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日時 令和3年6月23日(水)

場所 書面にて開催

内容
1.令和3年7-9月期における物価連動債の発行額等について

〇令和3年7-9月期における物価連動債の発行額等について、理財局から以下のように説明を行った。

・物価連動債については、P.3のとおり、令和3年度発行計画では、1回の入札当たり2,000億円で年4回の発行としつつ、「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて、柔軟に発行額を調整」することとされている。また、P.4のとおり、買入消却についても、「市場の状況や市場参加者との意見交換も踏まえ、必要に応じて実施する」こととされている。本日は、7-9月期における発行額等について、御意見をお伺いするもの。 

・4-6月期については、P.5のとおり、市場の状況や市場関係者との意見交換を踏まえ、5月に発行額2,000億円で入札を行うとともに、買入消却入札を毎月500億円実施することとしたところ。発行入札および買入消却入札の結果はそれぞれP.6、P.7のとおりである。 

・流通市場の状況については、P.8のとおりである。昨秋以降、グローバルな動きにも影響されつつ上昇し、安定的にプラス圏で推移している。もっとも、ごく足元ではこうした動きも一服し、幾分上値が重い展開となっているようにもみえる。 

・また、皆様から事前に御意見を伺ったところ、物価連動債市場では、当局による買入消却も功を奏し、需給は改善傾向にあるものの、ごく足元では、BEIの改善をとらえ、内外投資家がオフ・ザ・ラン銘柄を中心に持ち高を落とすような動きが活発化しているとの声が聞かれた。こうした中、引き続き外部環境次第では再び需給が悪化することも想定できることから、7-9月における発行額と買入消却額については据え置きとすることが望ましいとの御意見が多く聞かれた。 

・当局としては、現在の発行額及び買入消却額については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機とした市況の大幅な悪化を受けた異例・臨時の措置であり、これが常態化することは望ましくないと考えている。 

・もっとも、上述の通り依然として需給に関する不透明感があることから、発行額については、P.9のとおり、7-9月期は、4-6月期と同様、2,000億円の発行入札を1回行こととしてはどうかと考えている。

・同様に、7-9月期の買入消却額については、4-6月期と同様、毎月500億円の買入消却入札を行うこととしてはどうかと考えている。なお、買入消却の対象銘柄については、発行額の少ないカレント銘柄の市中流通量をある程度確保しつつ、新発直後の銘柄に対する多額の買入を行うことを避ける観点から、前回お伝えした通り、当面の間、5月に新発となった第26回債を対象から外すこととしてはどうかと考えている。対象に加える時期については、同銘柄の発行額が累計で4,000億円となった後、他銘柄と比較した同銘柄の需給の状況を踏まえ、柔軟に検討していきたい。

・以上、物価連動債市場についての状況とそれを踏まえた当局案について御説明した。
物価連動債市場の育成は国債管理政策上の重要な課題と考えており、7-9月期における発行額等については、本日の会議内容も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて皆様の御意見を頂戴したい。

〇提出された意見等の概要は以下のとおり。

・発行額2,000億円、買入消却額500億円(毎月)の現状維持となる当局の提案に賛成する。オフ・ザ・ラン銘柄を含めた全銘柄でBEIが20bpsを超えてきている状況ではあるが、BEIの水準の改善に伴い、海外勢の売りに加えて地方勢の売りも目立ってきており、直近の買入消却及び日銀買入オペの結果の弱さに寄与している印象である。買入消却額減額については10月以降、議論すべき課題であると考えている。

・物価連動債の需給は当局の指摘の通り復調傾向にあるものの、依然としてBEIで見た際に他国対比で遅れが目立ち、需要が強い状況には見えない。また、BEIの幾分の復調に伴い、投資家勢からのオフ・ザ・ラン銘柄の売りが目立つようになっており、オフ・ザ・ラン銘柄を含めて需給はまだ健全とは言えない状況が続いていると考える。したがって、当局の提案の通り引き続き現状の発行額および買入消却額を維持して市場の回復を待つ事が適切であると考えている。また、カレント銘柄(26回債)についてはまだ市中残高が小さい事もあり買入消却における対象銘柄から除外されていることによる需給の悪化は目立っていないように見える。そのため、当局の提案の通り今後累計発行額が増えた際に改めて対象銘柄に含めるかどうかを検討する方針が適切と考える。

・発行減額と買入消却増額により物価連動債市場の過剰在庫は順調に解消しつつあると認識している。特に、コロナショック前からも在庫が目立っていたオフ・ザ・ラン銘柄の需給の回復が著しく、BEIが過度に割安に取引されることはなくなってきている。当社としては、現状の買入消却月額500億円は大きいと考えており、コロナショック前の水準である月額200億円程度まで減らす余地があると思っている。他方、発行額は現状維持でよいと考えている。機動的な需給の調整は買入消却の増減で行うべきと考えているため、発行額を簡単に変えるべきではない。

・現状維持の当局の提案を支持する。年初来からの海外のBEI上昇基調に伴って本邦BEIも漸くマイナス圏を脱し、新たな投資家の関心を集めつつある。しかし、基準改定による携帯電話通信料値下げの影響拡大もあり、今後のCPI見通しは予断を許さない状況にある。また、海外投資家を中心に古いオフ・ザ・ラン銘柄には戻り売りの潜在的ニーズが相応にあり、発行増額や買入消却額の減額を議論するには時期尚早と考える。

・現状の発行額と買入消却額を希望する。現状の需給バランスでは、外部環境に反した需給要因によるBEIの低下は見られなくなり、茲許はグローバルなインフレヘッジニーズによる海外BEIの上昇に沿う形で本邦のBEIも上昇している。概ね外部環境通りの価格形成となっており需給バランスの変更は不要と考えている。またカレント銘柄の需給状況を踏まえ、8月の入札以降対象に加える時期を柔軟に検討する前提で当面の間カレント銘柄を買入消却の対象外とする事は問題ないと考えている。

・BEIは順調に回復しており、発行対比で金額が大きい買入消却額の減額を検討する段階に入ってきている。7-9月期は現状維持、10月以降は今後の状況を見極めた上で減額を検討すべきものと思料する。

・発行額案については、当局の提案に賛成する。また、買入消却額を不変とすることもマーケット環境に鑑み、異論ない。

・現行の発行額と買入消却額を継続することを希望する。足元は米欧のCPI上昇を受けて、グローバルなBEI上昇にサポートされたという面があるものの、7-9月期以降に、ベース効果が剥落してCPIが下落していく際に、グローバルなBEIの下落圧力が生じないか、そしてそれが本邦のBEIに影響を与えないかを注視する必要があると考える。

・カレント銘柄へのニーズは強く、流動性を維持・向上させるためにも、5月の発行額と同様に2,000億円の発行を希望する。前回入札は直前に国内外投資家の循環物色的な買いが割安だったオフ・ザ・ラン銘柄に入り、ディーラーのショートカバーから入札が過熱し割高な結果となった。その後価格は調整されたものの、順調に投資家への販売が進み価格は戻し基調となっている。カレント銘柄のBEIは20bps前半で押し目買いの傾向が見られる。買入消却に関しては、引き続き投資家からの戻り売りが出てくる状況に変わりがないほか、応募倍率も高く買入平均価格格差もマイナス圏であることから、需給を安定させるため現状通り毎月500億円での実施を希望する。

・当局の提案に賛成する。米BEIの上昇に伴い、幾分しっかりとした値動きにはなってはきているものの、直近は持ち高調整とみられる投資家の売りも散見されている。再び急速な需給悪化を招かないためにも、今しばらく現状の発行と買入消却を維持することが望ましいと考える。また、カレント銘柄を引き続き買入消却対象外とすることも、銘柄ごとの需給バランスの観点から、適切と思料する。

・物価連動債については、国内では先行きの物価上昇が見込み難い状況が続く一方、海外におけるインフレ懸念等にサポートされる形で名目債対比では堅調な地合いが続いているとの認識である。一方で、カレント近辺の銘柄とオフ・ザ・ラン銘柄との間における需給格差は引き続き残存しているように見受けられる。そのような状況下、当面は需給バランスの改善を図っていくことが引き続き重要と推察されるため、足元程度の発行額および買入消却額の継続を支持する。

・現在の市場規模や流動性、国内物価動向を踏まえると、発行額・買入消却額ともに現状維持が適当と考えている。

・引き続き、国内投資家の物価連動債への需要が少ない事に加え、買入消却、日銀買入オペともに応札額が増加傾向である事から、引き続きオフ・ザ・ラン銘柄の売却需要が強いと思われる。よって、現状の発行額と買入消却額で異論はない。また、26回債に対する買入消却の対象時期等に関しても当局の提案で異論ない。

 
2.令和3年7-9月期における流動性供給入札について

〇令和3年7-9月期における流動性供給入札について、理財局から以下のように説明を行った。

・流動性供給入札については、P.11のとおり、令和3年度発行計画では、
 (1)残存1-5年ゾーンについては2.4兆円、残存5-15.5年ゾーンについては6.0兆円、
    残存15.5-39年ゾーンについては3.0兆円とし、合計で年間11.4兆円を発行することを想定しつつ、
 (2)最終的には「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて柔軟に調整」することとされている。
 これを受け、本日は、7-9月期におけるゾーン毎の発行額等について、御意見をお伺いするもの。

・P.12のとおり、4-6月期においては、残存1-5年ゾーンについては、奇数月の5月に4,000億円、残存5-15.5年ゾーンについては、毎月5,000億円、残存15.5-39年ゾーンについては、偶数月の4月と6月に5,000億円の発行とした。これらの結果はP.13~15のとおり。

・こうした中で、7-9月期の流動性供給入札について、皆様から事前に御意見を伺ったところ、一部の方から、特定の銘柄・ゾーンにおける需給のタイト化を指摘する御意見をいただいたものの、ゾーン間の発行額のバランスを変更する必要があるほどに需給状況に大きな変化がみられているわけではないことから、多くの方から、現状の発行額等を維持することが適当との御意見をいただいている。

・これを受け、P.16にあるとおり、7-9月期におけるゾーン毎の発行額の当局案を作成した。残存1-5年ゾーンについては、奇数月の7月と9月に4,000億円、残存5-15.5年ゾーンについては、毎月5,000億円、残存15.5-39年ゾーンについては、偶数月の8月に5,000億円の発行としてはどうかと考えている。

・7-9月期における流動性供給入札のゾーン毎の発行額等については、本日の会議内容も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて皆様の御意見を頂戴したい。
 
〇提出された意見等の概要は以下のとおり。

・各ゾーンにおいて投資家と証券会社のニーズを満たし、セカンダリ市場での流動性を維持するためにも、現状通りの実施額を希望する。

・当局の提案について異論はない。なお、足元の投資家動向として、オフ・ザ・ラン銘柄を積極的に買う動きがみられており、流動性供給入札でオフ・ザ・ラン銘柄を購入したいという声も多く聞かれる。流動性供給入札は増額余地があると考える。

・残存1-5年についてはレポがタイトな銘柄が目立つものの、まだ深刻といえる状況には見えず、他のゾーンのオフ・ザ・ラン銘柄に対する投資家需要も引き続き堅調であるため、当局の提案の通り現状維持が適切と考える。

・日本銀行が大量に国債を購入している限り、オフ・ザ・ラン銘柄が不足する状況が続くため、是非減額はしないでほしい。

・当局の提案の通り現状維持に賛同する。ただ、年間発行額の増額を検討する場合は、残存1-5年、残存5-15.5年を対象とする入札は常にオフ・ザ・ラン銘柄への需要が強い状況が継続しているため、発行規模は各々1,000億円程度増額した方が、マーケット・メイクを行う立場としてはありがたい。

・現状維持となる当局の提案に賛成する。短中期ゾーンでレポが恒常的にタイトになっている銘柄が再度増えてきている状況であるため、発行年限が短期化する事を考慮せず増額余地のみで判断するのであれば、残存1-5年の流動性供給入札について、下期は1,000-2,000億円程度の増額余地があると考えている。

・流動性供給入札の結果には波乱が無く、問題なく消化できていることから、現状通りの実施間隔と発行額で異論ない。

・直近の入札結果からは、発行量と市場の需要が概ね見合っていることが窺われる。強いて言えば、残存1-5年については、需給がタイトな銘柄が恒常的に存在しており、若干の増額余地があると考える。

・各ゾーンとも投資家需要・証券会社のショートカバー需要が大きいため現状維持を希望するが、特に残存1-5年については需給でイールドカーブが歪むことも多く増額する余地は高いと考えている。

・各ゾーンともにオフ・ザ・ラン銘柄に対する投資家ニーズは強く、引き続き安定的な供給をお願いしたい。7-9月の金額は現状維持でいいものと考えるが、残存1.5-3.5年程度のオフ・ザ・ラン銘柄へのニーズは強く、今後更に需要が増す場合、残存1-5年に増額検討の余地があるものと考える。

・残存5-15.5年の流動性供給入札に関して、今後も強い結果が続くようであれば増額を考えてもよいと考えている。

・各ゾーンで金額がバランスよく配分されており、証券会社のショートカバーや投資家需要に支えられ安定的に消化できていることから、現状と同程度の配分が適当と考えている。

・オフ・ザ・ラン銘柄の流動性は一段と低下している。7-9月期の後の話となるが、日本銀行による大規模な買入が従来方式で継続される場合には、流動性供給入札の規模拡大が必要になると考える。


3.最近の国債市場の状況と今後の見通しについて

〇提出された意見等の概要は以下のとおり。

・国債市場は引き続き低ボラティリティのなか、外部環境に歩調をあわせる格好で既往レンジ内での揉み合いに終始している。国債市場には買い安心感が醸成されており、足元大きな波乱は考えにくい。
今後は金利指標改革に伴うデリバティブ取引動向にも注目している。本邦に限った事では無いが、移行期間において流動性等の状況次第では国債市場にも影響及ぼす可能性もあり、その動向に注目したい。

・3月末発表の長期国債等の買入れの運営にて減額実施後は日本銀行の金融政策に関して一旦材料出尽くしとなり、4月以降は外部環境への反応も比較的鈍く令和2年度10-12月期のように変動幅が乏しくなっている。夏にかけては財政要因等を睨んだカーブ上の動きが生じる可能性はあるが、3月末以降変更のない長期国債等の買入れの運営の動向や海外金利を見ながらも変動幅が限定された状況が続くと考えている。

・直近は、米雇用統計、米CPI、FOMCを受け、米金利が大きく変動したが、それでも円金利は比較的落ち着いた値動きとなった。今後についても、日本銀行による「長期金利変動幅の明確化」により、引き続きボラティティが抑制された状況が見込まれるところ。もっとも、5年債など入札が不調続きとなる年限も出てきている。市場の機能度、流動性が低下しないか、より注視すべき局面ともいえるかと思う。

・5月は5年債マイナス0.10~マイナス0.09%(1bps幅)、10年債0.07~0.09%(2bps幅)というタイトレンジでの推移となっていたが、6月に入っての米国債の大幅金利低下を受け、日本国債も30年債入札直後から金利低下が一気に加速した。先月のレンジをブレイクした事に加え、先物限月交代期間、予想外にテールが出た10年債入札、30年債入札直後、と様々な要因が重なり、ポジショニングの偏りから先物主導での強烈なラリーとなった。グローバルを見渡しても特に明確な材料は見当たらず、株・為替が殆ど動かない中で、債券ショートだけがスクイーズされるという展開は、完全に想定外だったという感想。
翌週のFOMCの結果を受け、米国債は大幅にフラットニングする展開となったが、日本国債は5月半ばから継続していたスティープニングの流れが止まっただけで、大幅な反転にまでは至らなかった。今年度に入り生保勢の超長期債買いペースが明らかに鈍化しており、買入回数減少や発行増額も相俟って、特に30年債及び40年債の需給悪化が顕著になってきている。
今後の見通しについては、直近の展開を受け既存のポジションはほぼ一掃された印象であり、極端な値動きが起こる可能性は減ったと考えているが、米国債市場は依然として金利水準・カーブ共に不安定な動きが継続している。
国内ワクチン接種状況の大幅な進捗や東京オリンピックの事実上開催決定、また秋の衆議院選挙が視野に入って来るタイミングでもあり、来月からは各年限で新発債での発行となるが、4月と状況は多少異なっており、入札に関してはある程度慎重な姿勢で臨む投資家が増えそうだと考えている。

・3月日銀点検を経て、4-5月は国内金融政策に対する不透明感が減少し、米金利も安定的な推移となったことから、円金利は非常に狭い値幅で推移。6月に入り米金利の値動きに合わせて先物中心に値幅は出たが、現物債に関しては引き続き下記の通りの認識。
10年債以下はイールドカーブ・コントロールと日銀買入オペに支えられ、20年債は幅広い最終投資家の需要が存在し、30年債と40年債は40年債の増額の影響が燻るものの潜在的なロングエンドの需要はまだ多いので、各年限において今後も安定的な消化が可能だと考える。

・日本銀行の点検公表後、一時的に国債市場のボラティリティと流動性が急低下した。これは、国債市場に直接影響する措置が日銀点検に含まれていなかったこと、3月・4月は年金リバランスと見られる信託勢からの日本国債買いが大きな規模となったことなどが背景に挙げられる。
先週のFOMC以降、米債市場はやや荒れ模様だが、日本国債市場に関しては当面静かな展開が続くことを見込んでいる。

・イールドカーブ・コントロールを背景に低ボラティリティな相場環境が続くと考えている。

・40年債入札をそろそろ隔月から毎月にするのはいかがか。とはいえ、落札ランキング上位社の意見最優先でお願いしたい。

・円金利は外債の値動きを受けて多少の変動を見せているものの、依然として動意が薄い状況であるように見え、それは金融政策のマクロ感応度が低いと見られている事とイールドカーブ・コントロールにおける10年債金利のレンジに対する不透明感が払拭された事が主要因であると考えている。したがって、この状況はある程度長期化しやすいと考えており、次のマーケットの大きな変動要因は財政政策側、すなわち日本国債の発行に関する議論になると考えている。

・イールドカーブ・コントロールの枠組みにより、特に10年ゾーンについては引き続きレンジでの推移が見込まれる。超長期ゾーンでは日本銀行の影響が弱まっているものの、投資家の目線は大きく変化しておらず、当面はこうした環境が続くと考えられる。

・日本銀行による大規模国債買い入れの超長期化が継続している弊害で、オフ・ザ・ラン銘柄の流動性低下が顕著となっている。一方で昨年度からの大幅な国債発行増額によって各年限のカレント銘柄はカーブ上で割安化しやすい状況が定着してきている。国債市場全体の膠着商状の概観以上に、こうした構造的問題が金利機能の低下・喪失を引き起こしていると憂慮している。市場のヘッジ機能・機会の低下は国債入札においてテールが大きくなることに現れ始めていると考えられ、(1)日本銀行の国債買入対象をカレント銘柄周辺に限定させることや買入規模の縮小、(2)流動性供給入札を拡大すること、などの対策が必要ではないか。

・日本銀行による国債買入の運営を巡る不透明感が後退し、ボラティリティは低下傾向にある。最近はややテールする入札が散見されるが、総じて反応は落ち着いており問題視するレベルではないと考えている。
一方、現時点で利付債の増額を警戒する市場参加者は少なく、今後の展開次第では日銀買入オペによる下支えが手薄な超長期ゾーンを中心に金利上昇への警戒感が高まる可能性があると考えている。

・4月は、3月末に公表された長期国債買入れ月間予定表において買入頻度および月間買入額が減少したことにより円金利は上昇してスタートしたものの、当月に実施された入札は各年限ともに新年度入りした国内投資家の好需給を背景に総じて好調な結果となり、加えて米金利が低下基調となったことも相まって、円金利は低下した。5月に入ると、国債相場は膠着し10年債金利は0.07%~0.09%のわずか2bpsの値動きにとどまることとなった。今月は、上旬に米10年債金利が1.5%を割れたことをきっかけに、10年債金利は一時0.025%まで低下。その後、FOMCにおけるFRBのタカ派的スタンスから早期テーパリング開始及び利上げ期待が台頭し、10年債金利は再び0.05%を超えた。直近は、海外金利がこれまでのリフレトレードの巻き戻しから急激にフラットするなどボラティリティの高い状況となっているが、円金利は相対的に落ち着いておりレンジ内の推移となっている。今後は、国内においてはワクチン接種の拡大および経済対策への期待、また海外においては米国のテーパリングから利上げに向けてのパスの確認などを背景に、現行金利水準から徐々に上方へシフトしていくものと考えている。

・国内のワクチン接種状況が昨今加速しているとはいっても、インフレ上昇の見通しが立たない中、日本銀行の金融緩和策の長期化が見込まれており、テーパリング協議の前倒しや利上げの開始時期が議論されている米国とは環境が異なっているとの認識。従って、海外金利に多少振らされながらも、引き続き低位安定推移を見込んでいる。今国会での2021年度補正予算案を提出しないとの報道も日本国債市場にとっては好感される内容ではあるが、一方でドル円の水準を踏まえても日本銀行がマイナス金利深堀に動くとの観測も生じ難く、金利低下トレンドに入る可能性も低いと考えている。

・日本銀行の「点検」の結果と4月の国債買入れを材料として消化、米長期金利もレンジ推移に移行したため、日本国債市場は手掛かりを失い、4月27日から6月8日までの1カ月半程度の期間、10年国債利回りは0.070~0.090%とわずか2bpsの動きにとどまった。ただ、その後、米金利低下に引っ張られ、11日に0.025%まで低下する場面もあった。超長期ゾーンに対する国内投資家の押し目買い意欲は依然、強いと見ている。もっとも、4、5月の公社債店頭売買高を見ると、これまでの主役でもあった生保や地域金融機関の動きは慎重だったようだ。
今後に関しては、当面、現在よりやや利回り水準を切り上げてのもみ合いにとどまると予想している。イールドカーブ・コントロールが続き、政策金利が変更されない限り、「点検」の結果を受けても、相場の変動幅が大きくなることは考え難い。
10年国債利回りのコア・レンジは0.050~0.100%を想定している。
ワクチン接種が進捗、景気が一定に回復しても、それがコンセンサスに沿った展開なら、持続的な利回り上昇には寄与しまい。米長期金利の2%超えの懸念は依然、根強そうである。しかし、利上げ時期が早まることはインフレ期待を抑制するし、実質金利の上昇は慎重なテーパリングの運営によってFRBが基本的に避けると見込んでいる。長期金利の急上昇は景気回復に水を差し、株価急落も招きかねないからである。
我が国では今後、経済対策の策定が予想されるが、昨年度の経験を踏まえ、日銀の国債買入れと当局の適切な年限配分などがそのマイナス・インパクトを封じ込めると判断している。

・海外市場の動向に比べて、日本国債市場は比較的安定して狭いレンジでの動きが続いているが、やや低調な国債入札結果も散見されているので、今後の需給動向には注意しておきたいと思う。

・日本銀行の長引くイールドカーブ・コントロール政策、更に3月の決定会合で追加された連続指値オペの存在のために日本国債市場の機能度が一段と低下しているように感じる。
直近の値動きにおいてもデルタは辛うじて海外金利とわずかな相関を保っているが、イールドカーブに関しては、海外金利がダイナミックにフラット化する一方で日本国債はスティープしたり、逆にスティープバックする局面でフラット化したりと逆相関ともいえるような状況。
引き続き安定発行・安定消化の観点から、超長期入札におけるイールドダッチ方式への移行を希望する。増額となった40年債入札も当該方式が無難な入札結果に一定の役割を果たしたものと考える。

・6月は、米国CPI、FOMCと大きなイベントがあった事で、国債市場も出来高を伴い金利が上下動する場面はあったものの、基本的にはレンジ内での動きとなっている。
その背景は、日本銀行の強力なサポートに加え、投資家の押し目買い意欲が引き続き強い事と思料する。今後もしばらくは同様の動きが継続すると考える。

・年終わりにかけては、ワクチン接種が進み集団免疫が得られることで、日本銀行のイールドカーブの低位安定を優先したオペレーションも変化することで、オペの大幅減額の可能性などもあるのではないかと予想しているものの、目先においては米金利が落ち着いてしまえば、日本国債についても狭いレンジ相場に入る可能性がある。足元の低ボラティリティ環境下において、国債市場特別参加者が減少したこともあり、落札業者の負担を軽減する措置を再考する必要があると考える。第一非価格競争入札の枠を増やすことを提案する。

・日本銀行の金融政策点検を終え、期初から国内投資家による債券残高を復活させるための買いが継続する中、米国を中心とした海外金利の安定から国債金利の低位安定と変動率の低下が続いている。引き続き米金利動向を睨みながら方向感を探っていく展開。

 
4.理財局からの連絡事項

・消費者物価指数(以下「CPI」という)は、令和3年8月に公表される令和3年7月分から2020年基準に切り替えられる予定となっている。これに伴い、令和3年7月分以降のCPIを用いて算出される令和3年9月11日以降の連動係数の算出方法については、平成28年の基準改定時と同様の変更を行うこととするので、御連絡する。

 

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問い合わせ先

財務省 理財局 国債業務課 市場総括係
電話 代表 03-3581-4111 内線 5700