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第73回 財務省政策評価懇談会(3月9日開催)議事録

日時    令和4年3月9日(水)14:58~16:33

場所WEB会議(財務省第3特別会議室を含む)

出席者(懇談会メンバー)

懇談会メンバー

秋池玲子

ボストン・コンサルティング・グループ 日本共同代表

秋山咲恵

株式会社サキコーポレーションファウンダー

伊藤元重

学習院大学国際社会科学部教授

江川雅子

一橋大学大学院経営管理研究科 特任教授

百合

株式会社日本総合研究所理事長

和夫

阪急電鉄株式会社代表取締役会長

田辺国昭

国立社会保障・人口問題研究所所長

広瀬道明

東京ガス株式会社取締役会長

山本

鎌倉女子大学教授、東京大学名誉教授

座長吉野直行

慶應義塾大学名誉教授、金融庁金融研究センター長
政策研究大学院大学客員教授

(敬称略、五十音順)

(財務省)

矢野事務次官、小野総括審議官、坂本主計局次長、住澤主税局長、阪田関税局長、角田理財局長、三村国際局長、栗原財務総合政策研究所長

(国税庁)

日置審議官、本多監督評価官室長

(事務局)

水口政策立案総括審議官、伊藤政策評価室長

議題

(1)令和4年度財務省政策評価実施計画等(案)について

(2)令和4年度予算編成等における政策評価の活用状況について

議事録

○吉野座長 
 それでは、時間よりちょっと早めなんですけれども、皆様お集まりですので、ただいまから第73回財務省政策評価懇談会を開催させていただきたいと思います。
 翁委員は30分ほど遅れて参加されるということになっております。
 今日も新型コロナの感染防止のために、委員の皆様方には御理解・御協力の上、ウェブ会議とさせていただいております。音声が聞こえにくいなど、トラブルがございましたら、事務局まで御連絡いただきたいと思います。
 それでは、今日の主な議題である、議題の(1)令和4年度財務省政策評価実施計画等(案)について、御説明、御議論いただきたい第1番目でございます。それから議題の(2)としましては、予算編成等における政策評価の活用状況につきまして、お手元資料に配付しておりますので、後ほど各局より補足説明などがあればお願いする予定でございます。
 それでは、早速ですけれども、議題の(1)令和4年度財務省政策評価実施計画等(案)につきまして、水口政策立案総括審議官から御説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

○水口政策立案総括審議官
 水口でございます。よろしくお願いいたします。
 今投影されております資料に基づいて概要の御説明をしたいと思います。
 まず4ページでございますが、財務省の政策評価は皆様御案内のとおり、総務省が定める政府の方針に従いまして毎年実施しているところでございます。今回の令和4年度の政策評価は、現在進行中の財務省の5年の基本計画の下での最終年度ということになります。この実施計画(案)につきましては今回の御議論を踏まえまして本年3月末までに公表する予定でございます。
 5ページでございますが、これは財務省の政策の目標の体系図でございますが、今回は、小さくて恐縮ですが、税制の部分については下線を引きましたような変更を加えてございますけれども、その他の目標、さらにはその下の施策や主要な測定指標については昨年度と比べて特段の変更はございません。
 次に6ページでございますが、昨年度の計画との主な変更点ということで3点ございます。
 1点目は、先ほど申し上げました税制に関しまして、昨年11月の総理から税制調査会への諮問を踏まえまして、成長と分配の好循環の実現に向けた総合目標2、税制への反映ということでございます。
 2点目は、財政の総合目標1に関してでございます。皆様御案内のとおり、昨年6月の令和2年度の実績評価におきましてC評定、「目標に向かっていない」という評価になりましたが、財務省の政策評価におきましては、C評定になった場合には、その対応を検討して次期の実施計画に検討結果を反映させることになってございます。財政健全化の目標年度につきましては、昨年6月のいわゆる「骨太の方針」におきまして、感染症の経済財政への影響の検証を行い、目標年度の再確認をするということになってございました。その方針を踏まえ、本年1月の経済財政諮問会議において行われた検証の結果を今回の実施計画に反映させたものでございます。
 3点目はデジタル化でございますが、財務省のデジタル化は、昨年のデジタル庁の発足、さらにはコロナ禍を踏まえ、現在いろいろと推進しているデジタル化の取組をまとめて記載しております。
 次の7ページでございますが、先ほど申し上げた税制の点、下段にございます「税制調査会への諮問」、特に下線の部分の文言に沿う形で総合目標2に反映させてございます。
 8ページは、財政の総合目標でございます。まず結論から申し上げますと、上の部分にございます総合目標1自体は昨年度と比べて変更してございませんが、右下にございます目標設定の考え方におきまして、太字・下線を引きましたように追記・変更してございます。今年1月14日の経済財政諮問会議におきまして、内閣府からの中長期の経済財政に対する試算が提出されまして、最終的に「現時点で財政健全化の目標年度の変更が求められる状況にない」旨が確認されたところでございます。併せて、新型コロナウイルス感染症対策に万全を期し、経済を立て直し、そして財政健全化に向けて取り組んでいく必要があるということを記載してございます。
 次に10ページでございます。これは今申し上げた1月の経済財政諮問会議に関するスライドでございますけれども、1点補足させていただきます。下の(参考)の数字はプライマリーバランス赤字の対GDP比の推移に関する数字でございます。令和2年度は悪化しましたが、足下の令和3年度の見込みの数字を見ますと、内閣府の数字でございますが、令和2年度に比べて改善しつつあるという状況にございます。
 11ページでございますが、財務省のデジタル化についてです。ここでは別途進めております国税庁のDXの取組以外の取組を記載してございますが、デジタル社会の進展、さらにはコロナ禍を踏まえ、今次計画においてさらに財務省としてデジタル化を推進していくということでございます。幾つか主な事例を挙げさせていただいておりますが、例えば、(1)行政サービス利用者等の利便性向上の取組では、庁舎・宿舎を、5G基地局として、また民間企業の皆様方のサテライトオフィスに提供するといった取組や、オンラインによる説明会や研修の積極的な実施などは引き続き強化しております。また、(2)行政事務の効率化等の取組では、例えば、最初の点ですが、税関が保有する輸出入実績申告等のビッグデータをAIに学習・解析させて、例えば輸入事後調査の立入先選定の支援などに活用することを、AIモデルの開発なども含めて、検討してまいります。引き続き、財務省としても必要なデジタル化についてはしっかりと進めていきたいと考えております。
 残りは参考資料でございます。
 冒頭、私からは以上でございます。

○吉野座長 
 どうもありがとうございました。
 それでは、いつものように、あいうえお順で委員の先生方から御意見をいただきたいと思います。
 最初に秋池委員、どうぞよろしくお願いいたします。

○秋池委員
 御説明ありがとうございました。今回の全体像につきまして異論はございません。その上で4点、申し上げたく思います。
 まず1つ目ですけれども、今回、5ページの総合目標につきまして、総合目標2に「コロナ」という言葉が入ってきたというのがございます。これ自体は、非常に今大きくいろいろな意味で我々の前にあることでございますし、これによる財政のありようというものも変わったところがございますので、結構ですけれども、一方で、この総合目標は何か毎年頻繁に変えるというタイプのものでもありませんので、長期のものを前提に運用されていくといいのかなというふうに思いました。キーワードとして入ってくることは、現時点ではこれでよろしいのですが、やはり長い目標として取り組まれていくとよいと思いました。
 2つ目、その点とも関係するのですけれども、御説明の中にもありました、財政の健全化には決して旗を下ろすことなく取り組んでいただきたいと思います。
 3つ目にデジタル化ですけれども、いろいろな具体例を資料の中にも書いていただいておりまして、これはこれでいずれもよいと思っているんですが、やはり財務省で働く皆様の働き方がよくなるということもとても大事なことだと思っております。皆様いつも自分よりも国民を優先させるので頭の下がる思いですが、結果的に皆様のお仕事がやりやすくなるということは国民の便益にもつながるところになりますので、ここに書く書かないはともかくとして、そういったお取り組みが続くとよろしいと思います。
 最後にビッグデータですね。EBPMとか、要するに分析的にファクトに基づいて政策の議論をしていこうとか、検証しようということがあるわけですけれども、御省ではそういうことはないかもしれませんが、民間の場合は、データはたくさんあるけれども、それぞれに自由なフォーマットで取得したデータだったりすると、同じ会社の中でも比較検討しようと思うと、土台がそろっていないので、それを整えることにものすごい工数と時間、お金がかかるというようなことがございます。ですので、既に蓄積してあるデータはもう仕方がないのですが、これから蓄積していこうとするデータに関しましては、そういったところを念頭にお取り組みいただけると、将来無駄がないのかというふうに感じております。
 以上です。

○吉野座長 
 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして秋山委員、お願いいたします。

○秋山委員  
 2点、コメントをさせていただきたいと思います。
 全体としては私も特段の異議、異論はございません。特に5ページの、今般、政府の方針に従って追加された記述の部分について、「新しい資本主義」、それに基づく「成長と分配の好循環」、言葉はいいのですけれども、この言葉が意味するところの定義がどうもはっきりしないなという懸念を感じております。過去、政府がいろいろ打ち出してきた成長戦略が必ずしも目指したとおりの結果には結びついていない中で、「分配」という言葉が加わることで、こちらが強調され過ぎることにはならないか、あるいは財政再建目標についても、今回は大きく変更する必要はないという判断ではありますけれども、この点との矛盾はないのかといったような懸念を私は感じております。この辺り、財務省として財務省の目標の中の位置づけとして、どのように考えておられるかということについては後ほどお伺いできればと思っております。
 2点目です。今、秋池さんからもコメントがありました「コロナ」という部分です。これは国民の関心事でもあります。昨年末、会計検査院から出された会計検査院報告も少し見てみたのですけれども、今回の会計検査院報告においては総額77兆円、予備費等も含めて計上された新型コロナウイルス感染症に関連する5対策の予算の使い道、実績についてまとめられております。その中で私がこれは今後の財政をどのように再建していくかという道のりの中でも重要な問題じゃないかというふうに思った点がありますので、コメントさせていただきます。77兆円の計上された予算の中で、会計検査院が具体的な事業ごとに予算と実績の比較ができたものが65兆円余り、しかもこの65兆円余りについても、当初予算、それから補正予算などで計上されたものを比較することが大変難しい、かなり複雑で入り組んだ作業が必要だったというようなことも聞いております。そして、77兆円と65兆円の差額については予算と実績の比較がなかなか難しい、会計検査院の検査をもっても難しいというような状況であるということを改めて認識したのですけれども、これはこの会議のスコープからは少しはみ出てしまうかもしれませんが、今後の財政再建、あるいは財政をどのようにコントロールしていくかという面については非常に重要な点であるというふうに思いましたので、コメントをさせていただきたいと思いました。
 以上です。

○吉野座長 
 貴重なコメント、どうもありがとうございます。
 それでは、続きまして伊藤委員、お願いいたします。

○伊藤委員  
 伊藤です。よろしくお願いします。毎年こういう形でずっと議論を続けてきて、評価のいろいろな資料だとか、あるいは内容については非常によく成熟して、そんなに大きく変える必要はないし、先ほど秋池さんがおっしゃったように、しょっちゅう状況によって変わるのでも本来の機能とは違ってくるので、これはいいと思うんです。ただ、毎年申し上げさせていただいているように、財政運営とかマクロ経済政策というのは経済のその場その場の動きに非常に大きな影響を受けるもので、そこをどういうふうに考えて、ここに反映させるかどうかは別として、常に議論していく必要があるかなと。そういう観点で3点、今回のものを読んだ上で印象みたいな話を申し上げたいと思います。
 一部はここに書いてあることともかなり関係すると思うんですけれども、1つはコロナのもとでの財政運営の在り方の話で、これは昨年C評定を出したことに対してどういうふうに考えるかとか、いろいろな議論があったので、非常に勉強になりましたけれども、一般論で申し上げますと、財政運営には2つの面があると思うんですよね。つまり長期的に健全な財政運営をして、もちろん財政破綻をさせてはいけないだけじゃなくて、国民負担も含めて適切な財政支出と歳入のバランスをとっていくということが重要であるわけですから、長期的な取組は大事なんですけれども、もう一つ非常に重要なのは、財政だけでないんですけれども、マクロ経済政策にはいわゆるビルトイン・スタビライザーみたいな機能が非常に強くあると思うんです。それはビルトインしているだけじゃなくて、何か大きな問題が起こったときに、それに対するいわばバッファーとして、あるいはそれに対する対応として財政が非常に重要であると。コロナは言うまでもないことなんですけれども、それ以外にも起こっていると。特に近年はこういうことが、どこまで危機と言うか分かりませんけれども、2~3年前に突然コロナが出てきて、また今、この先どうなるか分かりませんけれども、ウクライナの問題もマクロ的に大きな影響が及ぶわけで、そうすると難しいのは、短期の非常に大きな危機的とも言える状況に対してどう対応するかという対応と長期的にどうやって健全性を維持していくのかということのバランスみたいなものが現実的には求められるんだろうと思うんです。バランスが求められるということは、逆に言うと、今のコロナの場合で言うと、どういうタイミングで危機対応から、より長期の安定対応、つまりプライマリーバランスのターゲットをしっかり守っていく方向に行くのかという、この転換みたいなものが問われていて、そういう意味で今回のレポートの評価においても重要なポイントなのかなというふうに思います。
 さらに、もう一言申し上げさせていただきますと、危機が10年、20年に1回、2回で済むのなら結構なんですけれども、過去にも何回もプライマリーバランスの目標を掲げながらも東日本大震災が起きたり、あるいはリーマンショックが起きたり、あるいはコロナが起きたり、今度ウクライナはどうなるか分かりませんけれども、ということで修正していく中で、また少し時間がたつとプライマリーバランスの目標には戻るんですけれども、その間の一時的な補正予算の増加とか、いろいろなことが膨らんで、結果的には債務に現れるような財政状況がどんどん悪化していくというのが現実であるとすると、この問題をどういうふうに考えるかということは議論しなきゃいけないのかなと思いました。
 2点目は分配の問題で、新しい資本主義が何を言っているかはいろいろな議論があるんだろうと思うんですけれども、分配の問題が非常に大きな関心を持たれていることは事実で、それが今回の政策評価の目標の中にも出てきたというのは非常に印象深かったんですけれども、これはこれでいろいろな議論はあると思うので、私は結構だろうと思うんですけれども、ただ、ちょっと気になるのは、成長と分配の分配を実際に実現していこうとすると、いわゆる歳入面、つまり税制だけでやれる面ではなくて、むしろ教育だとか歳出面も当然出てくるわけです。両方書いてはあるんでしょうけれども、結果的に諮問したのは税制調査会だけのことが引用してあるものですから、何か税のところだけ少し強調しておられるように見えるんですけれども、実際には歳出と歳入と両方の面があるのかなという印象を持ちました。
 3点目、これは今回の話とは少し関係が薄くなるかもしれませんけれども、やっぱり非常に気になるのは、今回のロシアのウクライナの侵攻とも関係があると思うし、それ以前から少しそういう動きが出てきたわけですけれども、いわゆるデフレ的な経済から少しインフレ的な経済にシフトしていくような兆しがかなり強くなってきていると。こうした動きでデフレ的な環境とインフレ的な環境では財政運営の在り方やその成果の評価もかなり違ってくるようなところがあると思うんです。例えば、GDP比で見た公的債務の金額をどう見るのか、今後の対応をどうするかというところを考えてみても、デフレとインフレではかなり動きが違ってくるだろうと思いますし、あるいはインフレ的な状況が予想されるということは、名目金利にそれが反映されるわけですけれども、これが国債市場とか国際管理システムにどういう影響が及んでくるかとか、あるいは仮に金利が上がってくると、プライマリーバランスで見たときの財政状況と政府の債務のサービスを含めた、いわゆる財政収支で見たときのギャップが非常に大きくなってくる可能性もあるわけですけれども、それをどう考えるかとか、あまり今まで考えてこなくてもよかったような問題が表に出てくる可能性があるわけで、これがもちろん政策評価の目標に反映されるかどうかは別の問題として、ただ、やっぱりマクロ政策というのは、もう1回申し上げますけれども、その時々の大きな経済の変化に対してどういうふうに対応していくのかということが常に問われるんだということを今回のこの動きを見ながら印象深く思った次第です。
 少し本論から外れたところもありますけれども、以上3点、申し上げさせていただきました。どうもありがとうございます。

○吉野座長  
 どうもありがとうございました。
 続きまして江川委員、お願いいたします。

○江川委員 
 江川です。よろしくお願いいたします。4点申し上げます。全体の評価に関しては私も特にコメントはないですが、マクロ的なことも含めて4点申し上げます。
 1点目は、今、伊藤委員が述べられた財政規律の問題で、これは総合目標1とも関わってまいりますし、C、目標に向かっていないというような評価も過去にされているので、そういう意味で特に重要だと考えています。過去2年間、コロナ対応ということで、日本ばかりでなくて各国が財政出動を競っているような感じがありましたけれども、これが長期戦になってきているというのは国民の目にも明らかになってきています。危機対応のモードではなくて、サステナブルな政策に切り替えていく必要があると思いますので、財政規律にしっかり注意を払って運営をしていただきたいと考えます。
 2点目は、エビデンスに基づく実効性のある政策ということです。秋山委員が会計検査院の報告書のお話をされましたけれども、私は昨年から会計検査院懇話会の委員をしておりまして、コロナに関しては集中的に検査をしてくださいということをお願いしたところ、かなりしっかりやっていただいて、私も秋山委員と同様に報告書を読んで大変驚きました。一部は報道されているので具体的な例は申しませんが、目的と政策が合致していないとか、内容がずさんで無駄遣いになってしまった、例えば10段階以上に外注がされていて、実際に政策に使われている金額が半分以下であったりとか、そういう無駄なものがとても多いので、こういった政策はしっかり検証して、それを踏まえながら今後の対応を考えて、実効性のある政策をしていただきたいと思います。
 3点目は、統計や前提条件の信頼性のことです。現在、国交省の統計のことが大きな問題になっていますが、私は実は財政の議論をするときのGDPの成長率とか、そういった前提条件もずっと気になっておりまして、民間やIMFの予想よりも楽観的なことが多くて、どうしても歳出が増えてしまいやすいと思います。民間企業や家計の場合には、楽観的なシナリオというよりは悲観的なシナリオを立てて、それに基づいて保守的な運営をすると思います。もしも悲観的なシナリオをベースにするというのが難しければ、せめてその中間とか、もう少し現実的なシナリオに基づいた予算を立てるということができないのかと思います。これは御質問なので、できれば財務省から御意見をお聞かせいただければと思います。
 4点目は、長期的な話ですが、少子高齢化、人口減少への対応です。今まで人口も経済規模もずっと伸びてくるということに私たちは慣れ切っているので、歳入・歳出、いろいろなものが去年よりも大きくなるということに慣れっこになっているんですけれども、日本の場合は2004年をピークに人口減少に転じていますし、今後かなり減っていくということが長期的な見通しで明らかになっているわけです。中位推計で2050年に9,500万人、2100年には4,800万人ということで、現在の半分以下ということだと思います。もちろん移民政策とか、そういうことで増減は変わってくるとは思います。ただ、これだけ急ピッチで人口が減るということは、半分以上移民を入れるとかという極端なことをしない限り、人口が大幅に減るというのは現実的なシナリオだと思うので、それに基づいていろいろな政策を考えていく必要があると思います。
 そういうことを考えたときに重要なポイントが2つあると思いまして、1つは、1人当たりのGDPとか生産性とか、そういうものに注力すべきであって、全体の規模よりも1人当たりということをもっと考えるべきだと思います。日本は諸外国に比べてITとか人材への投資が少ないと言われていまして、それが生産性に大きく響いていると思うので、そこにぜひ力を入れていただきたいというのが1点目です。2つ目は、やはり人口減少に伴ってインフラを集約しなければいけないということです。コンパクトシティということがずっと政策の面で言われていて、それが大きな方向性だろうと思っておりました。ところが、コンパクトシティの取り組みはいろいろやられているけれども、実際、各地域に関して具体的にどこに集約していくのかというような議論は進んでいないと聞いています。もちろん政策的、政治的に難しい面もあると思うので簡単ではないと思います。でも、一方、今回のコロナの中で、例えば病院の集約について、ある程度機能分担をして集約しなければならないというのはずっと政策としては議論されてきたけれども、実際には進んでいないということが顕在化したわけですね。ですから、病院に関しては国民のコンセンサスも得やすいと思いますし、ぜひそういった医療インフラから始めて、それ以外のインフラに関しても、コンパクトシティというか、インフラの集約ができるような長期計画をしっかり立てて、それに沿って財政支出を考えていただければと思います。
 以上です。

○吉野座長  
 江川委員、どうもありがとうございます。
 それでは、田辺委員、先にお願いいたします。

○田辺委員 
 何点か申し上げたいと思います。
 皆様からも御指摘がございましたけれども、1つは新しい資本主義で成長と分配の好循環というときに、税制だけの問題でいいのかなというのが分からないところでございます。例えば昨年度の末ぐらいに公的価格の評価検討会というようなところで、幼保、介護、それから看護師の3%の賃上げみたいなことをやったわけですけれども、それは明らかに財政にはね返る部分で、例えばその後、診療報酬、介護保険で面倒を見たといたしましても、税金の一定の負担の部分というのが残りますので、そういう問題を財政の中に、初年度だけじゃなく、きちっと入れ込んでいただいて、配分というものによってある意味、公的な部分がどのくらいの起爆剤になるか、ちょっと分かりませんけれども、財政のほうの問題もあろうかと思いますので、税制だけかなという気はしないわけでもない。ただ、書かなくても、そんなのは政権の方向と合わせるのが財政の運営のある種のハンドリングだと言われれば、それまでではあるのですがというのが第1番目のコメントでございます。
 2番目は、デジタルに関わる部分でございます。デジタルに関わるところで、財務省の中でもいろいろな試みがなされております。特に対国民ないしは対企業とのサービスにおいて、デジタルを利用することによって利便性を図るというようなこと、それから事務を効率化するという、この大きな2点が恐らく財務省のデジタル化の中で重要な位置を占めていると思いますけれども、ただ、3番目に、さっきの委員の指摘にもありましたけれども、データの分析、それによって政策の正しい方向性を出してくるというような側面というのは、どのくらい進んでいるのかなというようなところが若干気になる次第でございます。今回の評価から外していますけれども、国税庁のほうで例えば徴税の未収納のところを発見して、どう対応するかであるとか、税金を払っていないのはここら辺じゃないかというのは、かなり大きなデータを使って、AIに近いようなこともできるかなと考えたりもしますので、ある意味、財務省というのはデータの宝庫みたいな省庁でありますので、その分析と利用という点がちょっと前面に出てこないという点に関しましては、もう少し何かないかなと思ったという次第でございます。
 以上、2点ほど申し上げました。 

○吉野座長  
 どうもありがとうございました。
 それでは、角委員、お願いいたします。

○角委員 
 冒頭のご説明にもありましたように、昨年度の骨太の方針2021において、財政健全化目標を堅持する、ただし、感染症でいまだ不安定な経済財政状況を踏まえ、年度内にコロナの経済財政への影響の検証を行い、目標年度を再確認する、となりました。一部、MMT的なご発言をされる方もおられ、心配しておりましたが、1月14日の経済財政諮問会議において、無事に目標年度の変更はなく、安心いたしました。但し、成長と分配の好循環を実現し、かなり高い経済成長をなしとげる必要があります。
 一方、先日の財政制度分科会において、我が国の財政の置かれている現状をもっと広く、国民に認識してもらう必要があるとの意見が複数出されました。前にも申し上げましたが、大阪大学をはじめ、大学で講義する機会があれば、必ず財政規律の話をしますが、残念ながら危機感を持っている学生はほとんどおりません。ご案内のとおり、1990年度から30年間、社会保障費と国債費以外の予算はほぼ同額であります。
 1990年のGDPは430兆円、そしてコロナ前の3年間はほぼ550兆円。低成長といえども、この30年間でGDPは1.3倍になっている。新興国は言うに及ばず先進国でも毎年1.5%~2.5%程度は成長しており、特に文教・科学振興予算が年々劣後していっており、これ以上の国際競争力の劣化は何としても避けなければなりません。
 昨日、新しい資本主義実現会議が開催され、科学技術分野の成長戦略が議論され、総理から研究開発投資の抜本強化が必要との強い意志が示されました。
 気候変動問題への対応、更なる高齢化に伴う社会保障費の増、成長と分配の好循環という3つの課題を解決するには、受益者負担の見直しと増税以外に道はないと考えます。その中で、償還についても議論していただければ。
 新しい政府が誕生した今年こそ、歳入、歳出の抜本改革の議論を是非期待いたします。
 以上です。

○吉野座長  
 貴重な御意見、どうもありがとうございました。
 それでは、広瀬委員、お願いいたします。

○広瀬委員  
 広瀬でございます。初めてのことですので、少々感想めいたことを何点かお話させていただきます。
 まず、財務省の使命として、「国の信用を守り、希望ある社会を次世代に引き継ぐ」とありますが、これを初めて見まして、財務省というとイメージとして数字が出てきますが、このような理念的な使命があるということで、大変驚きと新鮮さを感じました。実態としては、今の財政状態を考えると、国の信用という面では大きな疑問符がついており、それがまた将来の希望というか、むしろ不安につながってしまっている状態で、消費をしない、お子さんを産まないというのは、まさにそのようなことではないかと思いますが、どうも国民の間ではそれが財務省の責任と思われているのではないかと。国の責任ということになると、自動的にこれは財務省ということになる、そういったことも御理解しながら、あえてそれを使命としているということについて、感銘を受けたわけでございます。それだけ期待の大きさと責任の重さを感じておられると理解いたしました。
 次に、目標については、例えば骨太の方針や税制調査会の諮問を受けて変わったということだとすると、むしろそこに対してどう取り組んだのか、どういう働きをしたのかというのが真の目標になるのではないかなと。形としてはそれを受けてということですが、実質的には財務省がそこにいろいろ働きかけをしているわけですから、その仕込みをどのようにしたのかというのが実際には目標になるのかなと。岸田政権になって、それを政権に合わせて反映するのは、当然のことだと思います。財政健全化目標にあるプライマリーバランスとGDP比ですが、プライマリーバランスについては、今回目標達成年度を堅持したのは本当によかったと思いますし、この旗をこれからも掲げていくべきと考えますが、私は、むしろGDP比のほうをもっと重要に、あるいは深刻に考えるべきではないかと考えます。プライマリーバランスは当面の目標として、あるいは予算をつくる上での目標としては良いですが、インパクトに欠けるというか、国民から見るといろいろな考え方がありまして、どんどん国の借金はあっていいという考え方から、そうではないという、経済論争というか、神学論争というか、技術論というか、学説を交わして戦わせており、切迫感はだんだん無くなりつつあるのではないかなと思っております。
 財政もここまで来ると、リスクマネジメントというか、クライシスマネジメントの段階に入ったと思います。リスクマネジメントで一番大切なことは、いろいろな不確定、あるいは何が起きるか分からないときは、あまり突出しないというか、ほぼ皆と同じようなところにいるというのが最大のリスク管理かと思っておりまして、その観点からいくと、今のGDP比は先進国の中で突出しています。これを全面的に出したほうが国民に危機感という面で分かりやすいのではないかなと。よく資料には、先進国の中で日本は2倍だとか、いろいろ出ていますが、やはり日本人はほかを見ながらいろいろなものを判断するという、そういう国民ですから、その辺をうまく打ち出していくことも必要なのではないかなと考えます。
 もちろん、これもいろいろな事情があって、日本は国際的にまだまだ余裕があるとか、単純には比べられないという反論は必ず出てきますが、運動論的にはGDP比についてもっと強調したほうがいいのではないかと思っております。
 それから、C評定の件ですが、昨年これをC評定にしたことについては、この使命から考えると非常によかったのではないかなと。一方で、今回、「留意する」という表現を使っていますが、この「留意する」という表現もまた非常に適切な表現、言葉ではないかと思っています。今、角委員からもお話がありましたが、私も今回のコロナに対する対応は非常によかったかなと。改めて国民も財政のありがたみを感じたのではないでしょうか。本来ですと、これだけのことが起きると倒産や失業者の増加など、相当な社会不安があって当然だったわけですが、日本はそれがほとんどないということでは、まさに財政が有効に機能したと思います。いろいろな不正や問題はありましたが、スピードを考えると、ある程度は受忍せざるを得なかったのではないかということで、特に中小企業にとっては非常にありがたかったと思います。
 問題は、これからどうするかですが、今、ワニの口が急にここであくびしたような形になっていますので、例えば3・11では復興税があり、これから中小企業なども返していかなければならないですが、そこでまたいろいろなことが起きますから、それをどのようにソフトランディングしていくかということが今後の課題になっていくのではないかと思っております。
 最後に、今後の財政について考えますと、社会保障がこれまで問題があったわけです。もちろん、これからも本格的に高齢化が進みますから大きな問題なのですが、一方でグリーンとかデジタルとか、あるいはレジリエンス、インフラ、それから恐らくこれから安全保障の問題も出てきますから、いわゆるお金のかかることが目白押しです。さらに、今ウクライナでいろいろなことが起きていますが、伊藤委員がおっしゃったように、ウクライナの問題、特に今エネルギー価格が相当高騰していますから、ガソリンの補助費とかトリガーの問題とか、それに対してまたお金も必要になってきます。さらに中長期的に見ますと、戦後の体制がウクライナによって相当変わるということになると思います。そうなると、それが財政、ひいては先ほどの使命である国の信用と希望のある社会、これにどう影響するのか、今、本当に大きな転換点を迎えているのではないかと思っています。
 最後の最後に余計なことですけれども、政局はこれからどう変わるか分かりませんが、参議院選挙が終わると黄金の3年間という期間に入るわけで、この3年間でどのようにいろいろな痛みの伴うことをやっていくのかという、ある面でチャンスですが、一方で、この3年間は何もないとすると逆にピンチになりかねません。本当に大事な3年間で、いろいろお考えだと思いますが、結果として政局ですからどうなるか分かりませんけれども、非常に大事な時期に入ってくるのではないかと思っております。
 以上でございます。

○吉野座長  
 貴重な御意見をどうもありがとうございました。
 それでは、山本委員、お願いいたします。

○山本委員  
 細かい点は既に事務局にお伝えしてありますので、3点ばかり申し上げたいと思います。
 1点目は、今もお話があったように財務省の使命というのは、私も非常に立派で非常にアピールするものだというふうに思っております。ただ、財務省の政策評価でいつも問題になるんですが、政治との関連性であるとか、そういうのがなかなか区分けが難しいということで、なかなか定性的な目標が多いということは私どもも分かっているんですが、であるがゆえに、信用であるとか、希望ある社会を次世代に引き継ぐというようなことに対する一種の達成度の調査なりを定期的におやりになって指標化するとかということも、最近ですとビッグデータ等を使えばできるわけですので、それをやれば政治との関連性と財務省が目標とされているようなこととの密接な関係があるのか、あるいはこの部分は切り離していけるのかどうかというようなことの少し参考になるのではないかというのが1点思った次第であります。
 2点目は、多くの方々から御意見がありましたプライマリーバランス等の堅持というのは、私も非常に結構なことで推進していくべきだと思っておるんですが、これも昔から申し上げているんですが、実は国と地方を合わせた云々という表現は、内閣府的には正しくて、国際比較的にはそのとおりなんですが、国の例えば一般会計とか特別会計との関連性から言えば、少しその過程で翻訳なり修正作業というのが必ず必要になってまいります。というのは、国と地方を合わせたというのは一般政府の概念でございますものですから、国の一般会計、特別会計とストレートに結びつかないわけでございまして、国の財政事情が厳しいということと国と地方を合わせた一般政府レベルの財政状況が非常に悪いということの関係をやはりもう少し分かりやすくしていくような作業が財制審等も含めて必要ではないかというふうにかねがね思っておるというのが2点目でございます。
 3点目は、今までの各委員の御意見を聞いておりますと、コロナの財政出動等についてはプラスマイナス両方の、ポジティブな意見と若干批判的な御意見と2つあったと思うんですが、確かにIMFとかOECDでレポート等は出ておるんですが、コロナ対策の中身に入った詳細な分析というのはないわけでございます。今後、確かにウクライナの問題等でまた新たな財政出動、あるいは経済対策等もあるかもしれませんものですから、やはりここは時間をとってでも、定額給付金の問題とか、飲食店等への給付金の問題、あるいは貸付金等の問題がございましたものですから、ぜひこれは総合評価の一環としておやりいただきたいというのが3点目の私からのコメントでございます。
 以上でございます。ありがとうございました。

○吉野座長  
 山本委員、ありがとうございました。
 それでは、最後に翁委員、お願いいたします。

○翁委員  
 遅れて参加しまして大変申し訳ありません。3点申し上げたいと思います。
 まず1つ目は、ワイズスペンディングについて、しっかりこれから取り組んでいくことが大事ではないかということです。どうしても財政の支出、それぞれの省庁ごとにかなり縦割りになっていて、もっと柔軟に中身を見直して、政府支出を見直していくことができないかなと思います。例えば人材投資とか、本当に日本の将来にとって大事な政府支出、社会的便益が高いようなものについてはしっかりと投資をしていくことも非常に重要だと思っております。ただ、そこで重要なのは、恐らく先ほども御発言がありましたが、グリーンとかデジタルとか科学技術とか、いろいろと本当に必要と思われる財政項目というのはあるんですけれども、民間でできるところとか、本当に政府がやることに効果があるところはどういうところなのか、こういったことを見極めていくことが大事で、私はやはりEBPM、エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキングをもっと財務省からしっかりと取り組んで、できるだけデータで確認していくということをやりながら、賢い歳出、賢い支出を実現していくことが今後の長期的な日本の財政の健全化と日本の発展を考える上でもとても大事なのではないかなと思っております。それが1つ目でございます。
 2つ目は、今の点とも関連するんですが、社会保障改革をしっかり進めていくということがとても今大事だと思っております。今回の予算でも多少進んでいるわけでございますけれども、やはり医療提供体制が本当に今国民の目の前にいろいろな問題点が見えてきているわけでございます。こういったタイミングを生かして、しっかりと社会保障改革に取り組んでいただけないかなと思っております。実はNIRA総合研究開発機構というところで、私もプロジェクトに関わって、今回の10月からの高齢者の医療負担増について、どう受け止めるかということを世代を広くとってアンケートをとったんですけれども、約6割の方が賛成でございました。もちろん反対されている方もいらっしゃいますけれども、共通する大きな認識は3つございまして、1つはやはり医療費、このままだと医療保険で持続可能なのかとすごく懸念をしている一般の方が多いということ、2つ目は、医療費って無駄な部分が多いんじゃないかという疑問を持っている方が多いということ、もう一つは、年齢で切ってやるというよりも、少し応能負担的な考え方というのを考えていく必要があるんじゃないかということでした。応能負担といっても、今回の後期高齢者の、200万円という所得だけしか見ていなくて、金融資産を見ていないとか、いろいろな課題があるんですけれども、多くの人が不安を持っていて、改革については必要だという潜在的な意識はあるということがわかったので、どういうふうにうまく負担の分かち合いを進めていくかをしっかり考えながらこの問題を進めていただくことがとても大事になってくるんじゃないかなと思っています。国民とどういうふうに向き合っていくかという広報の在り方とかも含めて、しっかりと取り組んでいただきたいなと思っています。
 最後、3点目ですが、今までもいろいろ議論が出たんだろうと思いますが、ウクライナの情勢とか、今のインフレの状況、原油高ということで世界経済が大きく変わろうとしてきています。そういった意味で大きな局面の変化だと思います。その意味で、恐らくこれから防衛費とか、こういったことの議論も出てくるんだろうと思うんですけれども、当面、よく金融市場などもウォッチして、しっかりと財政運営をしていくことは大事だと思っています。公的債務の残高がこれだけ日本の場合は大きくなっておりますので、金融市場不安が出たときに曲がりなりにも持続可能性に対して、日本の公的債務、持続可能性についてマーケットから不安を持たれないようにしていく発信というのがとても大事なんじゃないかと思っております。それから、また申し上げて恐縮なんですけれども、大学ファンドが運用を始めるという状況で、非常に難しい局面で始まるということについて、また、しっかり大学に対しても効果のある政策にならなければいけませんし、そもそも運用自体もしっかりとやっていかないと、そもそも政策が打てないというような状況でございます。この辺り、しっかりモニタリングをしていただくということも加えまして、特に金融市場の大きな変化に備えていっていただきたいと思っております。
 以上です。

○吉野座長  
 翁委員、どうもありがとうございました。
 それでは、最後に私も幾つかコメントさせていただきたいと思います。
 今日の中にはあまりなかった点としては、ロシアのルーブルが大分格下げになって、ルーブルの国債が下がってきて、その中で先ほど皆様からもございましたが、日本の国債市場の安定性の維持というのは非常に重要だと思います。特に短期国債は外国人の保有が増えておりますので、その資金の流れが変に国債市場に影響を及ばないということが一つ重要ではないかと思います。
 もう一つは、為替市場に対して、円に対してどういう形でこれから影響が出てくるか、それがアジアの様々な通貨にどう影響するか、まさに国際金融市場の安定性というのが重要な点であると思います。これらは理財局や国際局に関係すると思いますけれども、ぜひそこのウォッチをし、それから、翁委員からありましたように、市場に不安がないようにしていただくということも重要だと思います。
 皆様からの御意見ですけれども、コロナ対策のPDCAの効果をしっかり見ていただくということはぜひ必要だと思います。
 それから、デフレ経済からインフレになると、これから歳出に関してもインフレになってくると思います。大きなレジームチェンジ、これに対して財務省が対応していかなくてはいけないというふうに思います。
 また、江川委員からございました1人当たりで見るという、これも重要でありますが、もう一つ重要なのは、「働いている人の数」で割るのか、「全人口」で割るかによって全然見え方が違ってまいります。1人当たりを見るときは、例えば国債残高も、税で返していく人は働いている人が主ですから、その場合には「働いている人口」で割るという形にしていただければと思います。それから様々なデータを用いて、きちんと検証できる体制を整えていくと。国税庁はこれまで集められたデータをある程度外で使えるように今工夫されておられますけれども、同じように、いろいろなデータを使って将来のシミュレーションを学者にやってもらうことができると思います。同様に、コロナ全体でどういう対策が打たれたか、これも山本委員からありましたけれども、その全体像として、どのようにミクロ・マクロで影響してきたか、こういうのは財総研などで学者の人たちの研究を募っていただいて、様々な研究をしていただくことも可能ではないかと思います。
 最後は、財政のプライマリーバランスですけれども、今からでもできることは、今後様々な財政支出の増加が必要なときは必ず歳入、どこからその財源を取ってくるかということを今からでもすぐできると思います。歳出が増えるときには、この部分はこの歳入から取ってくるという形で、必ず歳入と歳出の増加の部分をタイアップさせると。さらに、過去のところに関してはこういう歳入のところで充てていくというような形で、財政の将来の信頼性をつくっていただきたいと思います。
 それでは、様々な御意見、非常に貴重な御意見をいただきましたので、ただいまの皆様の御意見に関しまして財務省・国税庁の側から発言をいただきたいと思います。まず最初に、水口政策立案総括審議官からお願いいたします。

○水口政策立案総括審議官  
 皆様、大変貴重な御意見をいただきまして本当にありがとうございました。私のほうから何点か、補足という形でお話しできればと思います。
 1点目は、秋池委員、田辺委員、その他の委員の方々からもお話がございましたが、データを分析、利用して行政事務を実施していくという点についてでございます。政策評価に関しましても、現在、政策評価を所掌する総務省の審議会等において政策評価の改善に向けた取組の検討が行われているところであり、また、いわゆるアジャイル型の政策形成・評価の検討を政府全体で今後進めていくことになっておりますので、財務省は来年、次期の政策評価基本計画を策定する予定ですが、その過程で総務省等ともよく連携しながら対応していきたいと考えております。
 また、吉野座長からもお話ございましたが、財務省が保有する行政データをどう利活用するかという点につきましては、先ほど税関のAIモデル開発について少し申し上げましたが、座長も触れておられたように、税務データ、またさらには輸出入申告データなどについてアカデミアの方々と共同で研究しながら、財務省の税財政政策等に利活用していこうという施策を現在進めているところでございます。
 デジタル化につきまして、秋池委員から職員の働き方改革に関連する御指摘をいただきました。対外的な行政サービスのデジタル化にとどまらず、財務省の業務改革の文脈においても、例えば、テレワーク環境の拡充、研修のオンライン化、さらにはRPAの導入など、そういう意味で財務省における働き方改革においても、しっかりとデジタル技術を活用しているところでございます。
 山本委員から「財務省の使命」の評価に関する問題提起をいただきました。財務省の使命は5ページのスライドの一番上にございますが、その「財務省の使命」に基づきまして財務省は総合目標並び政策目標を定め、政策評価を実施することとしており、また、それらの総合目標並び政策目標の中に定性的もしくは定量的評価、なるべく定量的評価を取り入れるように工夫しておりますが、それぞれの具体的な目標の評価を通じて「財務省の使命」については確認されていると現在考えておりますが、来年策定予定の基本計画及び実施計画の中でどのような工夫ができるかについては引き続き考えてまいりたいと思います。
 最後に、コロナ対策の効果・検証につきまして、吉野座長からもお話がございましたし、山本委員からは総合評価を実施してはどうかという御示唆がございました。現在の財務省の政策評価はいわゆる目標管理型の毎年の実績評価の方式で実施してございます。総合評価という手法は、政策決定から一定期間経過した後に特定のテーマについて様々な角度から深掘りして分析等を行おうという評価手法でございますが、現時点でコロナの感染状況については、依然として収束していないという状況にございます。さらに、コロナ対策を含む各施策の効果・検証という意味では、財政当局としては、まずは予算の執行責任を有する各府省庁においてしっかり検証していただくということが重要であると思いますが、先ほどお話ございました会計検査院の決算検査報告の他に、予算編成時における各省庁の政策評価効果の適切な利用、さらには財務省自身が行う予算執行調査や、各府省庁が行う行政事業レビューという取組もございます。そのような様々な取組を通じて、しっかりと見ていくということではないかと考えております。
 以上でございます。

○吉野座長  
 どうもありがとうございます。
 それでは、坂本主計局次長から、お答えいただければと思います。お願いいたします。

○坂本主計局次長  
 大変貴重な御意見ありがとうございました。主計局次長の坂本でございます。本日は主計局長の茶谷が参議院の予算委員会に呼ばれておりまして、代理で私、お答えいたします。
 財政関係、様々な貴重な御指摘いただきまして、1つはコロナ予算の関係で多々御指摘をいただきました。1つは検証という話で、今、水口から説明のあったとおりでございますけれども、非常に巨額の予算にもかかわらず、検証が十分できていないという御指摘、まさにそのとおりでございまして、ある種、先が見えない中で大胆に、例えば政策金融のようにある種、安心してもらうためにしっかり政策金融が機能を果たせるように大きな予算を組んであって、それは結果的に繰り越しをなされてというふうな形で来ていることもあって、77兆のうち、なかなか現時点で検証というのは難しいというのが実情だと思います。現在進行でまだコロナとの闘いが進んでいることもあって、少しお時間をいただくかもしれませんが、これだけ大きな予算でございますので、しっかり検証をしていく必要があると考えてございます。
 そしてまたコロナの予算について、ある種無駄も多かったのではないかという御指摘と、ありがたかったという御指摘、両方ございました。まさに先の見えない中で国民の方々の不安に寄り添うということで、予算というのは通常、必要かつ十分というところを狙って編成するわけですけれども、今回特にコロナの初期対応においては必要かどうかという精査よりも、むしろ十分なものかどうかという観点に立って、万全というキーワードのもとで予算編成をした面があって、その結果として要件を十分かつ必要な対象に絞り込むということをしていないものもあったほか、チェック体制が不十分な中で不正受給を誘引してしまったなど、様々なことが起こったんだと思います。先ほど申し上げた検証をしっかりいたしますとともに、伊藤委員のお話のように、危機対応なので万全の対応をしなきゃいけないという話が、本来10年に一度とか100年に一度みたいな話が10年に数回あるという状況になっていて、毎年のように危機対応ということになるので、恐らく危機対応そのものをそれなりに効率的にやっていくということをしていかないと、これからの財政運営はできないんだろうと思いますので、検証作業を通じて今後起きてくる危機対応をもう少し上手にやっていくための知恵を出していく必要があります。
 また、コロナについて、危機モードから長期戦モードに移りつつあるという御指摘、これも全くそのとおりだと思います。いわゆる今までの事業のもとで、赤字が出るから補填するという現状固定型の予算から、ポストコロナも見据えた経営革新といったものを応援していく形に例えば予算をシフトしていく等々の長期戦型の支援に、この補正予算から徐々にシフトはしてございますが、そこはしっかり進めていく必要があると思います。
 また、コロナの関係では、最後、コロナが収束した後に、100兆円を超えるようなコロナ対策費の債務の償還をどうするんだという御指摘がありました。これはまさにコロナが収束したところで、そのときの経済財政状況を見据えてですけれども、今回つくり上げた債務、あるいは従来ある債務を含めた巨額の債務を歳出歳入両面の改革でどう償還していくかということについて、そのときの状況に応じて議論していかなきゃいけないということかと思います。
 それから、コロナ以外の話では、1つは成長と分配の好循環という話は、税制にのみ特記されているけれども、財政でもその話があるだろうという話は全くおっしゃるとおりでございまして、お話がございましたように、看護・介護等の方々の処遇改善というのは今回の予算でビルトインしてございますし、そのほか、人材育成といったようなところ、成長と分配の分配にも力点を置くという観点から様々な予算が既に補正予算以降、計上されているわけですけれども、当然これもプライマリーバランス、財政健全化目標と整合的な形で実施していくということが必要でございますので、例えば介護・看護の方々の処遇改善にかかる経費については診療報酬改定等の中で、本来であれば、ほかも少し充実させたいと思うところを我慢する、あるいは改革をして財源を捻出するという形で既に取り組み始めておりますけれども、分配のために予算が大幅に膨れ上がって、PB目標の達成が困難になるというようなことがないようには当然取り組んでいかなければならないと思ってございます。
 また、コロナ禍で明らかになった医療提供体制の問題等、社会保障改革に取り組むべきというお話がございました。全くおっしゃるとおりでございまして、日本は非常に医療提供体制は恵まれているとされていたはずなのに、今回のコロナで、結局、医療資源というものが非常に分散されていて、重度の高い医療提供において不備があったことが明らかになったわけでございます。これはもともと2010年来から議論していた地域医療構想について、進めるべきだった改革が必ずしも進んでいなかったことの、いわばツケが回ってきたという現象でもあるわけでございまして、この課題にしっかり取り組むことで平時の効率的な医療提供体制を実現しますとともに、有事にも強い体制をつくっていくことが重要だろうと思いますし、この件に限らず社会保障改革全般への取組は重要と考えてございます。
 最後に、財政健全化を考える上で、統計の信頼性という問題もある中で、やや楽観的なシナリオに基づいたシナリオを考えるだけではなくて、悲観的なシナリオに基づいた予算編成が重要であるという御指摘がございました。全くおっしゃるとおりだと思います。今回の総合目標の検証・反映という中で使っております中長期の財政試算でございますけれども、御指摘のとおり、非常に高い成長率を前提にしているということでございますので、中長期試算そのものの中に悲観的な経済成長に基づくシナリオも出ています。それに加えまして、中長期試算におきましては、2%成長という高い成長が継続するということに加えて、来年度以降は補正予算を1円も組まなくて済むというような前提でやっています。でき上がったシナリオ自体は、あたかも2025年の財政健全化目標の達成ができますということが書いてあるように見えるんですが、前提となっている経済前提とか財政前提をよく精査していくと、それは去年とか今年やっているような財政運営とは相当違った、かなり保守的な財政運営をしないと2025年のプライマリーバランスの達成はできないということを逆に言うと言っているわけでございまして、そこのところを、表の数字だけでは見えないインプリケーションというものを、これは我々がしっかり伝えていかなければいけないと思ってございます。
 最後にもう1点、広報に関する話になってくると思いますが、どうも財政健全化についてのいわば経済論争というのがある中で、財政の危機的状況というものがしっかり国民の方々に伝わっていないんじゃないか、あるいはプライマリーバランス、国と地方を合わせたという概念がよく分からないんじゃないかという御指摘がございました。そのとおりであると思います。諸外国、全ての国の中で日本の債務残高対GDP比が最も高いというファクトでございますとか、国・地方と国の一般会計はどういう関係にあるのかといった点について、国民の方々が味方についていただかないと財政健全化は進められませんので、しっかりとした分かりやすい広報ということにもう一段努めてまいりたいと思います。
 長くなりましたが、以上でございます。

○吉野座長  
 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして住澤主税局長、お願いいたします。

○住澤主税局長  
 ありがとうございます。
 総合目標2の関係で、何人かの先生方からコメントをいただきました。資料で言いますと7ページの税制調査会へ昨年11月に総理からいただいた諮問の内容を今回総合目標2に反映をしている点について、秋池委員、秋山委員、伊藤委員ほかからのコメントをいただいたわけですが、いずれのコメントも大変貴重な御示唆ですし、ごもっともなコメントだなというふうにお聞きしたところでございます。今回の諮問、下段の文章を見ていただきますと、「成長と分配の好循環を実現するとともに、コロナ後の新しい社会を開拓していくことをコンセプトとして、新しい資本主義を目指していく」と。こうした観点から云々という格好になっておりまして、政府全体としての経済財政政策、全体の方針というのを明示された上で、こういった観点から税制としての果たすべき役割、あるいは今後の在り方というものを検討していくという構造になっているんだろうというふうに受け止めておりまして、この全てを税制で実現するといったようなものでは当然ないんだろうというふうに考えております。そういう意味では、総合目標のさらにもっと上の政府全体の経済財政政策の在り方というのがここに表されていて、それが諮問文に入ってきて、この総合目標2に反映させていただいているという位置づけだと考えております。その際、諮問文の中にもございますが、人口減少はもとより、働き方、ライフコースの多様化、グローバル化の進展、経済のデジタル化等の構造変化への対応ということについて、これについてはこれまでも政府税調等の場で御議論いただいてきたテーマではございますけれども、こういった変化に対応した税制の在り方ということを検討し、改正を行っていくということがすなわち成長の分配の好循環をはじめ、何らか今後の日本経済社会の望ましい在り方につながっていくということになるのではないかと考えております。もとより、成長と分配の好循環とか、新しい資本主義というコンセプト自体、現在新しい資本主義実現会議の中で、何人かの先生も御参加いただいておりますが、検討されている最中ということで、アプリオリにその内容が決まっているわけではございませんが、その実現会議の場でありますとか、あるいは政府税調の場においても様々なコロナの状況を経てどういった構造変化がさらに生じているのか、それに対応した望ましい税制の在り方というのはどういうものなのかということを、実情を丁寧に把握していただきながら御議論いただいて、さらにその検討を進めていくということが必要なのではないかというふうに考えております。
 また、財政との関係につきましても、総合目標の中でも、あるいはこの諮問文の中でも、財政健全化の達成ということは引き続き掲げさせていただいておりますので、そういった面も含めて検討していく必要があるのではないかというふうに感じております。
 以上でございます。

○吉野座長  
 ありがとうございます。
 それでは、引き続きまして三村国際局長、お願いいたします。 

○三村国際局長  
 恐れ入ります。吉野座長はじめ、何人かの委員の方々からウクライナの話がございましたので、ウクライナ担当局長として幾つか申し上げたいと思います。
 マーケット、経済への影響の話の前に、まずはウクライナの問題と財務省の施策との関わり合いについて申し上げます。御承知の方も多いかと存じますが、財務省国際局はまさしくウクライナ問題の当事者中の当事者でございまして、足元、世間で取りざたされているSWIFTから排除される銀行の資産凍結や、中央銀行への制裁措置といった一連の金融制裁は、全て外為法に基づいて実施しておりますので、文字どおり財務省が担当となっております。今回の政策評価の中でも、国際局のここ数年の取組として、様々な安全保障関係、経済安全保障関係の取組を掲げさせていただいております。従来の国際局の取組は、どちらかといいますとマネロン対策や外為法による国の安全等を損なうおそれのある技術の保護など、やや中長期的に効果を発揮する、いわば構造改革的な意味での経済安全保障の取組でした。一方、眼下の対応はむしろ緊急対応的な施策であり、我々がここ数年重要な業務として取り組んできた安全保障、経済安全保障が、足元でますますクローズアップされる状況になっております。
 その上で、御指摘もございましたが、今後ロシアへの制裁が、インフレをはじめ経済社会に及ぼす影響をどのように考えるかが、どのように制裁を打っていくのかということにも関わってまいります。影響には、大きく言って3つあると考えており、第1に、足元のエネルギー価格、資源の問題と当然密接な関係があると思います。第2に、金融市場、資本市場を介しての影響があると思います。第3に、エネルギーも一部関係しますが、サプライチェーンを介した影響があると思います。第1の点、エネルギー価格の足元の状況は言うに及ばずでございます。第2の金融市場への影響については、先ほど吉野座長からもご発言がありましたが、制裁を表明してから、ルーブルはそれまでの1ドル80ルーブル前後から一時1ドル160ルーブルまで下落し、現在はまた1ドル130ルーブル台周辺と承知しています。いずれにしても、価格がほとんど半分まで下落する状況になっております。他にも、債券の格下げもなされておりますし、先週の月曜日以来、株式市場が閉鎖状態です。こうした状況を受けて、足元の為替市場では、もちろんいろいろな要因はありつつ、ドルや円などのリスクムードが高まったときのリスクオフの避難先になる通貨はどちらかというと買われ、また、資源国の通貨も買われ、それ以外の通貨はどちらかというと逆になっているとの認識ですが、そうしたいろいろなマーケットの動きが発生しております。
 第3のサプライチェーンとも関係しますが、御承知のとおり、ロシアはエネルギー資源はもとより、パラジウムをはじめレアメタル、レアアース類についても世界有数の産地でございます。また、穀物などについても有数の産地でございます。ウクライナも同様であり、穀物や、半導体や自動車などの製造に欠かせない物資の中には、両国合わせて数十%単位の世界シェアを占めているものもございます。当然、ロシアも制裁を受けて黙って手をこまねいているわけではなく、非友好国に対して場合によっては輸出入を制限、禁止する大統領令も発出されましたので、近々、この国に対してこういう物資の輸出入を止めるというようなリストが出てくるだろうと思います。このように、エネルギーやサプライチェーンを通じた影響は、目が離せない非常に厳しい状況でございます。
 制裁を担当している立場として極めて悩ましいのは、金融市場も含め全く影響がないことは、端的に言って制裁が全然効いていないことを意味するため、これはこれでいかがなものかと思いますが、一方、不測の影響を与えてもいけないため、まさに我々も日々、文字どおり毎日毎日悩んでおります。いかに相手への効果を最大化し、一方でいかに我々側の経済社会活動への影響を最小化できるか、何とかこのバランスをとらなければいけない中で、残念ながら完璧な解はありませんが、制裁の中身を工夫することでバランスをとることも考えられますし、エネルギーやサプライチェーン、金融市場を通じた影響等について、別途様々な施策で対応することも考えられます。そのバランスをとりつつどう対応していくか、我々国際局としても日々悩んでおりますけれども、当然全ての省庁に関わる話ですので、日々関係省庁みんなで頭を悩ませながら、ただ、悩んでいるだけではいけませんので、日々状況が変わる中、スピードも重要でありますので、極めてスピード感を持ちながら対応しています。
 私からは以上であります。

○吉野座長  
 どうもありがとうございました。
 それでは、日置国税庁審議官、お願いいたします。

○日置国税庁審議官  
 委員の皆様方には、貴重なご意見を承りましてどうもありがとうございました。
 田辺委員から、財務省の行政のデジタル化に関して、利用者利便性や事務の効率化の向上といったお話がございました。
 国税庁では、令和3年、去年の6月ですけれども、「納税者の利便性の向上」と「課税・徴収の効率化・高度化」、この2本を柱とする「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション‐税務行政の将来像2.0‐」というものを公表しております。これに続きまして昨年12月には、これを具体的に実施していく「構想の実現に向けた工程表」というものを公表しているところでございます。今後とも引き続き、税務行政のデジタル・トランスフォーメーション、デジタル化について一層の推進を行っていきたいと思っております。
 また、AI、ビックデータの活用についてのお話もございました。国税庁におきましては、調査・徴収において、依然として書面により行っている部分も多いのですけれども、デジタルを活用すれば、より一層効率的に、高度な業務ができると考えております。
 様々、膨大な情報の中から必要なデータを抽出し、加工・分析するということで、委員のご指摘にもありましたけれども、申告漏れの可能性の高い納税者の特定、あるいは滞納している方々への効率的な接触ということを図っていく方針としております。中長期的になるとは思いますけれども、AI、機械学習の活用によってビックデータを活用して、更なる効率化・高度化に努めてまいりたいと考えています。
 私からは以上です。ありがとうございました。

○吉野座長  
 どうもありがとうございます。
 それでは、最後に矢野事務次官から、お願いいたします。

○矢野事務次官  
 矢野です。今日は貴重な御意見をいろいろとありがとうございました。
 各次長、局長、審議官、縷々お答えをさせていただいたとおりですけれども、漠としたことだけ私から少し申し上げさせていただきたいんですけれども、多くの先生方からありましたコロナ対策、財政規律ということですけれども、本当に漠としたことを申し上げますと、先進国の中で、なかんずくG7、あるいはG5、先進国の中の先進国の中で、日本だけが財源のめどなきコロナ対策を行っていると。これは1年間ずれがあります。ほかの先進国のほうが圧倒的に感染状況がひどかったのにというのも上につきます。そういう意味では、財政当局としては非常に反省をしていかなければいけないというのが根っこにあります。その上で、これも御指摘を多々いただきましたけれども、そもそも対策自体がワイズスペンディングであったのかということにつきましては、ちょっと自分の反省を込めて申しますけれども、そもそもEBPMとか事後検証に行く前に、どこから浮かんできたかはさておき、アイデアについて、そんなことしていいのかという話もたくさんございました。それは検証しなくても、あるいは統計データを類推して持ってこなくても、ちょっと理性と知性を働かせれば、あり得ないだろうということもあったのに、やってしまったという反省があります。EBPM以前の問題だったということがあると私は反省しています。それに加えて、今御指摘ありましたように事後的な意味でのEBPM、あるいはPDCAを、これだけ大きな予算でしたので、やっぱりしっかりやらなきゃいけないなというのがあると思います。
 そしてまた、対策自体というよりも、中期的な財政のサステナビリティとの兼ね合いがどうだったのかという中期的な目線でいきますと、明らかにサステナビリティに対しては符号が逆といいますか、ネガティブ評価にならざるを、これが事実上C評価しかあり得ない、B評価以上の評価がつけられなかったゆえんでもありますけれども、そこの部分についてどう考えるかということからしますと、対応すべき方途としては、新しい対応策、あるいは非常時の対応策が必要だったわけですけれども、必要であるならば、同時は無理としても、中期的には、御指摘もありましたけれども、スクラップを立ててビルド、マストの、不可避のビルドをやる、スクラップを立てる、あるいはスクラップが言うは易しでできないのであれば、ペイしてもらってゴーする、ゴーが先になりますけれども、ペイゴーでいく、どっちかしかないんだと思います。スクラップを立てるか、ペイを求めるかというのが中期的な方途としてあると思いますので、財政の持続可能性との兼ね合いでいくと、そういう反省があると思います。
 その他、コロナ以外にもいろいろな新規行政ニーズということが緊急性を持って語られる部分がありますけれども、それらについてもある意味同じことで、本当に必要で本当に不可避のものであるかどうかということもさることながら、本当に必要で本当に不可避のものであればスクラップ・アンド・ビルド、あるいはペイゴーでいくということを言わない限り、財政規律との両立は成り立ちませんので、そこをやっぱり我々としてはしっかり見失わないように、必要だからしようがないとか、非常時だからしようがないとか、そんなことを言っているのは日本だけですので、そこは猛省をしなきゃいけないと思っております。
 新規行政ニーズという意味では、その中の一つに分配、各委員からも御指摘をいただきました、あるいは御心配もいただきましたけれども、分配に傾注してばらまきになるんじゃないかみたいなこともいろいろいただきました。ある意味、分配政策って、定義がまだ固まっていませんので、民の中で行われる分配なのか、公の行政セクターを経由した分配になるのか、それ自体がまだ見定まっておりませんけれども、少なくとも将来世代から有無を言わせず負担をさせて現世代に分配するということはしないようにしなきゃいけないと思っております。
 あと、ウクライナのこともありますし、ウクライナのことがなくてもそうですけれども、国際マーケット、あるいは広い意味での市場の動き、きちんと注視していかないと、日本の国内だけではなくて、ヨーロッパもアメリカも大きく動いていますし、それが日本にも直結しかねない状況になってきていますので、国際市場を中心として、我々としてはいつまでも平時でいられるかどうかというところもきちんと見ていかなきゃいけないということは、座長からも御指摘ありましたけれども、しっかりウォッチしていきたい、注視していきたいと思っています。
 最後に、さらに漠としたことを申し上げて恐縮ですけれども、財務省といたしましては、長らくこの懇談会でいろいろと御指摘を頂戴して行政に反映させていただく、生かさせていただくということをやってきたわけですけれども、この3年、4年、不祥事の後の財務省再生という、新しいといいますか、恥ずかしいといいますか、そのフェーズの中でも、省内の上意下達ではなくて、下からの意見もしっかり活性化して取り込むということもあるし、それから心ある有識者の外からのアドバイスにしっかり耳を傾けていくということも、その3つのベクトルがあって、誤りなく、より正しい行政ができると思っていますので、今後ともぜひ御指導のほど、よろしくお願いいたします。
 ちょっと長くなっちゃいましたが、以上です。ありがとうございました。

○吉野座長  
 矢野事務次官、どうもありがとうございました。
 それから、委員の先生方から非常に貴重な御意見をありがとうございました。
 コロナでこれだけ大変になった財政に、さらにこれにウクライナ危機が舞って入ってしまいまして、恐らく金融市場への影響も大きいと思います。財務省の方々におかれましては、今日の御意見も踏まえ、市場、それから石油価格の状況、こういうものを踏まえて、日本に危機が来ないように、ぜひ対応をよろしくお願いしたいと思っております。
 今後の懇談会でございますけれども、通例ですと6月頃に開催予定でございます。議事内容としましては、財務省の令和3年度の政策評価書及び国税庁の令和4事務年度の実績評価実施計画、これを予定しております。議題や具体的な開催日時につきましては、改めて事務局から御連絡させていただきます。
 本日も皆様から非常に貴重な御意見をありがとうございました。今日の懇談会の議事内容につきましては、各委員に御確認をいただいた上、財務省のウェブサイトで公表を予定しております。
 それでは、これをもちまして本日の第73回財務省政策評価懇談会を閉会させていただきます。どうもありがとうございました。


──了──