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内容 1. 令和7年10-12月期における物価連動債の発行額等について
〇令和7年10-12月期における物価連動債の発行額等について、理財局から以下のように説明を行った。
・物価連動債の発行額等については、P.3のとおり、令和7年度国債発行計画において、「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて、柔軟に発行額を調整」することとされている。また、買入消却についても、P.3のとおり、「市場の状況や市場参加者との意見交換も踏まえ、必要に応じて実施する」こととされている。
・令和7年7-9月期の入札等の結果および流通市場の状況についてはP.6~P.8に記載している。P.8のとおり、この間のBEIは概ね150bps~160bpsで安定的に推移している。
・令和7年10-12月期の取り扱いについて、事前にご意見を伺ったところ、全ての参加者から、需給状況や流動性等を踏まえると現状の取り扱いを維持することが適当とのご意見を頂いた。
・これを受け、P.9に当局の案をお示ししている。令和7年10-12月期については、現状どおり2,500億円の発行入札を行いつつ、毎月200億円の買入消却入札を行うことを想定している。
〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。
・当局の提案を支持する。足元BEIは150bps~160bps程度で非常に安定して推移しているものの、時折、少額でも売却ニーズが出てくると、一方向に価格が動きやすく、引き続き流動性が潤沢ではないという状況である。足元のBEIの安定性は発行額、当局の買入消却または日銀買入オペが実施されていることによって成り立っていると感じている。 ・足元名目債の金利がやや上昇基調にある中で、無用なボラティリティを出す必要はないと思われるため、一旦は現状維持程度の発行額ないしは買入消却額の据え置きを希望する。
・当局の提案を支持する。今年度前半においては、物価連動債の価格ボラティリティが安定的に推移しており、今までのように投資家からの売却によって価格が一方向へ動きやすいという状況が多少はあるものの、投資家層の裾野の広がりにより、投資家の購入によってボラティリティが吸収されるということが確認できている。そのため、中期的にみると需給環境は引き締まる方向に推移していくと考えている。中期的には発行増額の検討余地もあり得るものの、直ちに増額する必要はなく、まずは第Ⅱ非価格競争入札の再開を検討してほしい。
2. 令和7年10-12月期における流動性供給入札の実施額等について
〇令和7年10-12月期における流動性供給入札の実施額等について、理財局から以下のように説明を行った。
・流動性供給入札については、P.11のとおり、令和7年度国債発行計画において、最終的には「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて柔軟に調整」することとされており、前回6月の本会合で皆様からご意見を伺ったうえでP.12のとおり、8月以降、残存15.5年-39年ゾーンを減額し、9月から残存5-15.5年ゾーンを増額している。
・令和7年7-9月期に実施した流動性供給入札の結果等についてはP.13~P.15のとおりである。
・残存15.5-39年ゾーンの減額幅については、1,000億円減額とする案を支持するご意見が多かったものの、それ以外にも、現状維持とする案や、2,000億円減額とする案、四半期に1回とする案など、様々なご意見をいただいた。
・一方、超長期ゾーンの流動性供給入札の実施額を減額することの見合いの増額対象としては、短・中期ゾーン、長期ゾーンといずれのご意見も頂いたものの、残存1-5年ゾーンに付け替えることが適当とのご意見が多く見られた。
・これを受け、P.16に当局の案をお示ししている。残存15.5-39年ゾーンを1回あたり1,000億円減額した2,500億円とし、残存1-5年ゾーンを1,000億円増額することを想定している。
・なお、オフ・ザ・ラン銘柄を対象とした買入消却について、一部の国債市場特別参加者から希望するご意見が聞かれたので、買入消却に対する当局としての考えを改めてお伝えしたい。オフ・ザ・ラン銘柄を対象とした買入消却については、 ・日銀による国債買入れの減額により国債市場の機能度の改善が進む中、政府が国債を買うことによる市場の自律性への影響や、 ・国債管理政策における位置づけ、 などの課題があると認識しており、現時点では実施に向けた具体的な検討を当局は行っていない。
・最後に、本会合に関する情報の取り扱いについて1点付言する。発行当局として、市場参加者との自由な意見交換が重要だと考えているが、本会合に関する情報が市場に予断を与え、マーケットが過度に反応してしまうと、国債市場特別参加者の皆様との自由な意見交換ができなくなってしまうことを危惧している。当局として、市場との対話をどのように行っていくのが良いか引き続き考えてまいりたいが、いずれにせよ、今後も引き続き国債市場特別参加者の皆様を中心とした市場参加者との対話を丁寧に行っていきたいと考えており、国債市場特別参加者の皆様におかれても、情報管理の徹底をお願いしたい。
〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。
・流動性供給入札の全てのゾーンについて、7-9月期からの発行額の据え置きを提案したい。超長期ゾーンに対する当局の機動的な対応や、残存1-5年ゾーンの増額については歓迎するが、超長期ゾーンの発行減額を実施した7月以降、ファンダメンタルズを反映しないような金利の急騰や、大幅なスティープニングは生じていないと理解している。 ・7月以降見られた金利上昇やスティープニングは、金融政策や国内外の政治の不透明さ等が反映された結果であり、健全なマーケットリアクションであると認識している。確かに、一部のロークーポン銘柄の超長期ゾーンでの売り圧力も見られるが、一方でその割安さに注目した買いも相応にあり、極端なイールドカーブの歪みや、新規の国債発行への支障は生じていない状況である。むしろ、単価が調整された残存30年超のロークーポン債を対象としたNISA対応の投資信託が8月に新たに設定されるなど、日本国債への新たな投資家層の広がりが期待できる状況となっている。 ・このような投資の残高増額期待の高まりや、ナンピン買いの対象となっていることを受けて、むしろ残存30-35年ゾーンはイールドカーブ上で非常に割高化している状況である。こうした状況を踏まえると、このタイミングでの残存15.5-39年ゾーンの減額は不要だと考えている。また、残存15.5-39年ゾーンの発行取りやめというような極端な案を採用した場合、健全なイールドカーブの形成や、歓迎すべき新たな投資家層の拡大に支障をもたらすと思われる。 ・実際、今年度減額後初となる8月の残存15.5-39年ゾーンを対象とした流動性供給入札は、ややテールは出たものの前回比で応札額は増加、テールは縮小という結果となり、その日のセカンダリー市場では金利低下で反応し、総じて無難という評価になっている。今現在、当局による機動的な発行減額が功を奏し、超長期ゾーンのイールドカーブや金利水準は落ち着きを取り戻しているという状況である。また、超長期ゾーンを対象とした日銀オペに関しては、7月の発行減額以降、テールが出るケースが散見されている状況である。 ・こうした状況を踏まえ、10-12月期における流動性供給入札の発行金額は、現状維持や減額といった案が幅広に本会合で議論されると見込んでいたため、当局から事前に示された案が減額のみであった点は、ややサプライズに捉えている。実際、その時のセカンダリー市場のリアクションを見ても、同様に捉えた市場参加者が多いと考えている。構造的な需給バランスの変化や、ファンダメンタルズを反映しない金利水準やイールドカーブの形成、過度なボラティリティの高まりに対しては当局の機動的な対応を期待するが、発行市場に特段問題のない状況下では、金利やイールドカーブの水準は基本的には市場に委ねられるべきだと考えている。
・残存15.5-39年ゾーンの流動性供給入札を10月はスキップして、12月は500億円減額して3,000億円で実施、それに対応して残存1-5年ゾーンを10月に4,000億円で実施する案を提案する。 ・その背景として、超長期市場の需給の緩みの一因は、超長期ゾーンのオフ・ザ・ラン債の売りによるものと考えられるため、残存15.5年-39年ゾーンの減額という当局の方針自体は正しいと思っている。しかし、超長期ゾーン全体の需給の緩みの根本的な原因は、カレント債を含めた超長期ゾーンの超過発行であると以前から変わらず考えている。本来であれば、来年度の発行計画において、カレント債を含めた発行の減額をすることが適切であり、流動性供給入札を過度に減額すると、市場の流動性や機能度の低下が強く警戒されるのではないかと思われる。 ・残存15.5年-39年ゾーンを1,000億円の減額では、減額幅としては不十分という認識であるため、それよりも多めの減額が望ましいと思う一方、外資系証券会社の場合はバランス・シートの制約等の観点から、12月に一部のオフ・ザ・ラン債に対するショートカバーニーズが強くなる傾向にあり、12月の入札をスキップしてしまうのも流動性の観点から望ましくないと考えている。また、1回あたりの金額を過度に減らすと入札の結果が安定しないと考えたことから、折衷案として、12月は500億円減額に留め、3,000億円での実施という案を提示した次第である。
・当局の提案に賛成する。前回6月の本会合でも申し上げたとおり、基本的にはオフ・ザ・ランの需給動向が超長期ゾーン全体の需給動向に与える影響としては非常に大きくなっているという認識があるため、まずは残存15.5-39年ゾーンの流動性供給入札減額を方針の中心として考えていくべきという考え方に変化はない。 ・その中で、現状の超長期ゾーンの需給状況や直近の入札結果も含めて多少安定してきているという点を踏まえると、今回に関しては、まず1,000億円の減額が妥当だと思っている。 ・一方で、より長期的にみると、超長期ゾーンの発行過多の部分が今後イールドカーブに大きく影響を与える可能性もあり、引き続き生保勢の入れ替え需要は継続していくものと見込まれる。 ・そうした場合、オフ・ザ・ラン銘柄とオン・ザ・ラン銘柄のロング・ショートがバランス・シートにかけるストレスによって市場機能度が損なわれる形となって、それが国債の安定消化に対しても悪影響を及ぼす可能性があると考えており、オフ・ザ・ラン銘柄の需給動向をどう改善させていくのかという点がポイントとなってくる。 ・そういう中では、バイバックについても今後検討はしていくべきものだと考えている。もちろん市場の自律性については、課題として認識しており、可能な限り自律性を損なわずにバイバックを実施できる制度設計を真剣に考えていく必要があると思っている。 ・例えば、バイバックの銘柄選定方法だけでなく、残存15.5-39年ゾーンの流動性供給入札の銘柄の選定方法も含めて、何かしらルールをしっかりと作ることで、市場の自律性に対する信認も同時に作っていくということが必要になってくる。そのような、より細かな具体的な制度設計を考えると当然時間がかかる措置だと理解しているが、今後のリスクマネジメントとして、発行当局・市場参加者双方で頭の体操や様々なことを検討しておく必要があると考えている。
・当局の提案に賛成する。流動性供給入札の残存15.5-39年ゾーンは7月以降発行量が既に1,000億円減額され、8月に減額後初の流動性供給入札があったが、結果自体は実勢対比で多少テールする低調なものだったが、以前と比べると大分テールが短くなった印象がある。若干テールした背景としては、前回6月の同ゾーンの入札結果がかなり酷かったため、及び腰になっていた市場参加者が非常に多かったことが挙げられる。 ・また、マーケットメイカーの感覚として、仮に1,000億円程度減額し、入札1回あたり2,500億円程度の規模になってくると、恐らく実勢水準近辺で、ある程度ニーズが固まってくる。もちろんその時の地合いにも依存するが、そこまで大幅にテールするケースはなくなってくると思われる。逆に2,500億円程度の規模感で供給があるということで、そこまでスクイーズ的に高値で買い上げないといけないような極端に強い事例もそれほど発生しないだろうと考えており、上下双方向のシナリオのリスクを勘案すると、2,500億円が適切な規模感であると思われる。 ・残存15.5-39年ゾーンの発行額をゼロにするといったケースになってくると、残存期間が比較的長い40年債や一部需給がタイトな30年債のオフ・ザ・ラン銘柄を買い戻す機会が何年にも渡って消失することで、仮に市場参加者のアンワインド等が発生した際に、相当極端なプライス・アクションが発生して市場機能度にかなり悪影響を及ぼすことが想定される。特に外資系証券会社は年末にかけてバランス・シート上のリスクを削減する制約もあるため、そういったタイミングでマーケットにストレスがかかってしまうことが想定される。そういった意味合いにおいて、大幅な減額や発行取りやめは現段階で必要ないと考えている。 ・代替として増額するゾーンに関しても、当局の提案に賛成。理由としては、残存1-5年ゾーンに関してはかなり需給がタイトな銘柄も散見され、発行量・デルタも相対的に少ないため、マーケットの需給に鑑みると比較的歓迎されやすい需給環境だと思われる。 ・残存5-15.5年ゾーンについては、昨年後半から日銀の減額措置などチーペスト周りに係る需給緩和措置が断続的に実施されており、毎月減額措置が行使されるような状況になっているため、残存7年程度の銘柄を中心に需給がかなり緩和していることは間違いない事実である。 ・また、カーブの形状によっては前回入札のように残存15年程度の銘柄が大量に発行されるようなことも考えられ、そうなると実質的に超長期ゾーンが増額される状況にもなりかねないため、現在行われている当局の施策の方向性を考えると、残存1-5年ゾーンで代替することで発行年限の短期化を明確に図ることが適切である。
・残存15.5-39年ゾーンを入札1回あたり2,000億円減額し、1,500億円で実施、減額分の振替先として残存5-15.5年ゾーンを入札1回あたり1,000億円増額し、7,500億円で実施、残存1-5年ゾーンも入札1回あたり1,000億円増額し、7,000億円で実施することを提案する。超長期ゾーンは引き続き発行減額することで需給改善を図るべきと強く考えている。前回の本会合で議論した後、7月から超長期ゾーンの発行を減額したにもかかわらず、イールドカーブの形状や絶対水準を見ると、超長期ゾーンの需給が改善されたとは言い難い状況。 ・また、金利上昇に伴い買い手が増えてくるかと言われると決してそうでもない。残存期間が10年より短いゾーンは金利上昇に伴って買いが見られるものの、超長期ゾーンに関しては、金利上昇をチャンスと捉えて買いに来る投資家は、相対的に少ないのが現状であり、金利上昇による需給改善は見込める状況にはないと感じている。 ・構造的な需給の調整は新発債で対応するべきであり、将来的に需給の回復が見られなければ、超長期ゾーンの新発債を減額して対応していくべきであると考えている。ただ、7月に既に新発債の発行を減額しており、年度内の度重なる減額は難しいと思われることから、即座にゾーン間で調整が可能な流動性供給入札の発行額の調整で対応すべきと考えている。 ・以上のような需給状況から、残存15.5-39年ゾーンの発行額を相応に減額すべきと考えている一方で、発行額をゼロにすると一部のオフ・ザ・ラン銘柄の需給が著しく乱れ、マーケットメイクに支障をきたす恐れがあることから、最低限の発行は維持すべきと考え、1回あたり1,500億円の発行を提案する。 ・減額した分の増額先については、全て残存1-5年ゾーンだけで増額すると流動性供給入札の発行年限が短くなりすぎるため、同時に残存5-15.5年ゾーンも増額すべきと考え、入札1回あたり、それぞれ1,000億円の増額を提案する。 ・なお、残存15.5-39年ゾーンを減額するにあたっては、マーケットで恒常的にショートしている銘柄が確実に発行されるよう、日銀ネットの制約上で以前行っていたようにアンケート方式で発行銘柄を絞るのも一案かと思料する。
・7月から超長期ゾーンの発行減額を実施したが、現在においても同ゾーンにおける需給の緩みが継続していることから、10-12月期の流動性供給入札において需給調整を行うという当局案に賛成。一方で、残存15.5-39年ゾーンについて、超長期ゾーンのオフ・ザ・ラン銘柄の流動性は低く、投資家需要や証券会社のショートカバーニーズが一定程度あるということが入札結果から見られている。また、市場において売買機会が確保されていることは市場参加者のポジション調整の観点から重要であり、それによって流動性の改善や流動性プレミアムの縮小に寄与すると考えている。 ・そのため、流動性供給入札については、各年限一定規模の金額での実施が重要であり、残存15.5-39年ゾーンについては少なくとも1回あたり2,500億円程度の発行を維持していくことが今後も必要と考えている。 ・需給調整に伴う減額分の見合いとしては、需給がタイトな銘柄が比較的多く、かつ発行額も相対的に少ない残存1-5年ゾーンの増額が相応しいと考えている。
・流動性供給入札の発行額について、当局案で異存はない。 ・買入消却に関して、強く今すぐの実施を求めるわけではないが、国債市場の機能度の改善に対して政府の介入をどう考えるのかという点について、当局から説明があったところではあるが、それに対する一つの考え方として、市場というものは、証券会社のようにセカンダリーで売買する参加者だけでなく発行体も含めてのものと理解することが可能なのではないか。 ・例えば、殆ど同じ償還年限にもかかわらず複利で換算した際に利回りが著しく異なる場合にはアービトラージが可能だが、市場参加者によってはバランス・シートの制約上など様々な理由で、アービトラージができずそのまま放置されることがある。このような状況に対して、発行体として買入消却を行えばアービトラージができ、経済合理性が確保され、市場参加者の一人として買入消却を行いつつ同時に発行を行うことによって、介入というよりは、むしろ健全なマーケット形成に資すると考えている。 ・当局が動くことが常に介入というわけではなく、逆に当局も一つの市場参加者として、収益を目指していくオプションもあるという立場で考えるとよいのではないだろうか。ただ、今までと異なるやり方になるため、今すぐの導入ができないことや、非常に時間がかかりながら色々なことを調整していくことが必要ということは理解している。
3. 最近の国債市場の状況と今後の見通しについて
〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。
・前回6月の本会合から状況はあまり変わっておらず、財政悪化懸念が続いている。現在、自民党総裁選の最中であるが、誰が総裁に就任したとしても、今後の国会運営においては、新たな連立も視野に入る中での野党との協力は欠かせない状況であり、野党は消費減税を含め財政拡大の主張が多いため、それに配慮していく必要がある。 ・財政悪化懸念によりタームプレミアムが拡大し、イールドカーブのベア・スティープ化が継続しているが、最近は財政ポジションが好転し、膨大な経常黒字の存在を考えると、ケインズの美人投票的な色彩が濃いと個人的には考えている。 ・一方で、それは同時に理論値がなく正解もないということを意味し、市場の多数決によって、このベア・スティープ化、要するに財政悪化懸念で長いところの利回りが上がっていくという状況がこれからも度々出現するということだと思料している。 ・直近の日銀金融政策決定会合を受けて早期の利上げ懸念が強まっており、少なくとも次回10月決定会合までは不透明感が払拭されない。よって、財政悪化懸念と継続利上げから今後も金利は上昇基調、というのが市場の多数派の見方であることは間違いないと考えている。 ・ただし、やっと関税や移民といったトランプ政策の一丁目一番地の経済に対する悪影響が雇用統計といったハードデータにも現れるようになってきたので、アメリカはじめ世界経済の行く末には、もう少し懸念しないといけないのではないか。それによって、コンセンサスである金利上昇という見方が覆される蓋然性は決して低くない。 ・財政に関して楽観的なことを申し上げた一方、国債増発は心配ないということでは一切ない。日本銀行のイールドカーブ・コントロールが終了し、国債市場の価格発見機能の回復により、財政悪化懸念が残る中で市場の警告が発せられるようになった。徒な金利上昇を招かぬように、当局からの警告、発信についても今後引き続き希望するところである。
・足元の状況について、利上げ観測が高まる下で正常な調整が起こっているものと考えている。ただし従来と比較すると、明らかに超長期ゾーンが安定して見えてきており、効果が絶大とは言い難いが、これまでの発行減額の影響が徐々に出てきているのではないか。少なくとも市場の安定というのが超長期ゾーンで見られつつあるのはポジティブに捉えている。 ・ただし、タームプレミアム自体は非常に大きい状況が続いているので、発行水準として30年債で3%と言われれば普通かもしれないが、10年債が1%台半ばで発行できるという状況を考えると、この水準での発行が続くことは過度なコストを払っているということになりかねない。こういった部分に十分配慮した発行計画が今後、特に来年度に向けては求められるのではないかと考えている。 ・バイバックについて、日銀の国債買入れが減る中で市場の機能度の改善ということが言われているが、これは特に残存10年以下について当てはまる議論であると考えており、ここ1~2年でいうと超長期ゾーンの機能度が顕著に改善しているということはないと見ている。オフ・ザ・ラン銘柄を恒常的に売却したいという需要があり、これによって正常とはいえ不要なボラティリティが市場で生まれてしまっているということも事実だと思われるので、これに対応するツールについて、銘柄の選定等を含め検討を始めていくことが将来的に市場機能の改善に資するのではないかと考えている。
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