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日時 令和3年9月28日(火)

場所 書面にて開催

内容
1.令和3年10-12月期における物価連動債の発行額等について

〇令和3年10-12月期における物価連動債の発行額等について、理財局から以下のように説明を行った。

・物価連動債については、P.3のとおり、令和3年度発行計画では、1回の入札当たり2,000億円で年4回の発行としつつ、「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて、柔軟に発行額を調整」することとされている。また、P.4のとおり、買入消却についても、「市場の状況や市場参加者との意見交換も踏まえ、必要に応じて実施する」こととされている。本日は、10-12月期における発行額等について、御意見をお伺いするもの。

・7-9月期については、P.5のとおり、市場の状況や市場関係者との意見交換を踏まえ、8月に発行額2,000億円で入札を行うとともに、買入消却入札を毎月500億円実施することとしたところ。発行入札および買入消却入札の結果はそれぞれP.6、P.7のとおりである。

・流通市場の状況については、P.8、P.9のとおりである。年明け以降、BEIは順調に上昇していたところ、7月には一時的に物価連動債が大きめに売られる動きがみられた。もっとも、その後は再び持ち直し、足元では10年BEIは概ね0.2%を超えて推移している。また、BEIを銘柄別にみると、残存期間が短くなった一部の銘柄のBEIは大きめに上昇する一方、カレント銘柄である第26回債は相対的に低い水準で推移し、格差が幾分発生している。

・また、皆様から事前に御意見を伺ったところ、一部の参加者からは、BEI自体が改善しているほか、買入消却入札でも応募倍率が非常に低くなったり、ごく最近では株高等のリスクオンを眺めて海外勢が買いをみせているなど、需給の改善が窺われることから、発行額を据え置きつつ、買入消却額を減額することが望ましいといった御意見を頂戴した。

・もっとも、多くの参加者からは、引き続き物価連動債の戻り売り需要が強いほか、現在買入対象となっていない第26回債の需給が他銘柄対比重いため、当該銘柄を買入対象に加えたうえで、発行額および買入消却額を据え置くことが望ましいといった御意見を頂戴した。

・当局としては、物価連動債市場の育成は国債管理政策上の重要な課題と考えており、現在の発行額および買入消却額については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機とした市況の大幅な悪化を受けた異例・臨時の措置で、これが常態化することは望ましくないと考えている。

・もっとも、上述した通り依然として需給が重くなることがあることから、10-12月期の発行額は、P.10のとおり、7-9月期と同様、2,000億円の発行入札を1回行うこととしてはどうかと考えている。また、10-12月期の買入消却は、需給が相対的に重い第26回債を買入対象に加えつつ、その額については7-9月期と同様、毎月500億円の買入消却入札を行うこととしてはどうかと考えている。

・以上、物価連動債市場についての状況とそれを踏まえた当局案について御説明した。
 10-12月期における発行額等については、本日の会議内容も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて皆様の御意見を頂戴したい。
 なお、異例・臨時の措置を開始した昨年3月以降の状況と比較し、物価連動債の需給改善が進んでいることから、10-12月期の入札等の状況や市況を踏まえ、令和4年1-3月期については現在の措置からの正常化に向け、一歩踏み込んだ検討を行いたいと考えている。

〇提出された意見等の概要は以下のとおり。

・当局の提案に賛成する。足元の需給は良好であるものの、その価格変動は荒く十分な流動性が担保されているとは言い難い状況が続いている。市場流動性を維持する発行量と適度な買入を実施することで、マーケットの育成に力添え頂きたいと思う。

・物価連動債は当局の説明の通り一時と比較するとBEIは改善し、市場の健全化が幾分進んでいる様相だが、依然として他のマクロアセットに対する遅れが目立っている。日銀買入および買入消却の結果についても、カレント債が対象外である買入消却では若干好調の傾向は見られるものの、直前の取引価格からのプラス方向の乖離は見られておらず、需給が健全化したとは言い難い状況であるため、当局の提案の通り現状の発行額・買入消却額を維持することが適切と考えている。

・現状の発行額と買入消却額を希望する。茲許BEIは概ね外部環境通りの価格形成となっているが売りのフローが出てくると出合いを伴わないままBEIが急落した事もあり現時点では需給バランスの変更は不要と考えている。また、初回発行から時間が経過し発行量も増加した第26回債については他銘柄と需給差が出てきていることから買入消却の対象とすることを希望する。

・これまで新発第26回債が買入消却の対象外であったこともあり、投資家の売買が既発債に集中することで第26回債は理論価格対比割安評価のまま放置され、物価連動債の価格形成が歪められていた。発行残高が一定額を超えてきた現況に鑑み、指標となる新発債を再び買入対象銘柄に含めることに賛成する。

・発行額2,000億円、買入消却額500億円(毎月)の現状維持となる当局の提案に賛成する。7月下旬にはBEI+10bps割れの水準まで急落する局面も見られたが、一時的な下落に留まっており、基本的に需給環境は大幅に改善しているという認識である。「10-12月期の入札等の状況や市況を踏まえ、令和4年1-3月期については現在の措置からの正常化に向け、一歩踏み込んだ検討を行いたいと考えている」との当局の説明にも賛成する。

・当局の提案に賛成する。

・新発債については国内投資家の需要に欠ける状況が続いている一方、既発債には一定の売却が続いており、発行額、買入消却額ともに現状維持が望ましいと考えている。また、新発債・既発債間の需給格差がさほどみられていないことから、新発債の買入消却への組み入れも検討してもよいのではないかと考えている。

 ・カレント債へのニーズは高く、流動性を維持・向上させるためにも、8月の発行額と同様に2,000億円の発行を支持する。買入消却に関しては引き続き投資家からの戻り売りが出てくる状況に変わりがなく7、8、9月の買入消却での買入平均価格格差もマイナス圏であることから、需給を安定させるため現状通り毎月500億円での実施を支持する。また相対的に需給が重くなっている第26回債について10月から買入対象銘柄に加えることにも賛同する。

・発行額も買入消却額も現状維持を希望するが、落札上位陣に何か意見があれば、それに従う。

・ALMマッチの観点からの買い需要がない商品のため、需給が著しく悪くなった場合は機動的に対応してほしい。現状では安定しているため当局の提案に賛成する。

・現状維持に賛同する。
7月以降の日銀買入オペ、買入消却の結果を見ると足切り・応札倍率ともに需給は以前より改善してきているようだ。しかし第26回債は買入消却対象外とされていることなどから、(第25回債や第24回債など)手前の銘柄に比べ、BEIに歪みが生じつつあるように見える。指標性の観点からも、第26回債も買入消却対象として検討してほしい。

・欧米のインフレ指標は足元では2%を超える伸びを示しているが、国内に及ぶインフレ圧力の程度は限定的で、先行き不透明な状況が継続している。日銀買入オペ、買入消却ともに順当に消化されており、目立った変化は見られない。
斯かる環境下では、投資家需要には乏しく、安定消化の観点からも現状規模の発行と買入消却の実施が適当と考えている。

・9月上旬に比べればBEIの水準も上昇しており、正常化(発行増額、新発債を買入れ対象としつつ買入消却を削減)に向かう道筋が出来つつあると思う。もっとも、早急に正常化をしてしまうと、今あるモメンタムを崩してしまう可能性はあると思うので、今四半期は現状維持として様子見をしつつ、来四半期からの正常化を目指すのが望ましいと考える。

 ・物価連動債については、国内では先行きの物価上昇が見込み難い状況が続く一方、海外におけるインフレ懸念等にサポートされる形で名目債対比では堅調な地合いが続いているとの認識。一方でカレント近辺の銘柄とオフ・ザ・ラン銘柄との間における需給格差は改善しつつも、引き続き残存しているように見受けられる。そのような状況下、当面は需給バランスの改善を図っていくことが引き続き重要と推察されるので、足元程度の発行額および買入消却額の継続を支持する。

 ・直近1年間のBEI推移をみると、多少上下はしているが回復傾向にあり、発行額対比で金額が大きい買入消却額については200~300億円程度の減額が妥当と思われる。
カレント銘柄である第26回債を買入対象に加えることについては異論なし。
 

2.令和3年10-12月期における流動性供給入札の実施額等について

〇令和3年10-12月期における流動性供給入札の実施額等について、理財局から以下のように説明を行った。

・流動性供給入札については、P.12のとおり、令和3年度発行計画では、
 (1)残存1-5年ゾーンについては2.4兆円、残存5-15.5年ゾーンについては6.0兆円、
    残存15.5-39年ゾーンについては3.0兆円とし、合計で年間11.4兆円を発行することを想定しつつ、
 (2)最終的には「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて柔軟に調整」することとされている。
 これを受け、本日は、10-12月期におけるゾーン毎の発行額等について、御意見をお伺いするもの。

・P.13のとおり、7-9月期においては、残存1-5年ゾーンについては、奇数月の7月と9月に4,000億円、残存5-15.5年ゾーンについては、毎月5,000億円、残存15.5-39年ゾーンについては、偶数月の8月に5,000億円の発行とした。これらの結果はP.14~16のとおり。

・こうした中で、10-12月期の流動性供給入札について、皆様から事前に御意見を伺ったところ、複数の参加者からは、特定の銘柄・ゾーンにおける需給のタイト化を指摘する御意見をいただいたものの、全ての参加者から、ゾーン間の発行額のバランスを変更する必要があるほどに需給状況に大きな変化がみられているわけではないことから、現状の発行額等を維持することが適当、との御意見を頂戴した。

・これを受け、P.17にあるとおり、10-12月期におけるゾーン毎の発行額の当局案を作成した。残存1-5年ゾーンについては、奇数月の11月に4,000億円、残存5-15.5年ゾーンについては、毎月5,000億円、残存15.5-39年ゾーンについては、偶数月の10月と12月に5,000億円の発行としてはどうかと考えている。

・10-12月期における流動性供給入札のゾーン毎の発行額等については、本日の会議内容も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて皆様の御意見を頂戴したい。

 〇提出された意見等の概要は以下のとおり。

・当局の提案に賛成する。全ゾーンに増額余力があるものの、現状に鑑みれば前四半期比不変が妥当と考える。

・現状維持を希望する。
残存1-5年、残存5-15.5年を対象とする入札は、オフ・ザ・ラン銘柄への需要が強い状況が継続しているが、足元7月以降の入札結果を確認する限り、従前以上に需給が締まっている状況ではないと考えている。よって、現状の発行額以上に増額する必要もないと思われる。

・各年限で金額がバランスよく配分されており、証券会社のショートカバーや投資家需要に支えられ安定的に消化できていることから、現状と同程度の配分が適当と考えている。

・各ゾーンとも投資家需要・証券会社のショートカバーニーズが大きいため現状維持を希望するが、特に残存1-5年ゾーンについては需給でイールドカーブが歪むことも多く増額する余地は大きいと考えている。

・現状維持となる当局の提案に賛成する。

・7-9月と同様の案を希望する。
流動性供給入札については、シーズナルによる波はありつつも、各ゾーンとも相応の需要が見られており、現時点で特段発行額の変更等の措置は必要ないと認識している。

・引き続きニーズが強いので今まで通り継続していただくことを希望する。

・現状維持で問題ない。

 ・当局の提案に賛成する。

 ・各ゾーンにおいて投資家と業者のニーズを満たしセカンダリ市場での流動性を維持するためにも、現状通りの実施額を支持する。

・現状通りの配分で問題ない。
残存5-15.5年ゾーンに対するニーズが非常に強い事が確認できている。今後の日本銀行のオペ運営の変化により、超長期の供給がマーケットにとって重荷になる時が来るのであれば、残存15.5年-39年ゾーンを減額して、その分を振り分ける事も選択肢になると思われる。

・現在の買入額でバランスしていると考える。海外投資家の買入によって、一時的に残存1-5年ゾーンのオフ・ザ・ランの流動性が大きく落ちてしまうこともあるが、他の年限を削ってまで増やすほど緊急ではないと考える。

・年限毎の発行額と市場の需要は概ね見合っており、現状維持が望ましいと考える。


3.最近の国債市場の状況と今後の見通しについて

〇提出された意見等の概要は以下のとおり。

・9月に入り、海外の金利上昇に加え、日本の政局や株高も背景に、円金利は8月までの低位かつ狭いレンジ(10年債0~0.03%)から徐々に金利上昇圧力がかかっている。しかし、YCCと日銀買入が継続している状況下では、年度を通して過度な金利先高観は引き続き市場では形成されづらいと考えており、今後も大きな調整をすることなく、安定的に各年限、供給を消化することができる環境だと考えている。

・日本銀行のYCCが効果的に機能し、相場は全体感としては安定推移が続いている。しかし一方で、昨年来の新発増額の中、日本銀行の銘柄ごとの買入スタンスには大きな変化はなく、結果増額銘柄と増額以前の発行銘柄間の需給格差が広がりつつあり、市場の機能度低下の可能性には留意すべき状況と思料する。

・外国人投資家の需要や米金利の水準が大きく動かなかったこと等を背景に、円10年金利はゼロ%近傍の狭いレンジで推移する時間帯が続いていたが、足元はグローバル金利の上昇を背景に円金利も上昇傾向にある。中国経済に関する懸念も出てくる中で、このまま金利上昇トレンドが続くとは考えていないが、海外金利の動向には注意が必要となってきた。また、自民党総裁選後の財政政策にも注目が集まり、久々に当面はボラティリティがやや高まる場面が続きそうである。ただ、日本国債市場の構造が大きく変わった訳ではなく、10年債金利が10bpsを超えるような水準まで上昇するとは予想していない。

 ・国債入札において数年前から、海外勢からの需要の増大もあって平均落札価格での購入需要が増えており、足元かなり顕著になっているように見える。過去の本会合において参加者より数回、日本国債の入札方式についてダッチ方式に変更する提案があったが、足元の状況および今後も更にタイムゾーンの異なる投資家層の需要増大も期待されることから、ダッチ方式の方が市場の需要により適合する環境になっていると考えられる。したがって、今後の国債入札の安定消化の観点から、40年債と物価連動債以外の入札方式についてもダッチ方式に変更することが適切だと考える。

・年度初から大幅に金利低下した後、7-8月は昨年後半同様、10年債0.00~0.05%でのレンジ相場となっていたが、9月初めの菅首相辞任以後の株高、直近のFOMC及びBOEのタカ派的な内容、自民党総裁選の不透明感や日本銀行の四半期買入詳細発表における減額懸念等々から、今月通して金利上昇基調となっており、10年債は0.065%、20年債は0.460%、30年債は0.695%近くまで取引されている状況である。
欧米債のサマーラリーを受け、8月初めには10年債が一時0.00% bidまで買われた局面もあったが、昨年度までとは大きく異なり、イールドカーブのブルフラット化は殆ど見られなかった。40年債の増額や生保勢の購入ペース鈍化、超長期ゾーンに対する日銀買入が月1回になった事、等が影響していたと考えられる。
来月以降の相場について、総選挙における政権交代やYCC政策見直しといった不測の事態が起こる可能性は低いと考えており、年内は10年債で0.04~0.10%、20年債で0.43~0.50%がコアレンジでの推移を想定している。年明け以降は経済対策を受けての国債増額が市場では懸念されている印象だが、米英の様に利上げ観測が盛り上がる状況では無く、大幅な金利上昇につながる事はないと現時点では考えている。

 ・長期国債等の日銀買入の運営での金額の見直しが3か月毎となりそれを材料とする相場の変動もなく、また外部環境への反応も比較的鈍く2020年度10~12月期のように変動幅が乏しくなっている。今後は米金利の上昇に伴い外部環境の影響度が高まる事や財政要因等を睨んだカーブ上の動きが生じる可能性があるが、それでも変動幅が限定されやすい状況が続くと考えている。

 ・海外金利がレンジにあると言うこともあるが、総じて市場の動きに乏しく、機能度という観点では危機が続いていると認識している。一方、コロナ以降に在宅の顧客が増えたため、セカンダリーでの売買が減っていることに加えて、海外投資家のプレゼンスは上がっており、入札の重要性は増えており、特にアベレージオーダーのニーズが増えているように思われる。そういった中で、当社では、第Ⅰ非価格競争入札の増額を希望する。

・日本銀行の大規模国債買入れが超長期化している一方で、金利水準は低位で動意が限定的であるため、昨年度からの国債増額で供給量が増えている各年限のカレント周辺銘柄の需給悪化が進行している。つまり、既発債の流動性低下と新発債周辺の需給緩和が同時進行してイールドカーブ上の裁定が働きにくい状況が続いているため、カレント銘柄の割安化がトレンド化している。これまでにも意見としては挙げられた、日本銀行によるスイッチオークションの再検討が必要と考える。

・今後、来年度発行額について議論させていただくことがあると思うが、落札最上位陣の意見を最優先して議論を進めていただければと思う。

・米国のテーパリング開始と利上げ時期の前倒し観測に加え、国内では新首相に対する期待からの株高もあり、金利は緩やかに上昇基調となっている。しかし、引き続き投資家の押し目買い意欲が強いことから、大幅な金利上昇にはならないと考える。

 ・海外市場の動向やポジショニングに伴う相場変動が続きつつ、金利は引き続き低位で安定している。金融政策だけではなく、大量の余剰資金が相場を支える構造にあり、投資家需要に配慮した発行計画も奏功している。その一方で、現状、FB発行額の増減を3M発行額が全て吸収しているため、T-Billの中で3Mだけが需給が不安定になりがちである。

・直近はボラティリティが高くなっているが、YCCである限り、基本的にはボラティリティが抑制された状況が続くと考えている。

・利付債は当面足許程度の発行が続くと想定しているが、現状でも相応の発行量となっている状況下、1回毎の入札におけるインパクトは従前対比で増しているとの認識。直近の各種調査では岸田首相誕生の可能性が高そうではあるが、組閣内容次第では国債増額懸念から予期せぬボラティリティの上昇に繋がる可能性もあるので、国債の安定消化に支障をきたす展開とならぬよう、引き続き当局間での丁寧な連携と市場との密なコミュニケーションを継続していただければと思う。

 ・自民党総裁選とその後の衆議院選挙に向けての政治日程に注目している。各党が行う公約の各種政策に対する財源への思惑やポスト菅政権による日本銀行総裁の後任人事と大胆な金融緩和に対する見直し機運が長期金利に及ぼす影響を注視する展開と思われる。

 ・7月1日から昨日(9月27日)まで10年国債利回りは0.000~0.055%の狭いレンジで推移している(これは昨年6月中旬から今年1月末までのレンジと一緒である)。この間、(1)菅首相の辞意表明、(2)新型コロナウイルスの感染状況の改善、(3)米長期金利の再上昇…という金利上昇要因があった。
(1)について、株価が急伸したものの、日本国債市場は冷静だった。新たな自民党総裁候補4人の経済・財政政策はある程度異なっている。しかし、誰がなっても強力なイールドカーブ・コントロールの圧力を超えて利回りを変動させることはないというのが大勢の見方なのだろう。明日(29日)、新総裁が決まるが、その結果に対する反応も限定的と判断する。
(2)に関し、基本的な理解は次のとおりである。「ワクチン接種によって集団免疫を得るのは容易ではなく、加えて、今後も様々な変異株によって感染者数は増減を繰り返す公算が大きい。その際、他国に比べて医療体制が不十分な我が国は、現在もそうであるように度々経済活動が制約されるリスクが相対的に高い。」それでも、感染者数の振幅が利回りの振幅に一定にシンクロ、足元、若干でも利回り上昇に寄与した部分があろう。
(3)では、9月21、22日のFOMCとパウエル議長の会見がテーパリング終了と利上げ開始の時期前倒しによってタカ派的と判断された。しかし、供給制約を主因とする物価上昇はやがて沈静化し、財政効果が薄れて景気回復のピッチも鈍ろう。今後の経済環境の不透明感は強く、FRBの想定どおりに進む可能性は決して高くない。それを踏まえた上でだが、米国の10年国債利回りが3月30日につけた1.77%に迫る場面があるなら、我が国の10年も0.10%前後まで上昇する公算がある。
以上、来年3月末までの10年国債利回りのレンジはマイナス0.050~0.125%を予想する。

・海外の金利市場の動向に比べて、日本国債市場は比較的安定して狭いレンジでの動きが続いているが、やや低調な国債入札結果も散見されている。今後の国内外ファンダメンタルズや需給動向には注意していきたいと思う。

 ・9月22日のFOMC以降、海外金利はダイナミックに変動しているが、円金利のそれは与党総裁選という変動要因を抱えているにも関わらず限定的なものにとどまっている。オペのマーケットへの関与を低めるという日本銀行のオペ運営方針の方向としては正しいと思うが、YCCピン留め10年という根本が変わらない中でオペ方法を調整しても過去のプライスアクションが証明している通り、対処療法の域を出られず枝葉末節な対応と感じている。長引くYCC政策により、引き続き機能度・流動性も底這い状態。YCC導入以前の日本国債ボラティリティ・インデックスの平均3.41に対して今期のそれは1.45と実に60%近いダウンとなっており、機能度の低下を顕著に表している。これは日本国債市場の他金利市場対比の魅力の低さの数字ともいえ、YCC、厳密には10年ピン留めが機能度・流動性低下の主たる要因と考える。冒頭に示したように足元の海外金利や政治の動向を考慮すれば、少なくとも3を上回るような値動きが正常なマーケットではないかと思う。人為的に変動を押さえつけている現状を「円金利の低位安定」と呼ぶことには違和感を感じる。
また、理由は省略するが、引き続き超長期ゾーンのイールド・ダッチ方式への変更を要望する。

・現在の日本銀行による国債買入の規模では相応にインパクトのある材料がなければ長期金利がマイナス化するような金利低下は起きにくい状況になっている。他方、投資家の資金消化需要は依然旺盛であり、急激な金利上昇も起きていないため、ボラティリティの低い環境が継続している。日本国債の増額はあまり警戒されていないため、今後国債増額を織り込みに行く場面では金利上昇の可能性があると考えている。

 
4.理財局からの連絡事項

〇理財局から以下のように説明を行った。

・9月9日の5年債入札では、当局の事務過誤により、募入決定額および案分比率の訂正が発生し、各参加者に迷惑をおかけした。原因究明の上、再発防止策を講じたほか、システムの改良も検討しているところ。この場を借りて改めてお詫び申し上げる。

・他方、各参加者に対しては、特別な資格を付与するとともに、入札における応札·落札等において一定の責任を課しているところ、軽微な計算ミスや確認を怠ったこと等により、応札責任を果たさないケースが稀ではあるが散見される。各参加者においては、例えば応札責任に達したかどうかをチェックするシートを作成し応札の際に活用する等の工夫や、適切な事務手続きの再確認をしたりする等、責任違反防止策を徹底していただきたい。

 

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問い合わせ先

財務省 理財局 国債業務課 市場総括係
電話 代表 03-3581-4111 内線 5700