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日時 令和6年3月13日(水)16:00~17:10

場所 財務省 第3特別会議室

内容 
1. 令和6年度における固定利付債のリオープン方式について

〇令和6年度における固定利付債のリオープン方式について、理財局から以下のように説明を行った。

・翌年度の固定利付債のリオープン方式については、毎年3月の本会合において議論し、皆様のご意見を踏まえて決定することとしている。本日は、令和6年度におけるリオープン方式について皆様のご意見をお伺いする。P.3に案をお示ししているが、現在の取扱いと事前に頂いたご意見を含めてご説明する。

・10年債については、平成27年度以降、償還日が同一の国債を発行する場合で、かつ、前回債の表面利率と入札日の市場実勢利回りとの乖離が概ね30bps以内の場合には、リオープン発行することとしている。
 この点につき、皆様のご意見をお伺いしたところ、一部の参加者から、流動性の観点から20年債、30年債と同様の年間4銘柄の原則リオープン発行に変更すべきとのご意見を頂戴したものの、多くの参加者から、投資家需要の観点からは市場が大きく変動した場合に新発債発行とする余地を残した方がよく、現行方式を維持することが適当とのご意見を頂戴した。

・また、年間4銘柄での原則リオープン発行としている20年債と30年債、年間1銘柄での原則リオープン発行としている40年債については、全ての参加者から、現行方式を維持することが適当とのご意見を頂戴した。

・そのほか、償還日及び表面利率が同一となる場合にリオープン発行している5年債については、一部の参加者から10年債や20年債、30年債のようなリオープン方式とすべきとのご意見を頂戴したものの、多くの参加者から、現行方式を維持することが適当とのご意見を頂戴した。

・これらのご意見等を踏まえ、当局案では、いずれの年限も、令和5年度の方式を維持することを想定しているが、改めて皆様のご意見を頂戴したい。

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・足元の大規模な日銀買入により流動性低下の懸念が台頭している中、原則リオープン発行によって流動性低下を抑制できるものの、投資家の需要については簿価通算等の需要や、新回号への選好という需要が原則リオープン発行によってなくなってしまう。流動性と投資家需要とのバランスの観点から、超長期ゾーンは原則リオープン発行による弊害が基本的にはあまり見られない一方、手前の年限はその弊害が出てくるリスクが高いことから、10年債を境として超長期ゾーンについては原則リオープン発行、10年債は概ね30bps以内という条件でリオープンしやすい余地を残すことが望ましいと考える。

・5年債について、原則リオープン発行が望ましい。茲許ほぼ毎月新回号での発行となっており、日銀買入オペで買われた量の多寡により市中で銘柄間の強弱がかなり違った状態になっている。買戻しにくい銘柄はずっと買戻しにくく、市中に在庫の余っている銘柄は償還日が同一であっても利回り格差が発生する状況。原則リオープン発行とすることにより5年ゾーン全体での流動性がよくなると考えている。

・2年債を除く全年限での原則リオープン発行が望ましい。簿価分散等を背景に現行方式が投資家にとってメリットがあるのは重々承知しているが、マーケット・メイクの観点からすると流動性が担保されることが最も重要である。最近でも、5年債が同一償還日で3銘柄発行されることにより、銘柄によっては著しい流動性の低下が見られる。このような現状を踏まえると、ルールを分かりやすくするためにも原則リオープン発行が望ましいと考えている。

・10年債・5年債について、現状金融政策の変更等が見込まれる状況においても流動性の悪化は感じないため、当局の提案に全て賛成する。

2.  令和6年度における固定利付債の入札方式等について

〇令和6年度における固定利付債の入札方式等について、理財局から以下のように説明を行った。

・翌年度の固定利付債の入札方式については、リオープン方式同様、毎年3月の本会合において議論し、皆様のご意見を踏まえて決定することとしている。P.5に当局案をお示ししているが、こちらも、事前に頂いたご意見等を含めてご説明する。

・固定利付債の入札方式のうち、40年債の入札方式については、一部の参加者から価格コンベンショナル方式への変更を希望するご意見を頂戴したものの、多くの参加者から、現状の利回りダッチ方式を維持すべきとのご意見を頂戴した。

・40年債以外の入札方式については、一部の参加者から40年債と同様のダッチ方式に変更すべきとのご意見を頂戴したものの、多くの参加者から、現状の発行方式を維持することが適当とのご意見を頂戴した。

・また、国債市場特別参加者の資格の一つである「第Ⅰ非価格競争入札」については、平成29年7月の発行限度額引き上げ以降も、本会合でのご意見を含めて、投資家の平均価格での購入需要の増加や、国債市場特別参加者が減少傾向にあること等を背景とした増額検討のご要望を繰り返し頂いていたところ。

・そこで、足元の入札結果や市場・投資家動向等も踏まえ、事前に皆様からご意見をお伺いしたところ、ほぼ全ての参加者から、限度額の引き上げが適当とのご意見を頂戴した。

・これらのご意見等を踏まえ、当局案では、入札方式についてはいずれの年限も令和5年度の方式を維持しつつ、第Ⅰ非価格競争入札の発行限度額を、令和6年5月以降に実施される入札から、現行の「発行予定額の20%」から「発行予定額の25%」に引き上げることを想定している。この点について、改めて皆様のご意見を頂戴したい。

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・40年債については引き続き発行額が高水準であり、価格コンベンショナル方式に変更したとしても、投資家からの入札参加が増えるとは考えづらいため、現行の利回りダッチ方式に賛成する。
・20年債・30年債について、今年度は急激な金利上昇や金融政策の不透明感から、大幅なテールが発生する入札が複数回見られている状況。特に30年債は発行額が引き続き高水準であり、大幅なテールが発生するような状況が続くようであれば、何らかの対応策が必要になると思われるが、利回りダッチ方式への入札方式の変更は究極の手段であり、且つ入札方式の後退と取られかねないことに加え、超長期ゾーンの入札不調を公言するのと同義だろう。よってまずは第Ⅰ非価格競争入札の限度額の引き上げ等で対応するべきと考える。

・第Ⅰ非価格競争入札の限度額の引き上げにつき、当社はこれまで常々要望していたことから、非常に前向きに受け止めている。一方で25%という数字の妥当性について、実際海外投資家を中心としたアベレージオーダー需要の多さを踏まえると、場合によっては更なる引き上げを行う必要も出てくると思われる。まずは今回の引き上げを第一歩として、今後どれぐらいの水準まで引き上げていくのかを検討していくものと理解している。
・入札方式につき、40年債のダッチ方式はそのまま継続していくべきと考える。また先述の第Ⅰ非価格競争入札の限度額を25%からどこまで引き上げていくのかという点にも関わってくるが、もちろん第Ⅰ非価格競争入札の限度額を100%にするということは不可能で、逆にそれをするのであれば正にダッチ方式を取り入れるということになる。ダッチ方式、コンベンショナル方式のどちらがよいのかという点について、ダッチ方式が後退であるという意見が聞かれるが、一方で米国ではかつてコンベンショナル方式で入札していたが、それによってショートスクイーズが起きたことからダッチ方式に移行したという経緯もある。現時点でそのようなショートスクイーズを引き起こすような参加者がいるということでは全くないが、ポテンシャルとしてダッチ方式の方がより公正性があるという見方もできるだろう。いずれにせよ、第Ⅰ非価格競争入札の数字の妥当性と、ダッチ方式かコンベンショナル方式かという点について、引き続き議論してほしい。

・引き続き40年債の価格コンベンショナル方式での実施を提案する。金利が上がっても依然としてタイトなスプレッドが続いており、安定的に消化されている。発行から16年が経っており成熟度で考えれば他の年限と差別する必要はなくなっており、他年限と同一方式にすべきと考えている。
・第Ⅰ非価格競争入札に関しては、25%への引き上げを支持する。確実に投資家の注文を執行するためにも有用で、引き上げはより安定的な消化に資すると考えている。

・40年債のダッチ方式、その他のゾーンのコンベンショナル方式での入札に関して全面的に賛成する。40年債については引き続き投資家層が限定されていることに加えて、隔月の入札方式で1回の入札当たりのデュレーションのインパクトが相応に大きいこともあるため、今後の金利水準の変化による投資家層の変化・需要を見極めつつではあるものの、当面は現行通りのダッチ方式での入札が望ましいと考えている。その他のゾーンについて、今年度は20年債、30年債等を中心に少し入札が荒れることがあったが、毎月続いているわけではなく、言い換えればあるべき価格調整がされているという風にもとれるため長いゾーン含めてコンベンショナル方式で問題ないと考えている。
・第Ⅰ非価格競争入札については、今後日本銀行による金融政策の正常化が進むとみられる中で金利のある世界に戻ってくることから、投資家層の国内債への回帰や投資家層の拡大があると考えている。その際に、平均価格での購入を望む投資家層の需要に応えて環境を整備すること、言い換えれば一時的にその受け皿となる証券会社が入札に臨みやすい体制を作ることは国内債券市場全体の活性化という観点からも非常に重要だと考えているため、今回、第Ⅰ非価格競争入札の上限を発行予定額の25%に引き上げるということについても全面的に支持する。

3.  令和6年4-6月期における物価連動債の発行額等について

〇令和6年4-6月期における物価連動債の発行額等について、理財局から以下のように説明を行った。

・物価連動債の発行額等については、P.7のとおり、令和6年度発行計画において、1回の入札当たり2,500億円で年4回の発行としつつ、「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて、柔軟に発行額を調整」することとされている。また、買入消却についても、P.8のとおり、「市場の状況や市場参加者との意見交換も踏まえ、必要に応じて実施する」こととされている。

・令和6年1-3月期に実施した入札及び買入消却の結果等についてはP.9~P.11に、流通市場の状況についてはP.12に記載のとおりである。

・皆様から事前にご意見を伺ったところ、BEIは堅調に推移しているものの、物価連動債の流動性の改善や投資家層の裾野の拡がりはなお限定的との声が多く聞かれ、全ての参加者から、①令和6年4-6月期における発行額及び買入消却額、②令和6年度における物価連動債のリオープン及び入札方式のいずれも、現状の取り扱いを維持することが適当とのご意見を頂戴した。

・これを受け、P.13に当局案をお示ししている。令和6年4-6月期については、2,500億円の発行入札を1回行いつつ、毎月200億円の買入消却入札を行うことを想定している。また、令和6年度におけるリオープン及び入札方式についても、現状の方式を維持することを想定している。なお、買入消却の対象銘柄については、カレント銘柄も含めた全銘柄とすることとしたい。

・物価連動債市場の育成は、国債管理政策上の重要な課題と考えており、引き続き、入札等の結果や市場・投資家動向、皆様のご意見を踏まえつつ、慎重に検討・判断していきたいと考えている。今後の市場への見方を含めて、改めて皆様のご意見を頂戴したい。

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・物価連動債の発行額及びリオープン方式、入札方式すべての点において当局の提案に賛成する。2月の入札以降は少し足元もみ合いの展開が続いているが、流動性面の懸念等を主因に引き続き少し割安な価格形成が続いている。日本の今次局面における構造変化等に着目して一部の海外勢からは物価連動債の新規の投資や投資の再開といった声が出ていると聞いているが、裾野が大きく拡大しているとは言い難い状況。このような流動性の下では、足元の需給バランスを変化させるのは得策ではなく、現状の発行・買い入れバランスを維持してマーケットの育成に努めることが肝要。
・今後の償還等による市中発行残高の減少等を含めた中長期的な市場の在り方について、目先償還されていく銘柄については保有している主体がかなり限られており、実体的には市中にほぼないという状況であることから影響は軽微と考えている。他方、中長期的には投資家層の裾野の拡大を確認しつつではあるが、発行・買入れのバランスを少しずつ変化させていく必要があると考えている。そのためには投資家だけでなくマーケットメイカーも含めた参加者の拡大が肝要であり、官民一体となって取り組むべき課題。

・発行額及び買入消却額の現状維持を支持する。物価連動債の市場は、引き続き環境に変化はなく、流動性が枯渇した状況が続いている。既発債に対する投資家の強い売却ニーズが見られる一方で、セカンダリー市場での需要はほとんどない状況。当局の買入消却や日銀買入オペが物価連動債の価格形成の重要なファクターとなっているのが現状であり、今後も買入消却の維持・継続をお願いしたい。
・先般の2月入札も大きく流れたことから需要不足は明らかであり、さらなる発行増額は困難と考えられる。しかしながら、日本銀行による物価安定目標の達成あるいは相応の金利水準の実現が近い将来現実となれば、物価連動債に対するイントも徐々に高まってくると考えている。

4.  令和6年4-6月期における流動性供給入札の実施額等について

〇令和6年4-6月期における流動性供給入札の実施額等について、理財局から以下のように説明を行った。

 ・流動性供給入札については、P.15のとおり、令和6年度発行計画において、
(1)残存1-5年ゾーンを年間3.0兆円、残存5-15.5年ゾーンを前年度比プラス1.2兆円の年間7.2兆円、残存15.5-39年ゾーンを年間3.0兆円の発行とすることを想定しつつ、
(2)最終的には「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて柔軟に調整」することとされている。

・令和6年1-3月期に実施した流動性供給入札の結果等についてはP.16~P.19のとおりである。

・令和6年4-6月期の流動性供給入札について、皆様から事前にご意見を伺ったところ、全ての参加者から令和6年度発行計画に沿った発行額等が適当であるとのご意見を頂戴した。

・これを受け、P.20に当局案をお示ししている。当局案では、残存1-5年ゾーンは奇数月に5,000億円、残存5-15.5年ゾーンは毎月6,000億円、残存15.5-39年ゾーンは偶数月に5,000億円の発行とすることを想定しているが、改めて皆様のご意見を頂戴したい。

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・当局の提案に賛成する。残存5-15.5年ゾーンについてはこれまでの日銀買入オペの影響で市中残高が少なくなっており、当該ゾーンの流動性を確保するために一定規模の発行が必要。マーケットでは残存5-15.5年ゾーンについて一定の投資家需要が見えており、これまでの流動性供給入札においても当該ゾーンで強い入札結果が続いていることから、国債発行計画で示された通り、他の中期、超長期ゾーンと比較しても当該ゾーンの増額が妥当である。

・残存5-15.5年ゾーンを毎月1,000億円増額する当局の提案に賛成。発行計画に基づき、当該ゾーンを増額することは、累積的かつ大規模な日銀買入オペによる市中残高の少なさからの回復を通じて、市場機能の回復に寄与すると考えている。
・今後の課題の一つとして、近い将来先物チーペスト銘柄となる10年既発債の市中残高が非常に少ない状況に起因した先物発のマーケットの混乱が引き起こされるリスクがある。このリスクに対応する意味での残存5-15.5年ゾーンの発行増額と認識しているが、現行では当該ゾーンの入札は月1回であり、そのタイミングで当該銘柄の追加発行がされるか否かが不透明という問題もある。本質的には当局の問題ではないが、近い将来起こるかもしれない懸念事項の一つとして認識している。

5.  令和6年度におけるクライメート・トランジション利付国債の入札発行について

〇令和6年度におけるクライメート・トランジション利付国債の入札発行について、理財局から以下のように説明を行った。

・GX経済移行債(及びその借換債)のうち、個別銘柄として発行する分を「クライメート・トランジション利付国債」と呼んでいるが、このクライメート・トランジション利付国債を先月(2月)2回に分けて、10年債を約8,000億円、5年債を約8,000億円、総額約1.6兆円を無事発行することが出来た。初回の入札発行に至るまで、国債市場特別参加者各位からは各種アドバイス・サポートをいただいた。入札当日における応札・落札を含め、感謝申し上げる。

・本日は2月の入札結果を踏まえ、令和6年度(令和6年4月から令和7年3月末まで)における入札発行について、検討したい。

・まず、資料P.22にある昨年末公表の国債発行計画に記載のとおり、「クライメート・トランジション利付国債」を令和6年度においては総額1.4兆円発行することとしている。

・資料P.23に記載のとおり、令和6年度における入札発行の案をまとめている。2月の入札結果、その後の流通市場における動向、国債市場特別参加者各社からアンケートやヒアリングでいただいた意見等をもとに、最終投資家が購入しやすくし、円滑な消化を図る観点から、より年度の中で平準化し、1.4兆円を4回に分けて発行してはどうかと考えている。

・年限は、令和5年度に発行した年限を継続して5年債と10年債の2つとする。

・年限ごとの金額は、5年債と10年債であればいずれも広い投資家層を対象としていることや、今後の金融政策次第でいつどちらの年限の方が需要が高くなるか・低くなるかということを申し上げることも難しい状況を踏まえ、各年限3,500億円を2回ずつ発行する。

・タイミングとしては、予算上の出納整理期間における調整のため、初回は5月の発行とするが、2回目以降は物価連動債の入札や四半期末と重なることを避ける観点から、7月・10月・1月に入札を行う予定。

・また、10月及び1月に発行する分に関しては、それぞれ5月・7月に発行する10年債・5年債のリオープンとして、各回号の残高を増やすことを企図。

・P.24は明日夕方当局ウェブサイトにて公表する予定の、「令和6年度におけるクライメート・トランジション利付国債の発行額等について」である。利払い日や償還日は通常の国債と同様とすることを考えている。リオープンや入札方式(ダッチ方式)については、記載したとおりに進めようと思うが、今後のセカンダリー市場の動向や、5月以降の入札結果、皆様を含めた市場関係者との意見交換によっては、年度内であっても柔軟に調整する旨記載している。

・P.25は同じく明日夕方当局ウェブサイトにて公表する予定の、「令和6年5月における国債等の入札予定の変更について」である。先程申し上げた5月の10年クライメート・トランジション利付国債、3,500億円程度の入札は、5月28日(火)を想定している。

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・クライメート・トランジション利付国債の来年度の発行に関する当局の提案、即ち5年10年の2年限で発行することや、発行金額をそれぞれ等分すること、ないしはダッチ方式とすることについて賛成。
・2月の入札では各8,000億円を無難にこなせたと受け止めていることから、今の時点で特段年限を更に分散する必要はないと考えられ、2年限の発行を継続でよいと考える。
・発行の金額を等分するかについて、当社において2月の入札では5年債の方が10年債よりやや需要が見られたと思っている。しかしながら、来年度は金融政策の修正等、市場インパクトのあるイベントが多々あり、今般の入札の需要結果が来年度の入札の需要予測に使えるとは考えておらず、この時点で発行額に格差をつける必要まではない。
・また、入札方式については、入札後の日銀買入オペ前までは業者間で出合いが見られたが、それ以降の流動性は、通常の利付債よりは低い状況。発行回数が増え1回の入札当たりの発行金額が減ることを踏まえ、ダッチ方式を継続した方がよいと考える。
・今年度については、年度末に近いタイミングでの発行であり、それ故に各年限で1回ずつの入札に絞られたと理解。他方で来年度は、投資家の需要の平滑化の観点から、入札回数を複数回にして均等にすることが安定的な消化に繋がると考える。
・今回のクライメート・トランジション利付国債の入札前からの状況を振り返ると、入札前はそもそも投資家の需要の見極めが非常に困難であったことや、ショートした際のレポの手当てに少々不安であったこと、日銀買入オペの対象銘柄に入ったことで期待感もあり、不安と期待がまぜこぜになった状態で当初の10年債の入札を迎えた。その後のマーケットの状況は、グリーニアムが入札後に急縮小し、不安定さが目立つ。特に日本銀行に短期的に売却できると見込んでいた短期保有筋の動きは想定以上に多かったものと推察。必ずしも短期保有筋が悪いわけではないが、過度に多いと市場が不安定になるので、満期保有する投資家の裾野を拡大することが今後のクライメート・トランジション利付国債市場の健全な発展に一番近道であると考える。
・そのためには、発行サイドでは満期保有する投資家の買えるタイミングや1回の入札当たりの規模の見極めをしつつ、特に短期保有筋の過度な期待を高めないような形での日本銀行による緩やかに市場を下支えるような安定的な買入れが市場の安定化に繋がると考える。

・当社としても令和6年度のクライメート・トランジション利付国債に関して、発行額を(各年限)2回に分けて発行する当局の提案に全面的に賛成である。
・足元の第1回債の流通状況を見ると、ご祝儀的に需要が盛り上がるかと思っていたが、思いのほか最終投資家の購入意欲が少なかったようで、証券会社及びマーケットに流動性を提供する短期で売買する各種ディーラーの保有が思いのほか多かったのかと思う。
・結果として日銀買入オペに10年債は4割強入ることになり、2回のオペで買入れが終わってしまったことで、現状だとグリーニアムでなくリスクプレミアムが乗った形でセカンダリー市場が形成されている。
・当社もマーケット・メイクに力を入れようと思っているが、日銀買入オペが塞がれてしまったことで一気にセカンダリーの流動性が落ちてしまい、当初入札で買ってくれた顧客も最終投資家ではなかったということもあり、こぞって売りに来るような状況。それを吸収して持ちこたえているものの、なかなか投資家が見つからないような状況になっている。このまま割安状況が常態化すると、赤字国債よりコストが悪くなり、何のために発行しているのかわからない状況となるので、流動性について何らか手立てが講じられることを期待している。
・最終投資家も、現状セカンダリーではリスクプレミアムが乗っていると認識しており、10年債より1~2bps程度安ければ、こちらを購入してもいよいという投資家も少しずつ現れてはいる。次回以降は最終需要をしっかり調査してから入札に挑まなくてはいけないと肝に銘じている。

・当局の提案についてはすべて賛成。
・特にこういった状況になってくると、リオープンを使いながら1回の入札当たりの発行額を減らすというのは流動性向上に資すると思っている。
・入札前後の動きから振り返ると、事前の過熱感みたいなものもあったが、結果として見れば10年債も5年債も無難に消化されたと評価している。
・ただ先ほど来話されているように、セカンダリー市場の流動性は乏しい。現在の国債市場では、日銀買入に依存する部分は大きくなるため、構造的にディーラーが一旦在庫を抱えて、それを日本銀行に売るという行為が全ての年限で起きている。クライメート・トランジション利付国債でも当然予想されたことであり、それが発生したと受け止めている。
・現在の流動性については、10年債が日銀買入オペから除外されたことが市場に大きく影響していると思う。通常の利付国債と全く違った取り扱いになってしまっていることのリスクプレミアムが更に乗ってしまうことで、通常の利付債よりも安い取引になってしまうのは致し方ない。
・この銘柄に関してはショートする人が現れないので、割高化するという見通しは今後も立ちにくいのが現状かと考える。
・次回の入札が5月と近づいているところであるが、それまでに有効な手立てがないと、目線がどうしても通常の利付債より甘い水準、高い金利での発行になる可能性が高い。長い目で見たときにクライメート・トランジション利付国債の発行がまだまだ続き、残高が増えていくことは、流動性の面もしくは投資家の総需要という面で見ても、基本的にはネガティブな材料になってしまう。
・このクライメート・トランジションという分野で、グローバルでの日本の主導的な役割は今回の発行でしっかり果たしたという認識であるが、日本銀行の取り扱いの違いが今後の流動性における最大のネックだと捉えている。

・年限・金額・発行回数ともに当局の提案に賛成。
・初回発行について、10年債が0.5bps、5年債が1.6bpsと、それぞれプレミアムが乗った水準での発行となった。
・セカンダリー市場においては、5年債については入札が非常に堅調に終わったにも関わらず、プレミアムがほぼゼロの水準。10年債については日銀買入オペの買入対象外となった後には若干ネガティブな水準での取引となっている。日本銀行の曖昧な買入方針の影響でプレミアムが縮小している状況だと解釈をしている。
・クライメート・トランジション利付国債についてはまだ初年度の発行が終わったばかりで、今後、市場を拡大していかないといけないフェーズと認識。当局の提案のとおり、来年度については発行額の分散に加えて、今後の市場育成という観点からも、日銀買入オペにおけるクライメート・トランジション利付国債の買入方針について再検討していただく必要があるのではないかと考えている。

・令和6年度のクライメート・トランジション利付国債の発行方針は全面的に賛成。
・入札については、グリーニアムが乗った状態での発行となっている。新しい債券であり入札方式であるというチャレンジングな状況であったにも関わらず、結果は成功と判断できるのではないか。
・その後、特に10年債は日銀買入オペに入らなくなってしまったことから、ネガティブなグリーニアムで取引される場面が出てきている。5年債についてはまだグリーニアムが乗った状態で取引されている。この違いについては、やはり入札の時に最終投資家の需要があったかどうかによるのではないか。10年債については事前に過度に期待が膨らみ過ぎてしまい、グリーニアムが大きい位置で入札を迎えてしまったというところで、最終投資家が少し様子を見るといった判断をしたのではないか。逆に、5年債入札の方は、かなり市場の実勢に沿った状況で入札を迎えたので、強い需要が見られたと考えている。
・発行の分割は、投資家によって、1回当たりの入札で買える額やタイミングにばらつきがあることから、最終投資家の需要の喚起に繋がるというふうに考えているため、効果は大きいのではないか。
・また、足元では日本銀行の利上げ期待がかなり強まっているが、根本的な問題として、現在の円金利水準は投資家目線よりも基本的には低く、主たる買い手が一部の業態や日銀買入オペ等に限定されている中で、日銀による輪番オペへの依存が高くなりすぎていることが挙げられる。かかる状況の下、クライメート・トランジション利付国債の日銀買入オペにおける制約に対して市場が過度に敏感になっている状況だが、これは一時的であると考えられる。そのような意味で、ネガティブなグリーニアムは、クライメート・トランジション利付国債の商品設計自体に問題があるわけではなく、一時的なマーケット環境によって生じているものと考えることも出来る。
・今後、日本銀行の金融政策正常化に伴い、金利水準が最終投資家の目線まで上昇してくれば、日銀買入オペの存在感というのも今後低下してくると考えられる。そのタイミングでは、クライメート・トランジション利付国債のマイナス要因が軽減され、需要が生まれ、グリーニアムが復活してくる可能性も高いのではないか。
・このような観点でも、発行を分割し、年度後半の方にも発行を残すという点に関しては、年度後半にかけてポジティブな環境が見られる可能性があることから、当局の提案に賛成。

6.  最近の国債市場の状況と今後の見通しについて

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・10年債利回りは昨年11月1日に0.97%を記録し、現在は0.7%程度と低い水準になっているがその理由は2つある。一つは米長期金利の水準が昨年11月1日には5%に近いレベルであったところ、直近は4.1%台となっており、さらにFRBは本年6月に利下げ転換し、年末までに75bps、場合によっては100bpsの引き下げを行うことが織り込まれていること。もう一点は、日本銀行の金融政策に関して、関係者の発言から、マイナス金利政策の解除後も緩和的な金融環境を維持し、継続的な利上げには至らないと多くの市場参加者が考えていること。また、需給面で一つ加えると、本来はネガティブ材料の株高が、年金資産のリバランスを通じて、国債市場のポジティブ材料になっていることも指摘できる。
・今後に関して、マイナス金利政策解除後の金融政策の枠組みを、きっちり確認する必要があるが、アメリカの金利の方向性と日本銀行の金融政策に対する理解、この2点に変化がなければ、一時的な利回り上昇があったとしても、早期に鎮静化すると予想する。そのため、10年債利回りが1%に接近する場面は個人的にはないと思っている。需給面では、投資家、金融機関をはじめとして金融政策の変更を待っている市場参加者が多い。株高による年金のリバランスによる債券買いが終わっても、金利の絶対水準で購入を行う生命保険会社などに期待できるのではないか。
・他方、こういった見通しにはリスクもあると認識している。2月はやや弱めだったが、1月の経済指標を見る限り、アメリカの景気は底固く、インフレ圧力が根強く残る場合はFRBの利下げ転換が遅れる。そうなると、必ずという訳ではないが、日本銀行は次の利上げを準備すると市場参加者は考えやすい。このケースでは10年債利回りが1%を超えることは十分ありえる。こうしたリスクシナリオをメインシナリオと考えている市場関係者もいる。
・金融政策の正常化局面を迎え、今後、国債市場のボラティリティが予想以上に拡大する可能性がある。実際、1月の国債入札は大分調子が悪かった。円滑な国債入札や市場環境のためには、どうしても日本銀行の配慮が必要になる。これまで量的緩和を拡大してきたわけであり、それを収束するにあたっても、十分目配せをして欲しいというのが、市場参加者・国債市場特別参加者の一員としての期待である。

・昨年11月に比べると海外金利は大分下がっており、FRBの次のステップはおそらく利下げになっている。日本銀行に関しては、本日も春闘が満額回答という報道も出ている中で、場合によっては3月のマイナス金利解除ということもあり得て、さらにはゼロからプラスということもOISマーケットでは織り込んでいるという認識である。しかしそこから先について、例えば来年もさらに利上げを続けていくためには、来年も今年ほどとは言わないがしっかりとした賃上げが継続するような、物価2%の好循環が見えていかないといけないと考える。この点、現時点では余りにも不確実性が高いため、マーケットが織り込むことも難しく、それが織り込めない限りにおいては10年債利回りも1%に達するか分からない。一方で、来年もしっかりと賃上げして利上げサイクルが続くという話になれば、1%超えも十二分にあり得て、おそらく今年の年末の11月ごろから、今年度見られていたようにリーディングカンパニーの賃上げ状況を見て、債券市場が動意づく可能性もあると思っている。なお、この点、FRBが利下げをするとしても相当匍匐前進的で、なおかつあくまでもソフトランディングに向かっていくという前提のもとでの考えである。
・3月の日銀金融政策決定会合での利上げについては市場でかなり織り込まれているものの、いくつかオープンクエスチョンになっている部分はある。まずは、階層構造がどのようになるのか、マイナス金利をやめたとしてマイナス金利導入前のように0.1%一本化に戻るのかという点であり、この点は一本化がマーケットでは織り込まれているように見える。その場合、かつてのように銀行による当座預金へのベタ積みが復活し、短期市場でGCを買う大きな主体がなくなってしまうという可能性もある。これはすなわちGC-TONAスプレッドの大幅な縮小、あるいはGCレートがTONAよりも高くなる可能性もはらんでいると思っているが、ここまでは現在の0.2%前後という2年債利回りや短国の水準などを見ている限りでは完全に織り込めておらず、短中期ゾーンにはもう少し金利上昇余地があるかもしれない。
・日銀買入については、今後の金融政策決定会合で、買入量を明示的にしていくといったような報道が出てきている。この点、イールドカーブ・コントロール導入前に関しては、声明文に80兆円という言葉があったり、もしくはそれを落としていわゆるオペ紙に毎月何兆円買うということが明示化されていたが、日銀買入量の数字をどこに出すのか、声明文なのかあるいは同時発表のオペ紙なのか、またそれを誰が決めるのか、金融政策決定会合で決めるのかあるいは以前のように市場局が決めていくのかという点によってもかなり日銀買入オペの自由度、膠着性は変わると思っている。必要な場合に必要な増額や減額ができる主体性をより持ちやすいのは市場とより密接に関わっている市場局だと思っており、これが金融政策決定会合マターになり、本当に減額が必要でも全く減額をしないなど非常に硬直的な日銀買入オペになってしまうと非常にリスクだと思う。この点に関しては、2月6日の内田副総裁の「自由な価格形成を尊重する」という言葉を信じて、我々の思っている自由とかけ離れたものではないことを心から願っている。

・結局のところ、相場の行く末は日本銀行の政策の動向次第。この点、日本の企業の努力によって賃金が上がってくることが期待できるため、超異常の政策であるマイナス金利政策の解除は今月もしくは来月だと思っている。また、それなりの賃上げがあると思っているため、更なる利上げは今年中にあるのではないかと見ている。
・かなりの市場参加者が金利上昇方向を予想しているため、次に注目すべきこととしては、まず日本銀行の買入量がどう変化していくかという点になる。仮に今回マイナス金利の解除やイールドカーブ・コントロールの撤廃、オーバーシュート型コミットメントの撤廃をしたとしても、月々6兆円という今の買入額をキープするのであれば、金利は上昇せず、下がると思う。そのため、日本銀行が今後どのように買入額を縮小させていくかを指し示さないと、金利は上がらないだろう。
・クライメート・トランジション利付国債についても日本銀行の支えに頼っているため、徐々に支えから手を離した相場になっていかないと絶対値バイヤーは参加してこない。本来は、絶対値バイヤーの参加を含めて相場が成り立つものであり、そうあるべきだと思うため、緩やかな金利上昇を期待している。もともとクライメート・トランジション利付国債の発行の話が上がった1~2年前の段階では、先月の発行の時までにはかなり金融政策の正常化が進んでいると思われていたが、実際にはまだ正常化の道半ばである。次回のクライメート・トランジション利付国債の入札までの間に金融政策が正常化されれば、需要が今以上に見られるはずであり、日本銀行の手が少し離れた状態で入札を迎えられたらよいと思っている。

 ・3月の金融政策決定会合についてかなりヘッドラインが出ているものの、ボラティリティ、金利の値動きともに非常に落ち着いており、ほぼ織り込み済みだと思っている。ただ今の価格は、機械的な売り買いが価格形成に相応に寄与していると感じており、市場の価格の信頼度が高いのかはよく分からない。クライメート・トランジション利付国債のプレミアムを見ても、日銀買入によって、価格形成されていることが再認識される。
・投資家層の拡大を課題とするのであれば、市場の流動性の更なる改善が必要であり、政策修正のタイミングは分からないが、日銀買入と当局の発行のバランスが不必要に変化しないことと、徐々に市場へ流動性をゆだねていくということが非常に大事だと思っている。
・発行の観点からは、リオープン方式を見直してシングルイシューが余りに多くならないようにすることや、流動性供給入札を通じて、市中に残高が少ない銘柄を復元させていくことが非常に大事だと思っている。今後、金利のある世界になると思っているが、おかしな需給によって、マーケット・メイクや金利に不必要なボラティリティが出ないことが望ましいと考えている。

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財務省 理財局 国債業務課 市場総括係
電話 代表 03-3581-4111 内線 5700