1日時 令和3年6月14日(月)15:00~16:45
2場所WEB会議(財務省第3特別会議室を含む)
3出席者(懇談会メンバー)
秋池玲子 |
ボストン コンサルティング グループ |
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秋山咲恵 |
株式会社サキコーポレーションファウンダー |
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伊藤元重 |
学習院大学国際社会科学部教授 |
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江川 雅子 |
一橋大学経営管理研究科 特任教授 |
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翁百合 |
株式会社日本総合研究所理事長 |
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小林喜光 |
株式会社三菱ケミカルホールディングス取締役会長 |
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角和夫 |
阪急電鉄株式会社代表取締役会長 |
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田中直毅 |
国際公共政策研究センター理事長 |
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田辺国昭 |
国立社会保障・人口問題研究所所長 |
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冨山和彦 |
株式会社経営共創基盤(IGPI)IGPIグループ会長 |
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山本清 |
鎌倉女子大学教授、東京大学名誉教授 |
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座長吉野直行 |
慶應義塾大学名誉教授、金融庁金融研究センター長 |
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(敬称略、五十音順) |
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(財務省) 太田事務次官、茶谷官房長、新川総括審議官、矢野主計局長、住澤主税局長、小宮関税局審議官、大鹿理財局長 |
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(国税庁) 可部長官、小宮審議官、椎谷監督評価官室長 |
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(事務局) 藤本政策立案総括審議官、大森政策評価室長 |
4議題
(1)令和2年度財務省政策評価(案)について
(2)令和3事務年度国税庁実績評価実施計画等(案)について
5議事録
それでは、3時になりましたので、ただいまから財務省政策評価懇談会を開催させていただきたいと思います。
今日は伊藤委員と小林委員が少し遅れて来られるということでございますけども、時間になりましたので始めさせていただきたいと思います。
新型コロナウイルス感染症の感染予防のために、委員の皆様方にはリモートのウェブ会議とさせていただいております。音声が聞こえにくいなど、何らかのトラブルがございましたら、事務局まで御連絡いただきたいと思います。
それでは、早速議題に入らせていただきたいと思います。
議題は、財務省の令和2年度の政策評価書及び国税庁の令和3事務年度の実績評価実施計画の2つであります。これを一括いたしまして藤本政策立案総括審議官から説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○藤本政策立案総括審議官
それでは、資料番号1「令和2年度財務省政策評価(案)の概要」と題しました資料に沿って御説明いたします。
資料の右下に通しでページ番号を付しております。ページ番号では3ページからとなります。
4ページでは、令和2年度における財務省の「政策の目標」の体系図に目標ごとの評定を括弧書きで付記しております。
5ページからは目標ごとの評定結果を前年度と比較した一覧となっております。前年度から評価が上がったものに青く、下がったものに赤く色づけをしております。それぞれ理由につきましては後ほど説明させていただきます。
8ページを御覧ください。評定ごとの集計結果です。令和2年度においてはSが18、Aが7、Bが4、Cが1となっております。
9ページからは、評定が前年度より低くなった目標につきまして、その理由でございます。まず、総合目標1につきましては、令和3年度予算については、歳出改善の取組を継続し、財政健全化に向けた取組を着実に進め、社会保障制度の基盤強化を進めましたが、新型コロナウイルス感染症の影響もあり我が国の財政状況が大幅に悪化したことから、評定を「C 目標に向かっていない」としております。もっとも、新型コロナウイルス感染症は事前に予期することが困難なやむを得ない事情であり、それへの対応については万全を期す必要があったことに留意する必要があります。
10ページを御覧ください。総合目標6につきましては、総合目標1で申し上げた状況を総合的に勘案し、評定は「B 進展が大きくない」としました。
11ページから13ページにおきましても、政策目標1-1、1-2及び1-5につきまして、各目標の取組について必要な措置を行っているものの、総合目標と同様に、我が国の財政状況に鑑み、評定は「B 進展が大きくない」としました。
14ページは、評定が前年度より高くなった目標につきまして、その理由でございます。政策目標6-1につきましては、測定指標、IMFによるサーベイランスの実施状況について、昨年度は目標値を達成できませんでしたが、令和2年度は目標値を達成しました。全ての施策に目標達成であることから、評定は「S 目標達成」としました。
15ページを御覧ください。15ページ以降に財務省のデジタル化への取組をまとめております。オンラインを活用した情報発信、行政手続の電子化、5G基地局の整備などへの国有財産の活用等を内容としております。
以上が「令和2年度財務省政策評価」の説明となります。
続きまして、「令和3事務年度国税庁実績評価実施計画等」について御説明いたします。
19ページを御覧ください。「実施計画の概要」です。今回の実施計画は、デジタル化の推進を踏まえ実績目標を新たに設定し、デジタル化に関する新しい施策及び既存の施策を集約しました。また、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、取組を多角的かつ適切に評価できるよう、測定指標の追加または見直しを行いました。次の21ページの「国税庁の使命」と「実績目標等」の体系図は、実績目標(小)を1つ、業績目標を2つ新設いたしました。赤い枠で囲っております。
22ページの「各目標の施策等一覧」を御覧ください。施策数及び定量的・定性的な測定指標数はいずれも増加しております。内容につきましては25ページからで御説明いたします。
25ページを御覧ください。「目標・施策・測定指標」の主な変更点でございます。実績目標(小)1-2「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション」を新設し、その下に「オンラインによる税務手続の推進」と、「デジタルの活用による業務の効率化・高度化」の業績目標を新設いたしました。それらの下に「e-Taxの利用状況」など、既存のデジタル関連の施策及び測定指標を集約するとともに、「利用者目線に立った情報提供」や「内部事務のセンター化の推進」などの施策及び測定指標を新設しました。
27ページを御覧ください。目標の達成度の適正な評価や取組の多角的な評価に資するよう「確定申告の広報に関する評価」、「調査関係事務に占める深度ある調査に係る事務の割合」、「効果的・効率的な調査事務運営の推進」及び「効果的・効率的な滞納整理の実施」といった5つの測定指標を新設しました。
28ページを御覧ください。政府の方針及び新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえ、施策の取組内容を見直し、測定指標「日本産酒類の輸出促進のための新規販路の開拓支援」を変更いたしました。
29ページを御覧ください。過去の実績値等を踏まえ「e-Taxの利用状況」などの目標値を見直しました。
30ページを御覧ください。新型コロナウイルス感染症の影響度合いが不明瞭なため、令和2事務年度の目標値を据え置いている主な定量的測定指標の一覧です。これらの指標をはじめ、今後の感染症の状況によっては評価値における測定指標としての取扱いを変更する可能性があることを御理解いただきたいと思います。
最後に、31ページを御覧ください。施策、指標数の推移ですが、説明した内容を反映しますと、前年度比で施策は4増、定量的指標は3増、定性的指標は6増、参考指標は12増となります。
以上で「令和3事務年度国税庁実績評価実施計画等」についての説明を終わります。
○吉野座長
御説明を簡潔にどうもありがとうございました。
それでは、いつものようにあいうえお順に委員の先生方から御意見を伺いたいと思います。指名された委員はミュートのボタンを解除していただきまして御発言をお願いいたしたいと思いますが、お一人当たり4分以内でお願いしたいと思います。
それでは最初に、秋池委員、お願いいたします。
○秋池委員
よろしくお願いいたします。
評価全体に異論はございません。今回とりわけ特徴的だったのは、最初の財政についての評価にCをおつけになったということだと思っております。財務省の評価の中でCが出てくることはあまりないと記憶しております。1つの刻みなんですが、AとBの間とBとCの間には非常に大きな違いがあるということを今回改めて実感しました。Bですと進展が大きくないということですけれども、Cは目標に向かっていないということで、方向性を失ったかのように聞こえる表現になっています。これは財務省が決めたことではなくて、政府全体で決めていること、政策評価の取組全体の中で決めていることだと思いますが、あえてこのような厳しい評価を自らおつけになったということは、それだけ今後の財政健全化に向けて気を引き締めておられるということなのだと解釈しております。したがいまして、今年は厳しい評価になったのですけれども、今後に向けての一歩を踏み出そうという心構えだろうと思っておりまして、これも色々な見方はあるかもしれないですが、今回、これをお選びになることについて異論はございません。
それから、もう1つ。国税庁では組織理念をおつくりになって、これが非常に大規模な取組で、長官が自らリードをなさって、2万人近い職員さんたちも参画しながらおつくりになったというふうに承っております。非常によい取組だと思っておりまして、こういうことがまた来年度も継続されていくように、そのことで一層いい形で皆様がお仕事に取り組んでくださるといいと感じるところです。
それから、最後になりますが、コロナ禍でなかなか通常どおりの業務ができなかったときの評価の在り方をどうすべきなのかということを前回などに申し上げたところがございましたけれども、今回、それを踏まえて保留にするものも含め、適切に評価をしてこられたのだと思います。残念ながら今年は結果として出てきてはいないのだけれども、この期間の中である種仕込んだことが来年度に実るということもあると思っておりますので、こちらについても継続的に、できないからと言って、職員さんが自分がやりたいことができなくて残念であるという思いもあろうかと思いますし、また、特別な御苦労もあろうかと、とりわけ前線に立っておられる方たちの御苦労というものもあると思うんですけれども、そういったものも含めてぜひ目配りをしていただきながら、いい形で来年度につながっていけばと思っております。
私からは以上です。
○吉野座長
どうもありがとうございました。引き続きまして、秋山委員、お願いいたします。
○秋山委員
秋山でございます。
私も、秋池委員と同じように、令和2年度の政策評価(案)に関しましては、新型コロナウイルスの影響による財政再建の後退、これは言わば政治の決定に従った結果とも言えるのですけれども、ここを厳しく評価されたということを大きなメッセージとして理解いたしました。この点に関連して、後ほどの結構ですのでお伺いしたい点がございます。資料では9ページ目になりますけれども、C評価をなぜつけたかという御説明の文章の最後のところですが、「新型コロナウイルス感染症は事前に予期することが困難なやむを得ない事情であり、それへの対応については万全を期す必要があったことに留意する必要があります。」という点につきまして、今後のためにという意味で、具体的にどのようなことを念頭に置かれているのかということを幹部の方にお伺いしたいと思います。
それから、今回の評価全般について、前回の懇談会で指摘の多かったデジタル化対応についても別途まとめていただきましてありがとうございます。さらに、国税庁の令和3事務年度計画にも目標として追加されたということは大変重要な変更であると思います。これは資料の21ページ目、国税庁資料の3ページ目になりますけれども、追加された目標に関して、「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション」という表現がされております。このDXという言葉は、今はかなりバズワードといいますか、各所で使われておりますが、国税庁においてデジタル・トランスフォーメーションをどのように定義しているのか、どのように取組をしているのかということが最も重要な点だと思います。ここに書かれております業績目標1-2-2においては「従来の慣行にとらわれることなく、」という文言がありますので、ここに大変大きな期待をしております。
この期待に関しての具体的な例を少し申し上げますけれども、現在、緊急事態宣言やまん防などで、飲食を中心とした事業者に対して時短営業の要請と併せて助成金が一律給付されております。デジタル化によって、事業者の所得情報をタイムリーに活用することによって、実際の影響度に応じた適切な助成金額を支給できるようにするということだったり、あるいは、当事者からの申請と、それを受けての行政側の審査を前提とした手続ではなく、プッシュ型の支給を可能とするということで、政府の政策実行のスピードが上がりますし、政策効果が即に実現できるということのみならず、政府に対する国民の信頼度を大きく向上することができると考えます。こういった取組に国税庁にリーダーシップを発揮していただけるといいなと期待をしております。これは個人についても同様のことが言えると思っておりまして、この1年間で経済環境の変化によって所得に大きな影響を受けたのは全体の20%というデータがあります。救済措置の対象となるべき人に対してピンポイントで措置を実施するということは、これはまさに健全な財政の確保に直結する問題ですし、災害時など予測不能な事態に見舞われて困窮する国民に迅速に支援を届けることもできるわけです。このあたりに関連して、国税庁のDXに期待することは大であるということを申し上げておきたいと思います。
以上です。
○吉野座長
どうもありがとうございました。
それでは、引き続きまして、江川委員、お願いいたします。
○江川委員
御説明どうもありがとうございました。3点申し上げたいと思います。
1点目は財政再建で、私はこの会議に出席するたびに財政再建に関しての危機感を申し上げておりました。今回、Cの評価をつけられたということを、今、私の前に発言されたほかの委員と同じように大きな驚きをもって受け止めました。それだけ危機感が強いということだと思います。民間企業ですと、こういう組織の評価が個人の人事評価に結びつくので、ちょっと心配したのですが、そういうことにはなっていないということなので、安堵いたしました。私はほかの省庁の政策評価にも関わったことがあるのですが、C評価というのは今まで見たことがないので、かなり異例なことだと思いますし、逆にこのことをしっかり公表するなりして、国民的議論をするためのきっかけにしていただきたいなと思っております。当然、新型コロナへの対応はしっかりやっていかなければいけないし、経済にもお金を回していかなければいけませんけれども、財政再建をしっかりやらないと、将来世代につけを回すことになるので、そこは議論をしていく必要があると思いますし、そのための情報共有ということはとても大切だと思います。
2点目は地方と国の関係です。政策目標1-5の中で、国・地方間の財政移転に関する適切な遂行ということで、今回はB評価になっているので、問題意識を持って取り組む御意向だと理解しています。新型コロナの問題1つを取っても、これは財務省だけではないですけれども、国と地方との関係がうまくいっていないということがあらわになりましたので、この辺はしっかり全部見直していただきたいと思います。大きな流れで言うと、地方分権が望ましいという議論が二、三十年前からあったのに、それが進まないまま人口も税収もどんどん東京に集中している。一方で、地方の実情に合わせた政策を行えないのは問題だと思います。いろいろな意味でバランスの取れた仕組みに変えていただきたいと思います。
3点目はデジタル化です。前回、デジタル化にフォーカスした政策評価のやり方を考えてほしいと申し上げて、そういう形で評価の仕方も組み替えていただきました。それから、秋山委員が指摘されたように、国税庁のほうでもかなり思い切った投資を行うと伺っています。私は打合せのときにこの内容を伺ったところ、主にバックオフィスの仕事を集中化するということだと理解しました。逆にそれが今まで行われていなかったということに驚きを感じた面はあるのですが、ぜひこれを機会に、それにとどまらず、本当の意味でDXを進めていただければと思います。それから、それでかなり効率化が進むと思いますので、適切な人材配置ということも考えていただければと思います。
以上です。
○吉野座長
どうもありがとうございました。
それでは、翁委員、お願いいたします。
○翁委員
私も、今回の政策評価、財政健全化についての危機感がCという形で表れているということは非常に重要なメッセージだと思っております。また、国税庁につきましての計画はかなりオンライン化、デジタル化ということに配意した内容となっておりまして、特に違和感はございません。
幾つか申し上げたいと思いますが、やはり、新型コロナによって、格差の問題も、日本でもK字回復とか、あと、株価の恩恵を受ける人とそうでない人ということで、セーフティーネットの再構築とともに、今後必要な歳入、財源をどういうふうに考えていくかということが重要な課題になってきているかなというふうに思っています。
それから、一方で、IMFの見通しを見ますと、日本経済の復活というのは、五、六年を見ますとあまりはかばかしくないことが見込まれていまして、やはり、今、一斉に5Gとか環境問題とかグリーン・デジタルという方向に、政府も若干サポートしながら、社会が変わっていく中でどういうふうにワイズスペンディングを考えていくかということも非常に重要な課題になってきていると思っております。その意味で、今後の財政再建をしながら、格差を是正しつつ財源を確保して、そして経済を復活させていくということに関しての財務省の役割というものは非常に重要になってきていると思っております。やはり、今後どういうふうに財源を確保していくかということに関しましては、金融所得課税、富裕層とかをどういうふうに考えていくのかとか、または一方で、勤労税額控除みたいなことをどういうふうに考えていくかということで、格差を是正しながらどういうふうに財源を確保していくかということが大事だと思っていますし、また、グローバルにはRace to the bottomの動きが少しG7の中では止まろうとしていますけれども、ニューノーマルに向けて、今までの消費税、所得税、法人税の考え方をどういうふうにタックスミックスを考えていくかというような骨太の議論が必要になってきているのかなというふうに思っております。
それから、最後になりますが、やはり、社会保障に関しては、今回の新型コロナで医療提供体制とかに非常に大きな課題が見つかってきていると思っています。これをどういうふうに質的に向上させるかとともに、社会保障の支出が大きくならないように抑制していくかということが、今回のことで随分国民の目にも明らかになりましたので、しっかりとこういう機会を捉えて議論をしていっていただきたいなというふうに思っております。
以上でございます。
○吉野座長
ありがとうございました。
引き続きまして、角委員、お願いいたします。
○角委員
よろしくお願いします。
皆さんがおっしゃっておりますように、やはり、総合目標1のAからCということが今回の圧倒的な特徴なんですけれども、入り口がちょっと変わりますが、今回のG7につきましては大成功だったというふうに思います。1つは民主主義国の結束が示せたこと。もう1点は台湾海峡危機が明記されたこと。これは言うまでもなくアメリカ大統領の体制が変わったということの影響が一番大きいと思いますけれども、いずれにいたしましても、台湾海峡危機が明記されました。この危機につきましては、1950年代に発生した(第一次・第二次)、これはまさに戦争ですから横に置きまして、1995年から1996年にかけた第三次台湾海峡危機と今回の危機では本質的に違います。それは、皆さん御承知のとおり、中国の軍事力の圧倒的な増強によるものであって、アメリカ1国では対応をしにくくなっているということだと思います。ということは、もちろんG7は大成功ではありますけれども、いずれ日本も台湾海峡危機等、こういったあたりの安全保障問題について応分の負担が求められることは自明であります。
それプラス、これもアメリカ大統領の交代による影響が大きかったと思いますが、2050年のカーボンニュートラルはアメリカも日本もきちんと手を挙げることができたということであります。
そして3点目は、言うまでもなく、団塊の世代がいよいよ75歳以降になっていきますので、2025年問題がもう目前に来ているということであります。
一方、前政権のときは当面消費税を10%より上げることはしないということを明言されまして、正直困ったなと思っていたのですけれども、それ以降、今申し上げた3点と新型コロナを考えますと、当時と状況は大きく変化をしておりますので、骨太の方針を年度内に、PB黒字化の年度目標を再確認する、ということが言われております。この3つのいわゆる財政負担が増えていくことについて、特に、カーボンニュートラルを達成するためのコスト、これはエネルギーミックスをどう考えるかで幾つかのパターンができると思いますけれども、それぞれのパターンについて、財政負担が幾らぐらいになるかということを国民にお示しいただいて、そういった財政負担が発生するんですよということを御理解いただく。あるいは、今回の新型コロナで生じた借金をどのように償還していくのかということも含めまして幅広い議論をしていただければというふうに思います。
ただ、そうはいいましても、秋の財政審の課題といたしましては、当面の社会保障の負担についての議論をしなければなりません。受益と負担のアンバランスはもう既に起きておりますけれども、今後加速することは明白であります。四、五年前から大きなリスクは共助、小さなリスクは自助ということがうたわれ続けてきておりますが、高齢者医療については改正されたところでありますので、これの負担をさらに求めるということは少し手がつけにくいと思いますので、介護と生活保護についてはこの秋にぜひ御議論を頂きたい。海外では、申し訳ないですけど、要支援ぐらいの程度の方であれば介護の対象にされていない国も多々あるように聞いております。したがいまして、要支援の方につきましては全て2割負担以上にしていただいて、かつ上限額の見直しもしていただければと。そして、家事支援が月に100回というふうな、ケアマネジャーは何をしているのかと思いますけども、そういうデータを以前に示していただいたこともありまして、この辺は厳格な対応をお願いしたいと思いますし、生活保護につきましても、医療費で2兆円かかっているわけですから、頻回受診、検査、投薬の問題についてのメスを入れていただければと思います。
そして、国税庁につきましては、業績目標1-2-1で、マイナンバー制度の普及、定着に向けた取組ということを明確に掲げていただきました。もちろん財務省が所管ではないということは理解をいたしますけれども、新型コロナを機に、今回、いろんなところで対応が遅れたり、いまだにワクチン接種の予約がなかなかしにくいとかいったようなこともありますが、そういったことで、DXを進めながら、そして、ぜひマイナンバーと全銀行口座をひもづけにするということを早期に目標に掲げていただければというふうに思います。
以上でございます。ありがとうございました
○吉野座長
どうもありがとうございます。
引き続きまして、田中委員、お願いいたします。
○田中委員
新型コロナウイルスが終われば、次は戦時に代わって平時が来るというふうに思われるわけですが、実際に戻るのは平時ではなくて潜在的な戦時と考えるべきではないでしょうか。我々は地震を望むところでありませんが、南海トラフ、あるいは首都直下型、住まいはあるのか、最終的にゆとりはあるのかということは常に問われなければなりませんし、先ほど角和夫委員が言われましたように、日本の社会、日本経済のバックにある中国に今、大きな変動が起きようとしています。中国による軍拡という問題もありますし、一方で、債務不履行問題をきっかけとしたシステミックリスクのおそれもあります。いずれにしろ、中国の問題が大きくなれば、日本経済にとってのバックといいましょうか、後景は全く変わるわけです。そのときに日本がすぐ何かをしなければいけないという議論があります。例えば台湾海峡の話がもし深刻なものになるということになりますと、日本の軍事費はGDP比で1%でいられるかどうか。誰が考えても難しくなります。2%前後にまで数年して持っていくような軍拡予算を結果として強いられる可能性もあります。そうすると、平年度ベースで5兆円とか6兆円の歳出がやっぱり増えるということですし、もし中国経済にシステミックリスクが顕在化したということになりますと、今までは順調にJGBがはけていたが果たしてはけるのかどうか。日本経済の背景が悪化した場合に、これだけ積み上がったJGBは返済可能かどうかという議論が国際的な投資集団の間でも起きますし、それがマーケットで顕在化する可能性もあります。たまたま現在の巨額財政赤字が金融市場で大きなテーマになっていないのは、QQEによって、クーポンレートがゼロに近いからです。利払い費が増えないことが背景としてあるわけですが、しかしこれは、マーケットでJGBの売りが先行するような局面になりますと、借換債についてはとても今のようなレートで借換えはできないということになり、これでは財政の足元の数値も一挙に悪化することになります。国債も株も、あるいは為替も全部売りの対象になる。そういう、潜在的ではありますが、戦時というものを想定せざるを得ない以上、新型コロナウイルスによる異常事態が終わったときには、国民的に一体どのようにして財政規律を我々は維持すべきなのか、それに向けて議論をどうやって進めていくかが問われます。
このテーマは財務省の政策評価懇談会のテーマを明らかに超えます。国会で議論されるためには広く国民的な議論がなされなければいけない。そのための材料を、例えばこの政策評価懇談会の場で、国民に広く議論していただくようなテーマ立てを整合的に提示するということは、これは私は仕事の1つになるかもしれないと思っております。いずれにしろ、新型コロナウイルスについて、1年という単位で置けば我々は準平時に入るわけですが、昔に戻るという話ではないということを、この際、我々の間で確認した上で、政策評価懇談会の在り方も、そろそろやり方を変えるのか、どういうやり方があるか、委員の皆さんから提案を受けるのもいいと思いますし、財務省のほうから新規に提案があってもいいと思います。いずれにしろ、これは1つの機会ですから、今のように4兆円とかというつかみ金が手元に置かれている、そういう内閣が今後も持続するというようなことがあってはならない話でして、国会による監視機能は一体どうなっているのか、相当危ういと私は思っています。構造的に日本を取り巻く環境がここまで悪化しているということを我々は理解すべきだと思います。
アメリカの場合、Congressional Budget Officeが今年の3月に発表した30年見通しでも、2050年においてアメリカの国債の累積残高はGDP比で見て202%。2031年だとそれは107%。アメリカは現在のバイデン政権の下で相当拡散的な財政を行って、そして、インフラ投資もやると言っていますけども、それでも2030年で100%ちょっと、2050年で200%ちょっとというのが現状の見通しですから、我が国の現状は相当すさんだ状況だということを国民的にももう少し理解してもらわなければいけない。利払い費が大して上がらないということだけで持続しているこの仕組みは、脆弱といえばこれほどの脆弱性はない。これだけ弱い腹あけすけにを見せている日本は、中国有事の場合には確実に打たれる。その場合には、忠良なる日本国民がJGBを手放す、一旦売って、そして為替が大幅に下がった後で買い戻す、これが年金基金の運用者の基本的なパターンになる、そういうことが起きる可能性が相当程度高まっているということを広く認識してもらうための仕組みがやっぱり要るだろうと。そして、そこでは、どういう状態で新しい危機に備えるのかを広く議論しなければいけないと思っています。
以上です。
○吉野座長
ありがとうございました。
引き続きまして、田辺委員、お願いいたします。
○田辺委員
それでは、財務絡みのところで2点ほど、それから、国税絡みのところで2点ほどコメントを申し上げたいと思います。
まず第1点目は、皆様方が御指摘のところでございますけれども、財政運営に関してAからCというドラスチックな評価をしたということは、かなり私もびっくりしております。ただ、危機感の表明としては実に理解するのですけれども、評価は、危機感を表明した後に、それを次にどう持ってくるのかというところが比較的重要だと思っております。今回の評価は、恐らく2025年度のプライマリーバランスの黒字化という目標だけが残っていまして、それは、ありていに言ってどう考えても達成できないだろうと思っているところで、この危機感が表明されているということであります。評価の、特に実績評価のフレームのところでは、現実的な、かつチャレンジングな目標を立てて、それに向かって各年度のアクションというものを見ていくということがポイントになっているわけですけれども、プライマリーバランスの2025年度の黒字化という目標というのは、ある意味、毎年毎年、財政を規律化する目標としての役割を事実上果たしていないだろうと思われます。それは、評価フレームというものが、目標設定に関しては各省に委ねている。特に財務省などの場合には政治的な動きがあって、それを現実的なものにつくり変えることが難しいということが前面に出ております。これは財政の危機感の表明ではあるのですが、他方で、実績評価という目標を立てて、その数値目標を毎年毎年実現しているかどうかということをチェックしていくという評価フレーム自体が、財政に関しましては、評価のやり方自体がほぼ危機にさらされているのではないのかなと思ったということが1点目でございます。
それから、2点目は、全然関係ないところで、政策目標6-1でしたか。国際局のやっているところで評価がAからSに上がりました。世の中というのは、人が動くことはできないですけれども、金融は相変わらず動くのだなと。その中で国際局が恐らくこういうウェブ会議等を駆使して様々な会議を開いていって、そこで制度構築等々にもかなり寄与したという部分があるのだろうと。このSという評価に関しては、そういった金融の動き、それから、その下でのモニタリング、それから、制度構築という側面を鑑みまして評価してまいりたいと思っているということでございます。
以上2点が財務の部分です。
それから、国税に関しましては2点でございます。
1つは、恐らく、デジタル・トランスフォーメーションというものを前面に出してきた。それに伴って、国税庁と納税者との関係というものがある意味楽になるとは申し上げませんけれども、平準化されてくる。それに伴って、人員をどういう形で配置するのかということが裏側で今回明らかに表明されている部分であります。つまり、調査関係の事務というもののウエートを増加するぞと。かつ、その中でも深度を深めるような調査というものをやるぞということが表明されております。これ自体はアウトカムレベルの目標ではありません。インプットレベルというか、組織内部の人的な再配分の問題ではあるのですが、DXを踏まえた国税庁の仕事の在り方の転換ということを明らかに表明して、それを目標としたという点では高く評価してまいりたいと思います。
それから、2点目は業績目標1-3-2のところでありまして、我々も申したように、相談業務に対して適切に対応したかというところでございます。国税庁は昔から相談業務に対する評判というのは高いので、この5年間、目標を全部クリアしております。このこと自体は実に慶賀に値することだと思うのですが、ただ、評価の軸としてはどうかなと。相談業務も、恐らく、単に来て、面接でもって対面でもって説明するということだけにとどまらない部分が出てまいりますので、そういった点の評価指標、それから、評価の目標、その水準みたいなところの底上げを図っていただければと思った次第でございます。
以上でございます。
○吉野座長
どうもありがとうございました。
それでは、冨山委員、お願いいたします。
○冨山委員
ありがとうございます。
私も、例の財政のCのところはよく頑張ったなというか、いい意味でびっくりしています。あれはあれで結構なんですけど、何人かの委員の方も言われていることと重なりますが、これは結局、今の日本のいろんな問題といいましょうか、国全体の構造的問題、あるいは経済・社会的構造の問題は、結局財政のところに全部しわ寄せが行っている結果なので、要は、パッチワーク的にここをどうこうしたらどうなるという話でもないので、財務省の枠の中の政策評価としてA、B、Cというよりは、どっちかというと、やっぱり、結果的にトータルの問題でCになっていますよねという見方のほうが私は正しいと思っていて、もっと言っちゃうと、これは、今のもろもろの、田中委員が言われたいろんな有事ですね。あるいは、準有事の状況で起きる問題であったり、今回の財政指標もそうなんですが、いろんなもろもろの問題、それから、あともう1つは、さっきの国税の話で言うと、確かにDXを進めるということは正しいのですけど、本来のDX、Xはトランスフォーメーションなので、国税の枠の中の議論ではないんですよね。要は、国民と政府の間の関係性、特に、お金のデジタルの関係性をもしトランスフォーメーションするのであれば、本来、全てのお金のやり取りというのはデジタルで一元化されていて、全ての給付であろうが社会保障であろうが、あるいは、払う側の、要するに行き来ですね。それが本来全部一元化されて初めてDXなんですよ。ですから、国税の枠の中でのDXというのはDXではないんだよね。デジタル・インプルーブメントなんですよね。DIのレベルであって、そうなっちゃうと、今回の財政指標の効果測定も、財政が悪化したところだと確かにCなんだけれども、例えば、これは既にデータが出ていますが、実はすごい勢いで預金が積み上がっているんですね。積み上がっているということは、意味がなかったということか、積み上がっている意味が。だって、使われずにスルーなのだから、この部分に関しては。
それから、猛烈なお金が実は企業の側に行っていて、実は、本当に困っている個人に届いていないという問題もあるわけで、ですから、トータルでここまで金を使う必要があったのかと。その割に、経済の落ち込みだけは、めちゃくちゃ感染症がひどかったところと大差がないぐらい、あるいはもっとそれ以上に落ち込んでいて、結果的に、これは多分、私は国民が立派だったからだと思いますけど、感染の数も少なく、死者も少なく済んでいるわけで、ですから、トータルで見たときの効果というのは多分財務省だけではできない話なんですよね。要は、財務省はもともとお金というある種一番全官庁共通のプラットフォームになっていたので、そういった意味で横串でいろんなことが見られる場所だったと思うんですが、それが今、いろんな支出項目のほとんどはある種法律で決まっている必要的支出になっていて、その部分は財務省ではコントロールできませんと。それから、あと、デジタル化とかいろんな要素があって、全部従来の役所の単位をまたがる問題ばかりになっちゃっているので、ですから、これはある種全部横串なんですね。したがって、その結果として内閣府がどんどん膨張していくのですけど。実は、内閣府が膨張していくのだけど、内閣府が本当に権限を持っているわけでも必ずしもないと。ですから、縦と横とで微妙なお互いに無責任みたいなことが起きちゃっているような気がしていて、ですから、私は、この問題状況について、先ほどの準有事対応、それから、デジタル化によるまさにトランスフォーメーションですね。ある種レイヤー構造的な横串、縦のものが横になっていくという問題も含めて、この懇談会そのものでどういうスタンスで何を議論していくかということは、もうちょっといろんな意味で見直しをすべきのような時期に来ているような気がしていますし、それの起こしとしては、既存の官庁の中で言うと財務省が一番やりやすい場所にいるので、もともとお金というのはある意味横串なので、そういった議論をこういったところで皆さんとできたらいいかなというふうにちょっと思っている次第です。
私のほうからは以上です。
○吉野座長
どうもありがとうございました。
続きまして、山本委員、お願いいたします。
○山本委員
個別事項につきましては既に事務局に提出しておりますので、2点申し上げたいと思います。
1点は、非常に気になる点ではあるのですが、いわゆる今回の歳出拡大の主たる要因というのは、あくまでも新型コロナ対策ということでございました。ところが、やはりそれは予備費なり3次補正でかなり出ておるのですが、その使途は、確かに、今の冨山委員の御指摘のように各省庁にまたがっているのですが、どのように使われたかということは、財政民主主義の観点から、ぜひとも財務省におかれては、分かるような開示を今回の評価書に併せてしていただく必要があるのではないかということが1点目でございます。
2点目は、財政健全運営と、それと、国税庁の実施計画のDX化ということと関連するわけでございますが、いわゆる人材管理なり、新しい人材登用のことでございます。これは、特に国税庁あたりは、私は東京国税局の入札監視の仕事もやらせていただいているのですが、いろいろお話を伺いますと、国税専門官の受験倍率というのは最近はかなり低くなっておりまして、2倍前後だと思います。そしてまた、霞が関においては、超勤問題や、あるいは燃え尽き症候群等がかなり問題になっておりますものですから、やはり、財政健全運営を担っておられる財務省本体においては、組織管理は、今、秋池委員お一人がいろいろされているということを伺っておりますが、人材としては、今問題になっておりますような政治との調整問題が非常に重要なのか、あるいは、政策分析に徹し切ったほうがいいのか、あるいは、マネジメント能力が今一番求められているのかということ等をもう少し考えないと。特にDX人材等は、国税庁の国税専門官、あるいは、今の通常採用ではかなり難しいような気がしておりますものですから、そこら辺は、モチベーション管理も含めて、やはり人材については今後考慮していただかないと。運営管理という点で少し御検討いただいたほうがいいのではないかという感じがしております。
以上でございます。
○吉野座長
どうもありがとうございます。
それでは、伊藤委員、それから、小林委員、お二人にお願いしたいと思います。
伊藤委員、どうぞ。
○伊藤委員
伊藤でございます。遅れて申し訳ありませんでした。皆さんの御議論の前半を伺うことができなかったので、ダブっているところもあるかもしれません。
私も何人かの方から後半で聞かせていただいたのですけど、おっしゃったように、財政のところがAからCに変わったということは非常に強い印象を受けまして、これもどなたかがおっしゃったと思うんですが、評価の在り方をどう考えるかということをもう一回考え直す非常にいいきっかけになったのかなと思います。
そもそも財政の役割とは何かということを、この評価の話は別として一般論で議論したときに、もちろん、財政自身がどこかで崩れてはいけませんので、プライマリーバランスとか、あるいは、債務GDP比は非常に重要ではあるのですけども、さはさりながら、それを守るために何もしないということも財政ではよくないわけで、経済学の少し古くさい言葉を使えば、ビルトインスタビライザーという用語があるのですが、何か危機が起きたり、あるいは景気が悪くなったり、今回のような新型コロナもそうかもしれませんけれども、そのときには、いわゆる財政収支とか、あるいは債務を、少し長期的に好ましい数字から逸脱することも含めて必要であるということが通常のオーソドックスな経済学の教科書でよく出てくる話で、だから、今回の場合についても、ここでやったことをどういうふうに考えるかということと、その結果として、債務の問題とか、あるいはプライマリーバランスの収束度のペースが変わるということとの、言わば相対的な評価というか、あるいは比較ということが必要になってくるのかなと。
それに加えて、先ほど誰かがおっしゃったように、実際にやったことが本当に有効に行われてきたのかとか、あるいは反省すべき点があるかということについても議論をしなきゃいけないだろうと。少なくとも評価は毎年行われているわけですから、そういう意味で見ると、毎年行われる財政のいろんな政策について、その都度その都度きちっと評価をするということが理想であるとすると、長期的な姿を見ていくということも非常に重要ではあるのですけども、それと同時に、あるいは今年度は何をやったのか、それはどうだったかということがもう少し指標の上で出てきたらいいなと。これはなかなか難しいということはよく分かるのですけど、そういうことを考えさせられる今回の結果であったと思います。そういう意味で、評価の在り方について、もう一回少し根本から議論をしてみる価値はあるかなと思います。
もう1つ、それとちょっと関連することなんですけども、ポストコロナの動きを見たときに、先ほどもどなたかがちょっと話題にされたのですが、例えばアメリカなんかでは、財政支出について少し違った議論が出てきていて、御案内のように、ジャネット・イエレン氏だとかが政策の中枢に入ってきていると。その議論とは何かというと、長期停滞みたいな状況の中で考えていると、特にポストコロナの時代において、経済をもう一度成長軌道に乗せるためには、これまでよりも少し踏み込んだ歳出が必要であるという議論が、これまでは一部の学者の議論だけだったのかもしれませんけれども、政権の中にも入ってきていると。日本はアメリカよりも債務比率は非常に高いですし、安易にアメリカと同じことをやるべきだと私は申し上げているわけではないですが、ただ、ポストコロナということを考えたときに非常に重要になってきているのかなと思うのは、きちっと我々はそれを意識して議論したわけではないですけども、これまでの財政の評価とか、あるいは財政の運営の在り方を考えたときに、その背景にいわゆるデフレ的な経済というものがあったんだと思うんですね。低金利で低成長で、あるいは低インフレもあってもいいと思うんですけど。これはサマーズ氏の言うところの長期停滞も関係あるかもしませんけど、そういう中で財政のサステーナビリティーとか長期的な経済の安定を考えたときに、しっかり地道にプライマリーバランスの黒字化のほうに持っていきながら、どうやって少しずつ年度のGDP比を減らしていくかという議論はしてきたわけですが、これは新型コロナの後にどうなるかはもちろん分かりませんけども、ただ、少しそういう議論が出てきているように、新型コロナの後の日本の経済の状態は、また低成長、低インフレ、低金利で長期停滞の状態に戻るのか。あるいは、もう少し、インフレとは言いませんけども、少し違ったステージになるかによって、ひょっとしたら財政の指標の在り方とか運営も少し変わってくる可能性があるわけで、変わるべきだと言っているわけではなくて、そういうことも含めて、これだけ大きな時代の変化の中にあるために、もう一回、我々が今まで当たり前のように使ってきた評価の指標とか豊かになるなり方とか、その背後にある物の考え方みたいなことを少し議論するというか、あるいは検討するという時期に来ているのかなというふうに思います。
以上です。
○吉野座長
どうもありがとうございました。
では、小林委員、お願いいたします。
○小林委員
私は2013年10月からこの評価懇談会委員を拝命したわけですけれど、今回、事情でちょっと辞任させてもらおうと思っておるのですが、今日は2点申し上げたいと思います。
もう皆さんがおっしゃっていますが、他力本願とはいえ、8年間近くこういう会議でCというのはたしかあまり見たことがない、記憶にないのですけど、いずれにしましても、間違いなくCであろうと。これは、政策をたてる人であろうが、実際にエグゼキューションをやる人であろうが、それを設計する人であろうが、新型コロナという以前に最初からずっとCではなかったかなという感もするわけですけれども。実際、それでいて、まだ2025年度のプライマリーバランス黒字化を目指すという、このこと自体が甚だむなしく響くといいますか、理解ができない。名目3の実質2という以前からのお題目ベースで計算して、ある意味では2029年度にぎりぎり黒字かなという試算もあったかと思うんですが、この3/2という仮定がまだ残っていること自体が本当かなと思うわけで、税制の在り方の抜本的な見直しとか、第三者委員会機関を置くべきだとか、長い間同じような議論をしてきた中に、今回、科学技術、あるいは国家の安全保障を含めて、大学の教育はレベルが相対的に非常に劣位であるということで10兆円ファンドとか、デジタル化で、それなりのお金、あるいは、今度のカーボンニュートラル、これはNEDOが差配するし2兆円レベルで済むようなレベルではない。大災害も含め何百兆円という形のものがどういう形で使われるかも含めて、カーボンニュートラルというものをもう少し精査しながら、エネルギーミックスのみならず、タックスミックスを考えていかなきゃいけないのではないかという気がいたします。これが財政のお話です。
先ほど来、ポストコロナのお話が出ていましたけど、今回、基本的には、がらっと変わったというより、デジタル化が加速し、カーボンニュートラルに対しても相当現実味を伸びてきたということかと思いますが、僕は経済は全くもって素人ですけれども、どうも感じとして、GDPをベースにしたリアルエコノミーというか、重さのあるこのエコノミーというものから、完全にシェアリングエコノミーなりネット空間というか、バーチャルエコノミーというか、インタンジブルな部分。幾ら頑張ってGDPを上げようとしても、ネットを増やしても、結果としていわゆるGDPは増えない。それは、消費者余剰というか、人間のウェルビーイングというのは物ではもう換算できなくなってしまった。GAFAが日本の3,800上場会社より時価総額が高いという、そういうインタンジブルというか、期待値ビジネスというものをどうカウントするかということがないと全体把握は難しい。現実の今後の経済空間というのは、消費者余剰のために、セキュアスタグフレーションとの関係性というものを、物と事と、今度は心、ウェルビーイングという時代が来ている中で、どう定量的にその辺を関係性も含め評価していくかということが重要になるかと思います。オンラインだとかサイバーフィジカルシステムの時代に、エネルギーも分散型でいく。政治も自律分散協調型といいますか、地方に比重が分布していく。あるいは、多様性とか協奏とか、個のエンパワーメントというものがすごく重要になる社会で、こういうことを総合的に判断して、最終的にここまで積んでしまった債務との関係性というか、物としてGDPを増やさないと本当に借金というのは返せないのかということも含めて、ちょっと考え直すことが必要なのではないかなと思います。
もう1つ。国税庁関係のオンライン、これは前回に細かく詳細をコメントさせていただきましたので、今後ともデジタル・トランスフォーメーションをぜひとも、国税庁といいますか、財務省系が、僕の感じだと、ほかの省庁から比べますと非常に進んでいるのではないかと思いますので、より国全体を引っ張っていっていただきたいなと思います。
長い間本当にどうもありがとうございました。
○吉野座長
どうもありがとうございました。
それでは最後に、私からも5点ほどコメントをさせていただきたいと思います。
皆様からありましたが、1番目は財政の問題ですけども、しばらく前にマルコビッツ教授や、羽生名人のお話を聞いたときに、それぞれお二人とも、「最悪のシナリオのときにどうするか」ということを考えているということでした。財務省も様々なシナリオを考えていただいて、最悪になったときに(財政赤字の急拡大のときに)どのように対応していくかということを、財務総研も含めた政策分析、それから、現場の方々とつくっていただければと思います。最悪のシナリオのときには、国債市場のボラティリティーが高くなると思います。そうすると、海外と日本の間の資金の振れが大きくなって、為替市場に影響していく。そういう形で、為替とか債券市場に関して毎日大きな動きが出てきて、日本はどうしたらいいのかという事態になりかねないと思います。
それから、個人的な意見ですけど、2%のインフレ目標で日本銀行は政策を行っているのですが、その方々の議論のモデルは金融政策だけの議論です。そこに財政が入ってきていないのです。もし2%が達成されると、名目金利は必ず2%以上になります。そうすると、利払い費は大きくなります。それから、社会保障が物価スライド制です。そうすると、日本の財政は、インフレ率が本当に2%以上を達成したときには大変な問題になる。なぜそういうことの議論がなされているかというと、金融政策だけでの議論で2%が正しいとしていますが、財政への影響は含まれていない分析で議論しています。今、一生懸命、財政も含めたモデルを考えていますので、しばらくしたら発表したいと思っています。
2番目は、国税庁のところでは、e-Tax、これを進めていただいて非常にすばらしいと思いますが、システム障害とか、あるいはサイバーアタック、こういうものに対して、税の信頼性という観点からはぜひ対処していただきたいと思います。3週間前に別の中国の会議があったときに、サイバー攻撃とかシステム障害はどうしているのかと。中国は今、キャッシュレスになってきたのですけども、バックアップの場所が全部で3か所あるそうです。日本は恐らく東京と大阪の2か所しかないと思います。中国というのはそういうことまで考えて、万一システム障害が起こったときに大丈夫なように対処しているわけです。
また、税務データが恐らくいろいろな研究のために使えると思います。ビッグデータの分析というものは守秘義務を課しながら、そして、それをどんどん使いながら日本の政策に対して反映させていくということが必要だと思いますし、前から申し上げていますが、最近は、サテライトの写真を撮れば、どれぐらいレストランに人が入っているかとか、農家でも秋に何台ぐらいトラックが来ているかとかが全部分かるわけです。そこから売上げなりを推計できるという、そういうデジタル化によって税務執行というものも可能であると思います。
3番目の地方の問題では、クラウドファンディングとか、新しい金融手法を使ってスタートアップの企業を興していくと。それから、どんな地方にいてもいい教育を受けられる、これがデジタル教育だと思います。最も優れた先生がインターネットなりスマホを通じてそれぞれの科目を教えてあげると、塾とか予備校なんかに行かなくても、全国のどこにいても、一生懸命勉強すれば最高の教育が受けられ人的資源、人材の育成の高質化が達成されると考えます。
4番目はグリーン国債、環境に関してなんですけども、よく、日本の投資家の方が、日本はグリーン国債がないと。だから、なかなかグリーンに投資できない。それで、わざわざアジア開銀のグリーンボンドとか、そういうものを買いに行っているという話がございます。ただ、これも、ヨーロッパを中心にグリーンボンドが定義されています。私が見る限り、グリーンボンドはいいかげんで、90%がグリーンで10%が灰色、これをグリーンなんですね。それから、70%がグリーン、30%が灰色、これもグリーンボンドです。現状の定義はあまりよくないのですけども、何らかの形でグリーン国債なりを発行することができて、それによって日本の投資家がここに投資できるということも必要ではないかと思います。
最後は長期停滞とか財政支出の話ですけども、これも、日本とアメリカで財政支出の効果が違うと思います。私の研究では、高齢化が進んだ社会、ここは、財政乗数が1以下になります。これに対して人口が割合若い国では、財政乗数が1.5ぐらいになります。ですから、日本の場合は、こういう高齢化の構造問題の中で、幾ら財政支出をしても、財政乗数が1以下ですから財政乗数の効果がない。高齢化に関しては、構造改革の方が必要で、なるべく退職年齢を伸ばして、退職期間を短くして、長々と働いて社会に貢献していただくということが重要だと思います。
最後は雑談ですけども、MMT(Modern Monetary Theory)という理論です。この間、ビデオのMMT理論の説明の講演を聞いてみたのですが、オーストラリア人とアメリカ人の2人が言っているのですけど、2人とも何を言っているかというと、日本の例を取りながら、日本はちゃんとしているではないかと。だから正しいんだと。全く間違っています。結局、MMTは何を仮定しているかというと、将来的には、日銀が買っている国債は税でちゃんと負担するという、まさにリカードの中立性を最終的には仮定して、それがないとできない理論であります。ですから、もしそういう社会だとしたら、日本でも現在のように金融緩和をして、将来的には、金融緩和で買った国債は、全部将来の税金によって賄えると。そういう仮定であればMMTは正しい。しかし、それがなくなれば財政の破綻というふうになると思います。アメリカの偉い方々の理論というのは、アメリカの経済に根差していろいろ仮定しているわけで、我々は、日本はどうすべきかということをしっかり見ていかなくてはいけないと思います。
以上が私の皆様からの御意見も踏まえた発言であります。
それでは、これから財務省の方々にコメントを頂きますが、最初は藤本政策立案総括審議官から発言をお願いしまして、その後、局長の方々からお願いしたいと思います。そして、最後に太田事務次官からお願いしたいと思います。
では、藤本政策立案総括審議官、お願いいたします。
○藤本政策立案総括審議官
政策評価の在り方、あるいは懇談会の在り方について、田中委員、田辺委員、冨山委員、伊藤委員からお話を伺いました。政策評価の実施要領におきまして、評定がCに該当する場合には、目標に向かっていないこととなった要因を分析し、抜本的な対応等を検討することとされております。また、前回、田辺委員からお話があったところですが、総務省の政策評価審議会におきまして、政策評価の在り方について提言がなされているところでございます。財務省としても総務省と連携を取りまして、また、本懇談会委員の皆様の御意見も伺いながら、政策改善等に役立つ評価プロセスに向けて取り組んでいきたいと考えているところでございます。
私からは以上です。
○吉野座長
ありがとうございました。
それでは、局長の皆様から御回答、あるいはコメントに対する御意見を頂きたいと思います。
まず、主計局長からよろしいでしょうか。
○矢野主計局長
主計局長の矢野でございます。今日はありがとうございました。
主計局への御所見が大多数だったと思いますけれど、最初に、まず、C評価にしたということについてですが、これは、ぶっちゃけた話、Bで上がってきたのをCにしたのは私です。人事評価とつながらないということで安心しましたというお話もありましたけど、官民は違うのかもしれませんが、官における政策評価につきましては人事評価に反映しないということが法令上決まっております。これは、できたかできなかったかということを冷徹に見るのが政策評価であって、頑張ったかどうかという人事評価とは完全に切り離して考えると。簡単に言えば、2掛ける2の4つのマトリックスができるという全く別物だという発想があるために、人事評価にはつなげないということになっています。
私は、それがあったからと言うと言い過ぎですけれど、というよりも、危機感を表明したかったのでCにしたとか、それも私の意図するところではありません。単純に、Bについては、Bとはどういう評価なのかというと、進展云々ということがあって、その表現は、一般会計のプライマリー赤字が9兆円から90兆円に3つの補正でなったわけですけれど、そういう財政運営に令和2年度はなりましたので、それで、進展があったのか、なかったのかというところは論をまたないのではないかと。どう考えてもB以上で評価するということは語義上不可能だと私は思いましたので、反響がどうのこうのとかではなくて、字面上B以上はあり得ないと。Cの下は何があったかと。Cしかないのですけれど、Cでしかあり得ないということだったわけです。ですので、私が自虐的であるわけでもなく、受けを狙ったわけでもなく、危機意識を表明したかったわけでもなく、淡々と評語として当てはまるものはCしかなかったということです。それがまずあります。今のことで余計なことを言えば、努力はしました、エモーショナルな話になりますけれど、頑張りはしました、頑張りはしましたけれど、結果としては数字が出ませんでしたという、簡単に言えばそういうことです。それを冷徹に自分で評価しなきゃいけないわけですけど、自分で最低の評価をつけざるを得なかったということです。ただ、叱咤といいますか、激励の意味で、次への心構えと受け止めますというような温かい御示唆も頂きました。結果としては、これが国民、有権者の皆さんへのいい意味での危機感共有につながって、次の財政健全化への起爆剤の1つになればいいと強く思います。
それから、秋山委員から、9ページの評価Cについての最後にちょこっと、目標に向かっていないからCということにはしたものの、新型コロナウイルスは事前に予期することが困難なやむを得ない事情であり、それへの対応については万全を期す必要があったという、これはどういう意味かと。確かに意味のよく分からない言葉になっていると思います。ある意味ここが、今申しました冷徹な評価と、それから、頑張ったかどうかという自分たちの思いとがない交ぜになった文章になっているからこうなっているわけですけど、予想できない、あるいは、見えない敵である新型コロナと立ち向かう上で、止血策をはじめとする財政出動をせざるを得なかったということは、一言で言えばやむを得なかったということではあるのですが、じゃあ、本当にどうしようもなかったのかということを問われれば、たらればであり、高望みかもしれませんけれど、例えば、安倍政権になってから、予算編成後の当初予算の国債発行額は8年連続で減りましたというようなことを政府としては自慢したわけですが、実際問題、残っている借金は膨大ですので、あと何十年かけてゼロにするつもりなのかと言われてもしようがないようなペースではありましたし、あるいは、委員から今日もありましたけれど、内閣府の試算の成長実現ケースを見て、やはり、2026年とか何年とかいうことを議論しているのですが、成長実現ケースを見ながら議論をして意味があるのかと。財政運営のプルーデンスはどこに行ったのかということもありますし、あるいは、400年に1回と言われた3.11、その前にリーマン・ショックがあり、その後に新型コロナがあり、10年ちょっとの間に3回のカタストロフィーが起こったわけですけど、予期することは無理だったにしても、何百年に1回とかいうことを言っていてはいけない災害有事、あるいは、田中委員からは本当の有事の話もありましたが、いろんな意味での有事ということへの対応を想定すると、何十年かけてPB黒字ということではいけなかったのではないかとか、そういう思いも勘案して、予見し難いやむを得ないものではあったけれど、何とかできなかったのかというじくじたる思いはありますということを、ここにもごもごと口籠もって書かせていただいている次第です。
それから、ワイズスペンディングの御指摘も複数ございました。これも数年来諮問会議なんかで多用されている言葉ですし、いい意味で当然にワイズなことにスペンドしなくてはいけないわけですけれど、何となく日本の場合は、大事なんだから、ワイズだからスペンドしていいみたいなことをおっしゃる人も結構いて、そうではなくて、よほどワイズでなければスペンドしてはいけないんだと。あるいは、別の言い方をすれば、ペイ・アズ・ユー・ゴーで、ペイしなければゴーはできないんだというようなこととセットで考えないと、何となくワイズスペンディングという言葉もどっちにも使われちゃって、最近で言えば、これはちょっと語弊がありますからあれですけど、カーボン、コロナ、グリーン、デジタル、片仮名で言うと、何となく、これは新しい最先端の必須のエリアだと。そこに惜しんでいてはいけないんだという議論についなりがちですけれど、必要であるかどうかということと、財源がつくかどうかということがついつい切り離されがちですが、最後に御指摘がございましたけれど、今や先進各国は、新型コロナの次の一手は財源つきで議論を始めました。日本だけがそれが行われていないという状況に現実あります。そういう意味でも、必要だからスペンドしていいとか、必要だから世界に先駆けて歳出計上をすべきだということは違うのであって、必要だから財源をどうするかということも考えて、タイムラグがあってでもそのことを考えて議論をしなきゃいけないということだと強く思っております。
それから、あと、介護、医療、生活保護といった話もございました。年金以外の社会保障の大きな分野はどんどん伸びていって、成長率を超えているというところ、これをどうマネジメントするか、できるか、これが財政問題の肝でもあります。どうやっても節減できないということであれば、財源をどうするかということを直ちに議論し続けなきゃいけないので、そこは本当に真っ中心のテーマであると思っております。ポストコロナでいろいろな新しい分野がある。あるいは、防衛予算だって、新しくはないけれど、新しい展開が見られる。JGBは本当に大丈夫かという御議論がございましたけれど、やっぱり、月並みな言い方ですが、平時は黒字にするということをきちんとやらないと、PBを目指して何年かかってでもということではなくて、性急は無理ですけれど、できるだけ黒字に持っていって、何年かに1回来る大きながたに対応できるような体質に変えなきゃいけないというギアチェンジが必要なんだということを強く思います。金利がゼロ近傍だから大丈夫とかいう議論は、これは感覚論としても市場にも蔓延していますけれど、金利が仮にゼロが継続されたとしても、それは借金の残高の増幅の加速度が弱まっているだけであって、借金が増えていることは間違いないので、タイタニック号が氷山に突進しているわけですが、突進している速度が若干金利が下がったことで遅くなった。でも、氷山に向かって突進しているということに変わりはない。氷山から遠のいているのであれば議論は違うのですけれど、そこは氷山に向かって突き進んでいるという事実に変わりはないので、その辺のことも、金利がかなりゼロ近傍であることで、ものすごく財政問題がなくなったかのような議論が非常に多いのですが、ある種の確信犯の人もいますけれど、かなりのイリュージョンですので、その辺もきちんと説明していかなきゃいけないと思います。
あと、山本委員から予備費についての開示のお話もありました。確かに、予備費は10兆円ですとか5兆円ですとか、すさまじい。従来ですと5,000億円とかその程度だったところに、新型コロナについては兆円単位、しかも、かなり大きいロットを載っけました。この開示は、実はそういう御指摘ももともとございましたので、財務省のホームページにどういう使途にさせていただいているかということを、これは閣議決定で決まってしまうわけですけれど、議会で先議されないという、財政民主主義に反するとかいう御指摘もあるので、閣議決定の都度都度、財務省のホームページに使途をしっかり載せたりとか、あるいは、そういうことを今回の評価の資料にもリンクを貼るようにさせていただいたりとかをしております。
1点だけ、これは泣き言的ではありますけれど、本来当初予算、あるいは補正予算でやるべきであろうこんな大きな何兆円とか10兆円とかというのは、ある意味ごもっともですし、我々も、予備費を何兆円積んでおいて、そこから与野党の議論、あるいは国会の審議をすっ飛ばして閣議決定でぽいと使っちゃうというのは、本来的ではないと思っています。ただ、新型コロナは見えない敵であり、何がどうなるかということが全く分からないということもあり、一方で、直ちに補正予算を組もうとして突貫工事でやっても、物理的に1か月はどうしてもかかってしまいますので、そういう意味で、すぐに手を打とうとすると、予備費という臨時緊急の措置ということがある程度不可避であるということも、ここは御理解を頂きたいと思います。
ちょっと取り留めもなくあれしましたけど、あと、財政健全運営、あるいは政策評価の在り方に係る話まで御示唆を賜りましたが、経済最優先ということを今の内閣も前内閣も掲げておりますし、我々も経済を壊してしまっては財政健全化は立ち行かなくなりますし、経済が芳しくないときには突き進むことは難しいということは、定性的にはそのとおりだと思っていますけれど、それが高じて、経済をうまく、国際競争もやっていて、経済をうまく回しさえすれば財政健全化ということは成るんだというところまで思ってしまうと、これは、例のワニの口が、バブル期も、あるいは、有効求人倍率が1.6を超えていた時期も、上顎と下顎がひっくり返るということはございませんでしたので、経済さえうまくすれば財政は放っておいてもうまくいくということは、ファクトからして間違いだと。疑わしいではなくて間違いだったということは既に歴史的に証明されていますし、この先また半世紀近く高齢化率が上がっていく国ですので、もっとコンディションは悪くなりますので、そこは、経済最優先を否定はしませんが、経済最優先ではあるけれども、財政健全化についてはしっかりやっていかなきゃいけないという意識でおります。
ちょっとばらばらですけれど、以上、お答えになっていませんが、申し上げさせていただきました。ありがとうございます。
○吉野座長
どうもありがとうございました。
引き続きまして、住澤主税局長、お願いいたします。
○住澤主税局長
住澤でございます。よろしくお願いいたします。本日は、大変貴重な御意見を多数頂きましてありがとうございます。
翁委員から、ニューノーマルに向けて、所得税、法人税、消費税のどのようなタックスミックスが必要なのかということを考えるべしという御指摘を頂きました。今、新型コロナの影響によって様々な構造変化が加速し、また、変質しつつあるという中で、今後の税体系の在り方というものをそろそろ議論していくべき時期に来ているのではないかと、まさに御指摘のとおりだと思っております。
そういった中で3つ申し上げたいと思いますが、1つは、今、財政については主計局長から申し上げしたとおりですが、こういった厳しい評価をつけざるを得ないような環境の中で、歳入面における税収の歳入調達機能の回復ということが、再分配を行っていくにしても何にしても、やはり大前提として大きな課題になっていることは間違いないことだということをまず申し上げたいと思います。
その上で、昨今、翁委員等からも御指摘がございましたけれども、国際課税の分野における法人課税をめぐる議論でありますとか、あるいは、イギリスやアメリカにおける法人税や資本所得に対する課税の議論、こういったものを見ておりますと、やはり、製造業のグローバルな展開ですとか、あるいは、プラットフォームやデータといったものをはじめとする無形資産が大きな役割を経済の中で果たすようになってくる中で、全体として勤労所得に対して資本所得のウエイトというものが大きくなっていく中で、税体系の在り方を今後どうしていくべきかという曲がり角に、この先進国の税制というものが直面しているという表れの1つではないかなというふうに受け止めております。そういった中で、この分野についてもさらに議論をしていく必要があるのではないか。
もう1つ、コロナ禍の経験に基づきまして、秋山委員、冨山委員等からも御指摘がございましたが、必要なところに必要な給付をしていくために、所得情報、さらに言えば、資産情報をどのように活用していくかという課題が浮かび上がってきているわけですけれども、御承知のとおり、日本における所得情報の扱いというのは、多くの給与所得者にとっては源泉徴収と年末調整で課税関係が完結しているということもあって、国には多くの所得情報が必ずしも集積されているという状況にはないというような前提もございます。そういった中で、社会保障や福祉の分野も含めた隣接分野との連携なども含めて、所得や資産の情報というものをいかに把握して活用していくのかということが、税制に限らず、税財政全体として今後検討していくべき課題であるということは間違いのないことだと思いますので、そういった中で、角委員から御指摘いただいたマイナンバーの活用の方策なども含めて議論を深めていくべき時期に来ているのかなという印象を持ちました。
ありがとうございました。
○吉野座長
ありがとうございました。
それでは、茶谷官房長、お願いいたします。
○茶谷官房長
官房長の茶谷でございます。今日は貴重な御意見をどうもありがとうございます。
山本委員から、デジタルに関しての財務省の人材育成のお話を頂戴しました。一連の不祥事を受けて、秋池委員、小林委員の御指導を得ながら財務省再生プロジェクトというものに取り組んでおりますが、この中の人材育成というのは非常に大きな重要な柱でございまして、その中には当然、マネジメント能力の向上から専門性の涵養まで様々な論点がございますが、デジタルということに関しましても、人材育成ということでは、現在、デジタルの専門家の方を何人か、財務省でも任期付の採用という形でお願いしたりしているところでございますが、今後、試験の採用区分でもデジタル職というものができますし、また、この秋から政府においてデジタル庁というものが発足するということで、そういうことを踏まえ、また連携しながら、財務省についても、DX時代の人材育成について、これからもよく考えていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○吉野座長
ありがとうございます。
では、可部国税庁長官、お願いいたします。
○可部国税庁長官
可部でございます。本日は貴重なご意見、ご指摘を賜りまして、誠にありがとうございます。各委員からいただきましたご指摘につきまして、順次私の方からご説明させていただきたいと存じます。
まず、秋池委員から組織理念についてお話をいただきました。これは、まさに秋池委員にご指導いただいた財務省の組織理念も踏まえて、20年ぶりに作らせていただきました。この間、私自身も全国12の国税局で若手職員と意見交換をさせていただき、延べ2万人の職員が参加して、職員の理解や共感を深めることができる組織理念になったのではないかと思います。これを4月1日に職員伝達をした上で、新たな組織理念を自分のものにし、実践していくために、現在、全国の全職員の間で意見交換会を行っております。来年度以降も、必ず年1回、全職員が参加する機会を設けて意見交換会を行っていきたいと考えております。コロナ禍で、在宅勤務を含めてコミュニケーションが減っている中で、意見交換会は非常に貴重な機会であり、また組織にとっても職員にとっても大事な取組であると思っております。
それから、昨年8月に、コロナ禍で実施できない事務があっても、そのときに仕込んだ準備などが実る場合もあるのではないかというご指摘がありました。そのご指摘も踏まえて、今回、計画の中で織り込ませていただいたものがあります。例えば、前事務年度の実績を見ますと、緊急事態宣言などがあり、調査件数は減っているのですが、優先度合いの高いものに集中した結果、1件当たりの調査事績等は今まで以上に上がっているというようなこともあります。したがって、深度ある調査のウエイトも測定指標の中に加え、コロナ禍でも成果が上がったかどうかということを評価できる軸を追加させていただいております。
秋山委員から国税庁のデジタル化についてのお話がございました。私どもとしては、デジタル・トランスフォーメーションについて、まさにこのデジタル技術・データを活用して、一つは納税者利便の向上、もう一つは調査・徴収の効率化・高度化を図っていくということが大事であるというふうに捉えております。その観点から、先週、有識者会議で「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション」の取りまとめをしていただき、11日金曜日に公表いたしました。その中で「税務行政の将来像2.0」、これは4年前に「1.0」が出ているのですけれども、直近のデジタル技術等を踏まえて、「2.0」にバージョンアップしたものをお示しさせていただいております。秋山委員のおっしゃるとおり、従来の慣行にとらわれることなく、業務の在り方を不断に見直すということが大事だと思っております。先日のOECD税務長官会合の場でも、納税者の利便性の向上、あるいは私どもの調査・徴収の効率化・高度化に、このデジタルの技術を活用することで、まさに納税者の信頼向上を図ることができるという議論がありました。例えば、今回の「税務行政の将来像2.0」の中では、デジタルを活用したプッシュ型のご案内というのもお示しさせていただいております。災害があったとき、あるいは個人で不動産の取引をされたとき、これまでは受け身であったわけですけれども、プッシュ型でe-Taxやマイナポータルを通じて、納税者の方にご案内させていただくというような形で対応させていただくという取組を織り込んでいるところであります。
江川委員から内部事務のセンター化についてお話がございました。これは、今、税務署単位で行っている内部事務を局ごとに集約するという形で、令和8年度までに内部事務センター化を完成させてまいります。また、これと同時に完成いたします国税庁の新しい基幹システムは業務処理をシステムで完結させることとしており、税務署から紙がなくなることになります。この二つを、先ほど申し上げたデジタル・トランスフォーメーションの基盤として実施することによって事務の効率化を図ってまいります。そして、その効率化で生まれた事務量については、悪質な納税者等に対する深度ある調査などの外部事務に充てていきたいというふうに考えております。
角委員からマイナンバーについてお話がありました。この制度について、私どもとしてもその普及を促進していくということで、今回も計画の中で明示させていただいております。例えば、e-Taxをお使いになるときに、マイナンバーカードでマイナポータルを使えば、年金情報、あるいは医療費情報、あるいは生命保険料・損害保険料情報、こうしたものをどんどん取り込んでいけることになります。既に実施しているもの、これから実施していくものを「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション」の中で工程表としてお示しさせていただいております。マイナンバーカードがあればこのように便利になります、ということをお示しさせていただいており、これを着実に実施してまいりたいと考えております。
田辺委員からデジタル・トランスフォーメーションについてお話がありました。全力で取り組んでまいりたいと思っております。また、税務相談についてもお話がありました。田辺委員のおっしゃるとおり、評価指標水準の底上げというのは大事だと考えており、今回、新しくチャットボットの質問入力件数というのを参考指標に追加させていただいています。税務相談については、これまで電話相談、対面相談で行ってきましたが、今年はチャットボットを使った税務相談が確定申告期間中に400万回、前年の11倍になりました。これは、利用者の方にとってもスマホで相談できる上に、私どもの方でも非常に効率的に対応できるという意味で、双方の満足度が上がるものでございますので、こうしたものを更に高めていきたいというふうに考えております。
冨山委員からデジタルによるトランスフォーメーションが大事だというお話がありました。全くそのとおりだと考えております。デジタル・トランスフォーメーションを通じて、紙をデジタルに置き換えるのではなく、BPRを実現することが大事だと思っています。その一番典型的なものが、税と社会保障の一元化であると思います。これは、安倍政権のときに議論しまして、マイナポータルを通じて税と社会保障の一元化を図っていくというプランを作り、予定どおり着々と進んでおります。今回の「税務行政の将来像2.0」でもお示しさせていただいていますが、納税者の方から見れば、先ほど申し上げたように、ワンストップで年金情報、税情報等を入手して処理することができ、あるいは一回入力すれば済むと、こういう形になってまいります。そうした意味で、横串でものを見ていくということをこのマイナポータルを通じて、省庁の枠を越えた形で実現できるようにしていきたいというふうに考えております。
山本委員からデジタル人材についてお話がございました。国税庁は、かねてから、e-Tax等を進めてきているものですから、かなりデジタル人材がおります。このため、今回のデジタル庁発足に際しても、デジタル庁準備室に多くの人材を出させていただいています。デジタル人材を引き続き育てていくことが大事だと思っておりまして、具体的には、今回の「税務行政の将来像2.0」の中で、エントリーレベル、ベーシックレベル、スタンダードレベル、アドバンストレベル、エキスパートレベルのデジタル人材の育成策というものもお示しさせていただいています。一番レベルの高いエキスパートレベルは、現在、税務大学校でデータ分析の専門家を毎年育てております。しかしながら、当然、デジタルのウエイトは更に高まっていくと思っております。採用の面では、今でも国税専門官に理系の方が入ってきていただいているところですが、更にそうした方を拡大していこうということで、具体的な検討を進めているところでございます。
小林委員から国税のオンライン化について、引き続き頑張るようにというお話がありました。これはしっかり進めてまいりたいと考えております。
吉野座長からシステム障害あるいはサイバー攻撃、こうしたものについてのご指摘がありました。実は、先ほど申し上げたOECD税務長官会合でも、一旦こうしたことが起こると信頼が大きく損なわれるため、信頼を大きく損なうリスクを特定して、そこに集中的に投資をしていく必要があるという指摘があり、そのような形でしっかり備えていきたいと考えております。
また、税務データについて、研究に使えるようにというお話がありました。これは昨年8月の政策評価懇談会でもご指摘があり、一年間、有識者会議で検討をさせていただきました。これを今月中に取りまとめをさせていただくべく、現在、有識者の先生方とご相談させていただいております。今回、研究の実施方法について取りまとめをいただき、いよいよ来事務年度から、守秘義務に抵触しない形で、税務データを研究に使っていただくプロジェクトを実施していけることになると考えておりますので、是非そうした形で進めていきたいと思います。
また、サテライト写真を活用するなど、調査・徴収へのデータ活用を進めるべきというお話がございました。先ほど申し上げた「税務行政の将来像2.0」において、データ活用についてもお示ししております。現在、複数のプロジェクトを走らせており、実際にソフトウエアをデータ分析ツールとして国税局に配付して実装しているところです。こうしたデータ分析等はどんどん進めていきたいと考えております。
○吉野座長
ありがとうございました。
少し時間がオーバーしてしまいましたが、最後に、太田事務次官から一言お願いいたします。
○太田事務次官
先生方、本当にありがとうございます。毎年毎年こうやって御指導を頂いて、心から感謝をしております。その中でも、特に小林委員には今回をもって退任というお話を頂きました。国家、国民のためにより重要な仕事をしていただくということなので、やむを得ないというか、当然のことと思いますが、これまでお世話になったことに感謝を申し上げますとともに、大変残念だ、寂しいということだけ申し上げさせていただければと思います。ありがとうございました。
今、吉野座長からありましたように、時間が10分ぐらいオーバーしていますので、ごく簡単に、御礼ではありますけれども、お話をさせていただければと思います。
この会議には私も何度も何度も出させていただいているのですが、これだけある意味で財務省に厳しいように言っていただいていると思いますが、本当は心の中で、これだけ応援していただいている先生に囲まれてということは大変我々にとってはありがたいことであり、厳しいことを受けているという顔をして聞いていると思いますが、心の中ではにこにこしながら実はお聞きをさせていただいているというのがずっとのことであります。残念ながら、世の中では、この場で聞かされるような御意見を聞くことは極めて少なくて、そうでない方向の御意見を聞くことが圧倒的に多い。特に私はそういう仕事ばかりやっていましたので、そういう中では、大変ありがたいというか、心に響くことを言っていただけるものですから、つい局長も長官もみんないろんなことを話したくて長くなっちゃうと思うので、大体こうやって延びているのはそのことも含めてということで、そういう感謝というか、喜びの裏返しだということで延びたことをお許しいただければと思います。
1個だけ中身について申し上げさせていただければ、特に今回は、いろんな中身のことから財政の話、いつも財政の話が中心だとは思いますが、多かったと思いますが、お話の中にも出ていましたように、結局、財政の最終的な姿は、この国の経済社会なりの構造的な問題の帰結であって、あるいは政治との調整の結果ということになるわけです。予算についてもちろん我々としてはやるわけですが、予算といっても、非常に大ざっぱに言えば、例えば、社会保障予算のように、予算でどう計上してあっても、法律で一定割合の仕組みをつくっていると、予算の計上をしてあるか否かにかかわらず、その歳出は出てくる。だから、予算がなくなったから、3月31日に交通事故に遭っても手術はしませんと、そんなことはないわけです。一方で、予算を計上してあると、その予算だけは確実に全部使う。典型が地方交付税ですね。総額を決めれば、決まった額をぴったり配るということが仕組みなので、そういう意味で、同じ予算計上をしてあっても、実際上は額の問題ではなく、実際の使われ方というか、本当の予算が出ていくかどうかは経費によって相当違います。また、その予算が本当に世の中にどれだけ役に立ったかというのは、またもう1つ違う次元の話です。非常に極端なことを言えば、予算だけで物事ができているわけではないのですが、その結果として経済社会がどう動き、その結果として税収がどうなるかということが1つあります。いずれにせよ、厳しい意見をはじめ、世の中的にはいろんなことを言われますけども、我々なりには頑張ろうとするわけですが、あるいは財務省の我々の力を超えている部分もあろうかと思いますけども、でも、全てのことは、最終的な結果はやっぱり我々の最終的な責任だと思っております。頑張ったか頑張っていないかということは我々としてはあるのですが、最後は結果責任だと思ってやっていますし、これからもそう思ってやらせていただきたいと思っています。いつも本当にありがとうございます。
○吉野座長
どうもありがとうございました。
それでは、これをもちまして全ての議題を終了させていただきます。
次回の懇談会でございますけども、通例ですと、国税庁の実績評価について、10月頃に開催の予定でございます。
それから、本日の懇談会の議事内容につきましては、各委員に御確認の上、財務省のウェブサイトで公表させていただく予定でございます。
また、財務省におかれましては、今日の皆様の御意見を踏まえまして、しっかりとPDCAサイクルを回していただくようにお願いしたいと思います。
最後に、小林委員が、今、太田事務次官からもございましたが、今日で退任されます。また次の大変なお仕事も頑張っていただきたいと思いますし、これまでの長い間の貴重な御意見をどうもありがとうございました。
それでは、これをもちまして第71回の財務省政策評価懇談会を閉会させていただきます。どうもありがとうございました。
──了──