは重要なことだとは思うんだけれども、やはりその時々にどれだけ集中して入ってくるかとか、そういうことにも左右されますし、指標が時間軸だけでいいのか。例えば、満足度みたいなものもアンケートを取ってみるとか、そういうことも工夫されると、もう少し全体として改善につながるのではないかと思いました。
 それから、今日は国税庁の評価ではあるんですけれども、財務省全体の政策に関して気になっていることがあるんですが、それに関して2点手短にお話ししてもよろしいでしょうか。

 ○吉野座長
 お願いいたします。

 ○江川委員
 1つは、今、全体の傾向として、本来やるべき骨太の政策の検討を進めずに、一時的に補助金を出すというのが増えていることを懸念しております。例えばガソリン、電気などの価格が高騰したのに対して補助金を出しているんだけれども、本来は、むしろ省エネ化を進めるために補助金を控える、あるいは再エネへの投資を促進するのが重要で、そういう観点から補助金に関しては抑制的に考えるべきではないかと思います。
 また、例えばパート主婦の就業で、社会保障改革を進めるのではなくて、パート主婦が就業を控えているのに対して補助金を出すのも、本来すべき社会保障改革を先送りにしているということで、いかがかと思いました。それが1点目です。
 2点目は、この夏からずっと議論されてきているGX移行債のことなんですけれども、これは世界初ということで非常に注目されています。でも、一方で、移行、トランジションに関する定義が明確でない。それから、償還財源がカーボンプライシングからの収入ということなんですが、それ自体が先送りされているなど、そういった不透明な状況があります。
 ですから、海外の投資家も含めて丁寧な説明をして販売をしていくことが必要だと思うんですが、これを入札でやると聞いておりまして、それで本当にいいのか。むしろ日本の財政状況に関して厳しい目が注がれているということを考えて、是非そういったことを丁寧に説明していくというIR活動が、日本の国債全体の信用を担保することにもなると思いますので、是非御検討をお願いしたいと思います。
 以上です。

 ○吉野座長
 どうもありがとうございました。
 それでは、翁委員、お願いいたします。

 ○翁委員
 翁でございます。私も、今回の評価結果につきましては、国税庁の皆様のお取組を着実に進めてきておられて、特にDXにつきましては、具体的に徴税コストの低下についても示されていて、効率化が進んできているということ。また、利用者にとっての利便性が少しずつ高くなっているということが確認できております。コロナが終わったということもございますけれども、着実にこういったことを定期的に評価しながら、DXを進めておられるということに関して、敬意を表したいと私も思っております。
 何点か今後の課題のようなことを申し上げたいと思っております。順不同でございますけれども、やはりトータルで個人個人の可処分所得がどのぐらいなのかというのをデータできめ細かく把握できるようにすることが、例えば給付金を国民全員に配るとか、こういったことが繰り返されていることを考えますと大事だと思っておりますけれども、そのデータ連携が政府全体としてできていないということが大きな課題だと思っております。
 税については把握をできていても、社会保険料とか、手当とか、こういったことがトータルで把握できないと、個人の可処分所得というのはどうなっているのかということが分からないわけで、マイナンバーが入れられているわけでございますので、やはりこういったデータの情報連携というものを政府全体として進めて、適正な、公正な負担と給付の設計をつくっていっていただきたいと思っております。
 その意味では、国税庁はデータでしっかりとDXを進めておられますので、こういった政策目標に向かって主導権を取って進めていただくということが、公正な社会保障負担や税負担ということを考える上では欠かせないと思っておりますので、お願いしたいと思っております。
 それから次に、キャッシュレスについては30%台ということで上がってきているなということがこれでも読み取れるんですけれども、実は私がNIRA総研のほうで消費者に対するアンケート調査を見ますと、金額ベースですと、所得税だと8割ぐらい、住民税も8割ぐらい、その他で7割ぐらいといった形でキャッシュレスが進んでいることが分かります。つまり、金額ベースだとかなり姿が異なっていて、件数ベースだとまだまだだということが分かるわけでございます。
 そう考えますと、やっぱり所得の低い人とか、例えば高齢者とか、デジタルディバイドの方たちのキャッシュレスというのが進んでいない可能性があるのかなと思っておりますので、キャッシュレスを進めるにしても、どういうふうに今後進めていけばいいのかということについては、全てDXに共通するところでございますけれども、どういった層に対してしっかりと進めることが効果的かということを考えて進めていただくのがいいかなというふうに思っております。
 もう1つは、セキュリティの面なんですけれども、もちろん個人情報といったことについてのしっかりとした情報管理は大事だと思っておりますが、ますますいろいろな技術が出てきて、様々なアタックがかかるようになってきていると思います。恐らく政府のシステムに対してはいろいろ様々なアタックがかかってきているかと思っておりますけれども、いずれにせよ、DXが進めば進むほど、しっかりとしたセキュリティ対策というのができているか、新しい技術に対してきちんとできているかということに対して、しっかりと確認をしていっていただきたいと思っております。
 最後ですけれども、伊藤先生や江川委員がおっしゃったこととも関連しますけれども、私も、財政の長期持続性に対する懸念とか、ワイズスペンディング、本当に効果のある政策が打たれているのかということに対する疑問がありますし、そう感じておられる方は多くいらっしゃるかと思っております。
 より長期というふうに伊藤先生はおっしゃいましたけれども、長期の財政の推計とか、政策評価についてももう少し重要な政策が本当に効果を上げているのかというようなことについて、データに基づいた評価ということができるような体制。これは財務省もそうなんですけれども、政府全体としてもこういった体制を考えていくということが大事ですし、そういった政策評価をしたことがしっかりとデータで公表されて、それが政府に対してしっかりと政策の見直しにつながるような、PDCAが回るような仕組みというのが考えられるべきではないかなと考えておりまして、こういった点について、もしお考えがありましたら、教えていただきたいと思っております。
 以上でございます。

 ○吉野座長
 どうもありがとうございました。
 それでは、角委員、お願いいたします。

 ○角委員
 まず、国税庁の実績評価の件につきましては、御説明にもありましたように、コロナの収束とともに一旦悪化していた取組につきましてもほぼ戻っておられますし、かつ、DXについても非常に熱心に取り組んでおられるということにつきましては、委員の皆さんがおっしゃっていることに対して、私も全く賛成でございます。
 ただ、企業が例えばDXを進めるといった場合には、その際に仕事の仕方が今のやり方で適切なのか、あるいは組織の在り様も今の組織が現在の時代にマッチしているのかとか、そういうところの見直しも含めてDXを進める方が圧倒的に効果が高くなりますので、そういうことを当然企業の場合は考えるんですけれども、もしまだ時間的な余裕がありましたら、是非とも、今いろいろと各省庁に分かれてしまっている部分の統合とか、あるいは再編成とか、以前やっていただいた組織の見直しを令和の時代にももう一度やっていただければ、非常にありがたいなというふうに思います。
 それと、前回の会合で、現政権の取組につきまして、昨年の年末に防衛3文書の改正がされたり、あるいは原子力の問題につきましても新たに取組を再スタートしていただいたり、あるいは昭和の時代から残念ながら続いておりました旧統一教会への対応につきましてもきちっと対応していただいたということで、現政権の取組につきましては非常に高い評価をさせていただきましたけれども、その流れの中で、できましたら憲法改正までやっていただけないかというふうに思っていたところなんですが、なぜか今までの政権にはできなかった取組をやっていただいているにもかかわらず支持率が下がるという中で、残念ながら、先ほど江川委員もおっしゃられましたように、例えば補助金ですとか、そういった中で野党からもばらまきだというふうな批判を受けるというポピュリズム的な政策がちょっと目につくということについては、私も全く同様の意見といいますか、感覚を持っておりますので、是非とももう一度、本来の財政規律を大事にする政権であってほしいなというふうに心底思います。
 そのときに、以前も申し上げましたが、やはり歳入改革なしに財政規律を良くするわけにはいかないのは自明のことだと思います。何かのきっかけが要ると思いますので、そのきっかけとしては、2025年の基礎的財政収支の黒字化ということが達成できないといった時点で、やはり歳入改革に踏み込んでいかざるを得ないというふうな空気を是非とも作っていっていただけないかなと思うところであります。
 あと、関経連といたしましては、以前、2009年頃から四半期開示の義務付けをやめてほしいということと、そして、これはちょっと時期は忘れましたけれども、独立財政機関を諸外国のように求めるべきであると。要するに、将来推計が非常に甘くなってしまう点が否めないと思いますので、諸外国のように独立財政機関を設けていただくというふうなことも提言をしておりますので、併せてよろしくお願いしたいと思います。
 以上でございます。

 ○吉野座長
 どうもありがとうございました。
 それでは、田中委員、お願いいたします。

 ○田中委員
 国税庁の職員、あるいは国税庁の仕事が納税者によってどう評価されているのかということはもちろん重要なことですし、ここに出ている幾つかのデータから見ましても、国税庁に対する納税者の信頼は揺らいでいないということについては慶賀に堪えません。
 ただ、私が気にしていますのは、納税者の日本の意思決定システム全体に対する信念に揺らぎが起き始めているのではないかということです。そのことを時系列的に把握するという点では、現役の国税庁の職員の方々がそのことを一番よく感じておられるのではないか。
 一研究者として言わせてもらえば、時系列的に見て納税者の信念は揺らぎ始めているのではという点に関わる認識を国税庁の職員でお持ちの方がおられると感じています。データ的にどう確認できるのかなという点に私は関心を持っております。
 現在、AIが大きな役割を果たすディープラーニングについても認識上の大きな変化が起きています。因果革命が起きているとの見解もあります。因果関係を認識する枠組みが大きく変わり始めているという指摘もあります。それからいくと、カウンターファクチュアル、反事実といいますか、もしこの時点である行為が行われなかったとすれば、どういう結果になっただろうという推論を行うことが認識上最も重要な課題となります。AIはその点にまで認識上踏み込めるかもしれないというところまで来ています。
 もともとどういうことが起きているのか、因果関係についての初歩的な関連づけがあります。これをアソシエーションと呼びます。これは認識上そんなに難しい話ではないわけですから、幾つかのデータを通じて何が起きているか、観察を通じて検証命題にまで至れば、それは学問的な仕事になります。頻度に関わる認識でいけます。
 でも、それだけでは反事実にかかわる認識には至らないわけで、インターベンション、介入という段階が必要だというのがこの業界における認識です。それについて言うと、我々は、介入の事例をふんだんに持っているわけです。財政について言えば、1965年以来赤字財政が半世紀以上続いているということがありますし、それからガソリン価格が上昇したときに、消費者が買えるガソリンの値段を介入によって下げるということも行われています。これは1973年から74年のときにもなかった話ですから、本当に大変な介入が行われている。
 ごく最近で言えば、税収増の分をいろいろ使えるんだと、政権党がいろいろ工夫できるんだという話になってきています。これがどういう結果をもたらすかは、マーケットでの評価、JGBs(日本国債)についての評価にもなるでしょうし、円レートについても出てくるんですが、納税者の信念に揺らぎが起き始めているという可能性が、私は無視できないところに来ているんだと思います。
 そういう意味では、政府部内で言えば、このことに一番直接納税者と接触されている国税庁の職員の方々は何らかの感触をお持ちなんだろうというふうに思います。それについてのデータが私はあるとは思いませんが、しかし、それは幾つかの工夫をすれば、時系列的に取れるものとして工夫できるのではないか。時系列データが工夫できれば、多変量自己回帰モデルを通じて因果関係についての分析結果を我々は手にすることができる。そんな気持ちでいます。
 ですから、一度国税庁をお訪ねして、大勢とは言いません、数人の方々にこの問いをさせていただけないかなと思っている次第です。既に今までもお話に出ていますけれども、政府が行ってきている介入手法、要するに政権党は何でもできるとでも言わんばかりです。何でもできるというのは次の選挙で勝ってくることが前提でしょうけれども、それがどういうおごりにつながっているかということを実は納税者が感じ始めているということがポイントなのではないか。勝手なことを申し述べているようですけれども、一度御相談させていただきたいと思っています。
 以上です。

 ○吉野座長
 どうもありがとうございました。
 それでは、私からも幾つか発言させていただきたいと思います。
 1つは、国税庁の人材確保というのが非常に重要だと思っておりまして、残念ながら、今、公務員の方々に対する魅力というのは大分落ちてきて、コンサルティング会社みたいなところにたくさん行くというようなことになっております。特に国税庁の場合には、税を扱いながら、そしてきめ細かく税を集めてくるというところですから、何らかの形で国税庁に入るということが日本の屋台骨を支えるんだという意識を作っていただいて、良い人材の確保ができるように継続的な働きかけをやっていただければなというふうに思います。
 それから2番目は、皆様がおっしゃっているデジタル化のところで、まさに外部のサイバーアタックとか、いろんなデータへの接触が出てくると思うんですけども、特に個人が税を自分で払えるようになると、個人との接触という部分でも攻撃が入ってくると思いますから、皆様がおっしゃるように、データの漏えいとか、あるいはサイバーアタックに対して十分に事前に準備をしていただいて、万一何かが起こったときにすぐにそれに対処できるということが重要であるというふうに思います。
 それから、デジタル化の関係ではよくリトアニアという国が挙げられるんですけれども、将来の希望としては、みんな各国が日本の税のシステムを参考にしようと、あるいは日本の税のシステムが海外で使ってもらえるというそれぐらいまで是非目標を高めていただいて、それで日本のデジタル化が世界でトップだというふうになることが一番いいのではないかと思います。
 それから、中小企業の方々にちょっとお話を別のところで聞いた時に、インボイス制度、新しい制度が入る時に何かもっと簡単に説明していただけないかと。大企業であればそれに対応する人材がいるので、どうすればいいんだというのが分かる。ところが、中小企業では経理担当の人が1人しかいなくて、その人がどうやったらいいんだろうというのがなかなか分からないということを聞きました。
 そういう意味では、少しビデオとか何かで易しく、どなたでも分かるように、インボイス制度ってこういうふうにすればいいんですよというようなことが中小企業の方々にも分かるような仕組みを、もうやられているかもしれませんけれども、是非そういうのを周知徹底していただければ、皆さん、これをすごくスムーズに導入できるのではないかというふうに思います。
 それから、酒類の海外の輸出というのは、もっともっと日本のお酒はおいしいですから進められると思いまして、フランスのワイン以上に日本のお酒が海外で売れるように、是非官も民も一緒になって一つの大きな産業としていただきたいというふうに思います。
 それから、海外へのいわゆるテクニカルアシスタント、技術支援といいますか、海外の方々に日本に来ていただきながら、教育をするということをずっと続けておられます。これに更に加えて、そこでの講義内容をビデオに撮っていただいて、各国の人たちがいつでもそれを見られる。今、オンラインになりましたからそういうことができるようになったわけで、是非そういうものを進めていただけると、わざわざ日本に、一部の方は来られますけれども、そうじゃない方々も日本のいろいろなテクニカルアシスタンスの講義が聞けるということになりますので、是非アジアの不正がないように、そしてまた、税務の関連のビジネスがうまくいくようにお願いしたいというふうに思います。
 あと、いろいろな先生がおっしゃっていました歳出歳入改革の中では、やはり税というのは歳入の非常に一つの重要なところですので、是非国税庁の皆様方が一人一人日本の財政の収入確保のために引き続き頑張っていただきたいというふうに思います。
 以上が私からのコメントでございます。
 今日は、御欠席の山本委員から事前に書面により御意見をいただいておりまして、資料4の195ページにございますので、後で御覧になっていただければと思います。
 それでは、ただいま皆様から御意見をいただきましたので、これから財務省と国税庁の側から、このコメントに対して御意見をいただきたいというふうに思います。
 まず最初に、住澤国税庁長官からお願いいたします。よろしくお願いいたします。

 ○住澤国税庁長官
 ありがとうございます。国税庁の住澤でございます。
 本日は、委員の皆様から大変温かい激励のお言葉とコメントをいただきまして、ありがとうございました。
 お一人お一人からのコメントに沿ってお答えしたいと思います。
 まず、秋池委員からは、国税庁に対して大変温かいお言葉をいただきまして、ありがとうございます。スマホ対応を含めてe-Taxの利便性の向上に積極的に取り組んでいるところですけれども、DXについては、更に力を入れて取り組んでいきたいと思っております。
 各委員の皆様から、DXに関して様々な御質問がありましたので、ここでまとめてお答えしたいと思いますが、今年の6月に、国税庁としましては、税務行政のデジタル・トランスフォーメーション~税務行政の将来像2023~を公表させていただきまして、従来から柱として掲げておりました「納税者の利便性の向上」と「課税・徴収の効率化・高度化」に加えまして、「事業者のデジタル化の促進」ということを新たな柱として加えた上で、積極的にデジタル化を進めていくということを考えています。そうした中で、いくつかの例を申し上げますと、来年の令和5年分の確定申告から、マイナポータル連携を活用いたしまして、オンラインで提出された源泉徴収票に関しては、あらかじめ源泉徴収票のデータを自動入力しておいて、納税者であるサラリーマンの方々がe-Taxを行う際に、そのデータを確認していただくだけで申告が可能であるという仕組みを開始させようと考えております。これまで既に、社会保険料ですとか寄附金その他の入力方法については、この自動入力の道が開かれておりますので、かなりの程度、記入済みの申告書に近い状態が実現されるようになりますので、こういった取組も含めて、e-Taxの利便性の向上を行ってオンライン申告の比率の向上に努めていきたいというふうに考えております。また、事業者のデジタル化を後押しする観点からは、3年前に電子帳簿保存法の改正などが行われておりますが、こういった部分の周知広報でありますとか、あるいは、今年の10月からインボイスが施行されておりますが、デジタルインボイスに向けた取組も官民協働で進んできておりますので、こういった取組も更に後押しできるように取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。
 人材の重要性については、秋池先生からコメントをいただきました。この点については吉野座長からの御指摘もございましたので、そちらの方でまとめてお答えしたいと思います。
 続きまして、伊藤先生からは、時間軸の問題について御指摘がございました。色々とデータ収集が可能なものについては、期間内での適切な修正をタイムリーに行っていく必要があるのではないか、また逆に年次を越えた政策体系であるとか、評価についての検討の必要性、工程表的なものの必要性も含めて御指摘をいただいたところでございます。まず前者の方について申し上げますと、例えば確定申告の場合、これは年に1回の話になりますし、法人の申告も基本的には年に1回ということもございまして、年間サイクルで回っている事務という性格がございますが、ただ、年の途中であっても様々な施策によっては、軌道修正が必要なものに関しては、必要なデータを参照しながら見直していく必要性は当然あるんだろうというふうに考えておりますので、御指摘を受け止めて、今後考えていきたいと思います。また、年次を越えた政策体系については、先ほど申し上げた税務行政の将来像2023などは、数年がかりで実現を目指した政策体系ということでございまして、様々なシステムの改修でありますとか、業務の在り方についても数年がかりで見直しをしていくということと併せて行っているものでございます。そういった中で、政策の実現の度合いのランクであるとか、あるいは修正の必要性をどうやって把握するのか、こういったところについては、御指摘を踏まえて、評価の在り方についても考えてまいりたいというふうに思います。
 続きまして、江川先生から、オンライン申告について御質問がございました。この点については先ほどお答えしたとおりでございます。引き続き、しっかり取り組んでいきたいと思います。また、国税不服審判所の不服申立てに関する評価の在り方について、一定期間に対応できたかどうかだけではなくて、さらに、満足度など何らかの質的な指標についても検討するべきではないかという御指摘であったかと思います。国税不服審判所は、国税庁に置かれた特別の機関ではございますけれども、一定程度、国税庁からは独立性を持った機関ということもございますので、委員からいただいた御指摘についても、国税不服審判所とも共有させていただいて、考えてもらいたいというふうに考えております。
 財務省の政策についてのコメントについては、財務省の方からお答えいただきたいと思います。
 続いて、翁委員からのコメントについてもお答えを申し上げます。まず、可処分所得がデータで把握できるようにということで、給付面のことも含めての御指摘であったかと思います。所得の把握という点に限って申し上げますと、社会保障の世界における様々な給付を行う際の基準として、課税所得であるとか、税額であるとか、こういった税に関連する指標が用いられているということは御承知のとおりでございます。そういった意味で税務上の所得の把握ということはベースとして極めて重要なデータになっているわけですので、我々としては、DXの推進も含めて、データの整備ということに更に取り組んでいく必要があるというふうに考えております。一つの例を挙げますと、令和9年分の所得から、地方税当局に提出をされております給与支払報告書のデータが、全件、国と共有可能な状況になってくるということになります。現時点におきましては、国に提出される源泉徴収票は年収500万円以上の方に限られておりますので、かなり部分的なものしか入ってこないわけですが、これが、地方税当局に提出される全件データが共有されるということになります。そういった意味での、政府部内のデータ連携ということを着実に進めていくということと、さらに、給付面のこととは直接関係しないかもしれないのですが、税務データの有効な活用と、それが制度の設計に対してどういうインプリケーションを持つかということを、きちんと対応していこうという意味では、昨年の4月以降、税務大学校におきまして民間の研究者の方々との共同研究プロジェクトというのを開始しております。昨事務年度に2件、今年の夏から2件のプロジェクトを開始し、所得税、法人税あるいは相続税のデータを用いてどういったインプリケーションが得られるかということを、正にそういったアカデミックの世界でも、共有して研究していただくという取組も開始しておりまして、御質問に対する直接のお答えになっているか分かりませんが、データの重要性を認識しながら、そういった有効活用に今後とも努めていきたいと考えています。
 それから、キャッシュレス納付についての御指摘がございました。所得税について切り分けたデータを手元に持っておりませんので、御指摘いただいた、金額ベースで所得税のキャッシュレスでの納付割合が8割といったところの要因等については、低所得者の方のキャッシュレス割合が影響している可能性もあろうかと思いますので、今後、データをよく検討させていただきたいというふうに考えております。他方で、キャッシュレス納付比率が、特に件数ベースの比率としてなかなか進んでいかない大きな要因の一つとしては、毎月納付されてくる源泉所得税のキャッシュレス納付が進まないという面もございます。これは特に、中小企業の方々が、取引慣行上どうしても、金融機関に出向いて色々な取引先に振込みを行ったり、金融機関の方から各会社を回って歩いて振込みの手続を行うといったような慣行もございます。これが非常に根強く残っているというのもありまして、なかなかキャッシュレス化が進まないという面もあるというふうに考えております。そういった意味では、キャッシュレス納付を進めるということは、国税当局だけではなくて、地方公共団体でありますとか、あるいは金融機関自体の事務の効率性にも関わってまいりますし、日銀のオペレーションも関わってくるということでありますので、地方公共団体や金融機関、日銀やあるいは関係民間団体、納税貯蓄組合などもございますので、そういったところの関係者とも緊密に連携をしながら、様々なキャッシュレスでの納付手段は既に整備されておりますので、その活用を促すための周知広報の活動を引き続き強力に進めてまいりたいというふうに考えております。
 それから、システムのセキュリティの問題について御指摘がございました。吉野座長からも御指摘があったと思います。この点につきましては、3年後に国税庁のシステムの大幅なリプレースを予定しておりまして、それに向けてもセキュリティの確保については、引き続き力を入れて取り組んでいきたいというふうに考えております。
 それから、角委員からの御指摘で、DXを進める際に、仕事の進め方であるとか組織、あるいはその在り様についても、見直しを含めて進めていくべきではないか、という御指摘をいただきました。正に御指摘のとおりであろうというふうに考えておりまして、単に紙で行っていた事務をデジタル化するだけではなくて、デジタル技術を用いて新たな納税者サービスとしてどういった事が可能になるのか、といったような検討が必要でありますし、あるいは国税庁の中での業務処理についても、仕事の在り方をBPRしていくということが、非常に重要な課題であるというふうに考えておりまして、ここ数年、力を入れて取り組んでいるところでございます。こういった中で一例を申し上げますと、3年後のシステムの全面リプレースに向けまして、内部事務として行われている様々な申告書の収受ですとか、あるいは誤りの確認でありますとか、更には簡易な誤りの是正、こういったところに至るプロセスを従来は税務署で個々に行っていたところを、国税局単位で集約化する、そしてシステムとデータを活用しながらできるだけ効率的に処理をした上で、それによって得られる資源を、税務署における税務調査などの外部事務に振り向けていく、といったような取組も進めさせていただいているところでございます。そういったところを含めて、業務の在り方や仕事の進め方、組織の在り方などの見直しを進めていきたいと考えております。
 田中委員から御指摘がございました納税者の信念、コンフィデンスの揺らぎというのがどの程度あるのか、そこが現場で働いている国税庁、国税局、税務署の職員の感覚として、どの程度把握されていて、データ化されているのか、という点についてでございます。
 確かに、各国税局、税務署で話を聞いておりますと、納税者の方々から様々な不満や苦情といったことを含めてお聞きをしている現状がございます。そういった中で、時系列で見たときに、どのようなそういう変化があるのかというのが、直ちにデータ化されている訳ではございませんが、将来に向けて、例えば納税相談の在り方を考えたときに、納税相談に寄せられた様々な問合せがどのような傾向性を持っているのかということが、将来的に、そういったものもデジタル化していって、AI等を使って分析をするといったようなことによって、傾向性を把握するということも、ひょっとしたら将来的に可能になるかもしれません。いずれにしても、現時点においてはエピソードベースの把握に留まるのではないかというふうに思っておりますけど、必要があればお話しいただければ、御協力させていただきたいというふうに思います。
 最後に吉野座長からのコメントについてでございます。
 まず、人材の確保が重要であるという点について、これは秋池先生からも人材の重要性ということで御指摘をいただきました。国税庁の職員の採用につきましては、地方自治体との競合など厳しい環境にあるのが現状でございますが、そういった中でも、令和4年度の採用試験においては、全採用区分を通じまして、2,150人の採用をなんとか行ったところでございます。来年の4月に採用を行う令和5年度の採用試験におきましては、採用予定数を1,918人ということで、2,000人前後の採用を確保しようとしているところでございます。これまでもインターンシップでありますとか業務説明会におきまして、国税庁における研修制度ですとかワークライフバランスへの取組等についても説明を行い、あるいは、民間企業や大学生協、内閣人事局が主催するイベントに出席してPRを行うでありますとか、あるいは、駅周辺のデジタルサイネージやスマホへのバナー広告の配信などを通じまして、採用に向けた努力を行っているところではございますが、一人でも多くの優秀な学生に国税の職場に関心を持ってもらえるように、引き続き努力をしていきたいというふうに考えております。そういった中で、来年春の採用に向けた取組といたしましては、令和5年度の国税専門官採用試験から、新たに理工系・デジタル系の方向けの専門官試験を創設いたしまして、100名程度の採用を考えているところでございます。こういった面でも人材の確保に取り組んでいきたいと考えております。
 デジタル化について、サイバーアタックへの対応等が重要であるという点については、十分受け止めて対応をしていきたいというふうに考えております。
 また、バルト諸国のように非常にデジタル化が進んだ取組の先進国があるわけですが、日本の取組もそうした海外の参考になるように取り組んで欲しいと、座長から、大変我々にとってはありがたい御指摘をいただきました。残念ながら、今の日本の税務行政におけるデジタル化の状況というのを海外諸国と比べてみますと、例えばインボイスについて言えば、フランスですとかあるいはアジア諸国においてのデジタルインボイスへの取組というのが、既に現実のものとして始まっている状況にあるわけですけども、我が国の場合は、ようやく紙ベースでのインボイスを入れたばかりという状況にございますので、デジタル化ということに関して、やや周回遅れ感があることは否めない状況にございますが、先般の税務行政の将来像2023を踏まえて、あえてですね、事業者のデジタル化の部分も含めて、更に取組を強化していきたいと考えております。
 それから、中小企業に対するインボイス制度に関する説明についても御指摘がございました。確かに新しい仕組みを導入するわけでございますし、消費税の制度を一から全部説明いたしますと、中小企業ですとか特に個人のこれまで免税事業者であったような方々にとっては、難しい制度であることは事実でございます。そういったところもございますので、これまでの取組といたしましては、できるだけ簡単に、制度の必要な部分を御理解いただけるように、例えば、先ほど御指摘のあったビデオも作成いたしまして、税務署に来られますと玄関先のところでそのビデオを放映して、常時、納税者の方に見ていただけるようにするでありますとか、オンデマンドで配信を行うといった取組も行わせていただいております。また、今事務年度に入っても全国各地で説明会を行うという取組をさせていただいております。夏の時点で、これまで4万5千回以上のペースで説明会を行っており、75万人以上の方に参加いただいているという状況にございます。特にこの4月以降の取組としては、これまで消費税の納税義務を負ってこられなかった免税事業者の方々が、インボイスの導入に伴って課税事業者に転換するのかどうか、そういう判断に迷われている方々に対しまして、税務署においてインボイスの登録の要否に関する個別の相談にも対応させていただいております。
 そういった中で、免税事業者から課税事業者に初めて転換される方向けには、令和5年度の税制改正において、売上税額の一定割合を納税すればそれで済むという、極めて簡便な特例を創設していただいておりますので、その特例の周知広報でありますとか、あるいは個人の方がe-Taxで申告をするときに、売上の額だけ入力してもらえれば自動的に申告書を作成できるようなコーナーを設置するといった取組も含めて、進めさせていただいています。
 その他、中企庁の補助事業におきまして、税理士さんによる無料相談のサービスですとか、そういったものも中小企業向けに提供させていただいているところでございます。
 また、お酒の海外輸出についても御指摘がございました。これについては、政府全体で取り組んでいる非常に重要な課題でございますので、食料品全体で2025年までに2兆円、2030年までに5兆円という目標の達成に向けて、日本産酒類の輸出についても積極的に取り組んでいきたいと考えております。その一環として、酒類事業者の方々が、お酒の高付加価値化に取り組んでいただくために、様々な補助金のメニューを用意して支援をさせていただいております。加えて、国内外にて日本産酒類のプロモーションを行うために、商談会や展示会を開催し、JETROですとか在外公館といったところとも連携しながら、さらに積極的に取り組んでいきたいと考えております。
 最後に、海外の税務当局に対する技術協力についての御指摘をいただきました。
 これは、国内で実施する海外からのお客さんを受け入れて行う研修と開発途上国への講師の派遣と両方ございます。受入研修については、開発途上国の税務職員を受け入れまして、日本の税制であるとか、税務行政全般について、あるいは、その国の要望に沿った個別の税目に関する講義などを行わせていただいているところでございます。講師派遣については、JICAなどと連携してアジア諸国を中心に専門家を派遣して税務行政のスキルを向上していただけるように取り組んでいるところでございます。令和4年度におきましては、インドネシアですとか、フィリピン、ベトナムなど、延べ24か国、総計約500人を対象にして、受入れと職員を派遣した研修ですとか、オンラインでの研修なども行わせていただいたところでございます。ビデオの活用なども含めて、今後検討を進めてまいりたいと考えております。
 以上になります。

 ○吉野座長
 住澤国税庁長官、どうもありがとうございました。
 それでは、宇波官房長から次にお願いしたいと思います。

 ○宇波官房長
 官房長の宇波でございます。
 伊藤先生、江川先生、翁先生をはじめ、中期的な政策評価に当たって、中期的な評価サイクル、特に構造的な取組であるとか、財政の持続性の確保、ワイズスペンディングへの取組といったものについて、きちんとPDCAを回すような検討が必要ではないかというようなお話がございました。
 今日は、議題が国税庁の実績評価書でありますけれども、財務省の政策運営に当たって、今の御指摘は大変重要な点ではないかと思っております。政策評価の枠組みとの関係で申し上げれば、政策評価法に基づきまして、財務省の政策評価については本年6月に令和4年度分の評価をいただいております。
 この中でも今のような御指摘、御懸念を踏まえまして、財務省の中では、総合目標1、これは社会保障制度の持続可能性の確保に向けた基盤強化への取組ですとか、PBの黒字化への取組、財政健全化への取組というのが総合目標1でございますけれども、令和4年度はB、この3年間ではC、B、Bと厳しい評価をいただいております。
 それから、総合評価6についても、経済再生と財政健全化の両立、適切な財政経済運営ということについても、この3年間、B、B、Bということで評価をいただいています。重点的な予算配分、財政の効率化、質的改善の推進といった政策目標についても、同様に厳しい評価をいただいているところであります。
 これらの評価に当たっても、確かに単年度ではあるんですけれども、基本的には構造的な取組、中期計画の進捗を見ながらの評価を検討し、PDCAを進める中での評価をいただいているということであり、そういう意味で引き続きまた来年度に向けても御指導いただければと思います。
 他方、こういった枠組みだけではなくて、更にもっと大きな問題意識からの御指摘でもあったと思います。そういう意味では、向こう1年を見渡していても、今年末に、1つは「こども未来戦略方針」に基づきまして、子ども政策を進めるに当たっての財源の確保。これは社会保障改革を通じて、国民の負担増にならない形での財源確保という方針が既に夏に決まっておりますが、それを進めるに当たっての社会保障改革の改革工程を、この年末に策定することとしております。
 それから、防衛力の強化に当たっての財源、これは昨年末の税制改正大綱で枠組みが決まっておりますが、税制措置の開始時期については、令和6年以降9年度までに段階的に実施するというところまで決まっておりまして、具体的な開始時期がまだ決まっていないということで、これもどうするかということが年末の税制改正の中での議論ということでありますので、現実にこういった中期的な構造改革、あるいは財政の持続可能性に関連する取組が年末に行われます。
 それから、来年の2024年の骨太の方針に向けて、2025年のPB目標の在り方、それから現在の3か年の経済財政中期計画の目安などを定めているものは、2022年から2024年度の計画でありますので、この計画を2025年度以降どうするかといった議論が不可避であります。
 そういった意味では、御指摘のあった構造的な取組、財政の持続可能性、ワイズスペンディングへの取組といったものについて、具体的な中期的な計画・取組をどうするのかといった議論が現実に進む中で、今、御指摘のあった点も踏まえて、財政当局としては適切な経済財政運営に当たってまいりたいと考えておりますし、財務省はもとより、政府全体としての中期的な大きな問題点の御指摘だったと思いますので、政策評価の枠組みはもちろんでありますけれども、更に大きな経済財政運営に当たっても、御指摘を踏まえて当たってまいりたいと思いますし、引き続きそうした点についても、また来年6月に財務省の評価をいただくことになりますので、御指導いただければ幸いでございます。
 以上です。

 ○吉野座長
 では、最後に、茶谷事務次官から御発言をお願いいたします。

 ○茶谷次官
 本日も貴重な御意見を多数頂戴しまして、誠にありがとうございます。
 本日議題になりました税務行政につきましては、まさに御指摘のようにグローバル化、デジタル化の大きな波に洗われて、様々な構造変化の課題に直面しているところでございますが、国民の信頼が揺るがないように、一つ一つ丁寧に適切に対応していきたいと思います。
 こうした中で、本年10月からはインボイス制度が開始しました。インボイス制度につきましては、制度の円滑な導入や定着に向けて、もともと各種税制の特例措置と補助金制度を設けましたし、公正取引委員会とも連携した環境の整備とか、あるいは様々な媒体を用いた周知広報の徹底した実施に取り組んできたところでございますが、引き続き、もう実施に入ったわけですから、実施状況を各省庁とも連携してフォローアップして、把握された課題には一つ一つ丁寧に対応してまいりたいと思います。
 また、財務省の行政全体、特に財政の信認可能性について、今日も様々厳しい御意見を頂戴しました。今、足元の当面の課題というのは官房長が答えたところでございますが、我々としたら、基本的に恒久的に施策を拡大するためには、恒久的な財源というのをきちんと確保しなければならないと。
 タイミングのずれがあったら、そこはつなぎで調整するにしても、歳出の拡大のためには財源確保という姿勢で基本的には取り組んできつつあるところでございまして、それは防衛の財源、あるいは少子化の財源、GX経済の財源については、まだまだ正直言って仕掛かり途中でございますが、そうした枠組みというのを崩さないように頑張っていきたいと思いますし、それ以外に様々な政策課題というか、歳出拡大要求というのは、足元の経済対策から来年度予算に向けても正直言って噴出してきているところでございます。
 他方、この40年間ぐらい金利というのはずっと低下してきましたが、今、御案内のとおり金利は上昇局面に入ってきまして、私を含めて実は財務省で今予算に携わっている者で、金利上昇局面で予算を編成した経験というのは誰一人いないわけなんですけれども、そういう非常に厳しい環境の中で、様々な政策課題にどう対応して、国民の財政に対する、あるいはマーケットの財政に対する信認を確保していくか。これに我々は精いっぱい頑張っていきたいと思いますので、是非また引き続き御指導を賜れれば幸いでございます。
 本日は、どうも誠にありがとうございました。

 ○吉野座長
 皆様から今日は御意見をどうもありがとうございました。
 本日は、国税庁に関する御意見が中心だったものですから、来年の3月にまた開催を予定しております会議の方で更に皆様から御意見をいただければというふうに思っております。
 3月の会議では、財務省の令和6年度の政策評価の実施計画を予定しておりますけれども、具体的な内容、開催日時に関しましては、改めて事務局から御連絡させていただきたいと思います。
 国税庁におかれましては、今日の委員の先生方からの御意見を踏まえまして、しっかりPDCAサイクルを回していただくようにお願いしたいというふうに思います。
 また、今日、多くの委員の方から財政に関する御意見がございましたが、また来年の3月の時にはいろいろ更に深く皆様から御意見をいただければと思っております。
 これをもちまして本日の懇談会を終了させていただきますが、議事録に関しましては、皆様に御確認の上、財務省のウェブサイトで公表を予定させていただいております。
 今日も活発な御議論をどうもありがとうございました。これで終了させていただきます。




──了──