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第84回 財務省政策評価懇談会(10月14日開催)議事要旨

日時令和7年1014日(火)14:5916:18

場所    財務省国際会議室及びWEB会議

出席者

懇談会メンバー
(懇談会メンバー)

           秋山 咲恵

株式会社サキコーポレーション ファウンダー

           伊藤 元重

東京大学 名誉教授

           田中 直毅

CIPPS 理事長

           田中 弥生

元会計検査院長 東京大学 客員教授

           田辺 国昭

東京大学大学院法学政治学研究科 教授

           広瀬 道明

東京ガス株式会社 相談役

           山本  清

東京大学 名誉教授、

一般社団法人青山公会計公監査研究機構 主任研究員

座長    吉野 直行

慶應義塾大学 名誉教授、金融庁金融研究センター 顧問、

東京都立大学経済経営学部 特任教授

(敬称略、五十音順)

(財務省)

 新川事務次官、坂本官房長、坂本総合政策課長、吉沢主計局次長、藤井国際租税総括官

(国税庁)

 江島国税庁長官、武田国税庁審議官、祝監督評価官室長

(事務局)

 湯下政策立案総括審議官、熊澤政策評価室長

議題

(1) 令和6事務年度国税庁実績評価書(案)について

(2) 令和7年度財務省政策評価実施計画及び事前分析表の一部変更(案)について

議事概要

事務局より議題について説明を行い、その後、メンバーから意見等を伺った。

メンバーからの政策評価に関する主な意見等は以下のとおり。



≪令和6事務年度国税庁実績評価書関係≫

全体

  • 国税庁の実績評価は毎年丁寧に対応されており、結果も非常に好ましい状況なので、引き続きこういう形で続けていただきたい。
  • 国税庁の評価は大変立派である。
  • 国税庁に対する納税者の信頼感というのは、国際比較してみても大変立派なものだと思う。これから政治が大きく変化、変動をする中で、こういうベースがあることは大変ありがたい。日本の不安定さに危機感を持つ人に対して、国税庁と日本の納税者との関係が安定していることを発信すべき。
  • 国税庁が上げている実績は、政治や行政が向き合うべき仕事に向き合っているということの証左だと思う。
  • 国税庁は、納税者と直に接するところの行動や振る舞いの重要性を非常に大切な組織文化として守ってきたと思う。納税者との信頼関係を構築した中で適切な仕事をし続けることは、非常に素晴らしく、それが実績として表れていることを評価したい。

業績目標1-2―1(オンラインによる税務手続の推進)

  • マイナンバーカードをスマホで読み取らなくても申告できるようになったことは、すごいことだと思う。
  • 電子申告のデータは分析ができるが、紙の申告書をスキャナーで読ませるにしても限界があるので、電子申告率をどんどん上げていって欲しい。
  • 電子申告率を上げるうえで、特に中小企業等がネックになっていると思う。
  • 他省庁と比べても、国税庁はデジタル化の進捗のスピードは非常に速いと思う。スマホを利用し、納税できるようになったことは非常に大きな革新であり、利用者目線で、納税のチャンネルというものを作ったところは非常に評価している。今後も利用者目線で使いやすいデジタル化を進めて欲しい。
  • オンライン申告について、年々増加しており結構なことだが、ある程度のところで頭打ちになる可能性がある。今後、さらにもう一段オンライン申告を進めて行くには、オンライン申告をしない、できない方々に対するアプローチが大きな課題になる。
  • スマホで申告できることは非常に良いことであり、更に使い勝手を良くしてe-Taxの比率を上げていただきたい。

業績目標1-2―2(デジタルの活用による業務の効率化・高度化)

  • 電子化による業務の効率化がとても大事なことだと思う。
  • デジタル化による業務の効率化、高度化を掲げているが、もう少し具体的に目指すべき方向性を明確にしていただくと良いのではないか。
  • デジタル化によって、きめの細かい納税の捕捉ができるようになると思う。

業績目標1-2―3(事業者のデジタル化促進)

  • 国税庁の目標に「事業者のデジタル化促進」が新規に追加され、それに対する評価が出てきたということを評価したい。中小事業者のデジタル化を進めるということが大きな経済社会のインパクトを生むと確信している。
  • 中小事業者のデジタル化を進めるにあたり、セキュリティの問題が大きな影響を及ぼすことが想定されるため、これに対する政策や関連する目標設定を検討いただきたい。
  • 中小企業におけるデジタル化については、利用者目線に立って使いやすいものを是非生み出してほしい。アジアは中小企業が多く、先導役として非常に役に立つと思う。
  • サイバーセキュリティの対応は個別の企業や金融機関では対応が難しい。国やデジタル庁、更にはもう一つ上のグローバルな組織を作り、サイバーセキュリティプログラムを利用者に提供しないと個別では絶対対応できないと思う。

業績目標1-3-2(相談等への適切な対応)

  • 納税者サービスについて、国税庁の職員は現場で大変苦労されていると思う。苦情対応については、評価が上がり全体的にS評価になっているので、良かったと思う。それをキープしていただきたい。
  • 納税相談では、同じような内容の質問については、デジタルで対応、それ以外は個別対応することにより、時間をうまく使えるようなデジタル化、納税サービスをお願いしたい。

業績目標1-4-2(期限内収納の実現及び滞納の整理促進への取組)

  • 国税の滞納率がここまで低く抑えられているというのはすごいことだと思う。
  • 確かに滞納比率としては減っているかもしれないが、金額ベースでは、この5年間で一番大きくなっており、その要因に関する記述があると、より良いのではないか。

実績目標(大)3(税理士業務の適正な運営の確保)

  • 税理士等に対する懲戒処分件数が、昨事務年度は5年間で最大になっており、少なくとも何らかの注書きなりを記載したほうが良いのではないか。

その他

  • 優秀な職員、信頼される職員の確保は、国家公務員全体で大きな問題になっている。この2、3年来、デジタル人材の採用を頑張っているのは高く評価するが、予定された採用人員を得られてないように思われる。例えば、デジタル人材については初任給に少し差を設けるなどしてはどうか。
  • 全官庁に関係することだが、特に国税庁の場合は、経験を積んだ職員が地道に調査をするために、優秀な人材に長く働いていただくことが必要。給与体系も含め、いかに良い人材に官に来ていただけるかがとても重要だと思う。

 

≪令和7年度財務省政策評価実施計画等の一部変更関係≫

  • 総合目標等の一部変更については、骨太の方針に規定されたものとはいえ、真意がうまく伝わらないような非常に分かりにくい表現になっており、残念に思った。
  • 日本の情勢に大きな変化があったとしても間違った方向に行かないように、財務省の使命や目標の体系図が羅針盤となることを期待している。
  • 財務省の政策評価の指標については、世の中の環境が変わっていく中で、常時議論を重ねる必要があると思う。特に財政の指標に対するインフレの影響をどう見るかについては、非常に気になる。
  • 財政収支に対するインフレの影響について、収入はインフレに比例して増えるのでフォローになる部分もあるが、そのフォローを過大に評価すると、結果として歳出を増やす圧力に繋がるので、評価が難しい。
  • デフレからインフレに変わる中で、財政収支や債務残高対GDP比のようなストックベースの指標が、インフレの環境でどういう影響を受けるかを整理する必要がある。
  • 5年前、10年前は、経済が長期停滞に陥っている中で、多少財政政策を行っても金利は上がらないという議論だったが、現在は状況が異なっており、インフレの中で長期金利がすぐ上がっていく可能性がある。日本は、債務残高対GDP比が非常に大きく、金利が上がるとマイナス効果も非常に大きい。
  • 長期停滞から脱却した状態の中で、インフレが持っている財政への影響を整理する必要があり、今回変更があった指標は、そのことに非常に密接に関連していると思う。
  • 歳出に関わって言えば、長い目で見て持続するはずもない、次世代に付けを回す形でしか持続しないものはもうやめるべきだと議論しなければならない。
  • プライマリーバランスという表現については、歳出と歳入と2つの要因があるときに、その差をもってプライマリーバランスがいくつだという表示の仕方は不安定な数値であるため、例えば国債の債務残高対GDP比というようなものを本来取り上げるべきではないか。
  • 為替や日本国債を買い戻すこと前提に売るということは、いつ起きてもおかしくないと思っており、それを押し返す材料として、納税者と国税庁の関係はこれだけ安定していると折に触れて言うべきであり、国税庁の評価を前提として英語でも提示すべきだと思っている。
  • 財務省と国税庁の評価書を見た時に、事業官庁の方が書きやすいフォーマットになっており、制度官庁向けの評価フォーマットに少し改めたほうがいいのかなと思った。
  • 骨太の方針が、プライマリーバランスに関して少しずつ緩やかになったとしても、財政健全化を訴える、言い続けることが必要だと思う。
  • 財務省の実施計画等の文言の変更は、プライマリーバランスのところと債務残高に関して変更したということだと思うが、財務省と政権との間でどう思ったのかが今一つ分からない。
  • 今後、歳出膨張の圧力が増えてくると予測され、金利が上がった場合は崖っぷちに立たされることとなるので、バランスをとりながら財政運営していただきたいと思っている。
  • 令和7年度の計画変更については、変更前に比べると曖昧になった感じがするが、不確定要素が増えた、或いは不透明感が高まったことが背景にあると思う。
  • 歳入歳出については、政治的な状況から、いろいろな数字的な見通しがたちにくくなったのかと思うが、いずれにしてもプライマリーバランスを今後も大切にすることを堅持してほしいと思う。
  • 多くの国民が、今後の経済政策あるいは経済財政運営について非常に不安感をもっているということを認識しておく必要がある。
  • 財務省が果たすべき役割が大きくなっているが、それは政治的な安定性があったうえでの話であるので、あまり財務省に責任を持たせることは良いことではないと思っており、当面は令和7年度の目標を粛々と実現できるように努力していただきたい。
  • 財務省の政策評価実施計画等の変更は、骨太の方針が変わったので、財務省としては致し方ないと思う。
  • プライマリーバランスだけでチェックするのがどうかというご議論はその通りだが、債務残高対GDP比の場合でも、何を資産と考え何を債務と考えるかということは、あまりぶれない、ハードな指標になるように、内部的にご検討されるのがいいのではないかと思う。
  • 数年後の、国債の利払い費による財政への打撃はものすごく大きい。プライマリーバランスは全然間に合っておらず、金利を含めた全体のバランスを目指さなくてはいけない。先ずそのバランスを早急に行っていただきたい。その次は、国債をどうやって返済していくかという議論になると思う。
  • 財政の健全化の遅れが為替に影響し、それがインフレに結びついているというチャンネルがあることも、国民の方々に理解していただける必要があると思う。
  • 高齢化が進むと、社会保障への依存や金利収入減などの理由で財政政策、金融政策の有効性が落ちてくる。
  • 財政について、諸外国と比較した色々な指標の数字があると、国民の方々にやはり日本はおかしいとわかっていただけるのではないかと思う。国の財政の黒字化を進められるよう、財務省の指標も是非そのようにしてほしい。

 

以上

(速報のため事後修正の可能性あり)