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日時 令和4年12月2日(金)16:00~17:00

場所 財務省 第3特別会議室

内容 
1.令和5年1-3月期における物価連動債の発行額等について

〇令和5年1-3月期における物価連動債の発行額等について、理財局から以下のように説明を行った。

・物価連動債については、P.3のとおり、令和4年度発行計画では、1回の入札当たり2,000億円で年4回の発行としつつ、「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて、柔軟に発行額を調整」することとされている。また、P.4のとおり、買入消却についても、「市場の状況や市場参加者との意見交換も踏まえ、必要に応じて実施する」こととされている。本日は、令和5年1-3月期における発行額等について、御意見をお伺いするもの。

・10-12月期については、P.5のとおり、市場の状況や市場関係者との意見交換を踏まえ、11月に発行額2,500億円で入札を行うとともに、買入消却入札を毎月200億円実施することとしたところ。発行入札及び買入消却入札の結果はそれぞれP.6、P.7のとおりである。

・流通市場の状況については、P.8、P.9のとおりである。この半年程度の推移をみると、BEIはグローバルな動きの影響も受けながら、ごく足元ではやや大きめに振れる場面も見られたものの、カレント債は概ね80~90bps台での推移が続いている。

・こうした中で、皆様から事前に御意見を伺ったところ、発行入札の結果からはカレント銘柄の需要は引き続き良好とみられるとの御意見を頂戴した一方、流動性の改善や投資家層の拡がりは未だ限定的との声もきかれた。もっとも、こうした参加者を含めた全ての参加者から、現状の発行額と買入消却額はバランスしていることから、現状維持が望ましいとの御回答を頂戴した。

・こうした経緯や皆様の御意見も踏まえ、P.10に当局の提案をお示ししている。令和5年1-3月期については、10-12月期と同様、2,500億円の発行入札を1回行うこととする一方、毎月200億円の買入消却入札を行うこととしてはどうかと考えている。

・以上、物価連動債市場についての状況とそれを踏まえた令和5年1-3月期の発行予定額等にかかる当局の提案について御説明した。
令和5年1-3月期における発行額等については、本日の会議内容も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて皆様の御意見を頂戴したい。
物価連動債市場の育成は、国債管理政策上の重要な課題と考えており、今後も入札等の状況・市況や皆様の御意見も踏まえつつ、慎重に検討・判断していきたいと考えている。

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・当局の提案に賛成する。食料品価格や電力料金の値上げが続いており、日本のCPIが上振れするという思惑から、11月の入札は外国人投資家中心に需要を集めて堅調な結果であったが、政府の総合経済対策で来年度以降はCPIが約1.2%以上押し下げられるというコンセンサスがある中で、米国のCPIの数値が予想を下回ったのをきっかけに、外国人投資家中心にやや売りの引き合いが増えているのかなという印象がある。ターゲットとしてBEIで100bps前後を売り目線としている投資家が多いが、米国のCPIが少し弱かったことを受け、少し早めに売っている投資家が多いのかなというような印象である。
・買入消却及び日銀買入オペも、応札倍率が高く、弱めの結果であることから、当面、需給環境は厳しい状況が続くと認識しており、現行の買入消却の額は是非維持して欲しい。

・発行額も買入消却の額も現状維持でお願いしたい。
・業者間取引の板上にオファー・ビッドが継続的に出ていることがあまりないこと、買入消却や日銀買入オペでかなり弱い結果が続いていること、インフレ見通しが変わっていないにもかかわらず、少し売りが出ると短期間に1円程度下がるような状況となっていることから、物価連動債のマーケットはかなり脆弱な状況が続いていると思うので、引き続き当局等のサポートが必要であると感じている。
・来年度にCPIがピークアウトしていく可能性がある中で、万一、日本銀行がイールドカーブ・コントロールを修正すると、名目金利が急激に上がって、実質金利も大幅に上がるので、マーケットが壊れてしまうというリスクも孕んでいると思う。中期的に市場の機能度や流動性が改善しない場合は、発行額の減額も、議論の俎上に乗せてもよいのではないかと思っている。


2.令和5年1-3月期における流動性供給入札の実施額等について

〇令和5年1-3月期における流動性供給入札の実施額等について、理財局から以下のように説明を行った。

・流動性供給入札については、P.12のとおり、令和4年度発行計画では、
(1)残存1-5年ゾーン・残存15.5-39年ゾーンについては、いずれも3.0兆円、残存5-15.5年ゾーンについては、6.0兆円とし、合計で年間12.0兆円を発行することを想定しつつ、
(2)最終的には「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて柔軟に調整」することとされている。
これを受け、本日は、令和5年1-3月期におけるゾーン毎の発行額等について、御意見をお伺いするもの。

・P.13のとおり、10-12月期においては、残存1-5年ゾーンについては奇数月の11月に、残存5-15.5年ゾーンについては毎月、残存15.5-39年ゾーンについては偶数月の10月と12月に、それぞれ5,000億円ずつの発行とした。これらの結果はP.14~P.16のとおり。

・こうした中で、令和5年1-3月期の流動性供給入札について、皆様から事前に御意見を伺ったところ、一部の参加者から、一部銘柄で需給がタイトな状況が続いているという御意見や、残存15.5-39年ゾーンの入札が軟調な結果となることがあったとの御意見をいただいた。もっとも、こうした参加者を含む全ての参加者から、ゾーン間の発行額のバランスを変更する必要があるほどに需給状況に大きな変化がみられているわけではないことから、現状の発行額等を維持することが適当であるとの御回答を頂戴した。

・これを受け、P.17にあるとおり、令和5年1-3月期におけるゾーン毎の発行額の当局の提案を作成した。残存1-5年ゾーンについては奇数月の1月と3月に、残存5-15.5年ゾーンについては毎月、残存15.5-39年ゾーンについては偶数月の2月に、それぞれ5,000億円ずつの発行としてはどうかと考えている。

・令和5年1-3月期における流動性供給入札のゾーン毎の発行額等については、本日の会議内容も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて皆様の御意見を頂戴したい。

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・どのゾーンも投資家のオフ・ザ・ランの購入ニーズ、業者のショートカバーニーズがある。日銀買入オペの継続が見込まれる中で、流動性供給入札は必要であると認識している。流動性供給入札の発行総額が一定となっている状況で、近々に、ある年限の需給調整を行わなければならないという状況ではないと考えているため、令和5年1-3月においては、現状維持という当局の提案に賛成する。

・当局の提案を支持する。特に残存7-10年のゾーンで日銀買入オペの影響があり、残存5-15.5年ゾーンの流動性供給入札は増額してもよいと思っているが、一方で、今年度の発行額が12.0兆円ということであれば、このゾーンを増やすと他のゾーンを減らさなければいけないこととなる。需給状況、入札結果からすると超長期ゾーンを減らすのがよいと思うが、1-3月は生保からの超長期ゾーンの買いが増える時期であるため、減らすのは難しい。減らせるゾーンがないので、増やすこともできないことから、当局の提案を支持する。


3.令和5年度国債発行計画の策定に向けた現状と課題について

〇令和5年度国債発行計画の策定に向けた現状と課題について、理財局から以下のように説明を行った。

・まずは、国債管理政策の現状として、令和4年度第2次補正予算における国債発行計画の見直しについて説明する。新規国債の増加額は約22.9兆円となった一方で、昨年度の財政融資資金の運用実績等を踏まえた調整により財投債を8.5兆円減額するなどした結果、国債発行総額は、約9.7兆円増の約227.5兆円となった。
 カレンダーベース市中発行額については、市場の状況を踏まえ、短期ゾーンを中心に増額することとし、2年債+3,000億円、T-Bill・6ヶ月物+4.2兆円の、計4.5兆円増とした。

・カレンダーベース市中発行額の推移を年限別にみると、短期債の発行割合について、令和元年度は2割以下であったところ、コロナでの国債発行額の増額に伴い、令和2年度3次補正後には約4割まで増加したが、足元では約3割まで減少している。令和4年度第2次補正予算に伴う変更では、短期債中心の増額を行ったが、概ねのトレンドとしては短期債の発行割合を縮小してきている状況。

・国債発行残高については、令和4年度末の普通国債残高の見込みは、1,042.4兆円となっており、令和4年度末に初めて1,000兆円を超えるという見通しである。

・平均償還年限について、フローベースでみると、2次補正後は7年7ヶ月となっており、1次補正後の7年9ヶ月と比べると若干短くなっているが、令和3年度の7年3ヶ月に比べれば長い状況がまだ続いている。ストックベースでも同じような状況で、9年台を保っている。

・国債管理政策の基本的な考え方は、(1)確実かつ円滑な発行により資金を確実に調達すること、(2)中長期的な調達コストを抑制すること、の2つであり、そのために、市場との対話を丁寧に実施していくこととしているところ。こうした基本的な考え方は、今後も維持していく予定。

・内閣府の中長期試算に基づき、令和5年度以降も令和4年度2次補正後計画の年限構成割合を維持するものとして、財投債や復興債を除き将来の国債発行額を試算すると、内閣府の中長期試算は今年7月の数字であることに留意する必要があるが、令和6年度にかけて国債発行額が徐々に低下し、その後、比較的安定して推移するような見込みとなる。

・現在の金利の動向をみると、各国の金融政策の影響等を背景に、海外金利が上昇している。

・日本国債市場もつられる形で、超長期ゾーンを中心とした金利上昇がみられ、引き続き注視が必要な状況。

・イールドカーブをみても、カーブがスティープニングしていることが見て取れる。

・日本銀行の動向について、日本銀行の金融政策、国債買入オペの考え方が国債市場や金利に与える影響にも留意する必要。日本銀行の国債買入比率を見ると、残存1年超10年以下のゾーンを中心に、場合によっては発行額に対して100%を超えるような買入がなされている。

・日本銀行が国債保有割合を増加させてきた一方で、銀行等は近年国債保有割合を減らしてきた。なお、令和2年度以降、銀行等の国債保有割合がやや増加傾向にあったのは、担保需要の増加等が寄与していたと考えられるが、日本銀行の新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペの終了に伴う変化等には留意が必要である。

・生命保険会社については、資産と負債のデュレーション・ギャップを埋める観点から超長期の国債を購入するという状況が続いており、国債保有額は増加傾向、年限別にみると、残存10年超の国債保有額が多くなっている。引き続き、超長期ゾーンのニーズは一定程度存在すると考えられるが、各社の対応の進捗には留意が必要だと考えている。

・地方銀行については、国債保有額は減少傾向にあったものの、概ね下げ止まっており、年限別にみると、残存10年超の国債の保有額が大きくなっている状況。

・個人による国債保有の動向をみると、国債発行残高に占める家計の保有割合は近年1%前後となっている。金利が高い時はもっと高い水準となっていたが、現在はそこまで伸びていない。

・こうした市場の状況や、投資家動向を踏まえ、令和5年度の国債発行計画について検討していくことになるが、現時点での当局の基本的な考え方として、今後様々な経済状況を見ながらではあるが、仮に国債発行総額の減額が可能となった場合、カレンダーベース市中発行額において、短期債を中心に減額しつつ、利付債の発行総額は現状程度として検討を進め、短期債に依存した資金調達構造を是正することを検討している。

・なお、足元の状況から大きな変化がないことを前提として、まずは検討を行っていきたいが、仮に市場環境に大きな変化があった場合には、弾力的に見直すことも排除していない。

・皆様からいただくご意見を踏まえ、検討していくこととなるので、本日は活発に議論いただけると幸いである。

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・いずれの年限も発行額の据え置きが望ましい。
・昨年度、流動性供給入札で残存30年超のゾーンは1,000億円近く発行されていたが、今年度は毎回500億円程度となっており、40年債の発行額が7,000億円に増額されたことによって大幅に減少しているという状況。対30年スプレッドも昨年のように大きくタイトニングする局面も無く、基本的に10bps程度で安定的に推移している。カレント銘柄近辺が極端にスティープニングしているという状況ではあるが、これは昨年度も見られた現象で、特段違和感はないと考えている。セカンダリー市場での流動性の低さから増額は難しいが、減額の必要も感じられないため、40年債は発行額据え置きが望ましい。
・30年債は、発行額9,000億円で過去最大の発行額となっている。昨年度対比で生保の買いニーズが減退していることに加え、超長期ゾーンの大幅なボラティリティ上昇を受けて、セカンダリー市場での流動性は大きく落ち込んでいる。対20年スプレッドでも40bpsを超える局面があるなど、今年度上期は、需給悪化が目立つ年限だった。ただ、絶対金利水準の上昇、日銀買入オペの増額、欧米の金利上昇トレンド反転を受け、生保勢の買いがしっかりと戻って来ている状況であり、年度末に向けて、生保勢の買いが継続するようであれば、発行額の据え置きが望ましい。
・20年債は、1回の入札当たりの発行額が1.2兆円と既に大規模であり、超長期ゾーンのボラティリティ上昇を受けて、昨年度対比で各業態からの買いニーズが大幅に減退している状況。30年債との違いは、今年度はアセット・スワップベースでの売買が活発化しており、この環境下で最低限の流動性は保たれていると認識している。9月末、10月末の超長期ゾーン、特に残存10-25年ゾーンの日銀買入オペの大幅増額の影響は、まだ1ヵ月しか経っていないため不透明ではあるが、現状では発行額の据え置きが望ましいと考えている。
・10年債は、金融政策が修正される際には一番ストレスがかかる年限なので、発行額の増減は慎重に考えるべきと思っている。
・5年債は、金利が上昇してきたことから、多少の増額の余地はあると考えていたが、直近のCPIの上昇もあって、政策修正関連のヘッドラインが流れることも非常に多くなっており、0~10bpsという金利のレンジで考えていたのが、5bps~15bpsに5bpsくらいは上方修正しないといけない状況。将来的に政策修正の可能性を踏まえ、5年債についても慎重に考えた方がよいと考えている。
・2年債は、担保ニーズは昨年度対比で減っているが、直近の入札の状況を見ると非常に強い状況となっており、増減ともに対応できるのではないかと考えているが、基本的には据え置きで問題ない。
・T-Billは、1年物は現状維持が望ましい。6ヶ月物は、1月以降の発行の詳細が決まっていない状況であるが、増減ともに対応できるという認識でいる。

・来年度の発行額はほぼ現状維持がよいと考えている。足元は海外金利の上昇が止まり、日本銀行に対してチャレンジするような海外勢の売り等もかなり止んできている状況。そうした中で、生損保の需要も回復し、超長期金利に関しても日銀買入オペの増額によって需給は復調してきている。日銀買入オペの変更がなければ、来年度は生損保の規制対応の終了に伴う需要の減退を多少意識して発行額を減額する必要があったかもしれないが、足元の環境であれば、特に日銀買入オペが生損保勢の需要減退を補うだけ増えているので、減額は必要ないと思っている。来年度に向けては、日本銀行の政策修正をにらみつつもそれがあるかどうかわからない状況だと思っているので、国債発行について何か予断を持って動くべきではないと個人的には考えている。ある程度、現状維持としつつ、何か起きた場合にはそれを見た後で柔軟に対応するという姿勢が適切であると思う。

・イギリスの債券市場の混乱もあって、一時期、円金利も超長期ゾーンは非常に大きな金利上昇と不安定な値動きになっていたかと思うが、現状は、海外金利が落ち着いてきた中で、大きな流れとしては円金利の超長期ゾーンは落ち着きを取り戻しつつあると感じている。海外金利が再上昇した場合、イールドカーブ・コントロールにより10年金利がピン留めされているという状況の中で、超長期ゾーンは金利上昇を伴った不安定な状況になることもあり得ないわけではないが、日本銀行の超長期ゾーンの買入れの増加が一定の下支えになってくるのではないかと想定している。利付債の発行額を減らすということであれば、超長期ゾーンは候補になるものの、利付債の発行総額は変えないという前提に立てば、超長期ゾーンを減らすには他の年限を増やすことになる。中長期ゾーンはイールドカーブ・コントロールが続くという前提に立てば、増やせないこともないが、将来的にイールドカーブ・コントロールが変わる可能性もあり、安易に中長期ゾーンを増やすべきではないと感じており、結局、中長期ゾーン・超長期ゾーンとも現状維持が落ち着きどころとしてよいのではないかと考えている。
他方、流動性供給入札との兼ね合いに関して、特に超長期ゾーンでは一部のカレント銘柄とオフ・ザ・ランの需給との較差が広がっている年限が散見される状況となっており、例えば、超長期ゾーンの新発債を減額しつつ、残存15.5年超のゾーンの流動性供給を増やすことは検討に値するのではないかと考えている。T-Billについては、日銀買入の銘柄を見ると、どちらかというと残存1年に近い銘柄が多いことに加え、6ヶ月物については担保ニーズが相応にあると思われることから、減額するとすれば、どちらかといえば1年物と考えている。

・超長期ゾーンをどうするかが一番のポイント。30年債、40年債の金利上昇が著しかったが、日銀買入オペの増額で需給が大きく改善した。日本銀行の政策変更があるかもしれないという中で、今の日銀買入オペは未来永劫続くものでもなく、生保の需要も今後減退していく可能性も一つのシナリオとしてあり得るので、超長期ゾーンの減額を検討すべきと考えている。一方、利付債の発行額は一定にするということなので、超長期ゾーンを減額した分、中期ゾーンを増額するというのは一案だと思う。

・基本的には各年限据え置きでよいと思っているが、どのゾーンも少々の増額減額は対応できると思っている。今の状況であれば、10年以下の年限で少々の増額減額を行うのはあり得るが、一番よいのはT-Billの増えた分を減らすことだと思っている。
・超長期ゾーンの金利が上昇しているが、その分、日本銀行が買入規模を調整していると思うので、据え置きでよいと思う。

・基本的にはあまりいじらないほうがよい。特に利付債についてはあまりいじらないほうがよいと思っている。40年債の需給はそれほど強くなかったが、今年度増額したばかりであり、中長期的に育成していく年限だと理解しているので、来年度は現状維持がよいと考えている。
・30年債はカレント銘柄が少し弱い一方で、オフ・ザ・ランは強い銘柄もあったので、一案として、30年債のカレント銘柄の発行を減らして、残存15.5年超の増額か、残存5-15.5年と残存15.5年超を組み合わせて増額することが考えられる。他の年限は増減ともに対応できると思っている。20年債はマーケット動向次第で、来年、海外主導で金利が再び上がる局面があれば需要は減退するだろうし、逆に金利が下がるのであれば需要は増える可能性があると思っているが、30年債、40年債ほど悲観的な見通しではない。10年債についてはイールドカーブ・コントロールの修正といったことが起きた時に最もストレスのかかるセクターなので、増減ともにかなり慎重になるべきと考えている。

・超長期ゾーンについては、増額・減額ともにある程度の幅を持って対応可能であると思う。長期ゾーン、中期ゾーンに関しても、日本銀行の政策が、今しばらく続くということであれば増額・減額ともに対応可能であると思う。

・発行額の据え置きを希望する。超長期ゾーンのカレント銘柄はスプレッドが乗っているが、日本銀行の政策修正があれば、カーブがフラットニングし、金利上昇局面では投資行動の変化も期待できるので、据え置きでよいかと思う。
・流動性供給入札の超長期ゾーンの増額を希望している。通常カーブに歪みがある場合は、それを修正しようとする取引が確認されるものであるが、流動性が低下している中で、そのような取引が少なく歪みが拡大している状況となっている。各銘柄が、極端に言えば個別株のように銘柄間の繋がりがない形で取引されている。市場の流動性向上のためにもこれを解消することが最も重要であると考えており、特に残存15.5年超の流動性供給入札について毎月4,000億円への増額を希望している。毎月化は日程の問題もあるかと思うが、日銀買入オペのように、他の年限と同日にやることも可能ではないかと考えている。

・短期債を中心に減額し、利付債の発行総額は現状程度とする方針について特段異論はない。調達年限の長期化の観点から、短期債は一旦減らすという方向感は正しいと考えている。
・超長期ゾーンについては、足元カレント債の需給が悪いと認識しているが、日本銀行の正副総裁の交代や海外金利動向の落ち着きによって円金利もある程度落ち着いて、超長期ゾーンのクーポンが低下してくれば、カレント銘柄に需要が集まってくると思う。本当に難しい舵取りであるが、カレント銘柄の需要が今年度対比で増加すると思うので、発行額を維持すべきと考えている。

4.最近の国債市場の状況と今後の見通しについて

〇出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・GX経済移行債(仮称)について、統合発行であれば、市場への影響は非常に限定的。一方、個別の銘柄として発行される場合、発行額又は年限によって、既存の銘柄と流動性が異なる可能性があるため、消化の面で不安が出てくるかと想像している。
・当社は、債券管理に公社債銘柄コードを使用しているところ、仮にGX経済移行債(仮称)がこれまで発行されていない年限で発行された場合に限って、システム改修が必要になる。その場合には、発行までに準備期間が必要になると思う。一方で、ISINコードで債券管理をしている会社も非常に多いと思うため、その意見も聞きながら慎重に対応してほしい。

・国債市場の流動性は最悪期と比較すれば幾分改善しているが、引き続き非常に低位で悪い状況である。今後の見通しは、都区部CPI公表以降、海外金利が低下しているなかでも、円金利はアンダーパフォームしているように、海外とのダイバージェンスが今後も続く可能性があるので、その点に関しては留意が必要。
・GX経済移行債(仮称)は、カーボンプライシングを財源として、20兆円規模を目途に国債によって資金を調達して、それを呼び水として民間投資130兆円を引っ張ってくるという話と理解している。一部を除いた先進諸国で発行実績があり、今年は、カナダとニュージーランドで発行されていると認識している。我が国として、そのGX経済移行債(仮称)の資金をどのセクターでどのように投資に結び付けていくのかという考え方や、ロードマップを明確にしてほしいと考えている。
・商品性に関しては、確立された国際的なルールへの配慮や、国として発行するのでグリーンウォッシュであると言われることを避けることが必要であると強く考えている。
・グリーンボンドとして出すのであれば、統合発行は難しいと理解しているが、トランジションボンドとするのかも含めた発行のあり方や、第三者認証を取るのかなどといった点について十分に議論を尽くす必要がある。国内の市場参加者だけでなく、海外の市場参加者からも高い評価と信頼を獲得するよい機会にもなるので、十分に議論していただければと思う。
・グリーンボンド、トランジションボンドは、発行体の調達部門だけでなく、様々な関係者が関わる必要があり、当社が携わった案件でも、トップの非常に強いリーダーシップがないと発行が難しい状況であった。日本のGX推進の本気度を示すものとして、内外の市場関係者から高く評価されるものとすることが130兆円といわれている民間投資を呼び込むうえで非常に重要なので、これを推進するため、トップダウン、特に政治の強いリーダーシップが重要だと思う。
・我々国債市場特別参加者が、発行市場や流通市場でどこまで関われるかは、今後の議論次第だと思うが、ぜひとも国内外の投資家等の意見を踏まえていただいて、強いリーダーシップの元で、良い案件としていければと考えている。

・海外は概ねインフレピークアウトかなという感じで金利も下がってきているのに対して、11月の東京都区部のCPIの上振れや、最近の日本銀行関係者の発言等を通じて、イールドカーブ・コントロールに対するアタックが再燃した。日本は価格調整スピードが非常に遅い経済で、来年春に値上げするものを今の時点で表明するような構造になっているので、イールドカーブ・コントロールに対するアタックが強まるという面もあると思う。
・来年、日本銀行が正副総裁の交代を踏まえて金融政策を変えるのではないかという金利に上向きの方向の圧力がかかるのか。一方で、今の状況を見ると、欧米はかなりの確度でリセッションになるように思え、例えば来年後半にFRBが利下げをする環境の中で、本当に日本銀行が政策修正に動けるのかというと疑問である。
・来年に金利が上がるのか下がるのか。もしかしたら、このままというのが一番可能性は高いのかもしれないが、個人的には、大胆かもしれないが、来年10年債の金利がマイナス圏に入っていても決して不思議ではないと思う。
・GX経済移行債(仮称)について、統合発行の場合は、年2兆円という規模はほぼ問題ない。この場合、資金使途の限定、追跡は不要なのかなと思うが、おそらく統合発行は難しく、グリーンボンドとして独立の銘柄として発行するということになるのだろうと思う。
・海外事例からすると、最終的には大きな問題は生じないのかもしれないが、現時点では、議論できるほど中身が煮詰まっていない。資金使途の限定、追跡、外部レビュー、将来の償還が果たしてカーボンプライシングで担保されているのかといった不透明なところがある。これらをクリアにしないと発行に至らないということで、来年度の発行は難しいようにも思えるが、再来年の1月から3月ぐらいに発行されるのかなとも思う。2兆円であれば3カ月もあれば発行できる。
・現時点で、流動性や投資家需要について議論できないと思うが、投資家需要から選好される年限というよりも、資金使途によって年限が決まってくる面が強いと思うので、やはり詳細が固まらないと、と感じる。
・システムに関しては、属性が他の債券と変わらないのであれば、それほど問題ないと社内では聞いている。

・10月頃をグローバルな金利のピークとして、足元の国債市場は落ち着いてきたのかなと見ているが、日本国債のプライシングはドル円が戻っても弱いままで据え置かれており、日本銀行の金融政策の出口の観測が根強くマーケットに残っていて、金利の低下と上昇についてそれぞれどの程度動くのかという頭の体操をしたときに、市場がショート気味に構えて金利上昇の方をより大きく警戒するというのは首肯できるもので、当面この環境に変わりはないと考えている。
・いずれにしても、日本の金融政策に関しては日本のファンダメンタルズが一番重要なので、その動向をつぶさに追っていくという環境を暫く過ごすことになり、金融政策の先行きがはっきりした時点でどちらの方に大きく動くのかを見るという形になると思う。その際、発行当局として、必要があれば、発行計画を見直していただければと思う。
・GX経済移行債(仮称)について、詳細は今のところ見えないが、日本銀行の金融政策の出口があるにせよないにせよ、国債市場はある程度日銀買入オペに頼っており、流動性が公的な部分で規制されているという面もあるので、セカンダリー市場の取引がどうなるのかというところまで含めて考えていくと、統合発行の方が債券としての流動性はしっかりと担保できるのだろうと思っている。


 

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問い合わせ先

財務省 理財局 国債業務課 市場総括係
電話 代表 03-3581-4111 内線 5700