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第70回 財務省政策評価懇談会(3月8日開催)議事録

日時    令和3年3月8日(月)15:00~16:31

場所WEB会議(財務省第3特別会議室を含む)

出席者(懇談会メンバー)

懇談会メンバー

秋池玲子

ボストン コンサルティング グループ
マネージング・ディレクター&シニア・パートナー

秋山咲恵

株式会社サキコーポレーションファウンダー

伊藤元重

学習院大学国際社会科学部教授

江川 雅子

一橋大学大学院経営管理研究科 特任教授

百合

株式会社日本総合研究所理事長

小林喜光

株式会社三菱ケミカルホールディングス取締役会長

和夫

阪急電鉄株式会社代表取締役会長

田中直毅

国際公共政策研究センター理事長

田辺国昭

国立社会保障・人口問題研究所所長

山本

鎌倉女子大学教授、東京大学名誉教授

座長吉野直行

慶應義塾大学名誉教授、金融庁金融研究センター長
政策研究大学院大学客員教授

(敬称略、五十音順)

(財務省)

太田事務次官、茶谷官房長、新川総括審議官、青木主計局次長、住澤主税局長、小宮関税局審議官、大鹿理財局長
神田国際局長、阪田財務総合政策研究所長

(国税庁)

可部長官、小宮審議官、椎谷監督評価官室長

(事務局)

藤本政策立案総括審議官、大森政策評価室長

議題

(1)令和3年度財務省政策評価実施計画等(案)について

(2)「令和3年度予算編成等における政策評価の活用状況」について

議事録

○吉野座長 
 それでは、3時になりましたので、ただいまから第70回の財務省政策評価懇談会を開催させていただきます。
 今回も、新型コロナウイルス感染症の感染予防のために、委員の皆様方には御理解をいただきまして、ウェブ会議とさせていただいております。もし何か音声が聞き取りにくいとか、トラブルがございましたら、事務局まで御連絡いただきたいと思います。
 それでは、議題に入らせていただきます。
 まず議題の(1)令和3年度財務省政策評価実施計画等(案)について、藤本政策立案総括審議官から御説明をお願いいたします。

○藤本政策立案総括審議官 
 それでは、資料番号1「令和3年度財務省政策評価実施計画等(案)の概要」と題しました資料に沿って御説明いたします。
 資料の右下に通しでページ番号を付しております。ページ番号では3ページからとなります。
 4ページを御覧ください。財務省の「政策の目標」の体系図です。総合目標6「財政・経済運営」につきまして、現下の情勢下において新型コロナウイルス感染症への対応が喫緊の課題であるとの観点から、下線部を変更しております。
 5ページを御覧ください。今回の「実施計画等における主な変更点」につきましては、取組内容について、直近の内閣の基本方針等に沿ったものとなるよう見直しを行っております。
 また、近年の社会情勢を背景に、行政のデジタル化の推進が重要となっていることを踏まえ、財務省のデジタル化への取組をまとめております。
 6ページを御覧ください。政策目標を実現するための施策について、統合または新設したものでございます。いずれも政策目標9-1の関連でございます。
 まず政9-1-2「諸外国との社会保障協定への対応」について、単独の施策とする必要性が乏しくなっていることから、政9-1-1「年金制度の適正な運営を含む社会保障制度改革への対応」に統合しました。
 また、書面手続を前提として業務が行われていた共済手続をオンライン化し、適切な対応を行う取組として政9-1-2「共済手続の効率化・適正化」を新設しております。
 7ページを御覧ください。今回、測定指標を変更または新設したもののうち、主なものでございます。
 政策目標2-1「税制関係」において、税制に関する広報活動の実施状況について、総合的に判断する観点から、定性的な測定指標を設定しました。
 政策目標3-4「国庫金関係」において、従来の指標が外的要因に大きく影響されておりましたことから、より適切な定量的な測定指標を設定しました。
 8ページを御覧ください。政策目標5-3「税関手続関係」において、AEO制度が導入から一定の期間を経過したことから、新規承認数から事業者の関与割合という、より適切な測定指標を設定しました。
 政策目標6-1「国際金融関係」において、国際的な協力への参画により国際金融システムの安定やアジアにおける地域金融協力にどう貢献したかをより適切に測定するという観点から、既存の定性的な測定指標において評価していくことといたしました。
 9ページを御覧ください。「測定指標数の推移」でございます。今回の測定指標の変更、新設により、政策目標に関し、定量的な測定指標が3減となり、定性的な測定指標が2増となっております。令和3年度の実施計画等全体では、測定指標数は1減となっております。
 10ページを御覧ください。このページ以降に財務省のデジタル化への取組をまとめております。主なものを御紹介させていただきます。オンラインを活用した説明会等の開催、パンフレットの電子化やウェブサイト等を通じた情報発信といった広報活動の取組等について、財政を初め税制、国債、税関、外国為替の各施策に反映しております。
 また、行政手続の電子化の取組について、税制や税関、外国為替、共済手続の各施策に反映しております。
 その他、5G基地局の整備などへの国有財産の活用、中央銀行デジタル通貨の在り方や、たばこ事業におけるマイナンバーカードの活用の検討など、財務省の施策にデジタル化への取組を反映しております。
 以上が令和3年度財務省政策評価実施計画等についての説明となります。

○吉野座長 
 どうもありがとうございました。
 それでは、いつものように委員の先生方に御意見をいただきますが、今日は山本先生が先に御退席ということでございますので、山本先生、それから秋池先生、秋山先生の順番でお願いいたします。
 最初に山本先生、どうぞ。

○山本委員  
 御配慮いただきまして、ありがとうございます。
 私からは2点だけ、大きな点を申し上げたいと思います。
 1点目は、財務省における政策評価への取組についてでございます。従来は財務省におかれましても、総合評価というのをかなりしておられたわけなんですが、最近はあまり見受けられなくなりまして、諸外国等の例、とりわけ最近ですと、イギリスの大蔵省が生物多様性の経済学という、ある意味で大きな政策評価のレポートも出しておられますので、こういった取り組み方についても、ぜひ狭義の財政政策にとらわれず発信していただければと思います。
 もう一点は、皆さん御関心のあるコロナ関連の財政情報の整理についてでございます。財政支出は圧倒的に実は感染対策ではなくて、経済対策に相当のお金が出ておりますものですから、ここら辺の情報はぜひ整理していただいて、後世のために、財政再建との関連もございますものですから、国策に足り得るような情報の整理をお願いしたい。
 あと細かい点は、既に事務局に御提出してございますので、省略させていただきます。以上です。どうもありがとうございました。

○吉野座長 
 山本先生、どうもありがとうございました。
 それでは、いつものようにあいうえお順で秋池委員、お願いいたします。

○秋池委員  
 いろいろな意味で、コロナの影響というものを受けた昨年、そしてまた今年も全くその影響を払拭できない中での新しい年度になっていくのだと感じています。
 長い歴史の中で、こういったことがどのぐらいの頻度で、またどのぐらいの強さで起こるのかということを念頭に置いたときに、3点申し上げたく存じます。1つは財政についてです。2025年のプライマリーバランスの目標を掲げた中でのお取組となっています。致し方なくこうなっている部分もありますけれども、これをどういうふうに通常の状態といいますか、バランスを目指すような状態につくっていくのかという辺りにつきましては、もちろんコロナ対策をしながらも、当然、省内ではされていることかと思いますが、そういった立て直しのための議論というものもあるとよろしいのかと思いました。表に出ない中でもきっといろいろ考えておられるということは理解しながらも、1点目でございます。
 2つ目は、政策評価についてです。これは昨年もあったことですが、定量的に成果を追っていくことが難しくなってしまっている取組というものもあるわけですけれども、そういったものをどのように定性的に評価して、そして来年度につなげていけるのかといった辺りの工夫をしていけるとよろしいのではないかと思っております。
 3つ目に、コロナの中での働き方についてです。どうしても前線に出なければできないお仕事というのもたくさんあります。そういった中で、御負担が職員の皆様にもかかっているところがあろうかと思うんですけれども、一方、世の中は働き方改革というようなものがある中で、適正な働き方が工夫をされて、実現していくとよいと思っております。以上です。

○吉野座長  
 どうもありがとうございました。
 続きまして、秋山委員、お願いいたします。

○秋山委員 
 秋山でございます。ありがとうございます。
 何年もこの懇談会に参加させていただいておりますけれども、毎年、着実にブラッシュアップをされているというふうに今年も思いました。これをまず最初に申し上げたいと思います。
 その上で2点申し上げます。1点目は、今回、総合目標6にコロナ関連の記述が追加をされております。新型コロナウイルス感染症への対応と自然災害からの復興に取り組むということが加わったことで、総合目標6がいつにも増して非常に難易度が高いと感じております。民間人の感覚からすれば、財政・経済運営の難易度の高さを感じる中では、優先順位や順番を決めてやるという考え方がありますけれども、今起きていることが、平時の財政・経済運営と、今回のような有事の財政・経済運営、そして有事から平時への切替え、あるいは突然起きた有事への切替え、こういうことが必要であるということの認識を新たにいたしました。ですので、特に有事の場合は、何かやってうまくいかないことを懸念するよりも、説明責任をしっかり果たすことができる。こういうことだから、こういう決断、こういう方法をとったということの説明責任を果たすということに重点を置いて、スピーディーに取り組んでいく。平時モードに切り替えることができる段階で、また平時に戻すといったような、メリハリのある運営が必要だろうということを、今回、非常に強く思いましたので、まずこれをコメントさせていただきます。
 2点目ですが、秋池さんもおっしゃったように、この1年間、コロナ禍の状況を経験して、社会全体のデジタル化が前倒しに進んだ1年だったなと思います。デジタル化については、きっと今日、皆さんから御発言があると思いますので、1点に絞ってお話をさせていただきますけれども、今回いただいた資料5に、東日本大震災から10年ということで一枚まとめていただいたペーパーがあります。改めてちょうど10年たつタイミングで、ちょうど今、大規模自然災害発災に際しての復興予算ですとか、支援策の在り方の総括をするタイミングとして大変ふさわしいと思います。10年間の復興がどういうものであったかということを振り返ったときに、もちろんうまくいったこともあると思いますけれども、せっかくつくった制度で、結果としてはあまり使われていない制度、こういったものを放置するのではなく、使われなかった背景、理由、要因はどういうことなのかを総括することが非常に重要だと思いますし、10年間の実績をデータとして客観的に評価・分析するということができるのではないかと思います。
 なぜこれが大事だと申し上げるかというと、今働き方改革が進められる中で、労働生産性を問われる時代に入ってきました。デジタル化によって行政の効率化、あるいは政策の実効性ということがこれから見える化されてくるわけですけれども、今回の震災の復興支援策、あるいは予算の在り方ということは、今後、来るべき大規模災害、もちろん来ないほうがいいですが、その確率が高まっていると言われている中で、次のこういうことが起きたときの備えとしても、東日本大震災から10年のこの機会を捉えて、見直し、総括するということは、価値があるのではないかなと思いましたので、コメントをさせていただきます。以上です。

○吉野座長  
 どうもありがとうございました。
 それでは、伊藤委員、お願いいたします。

○伊藤委員 
 伊藤でございます。よろしくお願いします。
 私もこの会に長く参加させていただいていて、毎年、事務局の方の御苦労で、非常に丁寧にいろいろなことを対応されていて、報告書そのものについては、ここを修正していただきたいとか、そういうことは特に今日も申し上げることはございません。
 ただ、そういうことを見た上で改めて感じることなんですけれども、先ほど秋山さんは有事、平時という言葉をお使いになったんですが、ひょっとしたら、政策というのは常にムービングターゲットを追うようなところがあって、だからいつも有事という意味ではないんですけれども、外部環境によっていろいろなことが変わってきているんだと思うんですよね。デジタル化の話は既に出たんですけれども。
 現在、多くの人が関心を持っていて、これが財政運営だとか、それに対する対応にどういう影響を及ぼすかということを考えてみると、少なくとも2つぐらいは――もっとあると思いますけれども――大きな変化をしている部分があって、1つは、何人もの方がおっしゃったコロナの問題で、コロナによって財政政策の運営の在り方だとか、将来ターゲットとする健全化指標だとか、もろもろについてどういう修正点があり得るのかとか、どういう見方の違いがあり得るのか、ないのかということは、この政策評価の報告書に書くかどうかは別の問題として、極めて重要で、これに対する何らかの視点がないと、この先、なかなか進むのも難しいのかなと。もちろん財務省の方々はよくお考えだと思いますけれども、そういうことをいろいろな形で発信していただきたい。
 もう一つ、私が非常に気になって、ムービングターゲットじゃないけれども、大きな変化が起きている中でどう対応するかということで、大きな問題は長期金利の低下なんだと思うんですね。どうやって測るかというのはよく分かりませんけれども、よく簡便的にやられるのは、10年物国債の利回りの10年間の平均みたいなものをとって、それから消費者物価上昇率の、これまた10年ぐらいの平均をとって、差をとると、実質長期金利の簡便な数字が出てくるんだろうと思うんです。御案内のように、この20年でも、あるいは30年でも確実に下がってきているわけですよ。なぜ下がるかといったら、いろいろな背景があると思うんですけれども、財政運営にとっても極めて大きな影響があって、同じ金額の債務であっても、デットサービスに非常に大きな違いが出てくるわけですね。もちろん、だからいいということを申し上げているわけではなくて、逆に、だからこそ、今のような債務が大きい中で何となくマーケットが安定化しているわけですけれども、少しでも長期金利が上がっていくトレンドに変わっていくようなことがあれば、また大きなリスクもあるわけで、そういうことも含めて、20年前の実質長期金利の状態で議論した財政健全化とか財政の運営の在り方と現在では随分変わってきていて、その変わってきているものをどこまで表に出せるかよく分かりませんけれども、社会とか経済の環境の変化に対して、この財政運営みたいなものはどういうスタンス、どこを変えなくて、どこを調整していくのかというところはもう少し見えてくるといいのかなと。
 ただ、なかなかそれをこの報告書に求めるのは難しいというのはよく分かりますので、私の感想にすぎないかもしれませんけれども、そこだけが今回の報告書を読んで発言したい点として頭に浮かびました。以上です。

○吉野座長  
 伊藤先生、貴重なポイント、ありがとうございました。
 それでは、江川委員、お願いいたします。

○江川委員 
 ありがとうございます。私もほかの委員の方々と同じように、これまで議論したことがしっかり反映されて、評価のやり方なども前進しているのも非常にいいことだと思いました。デジタル化についても着実に取り組んでいただいていると思いました。
 少し大きな観点から3点申し上げたいと思います。
 1つは、ほかの委員もおっしゃっているコロナ等に関連して、政策の実効性に関するチェックをしっかりしていただきたいということです。新聞報道などでも、例えば休業支援金が対象者に通知がなされていないので、例えば1月の終わりの段階でも、実際には1割ぐらいしか執行されていないとか、お店に払われている協力金というのは、金額が大き過ぎてバブルだと言われる一方、大きなお店からは小さ過ぎるということです。急ごしらえでつくったから仕方がない面はあるんですけれども、せっかく税金を投じているのに、意図したような効果が上がっていないということが散見されるようなので、そういったことをしっかりチェックをして、今後に生かしていただきたいと思います。
 同じような点が、秋山委員もおっしゃった東日本大震災に関しても言われていて、この10年間に多額の税金が投じられましたけれども、必ずしも意図したような効果が上がっていません。例えば復興に時間がかかり過ぎたために、多くの住民が移転してコミュニティーの復興につながらなかったり、20メートル近くの非常に高い防潮堤を築いたので、逆に海とのつながりがなくなってしまったとか、町の魅力がなくなってしまったとか、いろいろな問題が生じているという報道を聞きます。
 もちろん個別の政策は実行官庁の責任だと思いますが、財務省も政策に対してお金を出すという意味では一定の役割があると思いますので、そういったことをしっかり総括して、政策の実効性が担保されるようにしていただければと思います。
 2点目は財政再建ということで、今回、感染対策、経済対策ということで、多額の税金が使われているわけですけれども、債務比率が日本は他国と桁違いで400%を超えております。やはりこれも再建していかなければいけないことなので、財政再建ということも少しずつ考えていただければと思います。
 3点目は、少子化についてです。よく少子高齢化ということが言われるんですけれども、少子化と高齢化というのは全然別のことだし、原因も違うし、少子化自体は、今、いろいろな対策が打たれていますが、大きなトレンドとしては変わらないと思いますし、特に労働人口が減っていくというのは、人口統計でもしっかり出ております。このこと自体は、環境の負荷とか、デジタル化を考えると、仕事がなくなってしまうことを心配している人もいるぐらいなので、マイナス面だけではない、むしろプラスと考えて、そういったことを前提としてしっかり現実的な政策を立てていくのが重要だと思います。
 ずっと気になっているのが、個々の企業でも、あるいは政府レベルでも、今までの延長で経済は成長するもの、人口は増えていくもの、マーケットは拡大していくものという前提で物事を組み立てがちだということです。人口統計を見ると、2050年、2060年というのはそうではないということが明らかになっているので、データをしっかり踏まえた上で政策をきちんと考えていくのが重要だと思います。
 それから、個別のことで2点だけ申し上げさせていただければと思います。評価書の中にデジタル化のことが書いてあって、その中で中央銀行デジタル通貨、CBDCなども検討されるということでしたけれども、こういったことも非常に重要だと思います。
 それから、最近、SDGsやESGに非常に関心が高まって、海外の政府がグリーンボンド国債を積極的に発行して、その中でグリーニアムと言われるプレミアムが発生して、発行体がむしろコストを引き下げることができているという報道もございます。こういったことも中期的に検討されていくというのもいいのではないかと思います。以上です。ありがとうございました。

○吉野座長  
 どうもありがとうございました。
 それでは、引き続きまして翁委員、お願いいたします。

○翁委員  
 私も今回の政策評価の報告書そのものについて、しっかりとしたものがまとまっていて、特に大きなコメントをするということではございません。
 特に私、今日申し上げたいのは、さっき秋山さんからもございましたけれども、今、コロナの真っ最中ではございますが、今後にかけてすごく大きな世界の変化がありますので、そういったことをしっかり踏まえて、財務省もいろいろ考えていくことが多いのではないかなと考えていることを申し上げたいと思います。
 1つはカーボンニュートラルの動きなんですけれども、これは本当に全世界的な競争になっていて、技術革新が大事なことは当然なんですが、それだけでなく社会の改革というか、社会の変革がどんどん必要になってくる。産業の構造変化も必要になってくる。そういうふうに考えますと、政府の役割とか、使われなければならない財政の支援とか、官民一体で進めていかなければならない、そういった部分がすごく大きくなってくるんじゃないかなと思っています。ですから、世界がアフターコロナで大きく変わってくるということ。
 もう一つは、今回のコロナで金融もすごく緩めているということもあって、少しボラティリティーはありますけれども、株価が高めで推移していて、その意味では、アメリカなんかでは確実にそうなんですが、日本でも恐らく格差というのが一層問題になってくると思います。日本はアメリカほどの富裕層はいませんけれども、一方で今回のコロナで大きな影響を受けていらっしゃる方々はたくさんいらっしゃって、そういう意味で、格差の問題にどのように今後対応していくかというのは、とても大事な話だと思っております。
 その意味で、これから財政再建もやっていかなければならないわけなんですけれども、どういうふうに財政を再建していくか、税制度の再設計も含めて、いろいろ議論していかなければならない課題があるのではないかなと思います。イギリスでは最近、法人税を上げるというような発表なんかもあったんですけれども、コロナ後の政策体系というのは、その意味でいろいろ変わってくる部分もあると思いますので、そういうこともにらみながら、今から検討していただくことがあるのではないかなと思っております。
 江川さんがおっしゃいましたけれども、債務残高GDP比率がこれだけの水準になってきているということは、財政再建という観点でも今後厳しい議論が必要でございますし、一方で、これだけ金融の不均衡が拡大しているということでもあると思っています。ですので、様々な点から点検をしていくことも非常に重要だと思います。この点は海外でも活発な議論が行われている部分だと思っております。
 ですので、総じて言えば、アフターコロナに向けて財務省としても考えていかなければならない課題がたくさん出てきているので、ぜひそういうことを考えながら議論していただきたいということです。
 あと細かいことを二、三、申し上げたいと思いますが、1つは、山本先生が最初におっしゃったんですが、今のコロナの対応というのは、データをしっかりとっておいて、しっかり総括していただいて、後世にこういった対応をしたということが引き継がれていくことはとても大事だと、私もそのとおりだと思っておりまして、それをお願いしたいということ。
 それから、いろいろな発信というか、広報を、しっかりこれからも財務省のスタンスを出していくということが大事だと思うんですが、それをどのように評価するかということをもう少し工夫してもいいのかなと思っています。アクセス数とか、そういうことで評価されていますけれども、実際にどのように理解されているのかということを定点的に観測するようなことで、広報がいかに国民全体に広まっていったかという効果を測っていくという努力も、今後、一層大事なのではないかなと思っております。
 最後に、デジタル化につきましては、今回の大きな政策になっておりますけれども、行政手続のところは民間にとっても非常に重要でございますので、スピーディーに、利用者の視点に立って、しっかりと進めていただきたいということを最後に申し上げたいと思います。以上でございます。

○吉野座長  
 どうもありがとうございました。
 それでは、引き続きまして小林委員、お願いいたします。

○小林委員  
 私のほうからはデジタルトランスフォーメーションの細かい話になりますけれども、今月2日に規制改革推進会議の第7回目のデジタルガバメントのワーキング・グループがあったんですが、そこで税金の電子申告、電子納付、国税申告、国税納付分野、あるいは中小法人における法人住民税、法人事業税の電子申告分野におけるオンライン利用率の引上げにつきまして議論したわけですけれども、納付手続のオンライン利用は国税全体でまだ3割未満でございます。社会全体の生産性引上げのためには、当然、これをもっと推進する必要があるかと思うんですが、とりわけリモート申告というか、申告と納付の電子化に大きなギャップがありまして、申告の多くは会計事務所によって代理申告でオンライン利用率も数値は8割を超えているという結果になっているんですが、お金そのものの納付は納税者自らが行うことが多くて、オンライン利用率は3割を切っている。この分断行動を踏まえて対応が必要じゃないかという議論がございます。
 それと、国税と地方税でのシステム統一を望む声が非常に多くて、同じサイトから利用できないのかとか、利用者IDすら異なっているという問題点も指摘されています。国税と地方税の連携によるワンスオンリーの徹底も必要ではないかという議論もされております。
 あと、電子申告利用率100%達成に向けて、既に実施されている大法人の電子申告の義務化に加えまして、中小法人の義務化も避けて通れないと思うんですが、デジタルディバイドが起こらぬような、相当な丁寧な取組が必要ではないかということも議論をしております。
 国税庁のアンケート調査によりますと、金融機関等窓口における国税納付の多くを占める源泉所得税に関しまして、中小法人の7割が金融機関で納めることを不便とは思っていないと回答しているようです。コロナ禍以前の調査ではありますけれども、金融機関に出向くことが業務上の慣行になっていて、これが問題ではないかという指摘もございます。金融機関ともよく意見交換をして、電子納付を促すプライシングなど、インセンティブも検討する必要があるのではないかと思っております。
 いずれにしましても、利用者目線での第三者チェックが実効性のある形で担保されるように、体制を含めてよく検討していただきたいという意見がございましたことを紹介いたします。以上でございます。

○吉野座長  
 どうもありがとうございました。
 角委員の前に田中委員から先に、それから角委員に戻りたいと思います。田中委員、お願いいたします。

○田中委員  
 既に皆さんから出ましたけれども、平時に戻るということなんですが、従来の平時とはもう既に違うところに戻るわけです。御指摘が幾つかありましたけれども、債務のGDP比率は大変なことになっています。従来どおりの平時の運用がこれから続くということになりますと、どう考えても財政の崖というものを意識せざるを得ない。これまではそれでも金融がゆるゆるならば何とかなるとか、MMTという議論も出ていることですから、金融が緩めば国債に対する利払いは増えないだろうというたぐいの話で来ているんですが、戻る平時が従来とは全く違う様相になっているから、これまでの財政支出、金融政策運営そのものを今の時点で点検する必要があると思っています。
 ケインズ政策というのは、我々、経済学の教科書で学んだときから、人為的な手段による不況の克服策ということであったわけですが、日本に定着したケインズ主義は決してそういうものではなかったわけです。不況を克服するためではなくて、現在ある職場を維持するための枠組みとして日本型ケインズ主義というものが定着してしまった。それから、ある時期からは金融政策について、リフレ派と言われる人たちのボイスが非常に強くなる。日本型ケインズ主義にしろ、リフレ派の主張にしろ、クローズドエコノミーを前提とした議論です。私は、どこかで日本経済が、崖か、少なくとも破綻の入り口に立たざるを得ないと思っている。このこと自体を検討材料として、アカデミーでもそうですが、もう少し広く国民的にも、今までの財政とか金融の運営の仕方に戻ることが平時なのかというのを議論する必要がある。ここでは政策評価という形で測定指標をつくっていただいて、それに基づいて議論しているんですが、平時における政策評価、測定指標というものをもう一度つくり直す必要がある。
 私どももシンクタンクの端くれですから、それならおまえたちがつくればいいじゃないかと言われることは承知の上で申し上げております。これは本当につくらなければいけない。本当に全力をかけてやらなければいけない仕事になってきている。財務省においても、当然、戻るべき平時の姿をどう設定するのかという議論は始まっていると思いますけれども、そこは役所の中にとどまるだけではなくて、広く呼びかけもされたほうがよろしいのではないかと思っています。以上です。

○吉野座長  
 ありがとうございました。
 それでは、戻りまして角委員からお願いいたします。

○角委員  
 5ページ以降の変更点等につきましては特に意見はございません。
 11ページの国有財産の新たな取組につきましては賛成です。弊社でも京阪神の大阪への移動を減少させるべく、京都、神戸、千里、西宮等でサテライトオフィスの計画をしておりますけれども、衛星都市の庁舎が活用できることになりますと、さらにリモートワーク、生産性の向上が期待できますので、あるいは最近の売却から賃貸へという動きにも合致すると思います。
 CBDCにつきましては、現在、関西で2025万博に向けまして、地域や都市のMaaSじゃなくて、大阪メトロを事務局に、JR西、そして関西の大手5私鉄が7社で関西の広域MaaSを構築しようという検討をしております。移動はあくまでも手段でありまして、移動先でどういったサービスを提供するか、あるいは、地域の文化に触れていただくかということが重要でありまして、その情報と決済がキーになります。広域MaaSですので、CBDCについても期待をするところです。
 たくさんの方がおっしゃられましたけれども、総合目標1の財政についてでございますが、コロナによります大量の財政出動については、仕方がない部分もあるとは思いますけれども、いずれ償還の議論をしていただかなければならないと思います。ただ、現下の状況で税と社会保障の一体改革を進める、特に大胆な負担の見直しは無理と言わざるを得ません。ただ、国債の平均返済期間が急に9年から7年以下になったということは、非常にリスクが高まったということだと思います。
 一方、16年のパリ協定以降、120か国以上が2050カーボンニュートラルを掲げておりましたけれども、ようやく日本も昨年の秋に追いつきまして、この3月2日には地球温暖化対策推進法に年限を明記する閣議決定がなされました。これによりEUや自由主義諸国との連携がさらに緊密になることを期待します。
 ちなみに、CO2排出を国別で申し上げますと、中国が27.6%、2位の米国が14.3%、3位のインドが7.1%ですので、この3か国で世界のCO2の50%を排出しています。日本は現在3%ですが、GDPで申しますと、中国が日本の3倍、ところがCO2は9倍出しているということですので、いかに効率が悪いのかということです。最大の排出国、中国も2060にカーボンニュートラルということを言っているようですけれども、それを確実に履行させることがキーになるということでございます。
 それと、我が国における実現に向けた課題の洗い出しが総合資源エネルギー調査会において議論がなされております。2018年のエネルギー自給率は11.8%で、2010年度、震災前の20.2%から大幅に悪化をいたしました。これは当然のことですけれども、御承知のとおり原発でございますが、この間に再生可能エネルギーの比率を6.3%引き上げるために、年間約2兆円の国民負担が必要となっております。こういった中で、目標達成には革新的なイノベーションが必要となるわけですけれども、例えば水素社会の実現、あるいはそのための海底貯留等だけでも、開発投資でありますとか、ランニングコストを確保する必要がありますので、ぜひとも財源の議論をしていただければと思います。
 先ほどのプライマリーバランスの黒字化とカーボンニュートラルに向けた途中の経過である2030年の目標を考えたときに、現在の消費税を、社会保障環境税、あるいは社会保障グリーン税に変更し、例えば10%から12%に上げていただくときに、0.5%はグリーン対策に充当するということで、持続可能な社会を実現すべきと考えます。
 以上です。ありがとうございました。

○吉野座長  
 どうもありがとうございました。
 それでは、田辺先生、お願いいたします。

○田辺委員  
 令和3年度の財務省の政策評価実施計画等に関しましては、単年度という観点からすると、この形で特に問題はないのかなと思っているところです。
 以下、3点ほどコメントでございます。
 1つは、皆様方、御指摘いただきましたように、コロナ禍、ないしはコロナ後の財政の在り方に関して、よくよく考えていかなければいけないのだろう。コロナの対策ということで経済対策が打たれておりますけれども、その検証というのは、一段落した段階で、政府全体なのかもしれませんが、検証を欠かさずやっていって、その情報を出していただくことが必要になると思っております。
 財政に関わるさらなる課題は、単にコロナというところの短期だけの問題ではなく、中長期の問題でございます。間違いなく財政の問題を難しくしているのは、社会保障の問題です。社会保障におきましては、2025年問題というのと、2040年問題というものが言われております。それに2060年問題というのが第3フェーズとして出てきているところでございます。2025年問題というのは、要するにベビーブーマーが後期高齢者になるということで、負担を2割にする方々をかなり大幅に出していただいたということで、一つ、完璧だとは思いませんけれども、展開したところでございます。ただ、2040というのは、ある意味、高齢者人口がマックスになっているところ、それから、2060ぐらいになると、人口減少が全ての年齢階層でスタートしていつつも、高齢化率が上がり続けるという時期でございます。こういう長期的なものと短期的なものとを評価の中に付け加えていただいて、短期の施策が長期の解決に果たして寄与しているのかどうかというようなことも御検討いただければと思っているところでございます。
 2番目はデジタル化の問題です。概要のところに、財務省に関わるデジタル化の施策、その指標等に関してまとめて記載していただきまして、実に様々な側面があるなという率直な感想でございます。
 ただ、デジタル化を考えていくときに、デジタル化を進めるという企業ないしは政府の問題と、それによって利益を受ける個人の問題というのがあるのではないか。そのマッチングがうまくいかないと、デジタル化自体が推進していかないという感じはございます。
 例えば、今のマイナンバーカードの取得率を見ていきますと、1年前、令和2年の3月ですと15.5%でしたけれども、この前の3月時点を見ますと、25.2%まで増えてはいます。つまり、この1年間で1割の方々がマイナンバーカードを取得するという、若干積極的な行動をとっていただいたのだろうと思います。ただ、これが多いかというと、決してそんなことはない。例えば4月1日から始まる予定の病院、診療所でマイナンバーカードを使ってオンラインで資格の確認ができるところというのは、薬局もそうですけれども、全施設の32%ぐらいでもう用意しているわけであります。カードを持つ人よりも供給している割合のほうが多いという状況で、このミスマッチが、ある意味、使いづらさを加速することによって、企業・企業のデジタル化とか、企業・政府のデジタル化は進行が左右されるのだろうと思いますけれども、政府と個人の間のデジタル化をもう少し爆発的に進行させる何らかのすべはないのかということでございます。恐らく従来ですと、税制の申告というのが一番大きなメリットだったかもしれませんけれども、それに医療情報の提供等が加わりますので、そのシンクロナイズドをした効果というのがますます大きくなるのではないか。個人レベルにおけるデジタルの便益の普及が広がっていくことを期待しているというのが2番目でございます。
 3番目は、総務省の政策評価審議会の取組の状況に比して、この実施計画、それから、今後、財務省の政策評価がどうあるべきかということでございます。財務省においては、いわゆる実績評価という形で、行っている施策を体系化して、そこに数値目標をつける。それで達成できたか否かをチェックするという方式になっております。総務省の審議会の提言におきましては、何も全ての施策を取り入れる必要はないのではないか。つまり、重要なものをきちんと評価するというターゲットをやっていいのではないかということ。それから、数値目標という形の評価方式だけに限定せずに、定性的かもしれませんけれども、もう少しいろいろな情報を出して、問題点をクリアにして、フィードバックできるような形の評価を取り入れてはいかがか、というような提言をまとめているところでございます。恐らく来年度以降、いろいろな評価のオプションが増えることになると思いますので、こういった点も踏まえまして御検討いただければと思っているところでございます。
 以上、3点ほど申し上げました。

○吉野座長  
 どうもありがとうございました。
 それでは、最後に私のほうからも何点か御意見を申し上げたいと思います。
 1つは、最近よくMMT理論と言われて、先ほど田中先生もちょっとおっしゃいましたけれども、いくら日本銀行がお金を出してきて財政赤字を埋めても大丈夫なんだという議論があるのですが、リーマン・ショックのときもそうであったように、必ず何か起こっているときにそれを正当化するという議論が出てきます。これをやっているのは、ステファニー・ケルトン先生という方で、しっかりした整理モデルはありません。言葉だけでしゃべられていまして、物すごくきつい言い方がありまして、お金をいっぱい刷るんですけれども、最後は誰かの税で必ず集める、つまりリカードの中立命題を仮定しています。だから、それがあれば、いくら今、お金を印刷しても、結局は最終的には将来の税収で戻ってくるから大丈夫なんだと。その点が全然議論されていません。ただマネーサプライが増えていいんだ、そこしか議論されていないというのは大きな問題だと思います。
 2番目は、皆様、デジタル化のことをおっしゃいまして、電子申告とかいろいろなときに使い勝手がよくなるというのが重要だと思いますので、一般の方々、例えば中小企業の方々が自分でやろうと思っても、こういうところがやりにくいという意見を反映して対応していただけるようなシステムも必要ではないかと思います。
 それとの関連では、広報活動で、これからは今までの紙ベースとかインターネットで発信するというのではなくて、ツイッターとかユーチューブとか、若い人たちがよく見るところの媒介手段を使って、財政の現状をきちんと説明していくことが重要ではないかと思います。
 また、デジタル化では、官と民の両方がやっていかなければいけないですし、 特に教育の分野では、デジタル化をうまく使えるかどうかによって相当大きな影響が出てくると思います。御承知のように、アジアの中で数理能力を比べると韓国が1番であり、2番目がシンガポールです。日本は3番目になってしまいました。昔は数理能力では、日本がいつも断トツでトップだったんですけれども、だんだんに日本のせっかくのいい教育水準も落ちてきていますから、デジタル化を契機に、教育のところも高度利用を進めていただく必要があると思います。
 3番目は、大量国債の中で、今、日本の国債はシングルAですが、前に申し上げましたが、格付けがBのランキングに落ちたときに、海外の投資家があまり日本に投資しなくなるかもしれない。そのときに金利が上がる可能性もあると思います。国債市場をどうやって、今の短期の国債を回しながら、長期国債に徐々に移していけるのか。その中で国内で消化し続けられなくなったときに、どういう形でソフトランディングさせるかというのは重要な課題であると思います。
 江川委員がおっしゃっていたグリーンボンドですけれども、これも私、ヨーロッパをいろいろ調べてみたのですが、一番の問題点は、いろいろなグリーンボンドがある。前にも申し上げました、100%グリーンのグリーンボンド、80%グリーンで20%グレー、こういうのも全部グリーンボンドと呼ばれてしまっています。ですから、グリーンボンドについては、きちんとしたグローバルに統一された格付を定義することによって、日本もそれに伴いグリーン国債を発行して、現在の国債以外に様々な国債を発行して、それが消化できるようにすることが重要ではないかと思います。
 デジタルの関係では、デジタル課税がこれからできると思いますし、環境に関してはCO2課税とか、いろいろなところでまだまだ新しい税が考えられると思います。それが日本だけではなくて、グローバルの中で欧米と一緒にやりませんと、日本の企業だけがマイナスの影響を受けますから、各国とも財政赤字が大きいわけで、それをファイナンスするために様々な税をグローバルに欧米と一緒になって考えていくことが必要ではないかと思います。
 4番目は、私、ずっとアジアのことをやっておりましたので、ASEANとかアジアの話をさせていただきます。昔は、日本はお金がある程度ありましたので、アジアの国々にどんどん投資しながら、ODAをやってきたわけです。ところが、これからは、今回のコロナでも中国は早く経済回復しておりますので、財政への悪影響は少ないわけです。そうすると、中国がASEAN、あるいは他のアジアに対して、相当お金を持ちながら出てくると思います。そういう中で、日本がアジアとよい友好関係を築いて、親日派と政治・経済を含めて良好な関係を持ちながらアジアに影響力をいかに保てるかというのが一つ重要な点ではないかと思います。
 最後はいろいろな先生がおっしゃいました、コロナの影響をきちんとフォローアップする。災害もそうですし、熊本で水害があったり、いろいろな自然災害が今までありました。こういう歳出はよかったし、こういうところは失敗したなというレビューが必要ではないかと思いました。
 どうも皆様、貴重な御意見をありがとうございました。
 それでは、これから財務省の方々から回答をいただきたいと思います。最初は政策評価全般に関しまして、藤本政策立案総括審議官からお願いいたします。

○藤本政策立案総括審議官  
 山本委員から、評価のやり方の話で、総合評価という一つのテーマを設けてレポートを作成して、総合的に評価するという話がありました。また、田辺委員からは、総務省の政策評価審議会で政策評価の在り方についての議論が行われていて、どうやって見直していくかといった話がありました。私どもとしましても、そういった政策評価をどうやって行うかについて、国民に対する説明責任を尽くすかという観点から、総務省、あるいは政策評価審議会の方々ともよく連携をとって、検討していく必要があると考えているところであります。
 その観点から、委員の皆様方に引き続き御指導いただきたいと考えております。よろしくお願いいたします。

○吉野座長  
 どうもありがとうございました。
 引き続きまして、各局から御発言をお願いしたいと思います。最初に主計局次長、発言席のほうに来ていただいて、よろしくお願いいたします。

○青木主計局次長  
 主計局次長の青木でございます。局長が今、予算委員会に出ている関係で、代理で出させていただいています。
 財政について極めて多岐にわたる御意見を頂戴して、全部消化できるかどうかあれなんですけれども、まとめさせていただいて、御返答させていただきたいと思います。
 まず最初に、今も現在進行中のコロナ、協力金の話もございました。それから、東日本大震災、または様々な災害、そういったことの今までとってきた施策、また、今、とってきている施策について、しっかり情報を集めて出して、きちんと検証していくことが大事、これはおっしゃるとおりかと思います。
 私自身、コロナの関係で協力金などをやっているんですけれども、先ほど御意見が出ていましたが、実際どういうふうに効いているのかきちんと検証して、必要な見直しはしっかり検討していかなければいけないと思っています。
 まさにコロナ禍の今の財政支出、コロナ後の正常化に向けた取組についての御意見もたくさん頂戴いたしました。もちろん今、コロナをしっかり克服するために、必要な施策はちゅうちょすることなくとっていくことは大事だと思っていますし、それによって経済を正常化させて、コロナ支出が減っていく。さらに、税収なんかも元に戻っていく。そういう中で、プライマリーバランスの目標の達成に向けて、歳出改革をしっかり継続していくということと、社会保障、特に、御意見もありました、まさに構造問題、少子高齢化、こういったものに対応していくために、社会保障の持続可能性をしっかり直していかなければいけない。この点については、今年の予算編成においても、後期高齢者の窓口負担の問題ですとか、様々な社会保障改革を引き続き継続してやっています。これは歩みを止めることなく、やるべきことをしっかりやっていくことが必要かなと考えています。
 それから、コロナだけじゃなくて、まさにコロナ後の社会が、恐らく今までの社会と全く様相が変わっているだろう。もちろん、今申し上げた少子高齢化の話もありますし、長期金利のお話ですとか、カーボンニュートラルの話ですとか、デジタル化の話ですとか、または格差の問題、様々な御意見を頂戴いたしました。それらの社会の大きな環境変化、または財政を取り巻く前提の大きな変化というのを我々としてもしっかり受け止めて、今後の具体的な財政政策の在り方についてしっかり生かしていかなければいけないと考えております。
 具体的に、当面の話で申しますと、夏頃に骨太方針2021というのがございます。ここで様々な具体的な取組をしっかり議論して、書き込んでいかなければいけないと考えておりますし、またそれに向けて、今日、先生方の中でも財政審の委員の先生方もいらっしゃいますが、各項目について、社会経済の大きな環境変化を捉まえて、政策または財政支出の在り方について、しっかり議論していかなければいけないと考えておりますので、今日は大変貴重な御意見を頂戴しましたので、しっかり取り組んでまいりたいと思います。

○吉野座長  
 ありがとうございました。
 引き続きまして、住澤主税局長、お願いいたします。

○住澤主税局長  
 本日は貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。
 翁委員と角委員、吉野座長から、経済社会の構造変化の中で、税制の在り方について今後検討していく必要があるのではないかという点に関連して、幾つか御指摘をいただきました。
 まず翁委員から格差の問題についてお話がございました。平成15年以降の金融所得に対する課税の在り方というのは、少子高齢化が進展していく中で、資本蓄積をいかに阻害しないような税制を構築するか、あるいは金融商品の間での中立性をどう確保するかという、どちらかというと効率性の視点からの検討が積み重ねられて、今の勤労所得とは分離して、フラットな税率で課税するということが行われてきているわけでございますが、一方で、御指摘のような、足元でもさらに変化が加速している中で、資本所得と勤労所得の間のバランスが今まで以上に問題になってきているという感じはいたしております。実際、この国会での税制改正の法案の審議に当たりましても、そういった御指摘を多数いただいているという状況でございます。イギリスで、法人税でありますとか、キャピタルゲインタックスの在り方でありますとか、こういう議論が始まっている。ほかの諸国でも同様の議論が出てきております。そういった辺りも横目で眺めながら、所得税全体の在り方について、効率性の視点に加えて、再分配の視点ももう少し深掘りして議論していく時期に来ているのかなという感じがいたしております。
 また、環境の関係で、角委員から消費税の引上げと、その一部を環境対策に充当という問題提起もいただきました。また、吉野先生からも、CO2課税について、グローバルな視点からの検討も含めて課題なのではないかという御指摘をいただいております。現在、経済産業省、あるいは環境省におきまして、いわゆるカーボンプライシングについて、それぞれの検討の場で議論が始まっているところでございますけれども、これらの問題、吉野先生からも御指摘いただきましたように、どうしてもグローバルな視点で検討をしていく必要がある課題でございまして、例えば炭素税一つ取り上げても、国境調整なしでの炭素税みたいなことをやった場合に、企業が立地場所を選べる中で、炭素リーケージの問題等々が出てくるわけでございますので、国際的な企業の立地に対する影響なども踏まえたところでの議論が必要かと思っております。
 いずれにしても、2050年の実質カーボンニュートラルに向けて、脱炭素関係の政策を推進していく上で、どういう政策体系が必要なのかということを、官民の役割分担も必要だと思いますし、官の関与の在り方についても、どういった手法で関与していくのがいいのか。それは規制的な手法、経済的手法、様々な政策体系があるわけですので、全体の在り方を踏まえた上で、税制の面についても検討していく必要があるのかなと思っております。
 また、デジタル課税については、もともと本質的に国際的な問題でございますので、OECDを中心に検討してきておりまして、本年の半ばまでに一定の結論を得るということで議論が行われておりますので、引き続き取り組んでいきたいと思っております。
 いずれにしても、経済社会全体が大きく変化している中で、一昨年、政府の税制調査会で中期答申をおまとめいただきましたけれども、さらにこの一、二年に起きている変化を踏まえて、今後の税制の在り方はどうあるべきかというところについては、引き続き政府税制調査会で御議論いただきたいと思っておりますので、委員の先生方にもよろしくお願いいたしたいと思っております。
 最後、小林委員から、e-Taxの義務化について、大法人は今、義務化されておりますけれども、中小法人への義務化についても避けて通れないのではないかという御指摘をいただいております。納付方法等についてはまた国税庁から御説明があるかと思いますけれども、特に申告面について申し上げますと、e-Taxで申告をしていただく前提として、日頃の記帳でありますとか、申告書の作成の部分、ここが電子化されていくということも重要な課題であると思いますので、今年、令和3年度の税制改正におきましては、電子帳簿保存法の要件を大幅に緩和いたしまして、中小企業を含めて電子申告につながる電子的な記帳がしやすい環境の整備ということにも取り組ませていただいておりますが、引き続き中小法人のe-Taxの義務化ができる環境整備に向けて、制度面からも取り組んでいきたいと考えております。以上でございます。

○吉野座長  
 どうもありがとうございます。
 それでは、大鹿理財局長、お願いいたします。

○大鹿理財局長  
 理財局長の大鹿でございます。委員の皆様には貴重な御意見ありがとうございました。
 理財局関係では4点、御指摘をいただいたと思っておりますけれども、順不同で恐縮でございますが、最後に吉野委員から国債の発行総額が極めて多額になって、これからの国債管理政策については万全を期していかなければいけないといった御意見がございました。御指摘のとおりで、令和3年度の予算における国債発行総額というのは、令和2年度に、御案内のとおり、特に1次、2次の補正で、財投債も含めた国債発行全体で100兆円の増額を余儀なくされたこともありまして、その際にどうしても急いで対応するといった要素もあって、短期国債の発行に頼らざるを得なかったといったことから、この1年以内の短期国債を増発した部分が、令和3年度に償還を迎えるために、借換債が大きく増加して、令和3年度の国債発行総額は極めて大きく、過去最大となっています。規模で言いますと、236兆円でございます。令和2年度は3次補正後までで263兆円。実は令和元年度以前が150兆円程度で推移しておりましたので、まさにコロナ禍によって国債発行、あるいは管理というのは、ちょっと違った局面を迎えたというような認識をしております。ただ、幸いなことに、7月から大量増発をしているわけですが、これまでのところ、入札は順調に推移しておりまして、超長期も含めて金利は安定的に推移しております。
 令和3年度の国債発行計画の策定に当たっては、なるべく市場への影響を緩和するという観点から、昨年の2次までの補正で増発した年間の発行額の平年度化ベースよりも減額をするということを一つの目標として取り組みまして、その中でも短期国債、TBを減額して、40年債、超長期の国債を増やすといった対応を図りました。本当に小さな一歩を踏み出したと思っております。
 いずれにしても、市場参加者との丁寧な対話、毎日のように行っておりますけれども、そうしたことを行いながら、リスクを過度にためないような形への国債の残存構成に時間をかけて展開していければと思っております。いずれにしても、日々努力していくということに尽きるんだろうと思います。
 グリーンボンドについての御意見を江川先生、吉野先生からいただきました。言うまでもないことですけれども、気候変動問題というのは日本全体としても取り組んでいかなければなりませんし、グリーンボンドの発行、あるいは市場育成というのもそうした取組に資するものだと考えております。ちなみに、日本におけるグリーンボンド市場というのは、諸外国と比較してもそれほど遜色のない、私どもが把握している限りでは世界で第9位だと認識しておりますけれども、そのような状況にはなっているということであります。
 グリーン国債といった御議論もありましたけれども、直ちに発行するということは考えておりませんが、私どもとしては、財投編成などの機会を通じて、財投機関債であるとか、政府保証債を発行している機関の中で、グリーンボンドの発行実績がある機関もありますので、そうした機関における発行、あるいはまだ発行していないけれども、グリーン支出がある機関の発行が行われていくことを期待し、また、そういったことを慫慂しております。
 グリーン国債について、私どもが若干慎重な検討を要していると考えている理由を、この場の機会を借りてお話いたしたいと思いますが、幾つか越えるべきハードルはあるのだろうと思っております。
 1つは、先ほどグリーニアムというお話もありましたけれども、確かにそういったグリーンボンドに対するプレミアムもできているようですが、やはり投資家向けには他の国債と別の銘柄、独立したグリーン国債として、一定規模以上のロットで継続的に発行する必要があると思います。そうすると、どうしてもどの事業をグリーン関連の歳出と定義するのかという問題もありますし、どちらかというと、先ほど吉野先生からのお話もありましたけれども、グリーン支出に対しての基準というのは、厳しい方向に向かっていると認識しております。グリーンウォッシュとの批判を受けては国際的な信用にも関わりますので、支出面の精査が大事だと思いますし、一方で、日本の国庫支出金のシステムの中で、グリーン支出といった使途に充てられているかどうかというトレーサビリティーが確保できるかという問題もあろうかと思います。そうした点が確保されないと、信用の揺らぎ、あるいは流動性の低下といったことも考えられますので、かえってコストがかかるという事態も招きかねないと思っております。
 また、世界標準のグリーンボンドということになりますと、海外の外部認証機関の認証を取得したり、事後チェックを受けるという必要がありますけれども、JGBを発行するのに、例えば欧州の認証機関の許可、あるいは監査を受けるといった問題をどのように考えるべきかといった問題があるのではないかと思っておりまして、私ども、決して批判的に思っておりませんけれども、各国の動向であるとか、各国国債発行当局の考え方などをよくフォローしている状況でございまして、引き続き勉強してまいりたいと考えております。
 3点目で、角委員からサテライトオフィスについて御評価をいただくコメントをいただきました。サテライトオフィスにつきましては、昨年の経済対策で5Gの基地局の設置のための国有財産の活用と併せて経済対策に盛り込ませていただいたものですけれども、御案内のとおり、サテライトオフィスの整備というのはテレワーク推進の課題の一つでありますので、全ての企業がテレワーク環境が整っているわけではないでしょうから、各地方都市における庁舎というのは、比較的、人の集まるところ、利便性の高いところに庁舎がございますので、そういった庁舎における利用可能なスペースに、サテライトボックスのようなものを設置して、サテライトオフィス環境の整備の一助にしたいと考えていたものであります。民間事業者からの引き合いもありまして、私どもとしては有償でそのスペースをお貸しして、民間事業者がボックス型のサテライトオフィスを設置・運営していくというものでございます。
 なお、こういったサテライトオフィス、あるいは5Gのほかにも、現在、コロナ禍の中にありましては、PCRの検査会場でありますとか、ワクチンの接種会場等のニーズも地方自治体からかなり伺っておりまして、国有財産の積極的な提供を行っているところであります。
 最後に、CBDCについて、江川先生、角先生からお話があったと思います。CBDCは中央銀行デジタル通貨でありますので、日本銀行でまず実務的な検討がなされております。御案内かと思いますが、昨年10月にCBDCへの取組方針が日本銀行から公表されております。そこでは幾つかの原則を踏まえるということになっておりますけれども、この公表後に、2021年度の早い時期に実証実験が開始されるということでありまして、私どもとしては、そうした実証実験から得られる知見を踏まえながら、基本的な機能や特性の確保の在り方とか、マネロン等への対応といった幅広い視点について、日本銀行等と連携しながら検討を深めていく予定にしております。
 以上でございます。ちょっと長くなりまして恐縮でございます。

○吉野座長  
 ありがとうございました。
 それでは、神田国際局長、お願いいたします。

○神田国際局長  
 大変貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございます。
 私からは、デジタル化の話が多くの先生方から、具体的には角委員からCBDCについて、吉野座長からデジタル課税について出ましたところ、いずれも主税局長、理財局長から一言ありましたので、それに付言させていただく形で簡潔にやりたいと思います。
 まずデジタル通貨につきましては、世界中で関心が高まっているわけですけれども、やはり金融技術革新の潜在的な便益を享受しなければいけない一方で、様々なリスクに対応する必要があるということで、これまでG7、G20を初めとする国際会議で積極的に議論に参加してまいりました。
 大きなフロントとして2つあって、一つはフェイスブックのリブラ、今はディエムと名前を変えていますけれども、民間企業が発行するグローバル・ステーブルコインというもので、問題としてはマネーロンダリングとか不正な金融、投資家保護、サイバーセキュリティーの問題、これらをどうするかという課題です。
 もう一つは、実証実験を進めている中国人民元といった中央銀行が発行するCBDC、角委員がおっしゃったものであって、こちらはプライバシーのリスク、サイバーセキュリティー、金融の安定性、それから金融政策の有効性にも影響があるんじゃないかと言われております。
 こういった議論を重ねまして、今も続けているのですけれども、とりあえず昨年の10月にG7の財務大臣・中央銀行総裁会議において、1つ目のグローバル・ステーブルコインについては、そのリスクに十分な対応がなされるまではサービスを開始してはいけない、つまり、適切な設計、あるいは適用基準の遵守を通じて、法律、規制、監督上の要件に十分対応できるまではサービスをしてはいけませんよということが決められました。
 また2つ目のCBDCについては、透明性、法の支配、健全な経済ガバナンスにコミットして、先進国の中銀デジタル通貨の取組を促進していくべきでありますけれども、そうではないところについては注意をしなければいけない、こういったコミットメントをするよう各デジタル通貨には注意喚起をしなければいけないというのを日本からも主張して、その旨、共同声明に入っているところでございます。引き続き各国と連携して、よりよいガバナンスをつくっていきたいと思っております。
 デジタル課税、こちらは主税局長から一言ありましたけれども、一つ大きな動きがあったのは、先日のG20で、アメリカがずっとGAFAといった多国籍企業が得たお金をサービスが提供される市場国に分配する、いわゆる第一の柱というのに対して懸念を持っていたのですけれども、その議論を含めて、今年の夏までに合意を得るような議論に参加してくれるということを表明しました。これができますと、国家がキャプチャーできていないものが公平な形で税源になるとともに、各国の課税スペースも、先ほどイギリスが増税という話がありましたけれども、そういったものもやりやすくなりますので、非常に期待して、一生懸命議論に参加していくことを考えております。
 吉野座長からもう一つございました、アジアの影響力を何とか確保するという点ですが、確かに結構大変ですけれども、もちろん我々、蓄積もありますので、最大限の努力をしております。
 最近、ちょっと悩ましいのは、世界中で権威主義国家が台頭したり、民主主義の中でもポピュリズムが跋扈する中で、一般的に市場経済が後退していく傾向がみられる。例えば、吉野座長を含めて先生方が御苦労なさってきた中央アジアでも非常に民主主義が動揺している。御存じのとおり、つい先日、ミャンマーでああいうことが起こってしまいました。権威主義体制同士は親和性があるものですから、うまくやらないと、そっちに寄っていってしまう。しかし、我々は正しい価値を守らなければいけないという中で、そしてまた、当然、日本経済が困らないような形の世界にしなければいけないという中で、悩みながらやっている次第でございます。以上です。

○吉野座長  
 どうもありがとうございました。
 それでは最後に、可部国税庁長官、お願いいたします。

○可部国税庁長官  
 可部でございます。
 小林委員から規制改革推進会議のデジタルガバメント・ワーキンググループでの御議論、また、本日の御議論の中で貴重な御指摘を賜りまして、誠にありがとうございます。
 申告・納税の電子化につきましては、まず電子申告については、納税者の負担を軽減し、また、私どもの入力の事務を効率化し、さらに感染防止を進めるということで、今年の確定申告でもe-Taxの推進を第一に挙げさせていただいております。現在、法人が9割、個人が6割の利用率でありますが、今年の確定申告はまだ中間段階でございますけれども、来場者が減少する一方で、e-Taxとりわけスマホ申告が大幅に伸びているという状況があります。これを引き続き努力していきたいと思っております。
 他方で、御指摘ございましたように、納税のキャッシュレス化につきましては、私ども、振替納税、ダイレクト納付、インターネットバンキング、クレジットカードと、考えられる限りの手段を色々用意させていただいていますが、残念ながら実際にこのキャッシュレスを利用していただいている方が3割を切っているということで、申告との間にギャップがございます。これはやはり先程アンケートの御紹介がありましたように、利用者側の選択によっている部分があるわけですけれども、このキャッシュレス納付割合を令和7年度までに4割に引き上げるという目標を決めてございます。これに向けて、一つは今年からこうした手続の開始をオンラインで申し込むことができるようにしたことと、それから、今年の税制改正で、来年からスマホ決済サービスも利用できるようにいたしました。さらに、金融機関の方もこの窓口手続の削減についてはコスト縮減のインセンティブがございますので、御指摘のとおり、金融機関ともよく意見交換をしてこのキャッシュレスを経済の効率化という観点からも是非進めていきたいというふうに思っています。
 その際、御指摘のありました国と地方の連携が極めて大事だと思っております。特に金融機関に伺いますと、1,700の地方公共団体の納付手続がバラバラでシステム対応がすごく大変だというお話がございました。これについては、新設されるデジタル庁の主要任務の一つとして、自治体の17業務に関してデジタル庁が調達するガバメントクラウドを活用した標準準拠システムを開発するということで、既に内閣官房の方で取組がスタートしております。地方税については、第1グループ、優先グループに入っておりまして、今年の夏までの間にこの標準仕様を作成・公表するということになっています。さらに、私ども国税当局と地方税当局、システムベンダーが入った連絡協議会がありますので、そこでよく国と地方の連携を図ってまいりたいというふうに思っております。
 それから、利用者目線での第三者チェックという御指摘がありました。これは先週の「第7回デジタルガバメント・ワーキンググループ」でも御指摘がございまして、全くそのとおりだと思っております。他省庁の事例を勉強いたしますと、先週のワーキンググループでも御紹介がありましたように、プロトタイプの段階でユーザーテストをやってみるというような工夫をしておられるところもありますので、そうしたものも含めて、また、金融機関からも直接意見を伺って、第三者チェックということを具体的な形にさせていただいて、「オンライン利用率引上げの基本計画」を見直して改めて提出させていただきたいというふうに思っております。
 それから、先程、主税局長の方から中小法人の電子申告の義務化について説明がございました。今年の10月にはインボイス事業者の登録が開始になりまして、令和5年10月からいわゆるインボイス制度が開始になります。このインボイス制度への対応を電子インボイスで行うことによって会社の経理事務や納税事務が全て電子化されると大幅な生産性の向上に繋がるのではないか、逆に、そうしないと事務手続の負担が懸念されるというような御指摘があるのではないかという問題意識を持っております。電子インボイスについては、欧州やシンガポール等ではPEPPOL(ペポル)という標準仕様がございまして、日本にも電子インボイスの標準仕様の構築のための民間協議会ができました。ここでPEPPOLに準拠した標準仕様、これを普及させて、それに基づいたソフトウェアが開発されるということを目指しておられます。協議会には政府もオブザーバーとして入っておりますので、是非これを推進して、中小企業の事務負担に配慮した形でこの経理の電子化、そして、中小企業を含めた電子申告を進めていきたいと考えております。よろしくお願いいたします。

○吉野座長  
 どうもありがとうございました。
 それでは最後に、太田事務次官から総括の御意見をいただきたいと思います。

○太田事務次官  
 ありがとうございます。いつもいつも先生方には大変貴重な御意見をいただいて、また今日もこういうお忙しい折にもかかわらず、いろいろと御指導いただいて、本当にありがとうございます。
 総じて言えば、先生方の御意見、基本的にはコロナの今の状況で、それに対する対応と、先を見られる先生方ですから、その先のことをよく考えるようにと。今の菅政権、最初にデジタル、グリーンだと言って始まったわけですが、基本的に先生方のおっしゃっていることも、デジタルの話と、グリーン、カーボンニュートラルの話というのが、先々を見据えてということでは大きいテーマだったと思いますし、我々としても常にそういうことが最大のテーマだという意識を持ってやらせていただいているつもりです。
 その上で、このメンバーでお話をいただくと、大変ありがたいことに財政再建、あるいは財政の健全化について大変御理解もあるし、御理解がある分、余計厳しく頑張れという叱咤激励を受けるということだと思っているんですが、本当にそれはおっしゃるとおりで、コロナという状況なので、それが大変目立っているということはあるわけですが、先生方お分かりのとおり、コロナだからこれだけ悪くなった面があることは事実として、それ以上にもっと根本的に、先生方の話に出たように、中長期的な人口構造の問題、あるいは20年にわたって長期金利が低下しているとおっしゃられましたけれども、そういう経済なり社会構造の問題の中でどうするかというのが最大の問題だということだと思っています。そういうことは当然、念頭に置いて問題意識を持った上でやっていかなければいけないし、そういうことで仕事をしてきたつもりなんですが、一方で、その点は時々事件が起きると、今のコロナは残念ながら東日本大震災、あるいは金融危機、その前の阪神・淡路大震災に比べると、事態の収拾が一瞬ではなくて非常に長く続いてしまっているので、そういう中で、目の前のことに忙殺されている人が――私も含めてなんですが――大変たくさんいて、なかなかその先のことがちゃんとできていないということは本当にあると思います。
 このポストに来る前に主計局長を2年やらせていただいていて、本当は最後の半年に、いろいろ中長期的なことをやろうと思っていることがあって、そういう議論をしかけようと、省内的には多少しましたけれども、それをやろうと思った頃にコロナが発生して――というのは自分の弁解になってしまうので、弁解なんかしても恥ずかしいのですが、先生方の話の中に出た中長期的な金利の低下の状況、かつてこれまでこういうことが財政健全化だ、財政再建だ、あるいはケインズ主義、経済学からしたらこうだと言われたものが、いろいろなものが相当崩れてしまっていると思います。しかも、財政を立て直すためには、先生方に御意見をいただくことは当然のこととして、ただ、むしろ先生方ほどは御理解がいただけない方がたくさんいる中で、そのたくさんいる方にどうやって御理解いただけるかということが最大の課題だと思っていますので、そういう意味で、もともとの発想なり根本的な考え方自体を、これまでやってきたことではない、あるいは、これまでやってきたことでも正しいことは、それはそうなんですが、それがごく普通の方に、あるいは政治の世界で理解いただけるような説明というか、構造をつくっていくことが大事だと思っています。なかなか表立って先生方に御提案、あるいはそれをやることが必ずしも結果としてうまくいかない場合もあるので、御理解がいただけない、あるいは何をやっているんだという御指摘はあると思っていますが、御指摘をいただければいただけるだけ、ある意味で先生方が応援してくださっていると私どもは思っていますので、ぜひこれからも引き続き御指導、御鞭撻をよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。

○吉野座長  
 太田事務次官、どうもありがとうございました。
 今日、先生方からいただきました貴重な御意見を、財務省の側にいたしましても、実施計画の中に入れていただいたり、今後の政策評価の在り方、施策の見通しの活用など、しっかりとPDCAサイクルを回していただきたいと思います。
 通常ですと、6月が次回の政策評価懇談会の開催予定でございます。具体的な日程に関しまして、また議事内容につきましては、改めて事務局より御連絡させていただきたいと思います。
 今日は第70回の財務省政策評価懇談会に御出席いただきまして、どうもありがとうございました。これで終了させていただきます。ありがとうございました。



──了──