1日時 令和2年10月20日(火)10:27~11:58
2場所WEB会議(財務省第3特別会議室を含む)
3出席者(懇談会メンバー)
秋池玲子 | ボストン コンサルティング グループ | |
秋山咲恵 | 株式会社サキコーポレーションファウンダー | |
江川 雅子 | 一橋大学大学院経営管理研究科 特任教授 | |
翁百合 | 株式会社日本総合研究所理事長 | |
角和夫 | 阪急電鉄株式会社代表取締役会長 | |
田中直毅 | 国際公共政策研究センター理事長 | |
田辺国昭 | 国立社会保障・人口問題研究所所長 | |
山本清 | 鎌倉女子大学教授、東京大学名誉教授 | |
座長吉野直行 | 慶應義塾大学名誉教授、金融庁金融研究センター長 | |
(敬称略、五十音順) | ||
(財務省) 太田事務次官、茶谷官房長、矢野主計局長、住澤主税局長、源新関税局審議官 | ||
(国税庁) 可部長官、小宮審議官、椎谷監督評価官室長 | ||
(事務局) 藤本政策立案総括審議官 |
4議題
(1)令和元事務年度国税庁実績評価書(案)について
(2)令和2年度財務省政策評価の事前分析表の一部変更(案)について
5議事録
おはようございます。1、2分早いようですけれども、皆様お集まりですので、今日は12時ぴったりに終わらないといけないものですから、少し早めに始めさせていただきたいと思います。ただいまから第69回財務省政策評価懇談会を開会させていただきます。
今回も、新型コロナウイルス感染症の感染予防のために、委員の先生方には御理解をいただきまして、ウェブ会議とさせていただきたいと思います。時々音声が途中で聞こえなくなったり、トラブル等がございましたら、事務局まで御連絡いただきたいと思います。
それでは、早速議題に入らせていただきたいと思います。
議題は、国税庁の令和元事務年度の実績評価書及び財務省の令和2年度の政策評価の事前分析表の一部変更、この2つでございます。
まず最初に、藤本政策立案総括審議官から、この2つの議題に関しまして説明いただきたいと思います。それでは、よろしくお願いいたします。
○藤本政策立案総括審議官
初めに、令和元事務年度国税庁実績評価の概要について御説明いたします。
右下に付しているページ番号で5ページを御覧ください。「国税庁の使命」と「実績目標等」の体系図です。国税庁においては、国税庁の使命を踏まえ、3つの実績目標(大)、4つの実績目標(小)、6つの業績目標を設定しております。
評定結果は、Sが「目標達成」、Aが「相当程度進展あり」となっております。なお、括弧内は前事務年度の評定であり、四角囲みは前事務年度と異なる評定となったものを示しております。
評定方法については6ページに詳細がありますが、前事務年度と変わっておりませんので、説明は割愛させていただきます。
7ページを御覧ください。評定区分ごとの集計結果です。元事務年度においては、Sが5、Aが8となっております。
8ページから目標及び施策ごとの評定結果を前事務年度と比較した一覧となっております。前事務年度から評定が変更となったものに黄色く色付けしております。このうち、前事務年度と異なる評定になった目標について御説明いたします。
11ページに飛んでいただきます。まず業績目標1-2-1「広報・広聴活動等の充実」についてです。測定指標「国税の広報に関する評価」について、前事務年度は目標を達成できませんでしたが、消費税軽減税率や確定申告関連情報など納税者ニーズに応じた適時の情報発信に努めた結果、元事務年度は目標を達成しました。その他全ての施策で目標を達成したため、「S 目標達成」としました。
次に、2段目の業績目標1-3-2「期限内収納の実現及び滞納の整理促進への取組」です。前事務年度は全ての測定目標で目標を達成していましたが、元事務年度は、測定指標「滞納整理事務の割合」及び「集中電話催告センター室における催告回数」が目標値を達成できませんでした。この要因は、新型コロナウイルス感染症の影響により、やむを得ず外部事務等を抑制する措置を取ったことによるものですが、コロナの影響を受けていない上半期の滞納整理事務割合は目標値を上回ったこと、催告センターの催告回数は目標値の50%を超えたことなどから、当該業績目標の評定は「A 相当程度進展あり」としました。
なお、前事務年度からの評定の変更はなく、この資料にはありませんが、業績目標1-3-1「適正申告の実現及び的確な調査、行政指導の実施」についても、滞納整理と同様に新型コロナウイルス感染症の影響により抑制措置を取ったことで、測定指標「調査関係事務の割合」が目標値を達成できませんでしたが、上半期の実績は目標値を上回っていることから、当該業績目標の評定も「A 相当程度進展あり」としています。
次に、3段目の業績目標1-3-3「不服申立てへの取組」です。こちらも前事務年度は全ての測定指標で目的を達成していましたが、元事務年度は、測定指標「再調査の請求の3か月以内の処理件数割合」が目標値を達成できませんでした。これは3か月経過直前の新たな証拠の提出など納税者側の事情によるものであり、こうした事案を除いた割合は目標値を上回ったことから、当該業績目標の評定は「A 相当程度進展あり」としました。
次に、4段目の実績目標(小)1-4「国際化への取組」です。施策「共通報告基準(CRS)に基づく金融口座情報の情報交換の的確な実施」及び「国別報告事項(CbCR)の情報交換の的確な実施」について、これらの情報交換は平成30年から開始されたばかりであることから、前事務年度は評定を「A 相当程度進展あり」としていましたが、元事務年度も引き続き全ての施策の評定で目標を達成したため、「S 目標達成」としました。
最後に、一番下の段の実績目標(大)2「酒類業の健全な発達の促進」についてです。施策「酒類の公正な取引環境の整備」について、平成29年から施行された「酒類公正取引基準」の定着を図る必要があるため、前事務年度は評定を「A 相当程度進展あり」としましたが、元事務年度も引き続き全ての施策の評定で目標を達成したため、「S 目標達成」としました。
以上が令和元事務年度国税庁実績評価の概要についての説明となります。
続きまして、令和2年度財務省政策評価の事前分析表の一部変更について御説明いたします。
12ページを御覧ください。政策目標1-1について、測定目標の目標値を骨太の方針2020に沿って変更を行います。
次に、13ページを御覧ください。政策目標5-2について、骨太の方針2020及び成長戦略フォローアップを踏まえ、経済連携交渉に係る記述の変更を行います。
以上が令和2年度財務省政策評価の事前分析表の一部変更についての説明となります。
私からの説明は以上でございます。
○吉野座長
どうもありがとうございました。簡潔に御説明いただきました。
それでは、いつものように、あいうえお順に委員の先生方から6分以内でコメントをお願いしたいと思います。
最初に、いつも恐縮ですけれども、秋池委員からお願いいたします。
○秋池委員
秋池でございます。
令和元年度の国税庁の評価につきましては、妥当なものと私は考えております。
今年度については、コロナの影響などにより、特に国税庁の前線で実務に当たるような職員の皆様には御苦労があると思います。それは、財務省全体にもそういうところがあろうかと思っております。そういった職員さんたちがモチベーション高く、志高くお仕事に取り組んでくださるということが非常に国民にとってもありがたいことですので、そのような状況が続いていくことを願っておるところです。
それからもう1つ、今年度の大きな変化といたしましては、かねてから言われていることではありますけれども、デジタル化の推進ということが強く訴えられていて、既に報道では確定申告書の捺印を省略するようなことも検討されているように聞いております。
それ以上に、マイナンバーカードが日本のデジタル化の一つの大きな鍵になるというふうに目されていて、このことは政府全体にとっても、それから国民にとってもとても重要なことだと思っています。そういった中で財務省の取り組みも一つの鍵になるということで、重い責任を負って大変だと思いますけれども、いい形で進むといいと思っています。
ここで特に気をつけなければいけないのはセキュリティの問題でありまして、このことに何かがあるといろいろなことが全て止まってしまうというようなことも起こりかねませんので、そういった事態にならないように、非常に慎重なシステムになっているというお話はしばしばお伺いするところではあるんですけれども、そういったところにさらに目配りをしながらお取り組みいただければと思います。以上でございます。
○吉野座長
簡潔にどうもありがとうございました。
それでは、秋山委員、お願いいたします。
○秋山委員
秋山でございます。おはようございます。
まず、国税庁の実績評価につきましては、私も今回はコロナの影響下での評価という特殊要因があったことを加味しても、おおむね適正に評価をされているというふうに判断いたします。今後のことにつきましては、今、秋池さんからも御発言ありましたし、多分この後皆様も多くの方が言及されるのではないかと思いますが、やはりデジタル対応のさらなる推進ということが大きなテーマになろうかと思います。
今、菅内閣がデジタル化に大きく舵を切っているということによって、例えば国税庁の今回の実績評価の中でも、もしデジタル化の対応がもっと進んでいれば、またもう少し違った結果が出たかもしれないと感じられる部分も散見されます。ぜひ国税庁のみならず財務省の率先垂範を進めていただきたいというふうに期待をしております。
デジタル化に関しましては、ポイントが2つあると思っております。まず1点目は、いわゆるデジタル化というのは、これまではどちらかというと紙ベースでやっている現行業務をオンライン化するということが主にデジタル化と言われていたと思いますけれども、今言われているのはまさにデジタルトランスファーということであって、具体的なことで言えば、例えば官庁に提出する紙の資料に同じ内容を何度も別の紙に書いたり、同じ紙に同じ情報を何度も手書きをしたりとかといった同じ情報を何度も別の画面に入力するようなデジタル化では駄目だと思います。
そのためには、先ほど言及があったようなマイナンバーを活用していくということだと思いますし、さらに、財務省の中の部門間、あるいは省庁にまたがるような共通のデータを活用していくということが非常に重要になってくるというふうに思います。
現行組織にあまりこだわらずに、まずデータを軸としてどのようなデータや業務の流れをつくっていくかという再設計が必要になってくると考えますので、この辺りの取組は大がかりになるかもしれませんが、できることから少しずつ進めていくべきことと思います。
それから2つ目ですけれども、政策評価におけるEBPM(Evidence-based Policy Making)がずっと言われております。ただ、これに関しては、エビデンスとなるべきデータが活用できる形で蓄積されてこなかったという課題をずっと抱えてきたという認識でおります。ですので、これまではできる範囲で数値目標とその評価をやろうということにとどまっていたのではないでしょうか。
データを活用できる状態にするということは少し時間がかかると思いますけれども、まずはデータを使える状態に蓄積していくということが重要になります。これに関しては、今、データを活用しようというときにボトルネックになっているのは、実は蓄積されたデータを使える状況にクリーニングするという作業に膨大な人員をかけざるを得ないということが、デジタル化、あるいはデータの活用のボトルネックになっている点です。
この点においては、過去データについては割り切って捨てるものは捨てて、ある時点以降のものをしっかりと整備するというようなアプローチも必要な面もあろうかと思います。これまで、やりたい、やるべきと思っていてもなかなか手をつけられなかったことに取り組める千載一遇の機会だと思いますので、飛躍の時期にしていただきたいと思っております。以上です。
○吉野座長
どうもありがとうございました。
続きまして、江川委員、お願いいたします。
○江川委員
今回、1月から3月まではコロナの影響がいろいろあったと思いますし、4月以降の評価作業に関しても、困難な中でしっかり作業を進めていただいたことに感謝申し上げます。それから、以前打合せのときに、ダイヤモンド・プリンセス号の隔離が必要な方々を国税庁の研修施設で受け入れたというお話も伺っておりまして、私たちが知らないことも含めてこの間いろいろ大変なことがおありになったと思うので、その中でしっかり国の政策に取り組んでこられた皆さんに本当に感謝申し上げたいと思います。
評価に関しては全体として妥当だと思いますが、4点コメントさせていただければと思います。
1つは、1-1-5、行政サービスのデジタル化推進というので、196分の42(42/196)のところですけれども、30年度、元年度ともにS評価になっております。この評価の枠組みというのは、計画を立てて、それと比較して達成したかということで評価をしていくものなので、それを上回ったということでS評価ということ自体はよろしいかと思います。でも、今、秋池委員、秋山委員もおっしゃったように、デジタル化というのはまだまだやることがたくさんありますし、行政サービスのデジタル化の推進というのは本当に大切なことですので、より挑戦的な目標を掲げて、S評価ということで満足せずに進めていただければと思います。
2点目は、1-2-3-1-A-5、e-Taxの利用満足度という項目でございます。今回、目標とその実績の比較に関して、残念ながら元年度は実績が目標をちょっと下回ってしまったばかりでなく、実績値が去年の81.5から今年の74.2と下がってしまったんですね。これはちょっと残念なことなので、原因をぜひ分析して改善に役立てていただきたいと思います。
拝見したところ、国税庁が改善を図ることができる項目は、79.4ということで目標にかなり近いところまで来ているので、そういう意味ではコントロールできなかったことによるものが多いのだとは思いますけれども、霞が関全体で旗を振るということも含めて、ぜひ改善に取り組んでいただきたいと思います。
それから、3点目は国際化なんですけれども、1-4-2、共通報告基準(CRS)の情報交換、それから1-4-3、国別報告事項(CbCR)は、いずれもAからSになっておりまして、国際化の取組全体もS評価に上がっております。これ自体は実際に参考指標などを拝見しても目標を大きく上回って、あるいは前年度を大きく上回っているものもございますので、評価としても妥当だと思いますし、それから、国際化に対してしっかり取り組んで、S評価になったということもよかったなと思っております。
ただ、国際化の取組というのはますます重要になっていますし、特にデジタル化の進展によって国外と国内の境界が曖昧になって、政策的にも難しい面が出てきていると思います。既存のいろんな法制度との整合性も重要ですけれども、日本は島国なので国内と国外の、例えば日本にいる外国人の扱いなどがいろいろ難しくなってくるのではないかなと思います。今後いろいろな問題が出てくると思いますが、できるだけ今のボーダーレスの状況を踏まえて、例えば日本人と日本に長く暮らしている外国人の間で不合理な区別があるとか、そういうことがないように国際化の取組を持っていっていただければと思います。
それから4点目は、2-2の項目で酒類の公正な取引環境の整備、ページとしては196分の131(131/196)です。酒類関連の取組も全体としてAからSになっておりまして、今申し上げた2-2もS評価になっているんですね。ただ、数字を見ると、実績値が昨年100だったのが96.4になっていて、目標を上回っているのでS評価で問題ないとは思うんですけれども、ちょっと下がってしまったのがどうしてなのかなというのが気になりました。
でも、全体として妥当な評価ができていると思いますし、先ほど申し上げたように、コロナの大変な中で、税務署の業務、それから評価作業を進められたことに関してはお礼を申し上げたいと思います。以上です。
○吉野座長
江川委員、どうもありがとうございました。
それでは、続きまして翁委員、お願いいたします。
○翁委員
私も、今回コロナの影響で幾つか目標を下回っているものもございますが、全体としては適切な評価であると思います。
私が今日申し上げたいことは、皆様とちょっと重複いたしますが、やはりデジタル化のことでございます。菅政権になってからますます加速しましたけれども、大手銀行なんかでも通帳をなくすということが発表されていますし、様々な領収証とかがデジタルで発行されるようになり、また、事業者はクラウド会計などを取り入れて一気に電子化を進めて、記帳を簡明なものにしようとしているというような、ものすごく大きな環境変化が出てきていると思います。
こういったデジタル化だけでなく、人々の働き方も副業とかといった形で多様化してきていて、個人の事業主といった形で新しく納税をするというような人たちも増えてくるのではないかと思っております。そういった中で、税務当局がスムーズにデジタル化を進められるかということは、本当に非常に重要な課題になってきていると思っております。
利用者サービスを向上させることと同時に、税務行政をきちんと確実に不公平感なく執行するとともに、税務行政を効率化させるという視点で、とにかく早め早めの検討をしていただくことが必要になるというふうに思っております。
例えば、自治体とかの納税がペイジーなどで進むようになってきています。今まで紙の支払い済みの納付書とかを活用するようになっていたことがどんどんキャッシュレス化していって、そういった中で銀行の通帳なども紙がなくなっていく。そういったときにどういうふうに支払いをきちんと証明していくかというような一つ一つのことについて、いろいろ利用者の戸惑いとかが出てくるのではないかと思っております。
その意味で、幾つかデジタル化での観点があると思うんですが、1つは、さっき秋山さんもおっしゃいましたけれども、データを自治体なども含めてしっかりと連携していくということが大事だと思いますし、2つ目に、紙をデジタルに置き換えるということではなくて、仕事の仕方自体を効率化していくということでデジタル化を進めていくということ。
3つ目は、どのようにこれからデジタル化が進んでいくのかということについて見える化をしていくということがとても大事ではないかなと思っています。マイナポータルなども使われるようになっていきますけれども、それによって私たちの納税がどういうふうに変わっていくのかということをしっかり広報していただくということも、とても大事なことではないかと思っております。
それから、適正かつ公平な課税ということでも、既にいろいろお取り組みされていますけれども、ますますデジタルプラットフォーマーの動きとか、P2Pでのシェアビジネスの拡大とか、いろいろな通貨自体もデジタル化してくるというようなことで、本当に様々な課題が山積していると思います。国際的にもイニシアティブを取ってこられていると思いますけれども、一層こういった動きはグローバルな動きでもございますので、山積している課題に着実に取り組んでいただければと思っております。
最後に、これも皆様御指摘になったことでございますけれども、デジタルデータがうまく活用できるようになるといいなということでございます。税務行政当局にとっても、いろいろなデジタルデータをうまく活用し、またAIを活用するなどによって適正な税務、適正な課税ということができていく。そういった工夫も重要になっていくと思いますので、一層人材面での育成といったことも大切になってくるのではないかと思っております。以上でございます。
○吉野座長
翁委員、どうもありがとうございました。
それでは、続きまして角委員、お願いいたします。
○角委員
業績評価につきましては、1-3-2と3がSからAに悪化しておりますけれども、各委員の方がおっしゃったように仕方がない事情によるものであって、問題はないというふうに思います。
これもまた皆さんおっしゃいましたが、1-1-5、行政サービスのデジタル化の推進ですけれども、現在、行政のDXや領収証押印について積極的に議論がなされ、スピード感を持って進展していく流れができつつありまして、大いに期待をしております。
先日、あるメガバンクの方とお話をしている中で、細かい話なんですけれども、税公金納付書3枚つづりの話になりまして、1,741ある基礎自治体全て書式がばらばらと。かつ、補完機関なんですけれども、確認書は1年で済みますが、払出伝票については10年間紙で保存するということがあって、困っておられました。
関西では広域連合ができまして、10年目を迎えることになりました。残念ながら、権限とか予算についてはまだまだ不十分ではありますが、観光とか、あるいは災害対応とか、今回のコロナについてもそうですけれども、ある程度意思疎通をしながら、広域行政の取っかかりのようなことが始まっているということについては期待をしておりますが、先ほど言いました1,741基礎自治体があるということについて、これからますます人口が減少していく中で、もう一度令和の大合併をしていただいて基礎自治体の数を減らしていただくと。
例えば、我々が地方自治体と交通インフラの話をして、それが実現に向かうときに、その市には残念ながらいわゆる専門家がいないんですね。ですから、県、府とか、政令市から応援をもらわなければできないという。それも町とか村においてはまして何をかいわんやということになろうかと思いますので、ぜひとも令和の大合併を実行していただければなと思います。
それと、1-1-6のマイナンバーカードについては、前回のときにも申しましたけれども、健康保険証が来年の3月から始まりますので、ぜひそれをきっかけに普及について取り組んでいただきたいと思います。1-1-6に今回「普及」という言葉が入りましたけれども、残念ながら数値目標がまだ示されておりません。ですので、来年以降はぜひとも数値目標を入れていただければありがたいなと思います。
それと、翁委員もおっしゃられましたけれども、デジタル課税については、ぜひとも日本が主導権を持って頑張っていただければというふうに思います。
以上です。ありがとうございました。
○吉野座長
どうもありがとうございました。
引き続きまして、田中委員、お願いいたします。
○田中委員
私、秋山さんが言われたことに続けて議論したいと思っているんですが、一律10万円の特別定額給付金がコロナ禍で行われました。これは日本の政策がターゲティングポリシー、要するに狙いを絞った上で財政資金を使うとか、あるいは税の適用や減税の対象にするということがなぜできないのかということだと思います。
通常は政治主導で、連立与党の一角が一律給付金に走った。あるいは自民党内における意思決定過程でそういう実力を持つ人がそういう仕方を決めたというんですけれども、こういうターゲティングポリシーに全く反することをやった。これはもう日本の政策基盤の劣化を象徴していると思うんです。
今日は国税のお話がございましたけれども、例えばアメリカですと、所得で4分位、25%ずつ切り分けまして、所得の高い人25%、そして一番低い人25%を取ってみると、在宅で仕事をできる人の比率は当然違うわけです。アメリカの場合、IRSだけではなくて労働省の統計も重ねてやるわけですが、何人かの研究者が3月末に、ボトムの25%の人たちが在宅で仕事ができる職種についている人は10%以下。例えば9.2%ぐらいだろう。そして、上位25%の場合は61.5%の人が在宅で仕事をできる。すなわち、コロナ禍のような状態が起きたときに、誰が一番ヒットされているかというのははっきりしたデータが出て、ターゲティングポリシーが行われなければならないという議論になったわけです。
我が国において、政策基盤が劣化していますから、エコノミクスが悪いのか、ポリティカルサイエンスが悪いのか、あるいは私なんかが所属しているシンクタンクがとろいのかはともかく、こういう形で所得階層別に幾つかのデータがそろい、そしてそれが職種にもつながっているというデータがなければ、子持ちで所得の低い人たちに十分行き渡るようなお金の使い方がされなければならないという議論はできない。政治主導であるからこそ、こうした事実は誰も無視できないはずです。
ところが、我が国においては政治主導の名の下に、次にパンデミックが来たとき、あるいはコロナ禍がもう一度頭をもたげてきたときに、ヒットされる人たちに絞った形で給付や税金上の措置ができるのかどうか。1回目は失敗したというか、何の教訓も我々にないわけです。ですから、あれはただ無駄に使ったとは言いませんが、これほど効率の悪いお金の使い方をしていて、ターゲティングできないということの問題性を議論するベースが欠けている。
これは国税庁だけでできるわけじゃない。主税局、主計局だけでできる話ではないんですけれども、しかし、そういうベースをつくり上げることが重要だ。フューチャーショックといいますか、日本は残念ながら起きる可能性がある程度考えられるこういう事態に対して、知的無防備のまま無駄なお金を使ってきているということだと思います。これにより社会における強靭性が損なわれ始めている。
特に途上国の場合は、日本の政策決定過程に学ぶものは何もないと。一律みんなにお金を配るなんていうやり方はそんな財源が借金も含めて手当てできるわけでもないし、当然ターゲティングせざるを得ないわけですけれども、日本にいると、あるいは日本のことを勉強しても、エコノクスだか、ポリティカルサイエンスだか、どこに問題があるかはともかく、全くぶらぶらで効かない。だから、日本研究の必要性なんかはもうないという雰囲気になってきています。
そういう意味では、私は、社会の強靭性ということを考えた上でも、政府が保有するデータが政策論議に使いやすいような形で提示されなければ、我が国の財政の効率化も、あるいは社会の強靱性を維持することも非常に難しいところに来ていると思います。そういう意味では、一律10万円を給付金で配りまくるというのは、これからの論文といいますか、テキストブックをつくる上でこれぐらいの愚行をやっているということに他ならない。将来に対しても何のエビデンスも提供しない、そして財政はさらに悪化したという端的な事例だと思います。
ターゲティングポリシーが必要なのはグリーン・グロースを考えた上でもそうですし、それから、いろんなオフショア・アセット、海外の資産に対する課税ということも当然ありますし、ビッグ・テックのクロスボーダー・アクティビティに対してどう課税するのかというようなことも含めて、これからは国際的に議論されていくわけで、コロナ禍だけではないんですが、途上国に対して資金を移転するときに、ビッグ・テックのクロスボーダー・アクティビティに課税するときは、先進国ももちろん取るという話もあるんですが、最初に取った分は途上国に対する資金のシフトに使うという形でなければ、税金の取り合いという枠組みを脱することができないわけです。
私は、そういう意味からいっても、ターゲティング、要するに絞り込んだ上で一つ一つの政策を行うことが、地球温暖化防止を考えても本当に緊急度が高くなってきていますから、そういう霞が関であってほしい。それを提示するようなMOFであってほしいというふうに思っています。以上です。
○吉野座長
田中先生、どうも貴重な御意見ありがとうございました。
それでは続きまして、田辺委員にお願いいたします。
○田辺委員
私のほうからは、2点ほど申し上げたいと思います。
1つは、1-2-1と1-2-2に関わるところで、どちらもS評価ということで、この評価自体は非常に妥当なものだと私は考えております。特に10月の消費税上げのときに、上げる前は、例えば事前には軽減税率になるものとならないものの境はどうなるんだとか、いろんな疑念がうたわれていたところでございますけれども、実際に実施していきますと、今回の消費税上げの実施状況のスムーズさというのは、まさに見事という感じはしております。
例えば昔、3%を入れたとき、5%に上げたとき、それから8%に上げたときの実施前後の混乱状況を考えますと、今回は軽減税率という非常に難しい状況が出てきたにもかかわらず、8から10%への上げに関して、ほぼ混乱が生じなかったというのは、実にすばらしい成果ではないかと思っているところでございます。
政権のほうは、10年間今後消費税を上げないと言っていますけれども、ある意味執行時の混乱というものが消費税を上げる際の障害となるならば、今回の成果というのは決定をできるだけスムーズにする前提条件みたいなものをつくったのではないかと思っております。その点で、国税庁の相談、それから広報業務に関しては非常にうまくいったということで、敬意を表したいと思います。
ただ、個人的な思いでございますけれども、年度途中に消費税率を変えると、保険でやっている医療費とか介護給付費に対する対応が実に大変になりますので、国税庁に申し上げてもしようがないのでありますが、できれば年度の4月始まり、4月のときに時期を合わせるというようなことに今後していただければというのが一つの期待でございます。
2番目は、デジタル化の問題でございます。デジタル化の直接の問題ではありませんで、その裏で対面行政ができなくなると、どこが残るのかなというところの問題です。今回の評価書を拝読させていただきまして、4つぐらい対面のところをどうするのだろうということを感じております。
1つは税務調査で、デジタルで税務調査がどこまでできるのか。要するに、デジタルでだまされる危険のある領域が増大し、実地に行かないとどうしようもない部分というのを今後どうするのかというのが1つ。
2番目は、滞納整理の問題でございます。滞納整理も、帳簿上というか、金額の問題といえば金額の問題ですけれども、やはり相手のところに出向いていって、どのくらい払えるのか、その具体的なスケジュールをつくっていくというのは、デジタルでどこまでできるのか。対面のやりとりというのがどこか必要なのではないかなと思っているところでございます。
3番目は、これまたちょっと種類が違うのですけれども、酒税の国際展開というところです。今は行き来がなくなって、恐らくは出展会みたいなところに行けなくなってPRができないというときに、日本のおいしい日本酒を海外にブランド品として提示するために何ができるのかというところがまだ分からないところでございます。
それから、対面でやるかやらないかはちょっと分かりませんけれども、4番目として、税務の研修という問題がございます。デジタル化でeラーニングその他の形でかなりの部分は置き換えることができるのだろうと思いますけれども、ただ、職人芸的な部分というのはどうしても税務には残りますので、それを対面なしで全く続けていけるのか。それによって、何か大きな国税庁のノウハウというものが伝えられなくなっているのではないかというような危惧をしているところでございます。
もちろんデジタルは大切ですけれども、こういう対面がむずかしくなっていこうとしているときに、評価の問題といたしましては、来年度の目標をどういうふうにこの状況下で設定するのか。さらには、新しい行政の手法というのでしょうか、税務の手法の開発、イノベーションというのはぜひともここで必要になってくるのではないかと考えている次第でございます。以上、簡単に申し上げました。
○吉野座長
田辺先生、どうもありがとうございました。
それでは、最後に山本先生、お願いいたします。
○山本委員
私は、3点ほどにまとめて申し上げたいと思います。
1点目は、最近、国税のOBの方とお会いして評価のことを少しお話しさせていただいたんですが、国税庁の実績評価はそれなりに機能していると私は思うんですが、どれぐらいの現場の規範になっているかということに関連することです。
これは何年か前にも一度申し上げたんですが、せっかく国税庁全体としての実績評価をされているわけですので、税務署間とか、あるいは類似の税務署間における組織の内部改善なり、ベンチマーキングでもいいと思うんですが、そういうことに活用していただけないのかというお願いと質問があるわけです。
というのは、かなりこの作業も現場の負担になっているのではないかと思いますものですから、国民に対する説明責任という観点では非常に価値があって、また実績評価としては、国税庁のこの評価はすばらしいものであると私も評価しておるんですが、お考えいただきたいというのが1点目でございます。
2点目は、ほかの委員からもお話がありましたデジタル化の問題なんですが、これは時間がかかるから言いませんが、実は国税のデータが地方税や住民税等の課税の基礎データになるわけなんですが、これが国と自治体の間で、時間が非常に短いとか、あるいは内容が少し不整合で、また再入力しなきゃいけないというような事態がいまだに一部見られるということがございますものですから、そこら辺は今回のデジタルの推進の中でぜひ整理をしていただければというふうに思っております。
最後は、人材の件なんですけれども、これもお話しいたしますと、国税専門官の倍率が最近は少し低下気味になっているんですね。例えば都道府県の公務員との競争に場合によっては負けることもあるということで、優秀な人材の獲得に向けて何らかの工夫が必要ではないか。とりわけ今後デジタル化対応の人材を確保するという点からすれば、少し工夫が必要ではないかということでございます。以上でございます。
○吉野座長
山本先生、どうもありがとうございました。
それでは、最後に私からも幾つかコメントさせていただきたいと思います。
多くの点はデジタル化だと思うんですけれども、日本の場合、デジタル化で失敗したのは、1990年代にハードのところで非常にやってきたんですね。それで、ソフトではないところで勝負をかけようとしたものですから、その間にアメリカでアマゾンとかグーグルというところが出てきて、そこに完全に負けてしまった。
それはやっぱり英語の問題もあると思います。どうしても英語でやらないとソフトというのは売れないものですから、日本の会社がせっかくいい日本語のを持っていっても、それが使えなかったということだと思います。
ですから、関連いたしますと、国税庁がいろいろこれからやっていただく場合も、各自にパソコンが配られました、これでやっていますというのではなくて、いかにそこでソフトなり、ハードのところを使うことができるようになっているかどうかということだと思います。
2番目は、これも先ほどおっしゃった日本のいわゆる職人芸とか、OJTと関係するんですけども、デジタル化になりますと、新しいやり方を知っている人しか教えられないんですね。ですから、そうすると職人芸が利かない世界なんです。そうすると、若い人たちしか分からないやり方をきちんと誰かが教えなくちゃいけない。
それを日本は今まで職人芸で先輩がやってきましたから、そういう間は勝っていたんですけれども、急速に進歩が出てくると教える人がいなくなってしまう。そうすると、中小企業なんかもせっかく新しい機械を入れても使える人がいない。こういうのがやっぱり日本の問題で、日本はハードはある程度までできるんですけど、それを使える人間や、それからソフトをどうしていくか。
これも国税庁に全く当てはまるところで、これからデジタル化でいろんな新しいソフトが出てくると思うんですけども、そうすると職人芸では駄目で、研修をして、きちんとそれを使える人が若い人たちに教えてあげられると。これは、やはり今のオンライン研修が使えれば、全国のいろんな出張所、税務署におられる職員の方に教えてあげられると思うんですね。ですから、ビデオを活用して、そして新しい手法のやり方が教えられないといけないというふうに思います。
それから、今度は国税庁のデジタル化による成果、パフォーマンスがどうかというところですけれども、これまでの通常業務の人数が減って、それで調査などの人数がどれくらい増えているのか。そういうことをしっかり見ていただいて、その成果を評価していただきたいと思うんです。
それは他の省庁にも同じことが言えまして、デジタル化をやっていますと。そうすると、ハードが、パソコンが何台できて、どうなりましたと。これだけじゃないわけで、実際に普通の通常業務の人数が減って、それ以外の必要な業務の人数が増えているかどうかというところも、予算の査定として私は必要になると思います。
次は、データの活用の問題です。アジア会議に行ったときに、前にちょっとお話ししましたけれども、インフラの経済効果を、そのインフラができた周りの地域の税収がほかの地域と比べてどれくらい増えたか。それで所得税、法人税、消費税、固定資産税を全部見るわけですね。そうしますと、ほかの地域と比べてどれくらい効果があったかということが非常に分かるわけです。
それから、名古屋の水害でも同じデータを今度使いまして、逆の効果ですけども、どれぐらいマイナスになったか。それで何年ぐらいして回復したかということが分かりました。税のデータというのは、うまく守秘義務を守ればいろんなところに使えるわけです。
これを私がアジアで発表しましたら、タイの人とか、インドネシアの人が、こんなふうに税のデータを災害のインパクトまで使えるのかというので、恐らくタイでは同じようなやり方をやってくださると思います。そういう意味では、蓄積された税のデータを守秘義務を守りながらいろんなところで使っていただいて、その効果などを見ていただければというふうに思います。
最後は、田中先生のおっしゃったIT関連のところですが、アジアで見ていますと、15年、20年前は日本の企業が大体そういう会議では発表していたんです。最近は日本の企業は一つも呼ばれていないんです。全部中国なんです。アリペイとかアリババが来て、そうすると彼らはそこでまた自分の商品を売っていきますから、ますますそれで自分のITビジネスが広がる。そういう形になってしまって、田中先生がおっしゃっていたように、やっぱり日本のIT関連の人たちのソフトも弱いんだと思うんですけれども、全然呼ばれない。そうすると、ビジネスもできないということになっていると思います。
最後は、田辺先生がおっしゃった日本酒などのPR活動ですけれども、恐らくこれは日本の人がそちらの現地には行けないと思いますが、物流で日本酒は運ぶことができますから、現地にいる大使館の人なり、それから現地のいろいろな日本関連の方々がいろんな機会を使って日本のいいお酒などの宣伝をしていただいて、それから大使館の中でいろいろパーティーみたいのがあるわけですけれども、そういうときには必ず日本酒をいっぱい出していただいて、ワインなんか出さなければいいわけですよ。そういう形でやっぱりもっとやっていただければなというふうに思います。
以上が私からのコメントでございます。
今日は御欠席の小林委員から事前に書面による御意見をいただいておりまして、資料6の196ページにございますので、皆様に御参照いただきたいと思います。
ただいまの皆様からの御意見、それから御質問を踏まえまして、財務省と国税庁の側からコメントをいただきたいと思います。
最初に、国税庁に関しまして、可部国税庁長官からお願いいたします。
○可部国税庁長官
国税庁長官の可部でございます。
本日は貴重な御意見を賜りまして、誠にありがとうございます。先生方からいただいた御意見につきまして、順次お答えできるところを御説明させていただきたいと思います。
まず、秋池委員からデジタル化の関係で確定申告の押印のお話がございました。確定申告書の中で押印欄がありますが、今でも押印がなくても有効として扱っております。したがって、普通の認め印みたいなものは要らないと考えていまして、今回の行革の方針に基づく調査にもそのようにお答えしております。
なお、政府全体の方針としても実印プラス印鑑証明を求めているものは例外とされており、税務手続でも2つだけありまして、一つは相続税の分割協議書、これは家族が勝手に提出したりしてしまってはいけない、かえって紛争になりかねません。もう一つは納税猶予をしたときに担保権を設定する同意書、これは法務局が実印と印鑑証明を持って行きませんと受け付けてくれません。したがって、こちらは法務省の方の仕組みでございます。それ以外の単なる認め印は一切要らないと思っております。そのことを書式の上でも明確にしていただくために、税制改正により法律改正をしていただきたいと思っております。
それから、デジタル化の関係で、おかげさまでe-Taxの利用率は法人で9割、個人で6割まで進みました。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の環境下で今年は自宅からのe-Taxを利用していただいた方が5割増しとなり、スマートフォンでe-Taxを利用していただいた方が4倍ということで、非常に利用が広がっています。来年の年明けの確定申告もコロナの影響下であろうと想定しておりますので、究極の感染防止対策としても、さらにe-Taxの推進をしてまいりたいと思っております。
また、その際にはマイナンバーカードをぜひ御活用いただきたいと思っております。これについては、この10月から年末調整における生命保険料控除証明書を電子的に取得して会社に提出をいただき、また、確定申告のときにもマイナポータルを通じて御利用いただけるという仕組みが入りましたので、こうしたマイナンバーカードの利点をさらにPRしてまいりたいと思います。加えて、来春からは医療保険証にも、さらには、2026年には運転免許証にもなるということでございますので、そうしたことと併せて、ぜひマイナンバーカードの活用を進めてまいりたいと思っております。
それから、セキュリティに関しましては大変重要な課題でございまして、実は国税庁は、年金機構の情報漏えいのトラブルがある前から、国税庁のKSKシステムを取り扱う業務用のパソコンはインターネットには接続をしておりません。業務用のパソコンとは別にインターネット接続用のパソコンを配備して使い分けておりますけれども、引き続き、セキュリティにはきちんと注意を払って事故が起きないように対応してまいりたいと思っております。
それから、秋山委員からございました御指摘の中でデジタル化の関係ですけれども、全く御指摘のとおり、紙をオンラインに置き換えるということではなく、「ビジネス・プロセス・リエンジニアリング」が必要だと思っています。そういう意味で、先ほど挙げさせていただいたマイナポータルを活用しますと、1回情報を入力していただければ、何度も同じ情報を紙で提出していただくことはなくなりますので、こうしたことをまさに進めてまいりたいと思っております。
それから、データの活用という関係では、私どもの方でも、法人から出されましたデータ、あるいは個人事業者から出されましたデータのAI分析をして、これを税務調査に活用するということを始めております。こうしたことは今後ともさらに進めていきたいというふうに思っております。
それから、江川委員から御指摘がございました行政サービスのデジタル化について、S評価に満足せず、さらに挑戦的な目標を掲げて対応していくようにということで、全くそのとおりだと思っております。
e-Taxの利用満足度が81.5%から74.2%に下がったのは残念だというのは全く私も同じ思いなのですが、今回、先ほど申し上げましたように利用者の方がかなり拡大されたことが満足度が少し下がった背景にあるのではないかと思っております。御経験された方はお感じになったかもしれませんが、e-Taxを初めて利用する際の設定は通常よりも少し手間がかかります。その部分も含めて今後とも満足度を向上していけるように努力してまいりたいと思っております。
それから、国際化の関係では、OECDの方で、現在、デジタル課税、国際課税に関する協議が進んでおります。こうしたものを先導していくとともに、日本におられる外国人の方の取扱いにつきましても、主税局ともよく相談しながら、不合理な取扱いにならないようにきちんと配慮をしてまいりたいと思っております。
それから、酒類の関係で指示・指導事項の改善率が100%から96.4%に下がったという点がございますけれども、実は今回、55事業所の小売価格が低いということで指導を行ったのですけれども、行った中で2事業所の改善が行われていなかったために96.4%になりました。前年は基準についての制度変更があったために当初の調査の開始が後ろ倒しになり、フォローアップ調査も後ろ倒しになったために完結ができなかったという事情がございましたけれども、引き続き、100%を達成できるように努力をしてまいりたいと考えております。
それから、翁委員からデジタル化の関係で幾つか御指摘をいただいております。自治体とのデータ連携は、現在、強力に進めておりまして、かなり御協力をいただけるようになってきております。したがいまして、データでそのままいただけるという形で私どもの事務も非常に効率化をしております。
それから、紙をデジタルに置き換えるだけではなく、というお話がありました。これはまさしく「ビジネス・プロセス・リエンジニアリング」でございますが、そのことを納税者の方にもよく御理解いただけるよう広報してまいりたいと思っております。
それから、デジタル・プラットフォーマー等の扱いについては、角委員からも御指摘がございました。これはOECDのデジタル課税の議論をきちんと主導してまいりたいというふうに思っております。
それから、デジタルデータを活用した適正課税は、まさにAI活用等を進めさせていただいておりまして、デジタル活用を、納税者の利便性向上と、私ども自身の調査・徴収の効率化・高度化との2本柱で進めてまいりたいと思っております。
それから、角委員から御指摘がありました基礎自治体によって様式が区々というのは非常に深刻な問題だと思っておりまして、非常に大きなデジタル化の障害になっていると聞いております。国は1種類の様式ですけれども、基礎自治体については、今回のデジタル庁に向けた取組の中で標準的なソフトの採用等を進めていかれるというふうに聞いております。
マイナンバーの定着についての数値目標を設けてはどうかという御指摘がございました。マイナンバーの発行割合自体は内閣官房の方で数値目標を設定しておりますが、国税庁としての制度の定着に向けた取組指標としては、例えば、現在自治体と共同して設置している交付コーナーの設置状況ですとか、あるいは関係民間団体への協力要請状況とか、そういったものが考えられるかと思いますので、どのような指標がよいのか検討してまいりたいと考えております。
それから、田中委員から御指摘があったビッグ・テック課税については、OECDの議論の中できちんと主導してまいりたいというふうに思っております。
それから、田辺委員から御指摘のありましたデジタル化ですけれども、対面で行うことができなくなったときにどういった影響が出てくるのかということで4つほど例を挙げていただきました。税務調査については、3密を避ける、感染防止をするという形で対応をさせていただいていることに加えて、例えば、企業であれば、従来は工場にも臨場していたのを臨場しないで、書類、あるいはデータで調査をさせていただく。あるいは社内のシステムを活用させていただいてリモートで調査を行う。それから、実際に臨場する時間を減らして署に持ち帰って分析をする。こういったことを、現在、進めているところでございます。引き続き、さらに工夫をしていきたいと思っております。滞納整理についても、そうした対応についてできるだけリモートでできる方法を開発していきたいと思います。
それから、お酒については、おっしゃるとおり、例えば、従来でしたら海外バイヤーとの商談会等を行っていたのですけれども、これをオンライン商談会という形で今事務年度は行おうと思っておりまして、むしろ、1日や2日限りではなく1か月間にわたって継続的にオンライン商談会をやるというような展開を考えております。
それから、税務大学校の研修についても基本的には、現在、リモートになっております。ただ、例えば、高校を卒業されて税大に入られたばかりの方の場合に、そのままリモート研修だけで納税者に接していただく状況にはなかなかなりませんので、ロールプレイング等が必要な部分について、期間を限って税大で研修を行うというような形で、3密を避けた形での配置をした研修を行っております。それ以外については、例えば、専門官として採用した方についても、期間を限った集合研修をするような形で行っております。やはり全くリモートだけで納税者の方と接し合えるようになる、あるいは職人芸を全て伝承できるというのはなかなかチャレンジングではないかなというふうに思っております。
それから、山本委員から御指摘がありました実績評価の活用方法ですけれども、これは、目標を設定させていただいたときに、それぞれの担当の課税部、あるいは徴収部の方から署まで目標設定はこうなっているということを指示しておりますので、各署は基本的にその目標に向けて動くという形で機能しておりまして、税務署間のベンチマーキングにもそれは活用させていただいています。他方で、当然、署によって都会署、地方署、あるいは大規模署、小規模署、こうした事情の違いがあるものですから、そうしたことを加味して評価するという形で運用させていただいております。
それから、デジタル化に関する地方税と国税の連携についての重要性は御指摘のとおりだと思いますので、引き続き努力をしてまいりたいと思います。
また、現在でもデジタル関係の人材は、庁を中心に数百名規模で専門の職員を擁しておりますけれども、このウエイトはどんどん高まっていくと考えていますので、そうしたことに対応できる人材の採用というのは、まさに私ども自身の課題として考えていきたいと思っております。そうした採用の面と、それから、先ほど座長のほうから御指摘がありました採用後の研修を含めた研修を行って、きちんとそのニーズに応えられる、また新しいテクノロジーを開発できるデジタル人材を育てていきたいと思っております。
吉野座長から最初に御指摘がありました研修等についてはそのように考えております。
また、2番目に御指摘がありました、デジタル化によって浮いた人材をどういうふうに活用するかということは、元々、私どもがデジタル化を進めている重要な目的の一つでございます。私が四半世紀前に税務署長をしていたときに、法人の実調率というのは9%でございましたから、平均して10年に1回、小さいところだと30年に1回の調査というようなことでしたが、これが今は3%になっております。したがいまして、平均して言えば30年に1回、場合によっては小さいところは100年に1回ぐらいしか来ないから、自分がいる間は来ないだろうというようなことになりかねないわけですが、この要因は、実は内部事務にかけている時間のウエイトが増えたことでございました。
こうした中で、デジタル化によって内部事務の効率化を図ることができるということで、現在、各署で行っております内部事務を局ごとに統合していく、そういう内部センター化というのと併せてデジタル化を進めて、その分捻出できた時間を調査事務に振り向けていくということを計画的に進めていきたいと思っております。
また、御指摘がありました国税のデータの活用でございますけれども、これにつきましては、かねてから御指摘をいただいております。私どもとしても、例えば、所得、法人といった税目別等について都道府県単位等での公表までさせていただいておりますが、さらに個々の納税者単位のデータについては先ほど御指摘がありました守秘義務等の関係もございますので、そうした点も含めた上で、どういった形で利用できるかということを引き続き検討させていただきたいと思っております。
また、お酒のPRについても御指摘がございました。こちらは今、大使館では國酒で乾杯をするようにということになっております。私が在外勤務していたときはワインで乾杯していたのですが、今は國酒で乾杯をしていただいていると思います。また、コロナ禍ではございますけれども、オンライン等の商談会を使って販路開拓等をしていただけるように努力をしていきたいと考えております。
引き続き、御指導をよろしくお願いいたします。
○吉野座長
御説明ありがとうございました。
それでは、住澤主税局長、それから矢野主計局長、一言ずつあれば、そして、最後に太田事務次官からお願いいたします。
○住澤主税局長
主税局でございます。御指摘いただいたことのうち可部長官からも言及がございましたが、関連で制度面の対応についてお話を申し上げたいと思います。
まず押印の見直しでございますが、これにつきましては政府全体の方針もございますし、令和3年度の税制改正におきまして、基本的に押印を不要とするという方向で改正を行いたいと思います。実印ですとか、印鑑証明を要するような場合の例外につきましては、先ほど長官から御説明したとおりでございます。
また、デジタル化の分野では電子帳簿保存法という法律がございまして、税務上の帳簿でありますとか、請求書、領収書といった帳票類につきまして、電子的な保存をするための手続を定めておりますが、近年、中小零細企業も含めて、クラウド会計等のデジタル化された会計処理をするために有用なツールが極めて安い値段で活用可能な状態になっていまいりました。
そういった中で、電子帳簿保存法の要件が、例えば請求書、領収証等に関して言いますと、一定期間内に紙の現物と、スキャナーなり、スマホで読み取った画像等を突き合わせてチェックすることが求められているとか、あるいは、一定の場合に税務署長の事前の承認が必要となるといったようなことで、手続面での要件緩和を求める御要望をいただいております。この辺もできるだけ簡素化をする方向で検討を進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。
さらに、中期的な課題ではございますが、クラウド会計等の技術を用いますと、零細企業、あるいは個人で活動しておられるような事業者においても、日々の活動を電子的な形で記帳していくことが可能になるということで、今回の持続化給付金の申請などにおいて、月次の売上げのデータが管理されていないということで、給付申請に非常に手間取るといった事態が多々生じていたということが指摘されておりますが、そういった面でも、クラウド会計による日々の記帳が行われていれば、有事の際にも的確な対応が可能になる、あるいは、迅速に融資が受けられるとか、様々なメリットが生まれてまいります。
税務行政や、納税者の記帳実務の面だけではなくて、そういった金融面、あるいは有事の際の対応といった面でも、デジタル化というのは有用かと考えておりますので、中期的にはそういった方向で取組を進めていまいりたいというふうに考えております。
また、OECDを中心に議論されておりますいわゆるデジタル課税等の問題でございますが、先般の10月14日のG20財務大臣会合で、これまで本年中をめどに最終報告書を取りまとめるとしておりましたところを来年半ばまでに結論を得るということで、若干の時点修正をいたしたわけでございます。
我が国としては昨年G20の議長国であったこともあり、作業計画の策定などを通じてこの議論をリードしてきた立場でもございますので、来年の半ばの取りまとめを目指して引き続き議論を主導してまいりたいというふうに考えております。
そういった中で、物理的な拠点がなくても市場国において課税する仕組みをつくるといういわゆるデジタル課税の問題のみならず、大規模多国籍企業に対して、各国・地域における一定の最低税率までの負担を求めることで、いわゆるタックスヘイブン等の軽課税国に所得を移転させることによる租税回避を防止する取組も重要な課題になっておりますので、これも併せて取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○吉野座長
ありがとうございました。
では、矢野主計局長、お願いいたします。
○矢野主計局長
主計局長の矢野でございます。
田中委員のほうから、コロナ対策としての給付といったことについての御指摘を頂戴いたしました。これは委員の皆様方に限らず世間の皆様からも、春の対策につきましてはいろいろと御指摘をいただいておりますけれども、次の予算編成はどういう形になるか分かりませんけれど、委員からも御指摘をいただきましたようにしっかりと知恵を絞って、あるいは春の経験を踏まえまして、いい予算にしていきたいと思っております。
抽象的ですけれども申し上げますと、春の4月あたりは感染者数、重症者数がとにかく右肩上がりでてんやわんやと私どもが申しますと言い訳になりますけれど、世間も、あるいは永田町、国民の代表もすさまじいてんやわんやでした。という中で、誰がやっても見えない敵、未曾有のこと、先も読めない中で、広めに、多めにということにならざるを得ない状況にはあったわけです。
ただ、結果論としましては、いろいろ給付金を中心に問題点があったり、あるいは無駄の御指摘があったり、不正が起こったりといったことがありますので、半年経ちまして、感染者数、重症者数は、波の数え方はいろいろですけれども、こぶが2つある。それを乗り越えるということを国民的に経験してまいりましたので、右肩上がりのセンセーショナルな中での予算編成とは違います。
ですので、次なるものは、安心のための止血策としての春の対策とは違って、こぶを2つ経験してきたものを踏まえながら、選択と集中というとなんですけれど、もう少し言えば、事業活動をなさる方にとっても、消費活動・生活をなさる方にとっても、コロナ感染防止に気をつけながらも、活動をしようとする方にうまく潤滑油を差し伸べていくみたいな、真に効果的、効率的で即効性がある施策に重点化していくといったようなことが基本になると思っております。
さらに言えば、より個別の予算についてのストラクチャーを工夫する、あるいは受給要件も工夫するということだと思いますけれど、大ざっぱな大きなところとしては、春の「みんな安心してください」という給付金ではなくて、動かしていくwithコロナという発想の下に、ワクチンが出てもそうなんですけれど、withコロナで動かざるを得ませんので、経済を動かしていく事業者と消費者に光を当てていくという知恵を絞りたいとは思っております。
本当はもっといっぱい考えていることはあるので申し上げたいんですけれど、今の時点で申し上げられるのはそんなことではあります。しっかりと経験を踏まえまして、知恵を絞っていきたいと思っております。
あと、1つ余計なことですけれど、国税の現場もそうですけれど、予算編成におきましては、各省からのヒアリングをフェイス・トゥ・フェイスで従来やっておったのが、今年は様変わりをしておりまして、2階、1階の廊下をちらっと御覧いただくと、椅子に座って待っている人がいる係といない係があって、例年よりもがらっと減っております。
当然のことですけれどコロナ対策ということで、テレワークでも折衝をしているかもしれませんが、ここでクラスターが起こると本当に一大事ですので、クラスターが起こらないように気をつけながら、最先端の新しい予算編成手法ということも併せて、前回も多くの先生方から御指摘いただいたデジタル化を見据えた予算の中身ということもしっかり、先取りするには限界がありますけれど、ある程度予算がついていないから打つ手が遅れたということがないようにしていきたいと思っております。
すみません。ちょっと雑駁ですが、以上です。
○吉野座長
どうもありがとうございました。
それでは最後に、太田事務次官からまとめの御発言をお願いいたします。
○太田事務次官
太田でございます。ありがとうございました。
基本的には、可部長官をはじめとして各局長なり長官から割と細かく御説明を申し上げさせていただけたと思いますので、そちらのほうで御理解をいただければというふうに思います。
いつも先生方には大変忙しい中をこういう会議に、特に最近はこういう状況なので直接お目にかかってということではないんですが、逆に言うといろんな意味で制約がある中で御参加をいただき、なおかついろんな貴重な御意見を承って、大変ありがたいというふうに思っております。私も何年間かこの会議に出させていただいていて、いつも大変申し訳ないし、大変ありがたいと思っておる次第でございますが、ぜひともこれに懲りずに引き続きこういう御指導をいただければありがたいというふうに思っています。
話の大宗は、今回はデジタルの関係のお話だったというふうに思います。おっしゃるとおり、菅政権が発足して、それをやるんだということで、いろんな意味でスピード感を持ってという御指示もありますので、最初に可部長官のほうからも話をさせていただいたと思いますが、相当いろんなところを細かく何がどうなっていてというのも、正直に申し上げれば幹部クラスも全員それまで必ずしも全部分かっていなかったことも多かったんですが、相当全部分かった上でというふうになってきていると思いますので、デジタル化を進めるということについて、我々役所サイドとしてやれること、あるいはやらなければいけないことというのは相当進んできているとは思います。
ただ、もちろんまだまだ不十分なところがあると思いますので、そこは相当まだまだこれからやっていかないといけないということではありますが、かつてと比べれば、あるいはちょっと前と比べても相当進んで、問題点やその対応は進んできているというふうには思いますので、期待を持っていただくとまで言うのはちょっと問題なんですが、相当そういう気持ちでやっているということだけは御理解いただければというふうに思います。
それから、大きい話として、田中先生からは毎回毎回というか、何年間にわたって基本的に同種の厳しい御指導をいただいていると私は思っております。ただ、これから先の進め方みたいなことについては、さっき矢野主計局長からお話し申し上げたということが我々としての今後の答えだというふうに思っております。
田中先生のお話は、恐らく今日ここでお集まりいただいている先生方は基本的に同じような考え方を持っていただいているんだと私は思っていますが、正直に申し上げれば、この春の時期に当時私は主計局長でしたのでやっていて、一般的な国民の皆さんなり、政治の世界での御理解なり御意見というのは、申し訳ないけれども大変乖離があるという状況だと思っています。
それは、根本的に言えば、1つは、我々役人、官僚が、あるいは財務省がと言っていいかもしれませんけれども、そこがかつてのような信頼を得ていないということはもちろんあると思います。私も30数年この役所で勤めておりますけれども、かつては過剰接待問題みたいなこと、それに一連のいろんなことがあり、また最近では、森友問題に係る改ざんの話とか、あるいはそのときにセクハラの話とかということがあって、それは政策そのものではないのかもしれませんが、そういうことが、やっぱり一つの組織としての信用度には大変関わる。
しかも、そういうことは間違っていたので直しますと言って、そうですねと言って、1年や2年で国民の皆さんの一回失った信頼を取り戻すのはそんなに簡単ではないと思っていますので、そういう意味で劣化があると言われれば、それはそのとおりだと思います。
ただ、それはもちろんそう思い、我々が悪いという反省も踏まえた上でですけれども、やっぱり大きいのは、もう1つは、国民の皆様の受け止めの問題だということは大きいと思っていて、田中先生がおっしゃられたのは、いろんなデータなりをきちんと蓄積して、それをきちんと説明し、それが御理解を得られればということだと思いますけれども、基本的にメディアにどういうふうに報道されるかということにもよるんですが、春の時点で最初に困っている世帯当たり30万円という案をつくるについては、相当総理官邸で安倍総理の下で、いろんな一般の方をたくさん呼んでいろんなヒアリングをした。その結果として、基本的に特に困っている業種というか、業態で大きいのは、結局最後はそれがGo Toキャンペーンにつながるんですけれども、1つは観光関係。それは旅館であり、交通というところであります。2つ目は飲食業関係、それから3つ目は、一番当時話題になったのがイベント関係。要すれば、どちらかというと、政府側、あるいは地方自治体がお願いをして止めているんだと。そういうところが一番きついということ。それから、いろいろヒアリングをした中で、そういう一番きついと言われる人たちは、売上げなり何なりが50%ではなくて大体80%、90%、少なく言われても70%ぐらい減っている。だから、10%、20%減ってきついという方ももちろんいらっしゃるんですが、特定のところに非常に集中している。あとは、雇用関係で言うと、今申し上げた3つの業種というのは、例えば飲食店で働いていらっしゃる方の多くは非正規というか、アルバイトさんみたいな方が大変多いので、非正規の方に非常にしわの寄るようなところが多い業種に偏っているので、だから、そういうところをある意味でターゲットにしたということで最初の案は提案させていただいていた。それは、政治の世界でも一旦了解をされているわけですけども、その後、そういうことをやれば、もらえる人ともらえない人がいて、国民を分断する政策だという議論とか、あるいはもらえると思っていたのにもらえない、もらえるとどこかでテレビでも言っていたじゃないかと。それはいろんな報道はありますから、言っていたのにもらえないということだと、もらえると思っていた人がみんな怒るだろうと。
それじゃとてももたないといった議論があり、最終的にそういうことになるわけですが、基本的に最後は、やはり民主主義国家ですから、国民の皆さんがどれだけ御理解いただけるか。仮に情報が提供できたとしても、それをどう御理解いただけるかということだと思います。それができたとしてもそこをどう理解していただけるかという基盤が非常に大きくて、そこには我々にできることには限度がある。
もう一つ申し上げれば、今回の情報というのは、田中先生がアメリカの話をされましたが、もちろんアメリカよりもいろんな意味で情報の取れ方が、特に納税関係に対するプライバシーのことも含めてできにくくなっていることは事実なんですが、恐らくそれだけではなくて、今回の場合は、仮に情報が取れても、そういう所得ベースの話は前年度の所得ということは取れるんですが、今回の場合は基本的にあの時点でいけば3月、4月、5月の状況がどうなっていたかということで、それは来年にならないと所得ベースの数字としては取れてこないという状況になってしまうわけです。では、前年度所得が悪かったかどうかというところで判断すると、特にインバウンドに関係されていた方々は、ある意味では昨年の所得は、このところずっとインバウンドの調子が大変よかったので、昨年の所得は相当いい状況になっておられて、それが極端にこの3月、4月、5月に落ちるという格好になるので、前年度所得で一定の把握をして、それがうまくはまるかといえば、非常にはまりにくいという状況だったということもある。そういう中でどういう情報、データが取れるようにできるかということについては今後の課題であり、先ほど住澤主税局長がちょっとお話を申し上げておりましたけれども、いろんな意味でのクラウド化も含めて、そういう中でそういうことも把握できるようにする。それを政府側に、ある意味で当局側にも把握させていただけるようにするということがもう一つ大きい、超えないといけないところがあると思いますが、そういうことを含めてやっていかないといけないということだと思っています。
いずれにしろ、田中先生をはじめ、先生方にはいつもいろんな御指摘をいただき、厳しい御指導をいただいて、そういうことをおっしゃっていただけるのは大変ありがたいと思っておりますので、ぜひこれからもまたよろしく御指導いただければと思います。
ありがとうございました。
○吉野座長
太田事務次官、正確ないろいろ詳しい御説明をありがとうございました。
やはり構造変化でこれまで経験したことがないところに直面していますと過去のデータが使えないわけですから、なかなか政策というのも難しいと思います。よく経済学でリカードの中立命題と言われて、現在の国債というのは結局将来の税金なので、国債であっても税であっても同じなんだというのは、今もそういうことを言う人がいるんですけども、現在の日本の状況を見ていると、やっぱり国債は将来誰かが負担してくれるんだろうという意識で、恐らくそれは将来の我々の子どもや孫の世代までずっと行ってしまうわけです。ですから、そういう意味では世代間を超えた負担につながっていく可能性がすごく高いわけです。そうすると、それはリカードの中立命題ではないというふうに思います。
もう1つは、今後、また来年の会議が3月ぐらいにいつものとおり予定されておりますけれども、そのときにも大きく出た財政赤字をどうやって解消していくかというのは、やっぱり財務省として、日本国民の税務として最も重要なところで、どういう形で国際市場に変な影響を与えず、日本の為替に大きく振れさせないような形で持っていくかというのは、委員の先生方も含め、あるいはいろいろな審議会を通じて考えていかなくてはいけない最も重要な問題だというふうに思います。
今日は、太田事務次官からもございましたけれども、いつも委員の先生方から非常に貴重な御意見をいただきまして、今後ともどうぞよろしくお願いしたいと思います。
通例ですと、来年の3月が次回の開催予定でございますけれども、議事内容とか具体的な開催日につきましては、事務局より御連絡させていただきたいと思います。
また、いつものように懇談会の議事内容につきましては、各委員に御確認をいただいた上で財務省のウェブページに公表する予定でございます。
財務省、それから国税庁におかれましては、いろいろな今日の御意見を踏まえまして、しっかりとPDCAサイクルに回していただけるということをお願いしたいというふうに思います。
それでは、今日の第69回財務省政策評価懇談会は閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。
──了──