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日時 令和4年6月15日(水)

場所 書面にて開催

内容
1.令和4年7-9月期における物価連動債の発行額等について

〇令和4年7-9月期における物価連動債の発行額等について、理財局から以下のように説明を行った。

・物価連動債については、P.3のとおり、令和4年度発行計画では、1回の入札当たり2,000億円で年4回の発行としつつ、「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて、柔軟に発行額を調整」することとされている。また、P.4のとおり、買入消却についても、「市場の状況や市場参加者との意見交換も踏まえ、必要に応じて実施する」こととされている。本日は、7-9月期における発行額等について、御意見をお伺いするもの。

・4-6月期については、P.5のとおり、市場の状況や市場関係者との意見交換を踏まえ、5月に発行額2,000億円で入札を行うとともに、買入消却入札を毎月200億円実施することとしたところ。発行入札及び買入消却入札の結果はそれぞれP.6、P.7のとおりである。

・流通市場の状況については、P.8、P.9のとおりである。この半年程度の推移をみると、原油価格高騰等の影響もあり、BEIは振れを伴いつつも大きく上昇している。また、銘柄別の動きをみても、バラつきは引き続き大きいものの、全ての銘柄でBEIが大きく上昇している。

・こうした中で、皆様から事前に御意見を伺ったところ、今後も期待インフレ水準は注目を集めると思われることや、発行入札の結果からはカレント銘柄の需要は良好とみられること等から、殆どの参加者から、段階的に発行額を増額しても問題ないとの御意見を頂戴した。

・他方、ごく一部の参加者からは、物価連動債に需要がある現在の環境下では段階的にではなく早く正常化を進めた方が良いといった御意見や、反対に、オフ・ザ・ラン銘柄を中心に需給が良いとは言えない現状での発行額増額は相場の下落に繋がる可能性があるため現状維持が望ましいといった御意見も頂戴した。

・当局としては、物価連動債市場の育成は国債管理政策上の重要な課題と考えており、令和4年4-6月期の発行額及び買入消却額は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機とした市況の大幅な悪化を受けた異例・臨時の措置からの未だ正常化の途上であると認識している。こうした考えに沿って、3月の会合においては、7-9月期以降についても正常化に向けた検討を行いたいと考えているが、その際はこれまで通り入札等の状況・市況や皆様の御意見も踏まえつつ、慎重に判断していきたい旨をお伝えしていたところ。

・こうした経緯や皆様のご意見も踏まえ、P.10に当局の提案をお示ししている。7-9月期については、着実かつ段階的に正常化を進める観点から、500億円増額となる2,500億円の発行入札を1回行うこととする一方、毎月200億円の買入消却入札を行うこととしてはどうかと考えている。ただし、期中に市場環境等が大きく悪化した場合には、柔軟に買入消却のオファー額を増額するなどの措置を講じる考えである。

・なお、昨年以降、当局は「異例・臨時の措置からの正常化」を念頭に、発行額の増額や買入消却額の減額を検討し、本年1月に買入消却額の減額を実施したが、今回お示しした7-9月期からの発行額の増額の案を実施した場合、その後は、中長期的な物価連動債市場の育成を念頭に、慎重に検討を進めていくことを想定している。

・以上、物価連動債市場についての状況とそれを踏まえた当局の提案について御説明した。
 7-9月期における発行額等については、本日の会議内容も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて皆様の御意見を頂戴したい。

〇提出された意見等の概要は以下のとおり。

・BEI水準が1%台を回復し、長期的インフレ圧力が見込まれる現環境下において、コロナ禍で緊急的に減額した物価連動債の発行額を段階的に正常化する当局の提案を支持する。
 また海外のインフレ市場は景気減速への警戒感から値動きが荒くなりつつあり、国内市場の需給面でのサポートを継続するべく、買入消却毎月200億円の維持についても賛成する。

・物価連動債市場は、セカンダリー市場においては多くの証券会社が相応の金額でマーケット・メイクをすることが難しい状況である中、日中殆ど出合いを伴わず価格が形成されることも見られる等、流動性が高いとは言えず、尚も未成熟な市場であるとの認識。グローバルに市場環境に不透明感が漂う中、ショック時には影響が最も出やすい市場であると思われるので、発行額の増額は極めて慎重に実施すべきとの考えは変わっていない。一方、足元においては国内の物価上昇見通しが物価連動債のサポートになることや、日銀買入オペも含めると年間の発行と買入のバランスは概ね均衡する範囲での発行増は中期的には消化できる環境であると思われるので、現状の2,000億円から500億円増加の2,500億円での発行を希望する。

・物価連動債のBEIは3月以降の原油高に相関を持って上昇しており、現状の需給環境において正常なプライスアクションとなっている。一方で引き続き業者間売買が乏しく、参加者が限定的であることには変わりなく、需給環境の変化により前述の相関が需給悪化に支配されることは商品に対する魅力を減退させる可能性もあることから、発行額は2,000億円の現状維持が好ましいと思料するが、月500億円の増加であれば吸収可能と考える。

・入札の結果から推測すると新発債にはしっかりとしたニーズがあると思われるので、500億円の増額に異論はない。一方で、セカンダリーマーケットでの取引がほとんどない中で、オフ・ザ・ラン銘柄の売却意向が強いようなので、引き続き200億円の買入消却は妥当であると思う。

・グローバルのインフレ上昇懸念やドル円の上昇を受けて、足元の物価連動債のBEIは上昇傾向にある。そのため、一見発行増額は問題ないように見えるが、他の市場と比較すれば依然としてややアンダーパフォームしており、日銀買入オペ・買入消却も弱い結果が多いことからも、オフ・ザ・ラン中心に需給がよいとは言えない状況であることが分かる。仮に発行増額による需給の悪化を通して、物価連動債が正しい市場の期待インフレ率を反映されない状況となれば、物価連動債への信認が低下することで市場参加者の減少を招き、それが更なる相場下落にスパイラル的に繋がる可能性がある。したがって、現時点では発行・買入消却額の現状維持が適切と考える。

・当局の提案を支持する。

・当局の提案に賛成する。
 市場の流動性が大きく低下した局面で、当局が発行量を減額し、買入消却を実施するなど矢継ぎ早な施策を実行したことで市場機能は維持され、足元、市場は安定局面に入っているものと認識している。直近の買入額減額以降も市場は安定している中、市場機能維持の観点から今後段階的に正常化を進めていく必要があり、次四半期に発行額を増額することにつき、違和感はない。
 また、顧客ニーズが少しずつ増してきている、との声も聞こえてくる中、当局の提案の増額であれば、概ね発行と吸収が均衡することから、市場に大きな波乱はなく、消化できるものと思料する。
 しかしながら、当該債券の取引参加者の裾野拡大は道半ばにあり、再び物価の急激な変動があった場合には、市場流動性が一気に蒸発することが想定されることから、緊急時には、流動性確保の観点から、柔軟な買入れ増額も本件の発行増額と併せて検討してほしい。

・茲許の入札の強い結果を考えると3,000億円の供給もこなせるのではないか。物価連動債に需要がある今の環境下だからこそ500億円の緩やかなペースではなく1,000億円増額で正常化を早く進めた方がよいと考える。

・従前より本会合にて正常化を進めたい意向は示されており、当局の提案に賛成する。

・現行では買入消却/日銀買入オペが3か月で2,400億円で発行対比400億円の吸収超となっている。1年間のBEIの推移を見ると外部環境のサポートもありBEIは上昇基調となっているがカレントベースで100bpsでは戻り売りもあり揉みあい推移となっている。コロナショック後の発行環境を改善することには賛成だが、引き続き吸収イベントも実勢対比弱く終わることも多く、長い時間軸でみると外部環境次第で需給環境が悪化する可能性も否定できないため、まずは純発行がプラスとなる2,500億円での発行に賛成する。

・現状維持でよいと思うが落札上位陣の意見に従う。

・インフレ期待の上昇に過度なものはなく、現状維持を希望する。ネット・サプライの増加に向けては、オフ・ザ・ラン銘柄の売却需要に応えるとはいえ、買入消却や日銀買入オペでの調整を一段と進めることが妥当であると思料する。また、発行額を増やしてもセカンダリー市場の流動性が増すということはなく、ショートメークのしやすい市場環境の構築が望まれる。

・物価連動債に対する投資家需要は依然として多く、直近の入札も市場予想を大幅に上回る結果となっていることから1,000億円増額でも問題なく消化できると思われる。しかし、市場に配慮し段階的に正常化を進めるということであれば、まずは500億円増額し、入札結果等を踏まえ更に増額するかどうかの判断を参加者に委ねたい。

・当局の提案に賛成する。

・8月の発行額及び7-9月の買入消却の額に関しては当局の提案に賛成したい。発行額は増額の余地があるが、4,000億円まで戻すには時期尚早と考える。
 グローバルで不確実性が高まってきており需給が急変する可能性もあるので引き続き慎重な運営が必要であるが、今後相場が悪化した場合の対応は発行減ではなく買入消却増額がよいと考える。入札結果を見る限り新発債の需要は良好である一方、買入消却・日銀買入オペは不調な結果が続いている上新発債が入る割合も低い。投資家の買い需要も新発債を中心に新しい銘柄に偏り易く、売りは古い銘柄が多い。

・当局の8月2,500億円の発行、月間200億円の買入消却(四半期で600億円)の案に賛成姿勢を示してきたが、極端に国債市場の流動性が落ちているため、この状況が8月になっても収まらなければ2,000億円のまま現状維持をする方がよいかもしれない。グローバルにインフレ期待が高まっていることが追い風となる一方で、足元のリスクオフ環境に伴う物価連動債ファンド等からの資金流出の可能性が向かい風となっている。基本的には、正常化を目指しながらも、慎重に少額の増額をするべきと考えるが、極端な流動性の悪化に対しては、より慎重姿勢を強めることも適切な判断と考える。

・当局の提案に賛成する。

・物価見通しが上振れる中で、発行額が少なすぎると逆に受給がひっ迫し市場流動性が低下する状況にもなり得るため、この程度の増額であれば問題ないものと考える。流動性の高いマーケットではないため、慎重にかつ段階的に進めるという点にも違和感はない。


2.令和4年7-9月期における流動性供給入札の実施額等について

〇令和4年7-9月期における流動性供給入札の実施額等について、理財局から以下のように説明を行った。

・流動性供給入札については、P.12のとおり、令和4年度発行計画では、
 (1)残存1-5年ゾーン・残存15.5-39年ゾーンについては、いずれも3.0兆円、
      残存5-15.5年ゾーンについては、6.0兆円とし、合計で年間12.0兆円を発行することを想定しつつ、    
 (2)最終的には「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて柔軟に調整」することとされている。
 これを受け、本日は、7-9月期におけるゾーン毎の発行額等について、御意見をお伺いするもの。

・P.13のとおり、4-6月期においては、残存1-5年ゾーンについては奇数月の5月に、残存5-15.5年ゾーンについては毎月、残存15.5-39年ゾーンについては偶数月の4月と6月に、それぞれ5,000億円ずつの発行とした。これらの結果はP.14~P.16のとおり。

 ・こうした中で、7-9月期の流動性供給入札について、皆様から事前に御意見を伺ったところ、一部の参加者から、残存15.5-39年ゾーンが軟調となることがある点を指摘する御意見を頂戴したものの、そうした参加者を含めた全ての参加者から、現時点では発行額を維持することが適当であるとの御意見を頂戴した。

 ・これを受け、P.17にあるとおり、7-9月期におけるゾーン毎の発行額の当局の提案を作成した。残存1-5年ゾーンについては奇数月の7月と9月に、残存5-15.5年ゾーンについては毎月、残存15.5-39年ゾーンについては偶数月の8月に、それぞれ5,000億円ずつの発行としてはどうかと考えている。

 ・7-9月期における流動性供給入札のゾーン毎の発行額等については、本日の会議内容も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて皆様の御意見を頂戴したい。

〇提出された意見等の概要は以下のとおり。

・各年限で金額がバランスよく配分されており、証券会社のショートカバーや投資家需要に支えられ安定的に消化できていることから、現状と同程度の配分が適当と考えている。

・2月以降実施の15.5-39年ゾーンの流動性供給入札は大きなテールが出ているがそれ以前は概ね0.5bps以内のテールとなっており、2月以降の不安定な市場の状況が大きく作用したと考える。超長期のオフ・ザ・ラン銘柄に対する投資家の需要も引き続いている中で現状維持の案に賛成する。

・当局の提案に賛成する。今後も含めて長期国債が予定外に日本銀行に大量買入される事により将来の長期国債先物のチーペスト銘柄の流動性懸念がでてくる可能性が高まっており、その際には市場が流動性供給入札に依存せざるをえなくなる事には留意が必要。

・現状通りで異論はない。

・各年限において恒常的にレポがタイトな銘柄が存在し、イールドカーブ形状に一部歪みが見られることからも、現状の発行額にて市場機能を維持することが望ましいと考える。

・茲許15.5年超の流動性供給において軟調な結果が続いているが、流動性供給入札が原因で需給のゆがみが発生している状況にまでは至っていないと考えているため、現状通りの案を支持する。

・現状維持を希望する。

・当局の提案に賛成する。
 投資家は新発債よりも低クーポンの既発債を選好する傾向にあり、足元の金利上昇に伴い軒並み新発債の方が、既発債よりも高いクーポンになっていることから、昨日の流動性供給入札でも相応のニーズが確認されるなど、既発債の需要も引き続き一定程度確保されていると考えている。

・現状維持でよいと思うが落札上位陣の意見に従う。

・残存1-5年ゾーンについては、増額前は入札当日の前場の業者間の気配から大きくかけ離れた強い入札結果になりがちだったが、5,000億円に増やした初回の入札結果を見るに需給がようやく釣り合ったように見える。そのため5,000億円で据え置きでよいと考える。
 残存15.5-39年ゾーンはここ最近軟調な入札結果になることがあるが、これは市場のボラティリティが高いことが原因であり、超長期ゾーンの需要が減っているからではないと考える。したがって発行額は5,000億円で据え置きでよいと考える。

・現状維持となる当局の提案に賛成する。

・当局の提案に賛成する。


3.最近の国債市場の状況と今後の見通しについて

〇提出された意見等の概要は以下のとおり。

・海外市場での高いインフレ圧力でグローバルな金利上昇が続いており日本国債では指値オペ等のサポートがあるものの他ゾーンの金利上昇圧力は強くイールドカーブは先物のベーシスを含めて激しく歪んでいる。目先は海外の金利動向が落ち着く見通しが立ちにくい中でポジションクローズの動きも発生し易い状況と考えており更なる歪みの発生が危惧される。

・5月末発表の独CPI高騰を受け欧州債が大幅下落、その後発表された米CPIも同様の内容となり、グローバルでの債券セルオフが大きく加速、日本国債市場でもYCC政策で10年債金利が全く動かない中、10年債先物は3営業日で2円超売られる展開となっている。また指値オペに加えて臨時の日銀買入オペも影響し、先物市場と現物債市場との乖離が拡大、本日6月15日にはチーペストの指値オペが発動され、その乖離が一層顕著になって来ている状況。どのようなプロセスで正常化に向かうのかを現時点では見出し辛く、暫くの間は市場の流動性低下が懸念される状況が継続すると考えている。

・極めて強い米CPI、FOMCでの75bps利上げの可能性が台頭したこと、FRBのみならずECBも大幅な利上げに踏み切る可能性が意識されていることなどから、日本銀行のYCCに対する市場の挑戦が強くなっており、日本国債については債先や超長期に売りが入り、スワップの払いも極めて強くなっている。日本銀行は臨時での買入オペや連続指値オペの実施を通じて、防衛し続けるものと思われるが、市場機能度や流動性という観点では、かなりのものが損なわれることになると危惧している。3月の臨時の日銀買入オペ後には金利上昇はいったん収まったものの、結局3カ月もたたずに市場からの挑戦を再度受けていることから、今回も、一旦金利上昇が止まったとしても、海外金利が高止まりし続ける限りは、再び挑戦を受けるリスクは高いのだろうと想定している。暫くは大きく金利市場のボラティリティが高まる展開が想定される。
 当社としては、目先での政策変更は見込んでいないが、YCCの遂行によって円安が加速して海外製品の物価が上がれば、一般消費者からの悲鳴も強くなり、政治的な問題へと進展して、日本銀行が政策修正を迫られるというリスクは今後も意識されることと思う。

・海外金利上昇に比べると、円金利の動きはYCCにより抑えられているものの、イールドカーブやスワップスプレッド等の歪みが生じていることには注意が必要と考える。

・2022年4月より超長期国債先物取引活性化プログラムが実施されている。バランス・シートを使用することなく、金利リスクを構築できる点で、証券会社のみならず幅広い参加者のニーズがあると考えている。

・欧米金利のさらなる上昇につれる形で本邦金利も金利上昇しており、直近では日中の変動幅が大きく、流動性も減少している。しばらくはこの状況が続く可能性があり、マーケット参加者も身構えている印象である。

・中央銀行のタカ派化を警戒した米欧金利の急上昇を背景に、日本国債市場でも海外投資家を中心とした市場参加者からの売り圧力が強まっている。ただ、日本銀行からは先物のCTDを含めた指値オペや日銀買入オペ増額などが発表され、日本銀行対海外投資家の構図が再燃している。市場圧力に日本銀行が負けるとの見方が海外投資家の中で広がっており、今週の金融政策決定会合への注目も高まっている。日銀買入オペの影響から全体として市場流動性が大きく悪化してきており、また先物市場と現物市場の価格が理論値を超えて乖離するなど、当面は値が飛びやすい状況が継続しそう。今後は、流動性供給入札の強化など、当局サイドの対応策の重要性も増してきそうだ。

・日本銀行の政策変更への思惑や、それに対するオペ運営により、様々な形で市場にゆがみが生じてきており、市場機能のさらなる低下が危惧される状況になってきていると感じる。今後市場参加者との間での様々な意見交換により、機能・流動性回復に繋がることを望む。

・海外金利の上昇に加え、円安の進行等から日本銀行のYCC修正観測(海外勢を中心にYCCを維持できるのかという疑義)等も相まって、極めてボラティリティの高い状況が継続している。日本銀行による超長期も含む臨時の国債買入より結果的にイールドカーブ全体が低位で保たれているが、その過程で1日に10bps超長期金利が上下する等、どうしても後追い的な施策となる為、こういう状況が継続すると、安定的な入札消化に支障をきたすこととなると思われる。引き続き、当局間で密に連携してほしい。

・欧米のピークアウトしないインフレを背景にグローバルに金利上昇しており、日本国債も0.250%で無制限買入されている10年を除きイールドカーブ全般に強い金利上昇圧力がかかっている。YCCでサポートされている10年金利を底にカーブのインバージョンが起こっており政策の持続性に市場参加者の焦点が集まっている。

・足元、先物主導の金利上昇が続いて、イールドカーブの歪みが急速に拡大しており、市場のリスクキャパシティが低下しているように見受けられる。一時的に市場に思わぬ混乱が起こる可能性もあると考えているので、引き続き市場を注視してほしい。

・指値オペの影響により、イールドカーブの歪みが生じており、マーケット・メイクが非常にやりづらい環境となっている。海外勢の債券先物の売りも継続しており、しばらくは、ボラティリティの高い相場展開が継続すると思われる。

・海外金利の大幅な上昇により日本銀行のYCC 10年25bpsを試す動きが再び活発化しており、日本銀行は連続指値オペで連日兆円規模で10年債の対象銘柄を買い入れしている。それでもなお先物主導での相場下落が続いており7年から10年ゾーンのイールドカーブで逆イールドが発生し歪みが起こっている。超長期ゾーンの30年債と40年債については国内投資家の買いの動きが鈍い中で40年債の増額が重しになっていて20年30年スプレッドがスティープニングしている。
 今後については海外金利の動向次第であるが、海外金利の低下が起きない限り、政策決定会合のたびに外国人中心に日本銀行のYCCを試す動きがでるだろう。

・グローバルにインフレ懸念が高まる中、日本国債市場も金利上昇圧力が大きくかかっている。日本銀行の緩和維持スタンスが臨時オペや指値オペによって明確に示されているが、先物は下げ止まらず、市場の流動性が低下し価格発見機能が大きく低下している状況。今後、発行増額を検討する際には、これまで以上に需要が十分見込める年限がよいと考える。

・4月28日、日本銀行が10年国債の0.25%での指値オペを定例化した。その後、グローバルなインフレ懸念の強まりやそれに起因する米金利の上昇によって、我が国の国債市場も売り圧力が強まった。しかし、前掲の日銀買入オペによって10年は基本的に0.25%が利回りの天井になるため、先物(7年連動)や超長期ゾーンなど他ゾーンの利回り上昇が大きくなった。イールドカーブは10年が取り残される形でベア・スティープ化し、大きく歪むことになった。
 今後の展開は日本銀行次第と言わざるを得ない。日本銀行が様々な手段を駆使して現行政策を堅持するのであれば、やがてはターム・ストラクチャー(金利の期間構造)が働き、10年が0.25%にとどまる中、滑らかなカーブ形状が復活しよう。一方、日本銀行が長期金利の変動幅拡大など政策の修正を行うのであれば、10年の利回りが急上昇する形でカーブはやはり、滑らかになるが、ベア・スティープ化が進行しよう。日本銀行は「変動幅の拡大は利上げに当たる」を公式見解としており、市場に屈する形での政策修正は考え難く、見通しとしては前者をメインとする。ただ、いずれにせよ、目先は市場と日本銀行の攻防が続くのだろう。そして、憂慮するのは流動性の一段の低下である。

・日本銀行の連日にわたる指値オペによる流動性の枯渇及びイールドカーブの歪みが生じるなど、最早、日本国債市場は機能度低下という表現では弱い気すらする。本日実施された356回債の指値オペも先物と現物のベーシスという結節点を破壊するだけの結果にならないか懸念している。

・日本銀行がオペを通じて強い金利抑制姿勢を示しており、金利上昇圧力は海外に比べると限定的。懸念された指値オペによる流動性低下も、現在のところは市場取引にとって大きな支障となっていない。


4.理財局からの連絡事項

〇理財局から以下のように説明を行った。

・当局としては、皆様方をはじめとした市場関係者の御意見については、本会合時はもとより、常日頃より伺っていくことが重要であると考えている。今週に入り、市場がやや大きめに変動する場面も見られるが、本日議論させていただいた議題については、本会合後も必要が生じた場合は、機動的に皆様から御意見を頂戴した上で対応していく所存である。これまで同様、皆様にはご協力いただければ幸いである。

 

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問い合わせ先

財務省 理財局 国債業務課 市場総括係
電話 代表 03-3581-4111 内線 5700