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日時 令和5年10月23日(月)16:50~17:20

場所 財務省 第3特別会議室

内容 令和5年度補正予算に伴う国債発行計画について

〇令和5年度補正予算に伴う国債発行計画について、理財局から以下のように説明を行った。

・資料のとおり、9月26日の閣議にて総理から、10月末を目途に「総合経済対策」を取りまとめるよう指示があり、その内容を踏まえた令和5年度補正予算が国会に提出される予定である。

・現時点では、補正予算の規模や国債での要調達額は不明であり、カレンダーベース市中発行額の増額が必要になることも考えられることから、そうした場合を想定の上、増額が可能な年限やその優先順位、理由等も含め、ご意見を賜りたい。

・仮にカレンダーベース市中発行額の増額を行う場合には、令和6年1月からとすることを検討しており、年度末までの期間が短いことには留意する必要があると考えている。増額の時期についても、ご意見があれば、教えていただきたい。

・また、「内閣府中長期試算に基づく国債発行額の将来推計」を資料中でお示ししている。令和5年度当初予算ベースの推計であり、推計の対象は、復興債及びGX経済移行債を除く普通国債である。

・本推計上、令和6年度は令和5年度より発行額が大幅に減少する見込みとなっている。

・したがって、今回の補正予算への対応として、令和5年度に発行する短期債を増額する場合、その償還が令和6年度に行われ借換債発行額が増加することになるが、翌年度への影響という観点からは問題ないのではないかと考えている。

・なお、今回の補正予算規模や、前倒債の活用等の国の内部での資金の調整により、令和4年度第1次補正予算と同様に、カレンダーベース市中発行額を維持することもあり得ると考えている。


〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・カレンダーベース市中発行額の増額が必要であれば、T-Billを中心に増額するという方針を支持したい。足元のボラティリティの高まりや、増額時期が日本銀行の金融政策正常化の時期に重なる可能性があることから、市場インパクトを抑えての超長期債などデュレーションが長いものの増額余力は極めて限定的と考えている。T-Billは、3か月物の発行規模にも鑑みれば、6か月物であれば月1~2兆円、1年物であれば月0.5~1兆円程度であれば増額は可能と思う。ただし、発行規模が大きくなる際には、市場インパクトの観点から発行回数を月1回から月2回に変更することにより市場への影響を軽減する案も考えられる。
・デュレーションが長いものであればあるほど、市場インパクトを抑えての消化余力は限定的と思っているも、そうした中でも利付債の増額を考えるのであれば、5年債が有力候補と考えている。理由としては、これまである程度増額してきた2年債及び10年債に比べれば、5年債はまだ発行規模の観点で吸収余力があると思うためである。
・物価連動債は、足元の発行正常化の流れの中で、令和6年度国債発行計画において増額の予定があるのなら、今回の補正予算への対応の段階から増額することも検討の視野には入るかと思うが、当局として正常化のタイミングを見計らっているであろうという点と増額できる規模は非常に限定的である点に鑑みれば、増額の優先度は低いと考える。
・流動性供給入札については、残存5-10年の日本銀行の国債保有比率が高まっている中、買い戻しニーズが一定程度あるので、当該ゾーンを含む流動性供給入札の残存5-15.5年ゾーンに月1,000億円程度の増額余地がありと考える。
・増額のタイミングについては、1回の入札当たりの市場インパクトを抑制する観点から、早い時期からの増額が望ましく、令和6年1月からの増額ということで、異論ない。

・カレンダーベース市中発行額の増額が必要な場合にはT-Billで対応、という考え方を支持する。T-Bill・1年物は月3.5兆円の発行が続いているので現状維持が望ましい。T-Bill・6か月物は、現状、かなりの部分が政府短期証券としての発行になっているので、割引短期国債の発行を増やす場合、T-Bill・6か月物の政府短期証券として発行している部分を割引短期国債に置き換え、その分、政府短期証券のT-Bill・3か月物での発行を増やすという形が一番市場インパクトが少ないかと考えている。
・T-Bill・6か月物について、令和4年度末には月4.5兆円発行していたので、その程度までの増額は比較的容易であると思う。それ以上増額する必要がある場合は、入札を月2回とすることが考えられる。
・T-Bill以外で増額を考えるのであれば、流動性供給入札の残存5-15.5年ゾーンを第一希望としてお伝えしたい。市場で枯渇している年限であり、問題なく吸収されると思う。
・T-Billと流動性供給入札以外については、増額の優先順位に対する意見はないが、同じような年限に同じようなタイミングで発行が重なっていくと、市場へも多少なりとも影響が出かねない。金融政策の変わり目のタイミングでもあり、市場の需給環境には十分留意してほしい。
・増額する場合のタイミングについて、令和6年1月からという方針に異論はない。

・T-Billについて、1年物よりは6か月物の方が、担保需要等が見込める年限であり、かつデュレーションリスクも比較的少ないため、増額余地があると考えている。具体的には、T-Bill ・6か月物は、1回の入札当たり最大5,000億円程度の増額余地があると考えている。
・増額する場合のタイミングは、令和6年1月からという方針に異存はない。
・年限別の需給について、米国において、堅調な雇用や消費等のファンダメンタルズと財政プレミアムが意識される中でタームプレミアムが上昇し、世界の債券安につながっていると理解している。そうした影響は、日本でも、超長期ゾーンを中心とする需給悪化につながってくると考えているため、仮にこのタイミングで利付債の増額を考えるのであれば、やむを得ずではあるが2年債と5年債が候補となるかと思う。2年債はT-Bill同様に担保需要、5年債は一部の負債に見合った運用ニーズがある。

・増額を検討する場合は、T-Billを優先して、次に利付債の短い年限が望ましいと考えている。T-Billについては担保需要や海外需要に支えられ相対的に消化余力があり、本来は増額するのであればT-Bill・3か月の方がよいが、T-Bill・6か月でも1回の入札当たり5,000億円程度の増額は可能と考えている。
・利付債については、マイナス金利解除の思惑も出てきて不安定になってはいるものの、他年限と比較すれば、デュレーションが短い方から増額を検討可能と考えており、具体的には、2年債、5年債、10年債という優先順位である。
・超長期ゾーンについては、不安定な入札状況であるため増額には適さないと考えている。

・基本的にT-Billでの増額に賛成である。投資家層の広さや水準調整の容易さに鑑みれば、T-Bill・6か月物よりT-Bill・1年物を増額するのがよいと考えている。T-Bill・6か月物は、国内投資家の担保需要により入札自体は堅調な結果が非常に多いが、セカンダリー市場での出来高はほとんどない状況。T-Bill・1年物と比較しても、マイナス金利解除の可能性を織り込んでいるとはいえない水準になっており、今後の国内投資家の応札は非常に流動的になりそうだという印象を持っている。T-Bill・1年物は、近い将来でのマイナス金利解除をある程度織り込んだ価格形成がなされているという認識であり、現状の水準においては国内外の様々な投資家から需要が散見されている状況である。したがって、来年1月以降、金融政策がどのような局面になっているかは非常に不透明ではあるが、T-Bill・1年物で月5,000億円程度の増額をすることは可能だと考えている。
・利付債の発行増額に関しては、どの年限においても難しいという認識である。超長期ゾーンは、8月の20年債入札、今月の30年債入札、20年債入札と、立て続けに大幅なテールが発生する入札結果となっている。特に20年債については、8月入札、10月入札ともに、アベレージプライス自体が市場実勢を30銭、35銭ほど下回るようなところから更に大幅なテールが出ているという状況で、増額というよりは減額の可能性を議論するような状況との認識を持っている。中長期ゾーンについても、来年1月以降は金融政策変更観測が高まる可能性がそれなりにあるので、発行増額については極力避けるべきと考えている。

・カレンダーベース市中発行額の増額を要する場合、T-Bill中心に増額という方向に賛成。その際、増額は可能な限りT-Bill・1年物ではなくT-Bill・6か月物に寄せていく方がよいと考えている。また、T-Bill・6か月物について、今よりも更に増やしていくというのであれば、発行を月2回にするなどの工夫をすることも考えられる。具体的には、1回の入札当たり5,000億円程度の増額であれば、現在と同様に月1回発行でも十分対応可能だと考えているが、それを超えて月当たり1兆円を超えるような増額をする場合であれば、発行を月2回に分けることが考えられる。
・資料の4ページ目「内閣府中長期試算に基づく国債発行額の将来推計」を見るに、令和6年度は市中発行額が減少する可能性もあるかと思われ、今回カレンダーベース市中発行額の増額をするとしても一時的な対応となり得ることを踏まえると、調整弁としてT-Billを使うべきであると考えている。
・現在の市場環境において、超長期ゾーンはあまり発行増額対象にするべきではない。10 年以下のゾーンについては、日銀買入オペが継続するのであれば1,000~2,000億円程度の増額は可能かもしれないが、早期に金融政策が修正される可能性もあり得るので、そうした増額はしない方がよいだろう。
・増額する場合の時期については、令和6年1月からという方針に異論はない。

・短い年限中心での増額が無難だと感じているが、あえて利付債とT-Billに分けて考えると、利付債の増額余地を議論する際の考え方として、日銀買入を前提として増額余地を考える考え方と、日銀買入は手厚くないが需給がバランスしていることをもって増額余地があるとみなす考え方の2つがあると考えている。それぞれの考え方に正当性はあるが、当社としては、どちらかと言えば、本質的な投資家需要を捉えるという観点から、後者で考えている。そして、そうした考え方の下では、日銀買入の少ない残存25年超のゾーンにあって足元の入札が相対的に安定しており、投資家層の裾野の広がりも見られる40年債を、利付債の中での増額の第一候補だと考えている。
・増額余地を考える際にもう一つ重要だと考えているのは、相場動向は刻一刻と変化しているので、現状あるいは将来の見込みにフォーカスしすぎることにより、特定の年限に偏重するのはリスクがあるという点である。こうした観点からは、年限間のバランスを取っていくことが重要。例えば、2年債は、日銀買入も相応になされているが、担保等の一定の需要もあり、増額の候補となり得ると考えている。
・また、年限間の偏りを避ける観点からは、仮に40年債を増額するのであれば、同じ超長期ゾーンの20年債、30年債の増額は避けるといった調整も必要と考えている。
・T-Billについては、6か月物、1年物ともに、少なくとも多少の水準調整があれば相応に需要が喚起できると思われ、利付債に比して増額は大きな問題にならないと感じている。強いて言えば、令和4年度当初の国債発行計画比で発行減となっており、投資家のキャッシュ潰しニーズも強いT-Bill・6か月物の方が、T-Bill・1年物より増額の優先順位が高いという認識である。

・T-Billは担保需要が見込めるので、カレンダーベース市中発行額の増額を行う場合にはT-Billを中心に検討という方針に異論はない。T-Billを増額する場合には、より短いゾーンということでT-Bill・6か月物の増額を優先し、必要に応じてT-Bill・1年物も増額するということでよいかと考えている。T-Bill・6か月物は月1兆円程度の増額余地はあると考えており、T-Bill・1年物についても追加で数千億円程度の増額は可能と考えている。
・利付債については、流動性供給入札の残存5-15.5年ゾーンに増額余地があると考えている。このゾーンは、流動性供給入札全体の発行額が一定だとすれば、他ゾーンとの需要調整が必要な状況ではないものの、発行額自体が増えるのであれば、日本銀行の国債保有比率が非常に高いゾーンであり業者のショートカバーニーズが見込めることから、増額余地があると考えている。
・超長期ゾーンについては、金利上昇による他ゾーンへの回帰が見られる中で、20年債を中心に投資家需要が減退していると考えている。入札を通じて不安定な状況になっているので、増額余地は無いと考えている。
・中長期ゾーンについては、日本銀行のオペ運営に依存しているようなゾーンであり、現下の金融政策が継続するという中であれば一定の増額は可能かとは思うが、その点を期待しての増額は少し厳しい状況かと思っている。
・利付債の状況を含めて総合して考えるに、カレンダーベース市中発行額の増額を行う場合にはT-Bill増額で対応するのが、投資家需要に応えることにもなるので望ましいと考えている。


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問い合わせ先

財務省 理財局 国債業務課 市場総括係
電話 代表 03-3581-4111 内線 5700