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日時 令和2年12月11日(金)

場所 書面にて開催

内容

1. 令和3年1-3月期における物価連動債の発行額等について

○令和3年1-3月期における物価連動債の発行額等について、理財局から以下のように説明を行った。

・物価連動債については、P.3のとおり、令和2年度発行計画(2次補正後)では、1回の入札当たり2,000億円で年4回の発行としつつ、「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて、柔軟に発行額を調整」することとされている。また、P.4のとおり、買入消却についても、「市場の状況や市場参加者との意見交換も踏まえ、必要に応じて実施する」こととされている。本日は、1-3月期における発行額等について、御意見をお伺いするもの。

・P.5のとおり、10-12月期については、市場の状況や市場関係者との意見交換を踏まえ、11月に発行額2,000億円で入札を行うとともに、物価連動債市場の需給の改善を図るために、買入消却入札を毎月500億円実施することとしたところ。11月の発行入札の結果は、P.6のとおりである。 
 買入消却入札と日銀買入オペの結果については、P.7のとおりである。

・流通市場の状況については、P.8からP.10までのとおりである。3月から4月にかけて大幅に下落した本邦BEIは、5月以降は概ねゼロ近傍で推移している。

・こうした中で、皆様から事前に御意見を伺ったところ、このところの物価連動債市場では、以前ほどは断続的な売りがみられる状況ではなくなっているものの、引き続き需給が良くない状況が続いていることから、1-3月期における物価連動債の発行額及び買入消却額については据え置きとすることが望ましいとの御意見が多かった。

・こうした状況を踏まえて、P.11に当局の提案をお示ししている。1-3月期については、10-12月期と同様、1回の入札当たりの発行額を2,000億円とし、毎月500億円の買入消却入札を行うこととしてはどうかと考えている。 
 市場環境等については引き続きしっかりとフォローし、状況に応じて、機動的かつ適切な対応を行う予定である。

・以上、物価連動債市場についての状況とそれを踏まえた1-3月期の発行額等の当局の提案について御説明した。物価連動債市場の育成は国債管理政策上の重要な課題と考えており、1-3月期における発行額等については、本日の会議内容も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて皆様の御意見を頂戴したい。

○提出された意見等の概要は以下のとおり。

・物価連動債のBEIはカレント債にてゼロ%近傍を推移している。直近では日銀買入・買入消却の結果も実勢値から大きく価格が下方向に乖離する頻度が下がってきており、BEIが理論値的下限よりもかなり低い位置でトレードされていた頃と比べると、かなりマーケットの需給状況は改善してきているように見える。しかしながら、引き続きコロナ下において市場の流動性は低下したままであり、BEIも理論値的下限に張り付いているため、現在の市場はまだ価格決定能力が回復した状況とは言い難く、引き続き少なめの発行額および多めの買入消却額により需給状況の健全化を待つべきだと考えている。

・買入消却や日銀買入での平均価格及び案分水準、何れにおいても徐々に改善してきている状況であるが、依然としてオフ・ザ・ラン銘柄のBEIはマイナス10bps台、カレント債も引き続きBEIゼロbps近辺で取引されており、需給が逼迫しているという状況ではなく、発行額・買入消却額共に現状維持となる当局の提案を支持する。

・足元のBEIがゼロ%近傍で推移する中、新型コロナウイルスのワクチンへの期待はあるが、足元ではグローバル景気や国内物価動向に対する不透明感が高い状況が継続している。 
 斯かる環境下では、投資家需要は乏しく、安定消化の観点からも現状規模の発行と買入消却の実施が適当と考えている。

・買入消却を毎月1,000億に増額し、物価連動債の流動性向上のためにも将来的に発行額を3,000億に戻すことが可能な市場環境を整備する必要があると考える。 
 引き続きコアCPIがマイナス圏で推移する状況下、理論値を下回る価格帯にあっても本格的な需要を見込める状況にない。依然として需給悪化を懸念する投資家の声が多数であり、寧ろ戻り売りの機会を伺う投資家も少なくない。ここは思いきって買入消却の増額を実施し、健全な市場環境の回復を促してほしいと考えている。

・CPIの上昇が見込みにくい中、新規の買いに慎重になっている投資家が多く、発行額は現状維持が望ましいと考える。また一方で、アロケーション変更に伴う持ち高調整も続いており、買入消却額についても現状維持を希望する。

・当局の提案の通り、令和3年2月の発行額を2,000億円、1-3月の買入消却額を500億円とする案に賛成する。 
 オフ・ザ・ランの幅広い銘柄に断続的に売り物が出ている状況に変化はない。CPIがマイナス圏に沈む現状では、新規の投資家需要の発掘が難しい状態である。 
 前回の買入消却で久しぶりに買入平均価格格差がプラスとなったが、現行の発行額と買入償却額の効果が出てきたものと思われる。今後、ポジション整理が一巡してテールがプラス圏内で大きく流れる場合や、応募倍率の低下が顕著になった場合には買入償却額の減額も検討していく必要があると思われる。

・物価連動債については、先行きの物価上昇が見込めない状況下、市場参加者にとってはパフォーマンス・流動性等の様々な観点で厳しい状況が継続しているとの認識である。かかる状況に鑑みるに、当面は需給バランスの改善を図っていくことが重要と推察されるため、引き続き足元程度の発行額および買入消却額の継続を支持する。

・一頃よりも需給は改善傾向と見られるものの、大幅な需給の改善傾向は見られないことから、引き続き発行・買入消却共に現状維持を支持する。

・既発債の物価連動債については引き続き流動性が低い状況が続いているため買入消却については現状維持の毎月500億円を希望する。カレント債については現状の発行額でBEIマイナス5.0~ゼロ%に範囲で安定的に推移しているため発行額を変更する必要はないと考える。


2. 令和3年1-3月期における流動性供給入札について

○令和3年1-3月期における流動性供給入札について、理財局から以下のように説明を行った。

・流動性供給入札については、P.13のとおり、令和2年度発行計画(2次補正後)では、 
 ① 残存15.5-39年ゾーン及び残存1-5年ゾーンについては、令和元年度と同様、それぞれ3.0兆円、2.4兆円とするほか、残存5-15.5年ゾーンについては令和元年度から1.2兆円減額して6.0兆円とし、合計で年間11.4兆円を発行することを想定しつつ、 
 ② 最終的には「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて柔軟に調整」することとされている。 
 これを受け、本日は、1-3月期におけるゾーン毎の発行額等について、御意見をお伺いするもの。

・P.14のとおり、10-12月期においては、令和2年度発行計画で想定されているのと同様、残存1-5年ゾーンについては、奇数月の11月に4,000億円、残存5-15.5年ゾーンについては毎月5,000億円、残存15.5-39年ゾーンについては、偶数月の10月と12月に5,000億円の発行とした。

・P.15~17に、最近の流動性供給入札の結果を示している。各ゾーンにおいて、総じて安定した結果となっている。

・こうした中で、1-3月期の流動性供給入札について、皆様から事前に御意見を伺ったところ、一部の方から、特定の銘柄における需給のタイト化を指摘する御意見をいただいたものの、いずれのゾーンについても需給状況に大きな変化はみられていないことから、多くの方から、現状の発行額等を維持することが適当との御意見をいただいている。

・これを受け、P.18にあるとおり、1-3月期におけるゾーン毎の発行額の当局の提案を作成した。残存1-5年ゾーンについては、奇数月の1月と3月に4,000億円、残存5-15.5年ゾーンについては、毎月5,000億円、残存15.5-39年ゾーンについては、偶数月の2月に5,000億円の発行としてはどうかと考えている。

・1-3月期における流動性供給入札のゾーン毎の発行額等については、本日の会議内容も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて皆様の御意見を頂戴したい。

○提出された意見等の概要は以下のとおり。

・各年限で金額がバランスよく配分されており、証券会社のショートカバーや投資家需要に支えられ安定的に消化できていることから、現状と同程度の配分が適当と考えている。

・当局の提案に賛成する。ただ、海外投資家によるアセットスワップの需要が強くみられる残存3-4年ゾーンが品薄な状況となっている。残存1-5年ゾーンには増額余地があると考える。

・残存1-5年ゾーンの幾つかの銘柄を除いて足元の日本国債のオフ・ザ・ラン銘柄における需給状況は良好と見ており、現状流動性供給入札の額を変更する差し迫った理由は特に見当たらないように思う。足元の残存1-5年ゾーンのオフ・ザ・ラン銘柄のタイトな需給状況が比較的長期間続けば、将来的には残存1-5年ゾーンの増額を検討してもよいように見える。

・残存1-5年ゾーンは買入額増や海外投資家の需要、担保需要等によりタイト銘柄が増えており、市場の流動性を高める為に増額を希望する。対して、残存5-15.5年ゾーンは買入対象銘柄の削減が進みタイト銘柄が出にくくなっている為、減額が可能と考える。

・各ゾーンとも流動性供給入札でのショートカバーニーズは強く、流動性供給入札の総額が変わらないのであれば現行通りの発行額を支持する。

・1-3月期は現状維持の当局の提案に賛成する。一方、残存1-5年ゾーンについては今後増額・毎月発行などでタイトな銘柄の買戻し機会をより提供してもらえるとありがたい。

・残存1-5年のゾーンについては発行増額の検討をお願いしたい。 
 コロナ禍において増額された日銀買入オペ(国債及び社債)等の影響により特に残存3-4年を中心としたゾーンの物不足は大きく、マーケット・メイクに支障を来すような場面も見られる。1-3月期については残存1-5年ゾーンの発行額を隔月5,000億円とすることを提案する。

・何れの年限についても現状維持となる当局の提案を支持する。2年債及び5年債のオフ・ザ・ランにおいて、恒常的にレポがタイト化している銘柄が複数見られており、前回の本会合でも残存1-5年ゾーンの増額を希望する証券会社が多かった印象ではあるが、日銀買入において対象から除外される等、ある程度対処は為されており、流動性供給入札を増額する程の状況ではないと考える。

・残存1-5年ゾーンについて1回の入札当たり1,000億の増額を希望する。 
 既発債の2年債・5年債を中心にレポタイトな中短期ゾーンの銘柄が複数観測され、流動性の低下が顕著となっている。既発債の流動性低下はイールドカーブの歪みを助長し、適切なマーケット・メイクを困難にし、新発債の入札消化に悪影響を及ぼす。市場の要望に基づき同ゾーンについて増額姿勢を明確化することで既発債の流動性が増加し、新発債の安定消化が可能になると思料する。 
 尚、残存5-15.5年、15.5-39年については、発行額及び発行頻度と投資家需要がおおむね見合っており、現状維持が望ましいと考える。

・令和3年1-3月期の流動性供給入札については現状維持の発行額を希望するが、残存1-5年については流動性が低く需給がタイトな銘柄が多いことから来年度以降増額の余地はあると考えている。

・当局の提案に賛成する。前回の本会合では残存1-5年の引締まりから、このゾーンの1,000億円の増額を希望していたが、直近のイールドの水準調整の売りにより引締まり感が薄まったことから、年間発行額に鑑み現状の実施額での継続を支持する。

・10-12月と同様の額を希望する。流動性供給入札については、各ゾーンとも相応の需要が見られており、現時点で特段発行額の変更等の措置は必要ないとの認識である。但し、7月からの各ゾーンにおける大幅増額を受けて今後は徐々に新発債と既発債の流通バランスに偏りが出てくることが想定されるため、(1-3月期ではなく)将来的には新発債の発行分を一部流動性供給入札での発行分に移していくことも市場での適切なイールドカーブ形成に必要ではないかと考える。


3. 令和3年度国債発行計画等について

○令和3年度国債発行計画等の現在の検討状況について、理財局から以下のように説明を行った。

・P.20の左側に、「発行根拠法別発行額」、すなわち使途別の要調達額についての検討状況をお示ししている。新規国債及び復興債は予算編成過程において、財投債は財政投融資計画等の策定過程において、それぞれ発行規模が決定されることになるが、現時点において確たることを申し上げる状況にない。

・借換債については、前回会合において「国債発行額の将来推計」を基に説明したとおり、今年度より大きく増加する見込みである。

・右側には消化方式別発行額の検討状況をお示ししている。「個人向け販売分」・「日銀乗換」についてもまだ精査中である。「入札時の追加発行分等」については、第Ⅱ非価格競争入札分の他、オーバーパーによる収入の上振れ分も考慮しているが、この点については、令和3年4月より利付債の表面利率の下限を現行の0.1%から0.005%に引き下げる影響も考慮することとなる。以上を踏まえ、「市中発行額」を決定することとなる。

・ご参考までに、現在のカレンダーベース市中発行額の金額をP.21につけている。

・P.22及びP.23には、先月の本会合及び国債投資家懇談会で頂戴した、カレンダーベース市中発行額の年限構成に関する主な意見を整理している。

・超長期ゾーンについては、発行額の維持または増額を求める意見が多く、特に40年債の増額を求める意見が多かった。また、超長期ゾーンでの複数年限での発行増額は避けるべきとの意見もあった。

・中長期ゾーンについては、発行額の減額・増額どちらも可能との意見が多かった一方、発行額が既に過去最高水準となっているため、増額に慎重な意見もあった。

・短期債(T-Bill)については、令和2年度国債発行計画(2次補正後)で最も増額したゾーンであることもあり、発行総額が減る場合は減額すべきとの意見が多かった。特に、1年物よりも6ヵ月物の方を優先的に減額すべきとの声が多く見られた。

・流動性供給入札については、発行規模の維持や増額を希望する意見があった。

・物価連動債については、将来のインフレ期待に対するヘッジ手段としてのニーズがあるとの意見があった。

・なお、第3次補正予算(令和2年度)においては、要調達額がまだ明らかでないが、前倒債の活用等を通じて、既に過去最大となっているカレンダーベース市中発行額の更なる増額をできる限り抑制したいと考えている。

・今後、本日いただくご意見等を踏まえ、令和3年度国債発行計画等の具体的な内容を決定のうえ、例年どおり、予算等と併せて公表する予定。

○提出された意見等の概要は以下のとおり。

・来年度の国債発行計画については、依然としてコロナ禍で不確定要素が大きいため、概ね現状程度の発行額を維持することが安定的な市中消化につながると考えている。しかしながら、大量発行が続く短期債(T-Bill)については、在庫を抱えられる証券会社が限られており、日銀買入オペの額に日々左右されるような不安定な状況にあることも事実であり、引き続き注意が必要とみている。 
 また、追加発行が求められる場合は、短期債(T-Bill)増額を検討する前に、需給逼迫が常態化している中短期ゾーンや、イールドカーブ・コントロール政策の効果もあって当面は国内投資家からの安定需要が見込める10年債以上の年限での増額を検討すべきと考える。

・令和3年度国債発行計画については、利付債は基本的に現状維持で、短期債(T-Bill)の増減による調整を希望する。利付債増額が開始された2020年7月以前から、日本銀行による国債買入が増加しているが、利付債の増額額対比で日本銀行の国債買入増加額はかなり緩慢なペースであった為、毎回の入札に対する緊張感は、以前よりも増していると考えられる。日本銀行のスタンス次第ではあるが、これ以上の利付債の増額は、国債市場のボラティリティ上昇を誘発しかねないとみている。

・2年債・5年債・10年債・20年債・30年債については発行額据え置き、40年債は隔月6,000億円(1回あたり1,000億円)への増額を希望する。生保勢の規制対応を主因とするデュレーション・ニーズは来年度も引き続き高いと考えられ、流動性供給入札(残存15.5-39年未満)における残存35-39年ゾーンへの需要も毎回確認されている状況。また、40年債の投資家層の拡がりに加えて、30年債との発行額のアンバランスさもあり、20-30年スプレッドが20bps台半ばへと拡大を続ける中、30-40年スプレッドが依然として1-4bpsという低水準で推移している事も鑑みると、隔月6,000億円への増額が可能と考えている。

・40年債と20年債の足元の需給は良好であるが、増額以降、イールドカーブは顕著にスティープ化している。これは、他年限対比で超長期ゾーンの発行コストが上昇していることを意味しており、現時点以上の需要が発生しないと、今のカーブ形状は維持できないと考える。 
 従って、超長期ゾーンの増額については慎重に判断すべきであり、特に、30年債は減額も検討すべきと考える。仮に増額が必要な場合は、10年債以下のゾーンを優先すべきと考える。

・超長期ゾーンの発行額維持または増額に対して、異論はない。その中でも、投資家層の裾野が広い20年債の増額を優先してほしい。

・20年債及び40年債の増額余地について、特に40年債は保険会社を中心としたリアルマネーの需要が非常に強く、増額が必要との認識。一方、20年債についても、現状は増額余地があると感じているが、預金取扱金融機関による預貸ギャップの変化と、10年債利回りがゼロ%近傍に張り付いていることによる消去法的な一過性の好需給の可能性もあるため、優先度は40年債より低い。

・本日の会合資料にある通り、当局のカレンダーベースでの更なる増額をできる限り抑制したいとの考えに賛成する。40年債については、投資家が増えてきていることを踏まえれば、増額が可能と考える。

・投資家需要の強い年限での増額が望まれる。特に、残存10年~20年ゾーンでは引き続き資金流入が見込まれるほか、40年債も生保のデュレーション需要に支えられていると考える。残存10年以下は、いずれの年限も金融政策の下で安定的な推移が見込まれる。

・40年債は、国内外問わず強い需要がみられる。グローバルに金利が低位安定する中、旺盛な需要が継続すると考えられ、来年度は40年債に増額余地がある。 
 海外からの旺盛なアセットスワップ需要などにより、タイトな中期ゾーンがみられるため、来年度は、残存1-5年ゾーンの流動性供給入札の増額、場合によっては毎月発行が望ましいと考える。

・残存1-5年ゾーンの流動性供給入札及び40年債については、増額余地があると考えている。

・短期債(T-Bill)を減額基調、長期・超長期ゾーンを増額基調にすべきと考える。最終的には、落札ランキング上位社の意見を聞いて決定すべきだと思う。

・今年度の補正予算で大量に短期債(T-Bill)が増額されており、このゾーンの発行規模を抑制していくことが今後の課題であると認識している。 
 その上で、来年度の国債発行計画においては、発行年限の長期化を検討すべきと考えており、具体的には、20年債と40年債に増額の余地があると考えている。

・2020年度分については、まずは前倒債の消化を行い、その上で、必要であれば短期債(T-Bill)の増額が可能と考える。実際に短期債(T-Bill)を市中で増額する場合は、3か月→1年→6カ月の順に増額するのが望ましい。 
 2021年度分について、発行減額する場合は、短期債(T-Bill)を中心に減額すべきと考える。逆に、発行増額する場合、発行余地があるゾーンは20年債と40年債であり、40年債の方が、より優先順位が高いと考える。3次補正以降、2020年度内に短期債(T-Bill)を増額する可能性はあると思うが、発行額の高止まりが2021年度も続くことは望ましくないと考える。発行額が高止まるようであれば、一部を超長期ゾーンへと移行することも検討すべきと考える。

・令和3年度国債発行計画については、まず、40年債の大幅な発行増額が必要と考える。理由としては、国内生損保の日本国債回帰が顕著な状況において、発行量の少ない40年債の需給がかなり逼迫していること、また、現状の2ヶ月に1回の発行ペースでは、入札前後とそれ以外の期間で流動性に偏りが生じていることがあげられる。この状況を解消すべく、1回当たりの発行額を減らしてでも毎月発行へと移行することが望ましいと考える。隔月1回当たり1,000億円の増額では状況の改善に全く寄与せず、具体的には毎月4,000億円まで増額し、その代替として30年債を毎月8,000億円に減額すべきと考える。 
 また、流動性供給入札の大幅な増額も必要と考える。日銀買入オペの長期化による既発債の流動性低下が顕著であること、特に、残存1-5年ゾーンが深刻な状況にあることが誰の目から見ても明らかであることから、銘柄間の需給平準化と流動性の回復を目的とした大胆な発行増額が望まれる。

・来年度増額する場合は、引き続き投資家需要が強く引締まり感の強い40年債を希望する。一方、短期債(T-Bill)は、今年度大量に増額され、今後、利付債への借換えが順次進んでいくと思われるため、荷もたれ感の強い6ヶ月物を中心に減額を希望する。

・令和3年度の利付債の発行計画については、今年度から大きな変化なないと考えているが、40年債については投資家の強いニーズがあるため、増額の余地があると考えている。超長期ゾーンの発行増に将来的な懸念があるのであれば、40年債を増額し30年債を減額することで対応できると考えており、それによる年間発行総額の減少については、需給がタイトな残存1-5年ゾーンの流動性供給入札を増額することで対応できると考えている。


4. 最近の国債市場の状況と今後の見通しについて

○提出された意見等の概要は以下のとおり。

・国債市場は極めて安定した均衡状態にあると見えるものの、日々の値動きは乏しく、将来の市場価格の変更に対する見通しが立ち難いことから店頭顧客/証券会社の売買は細っており、またLIBOR取扱停止を見込んだ円金利スワップ取引の手控え傾向が増しており、流動性は全般的に低下している。 
 グローバルなワクチン普及と共に金利見通しも変化していくと見るが、暫くはこうした流動性の乏しい環境が続くと考えられることから、当社としては突発的な動きを警戒すると共に、当局と国債市場特別参加者とのより緊密なコミュニケーションが必要と考えている。

・米大統領選以降売買を手控えていた投資家の買いが続き、外部環境の影響もなく日本国債マーケットは高値で推移している。12月前半も入札に合わせて投資家の買いが続きしっかりとした相場となっているが、年末にかけては新型コロナウイルス対応で出社比率の低下も考えられ、マーケットの流動性については注意が必要だと考えている。

・株高や米国金利の上昇の中でも、円金利は落ち着いた動きをしており、当面は抑制された動きを続けると考える。

・株式市場や海外金利が上昇する中でも、残存10年以下の金利はほぼ動かず、超長期セクターもしっかりとした動きとなっている。国内投資家の安定的な需要が継続しており、3次補正予算の影響も軽微と見られる。当面は、外部環境との相関も低く金利の上昇余地は限られそうである。

・前回会合以降、海外市場の動向や年末に向けたポジション調整に伴い、相場は幾分変動しつつも、安定的な推移を続けている。10年債の利回りは非常に狭いレンジで膠着しており、発行と輪番を材料とした需給相場の継続が見込まれる。

・海外金利の動向対比で金利が上がりづらくなってきているように感じる。今年度は、コロナ禍に伴う財政出動と国債発行増額があった一方、結局のところその資金は預金取扱金融機関への滞留を通じ、国債の需要として顕在化した面があるのではないか。もっとも、コロナワクチン開発の進展とコロナ感染の沈静化、それに伴う株高等、リスクオンが続き、グローバルでの金融政策の正常化への議論へと繋がっていけば、金利上昇の可能性もあり、今後注視していきたいところ。

・イールドカーブ・コントロールが強力に効く事でイールドカーブ全体が低位安定しつつ、流通市場における出来高低迷と低ボラティリティが今後も継続する事を想定している。

・強力な日本銀行のイールドカーブ・コントロール政策の下、非常に安定している市場であるが、やはり当局の発行計画が大変重要だと考えている。こうした点については、有識者の意見もあるが、市場の貴重な意見として落札上位社の意見をぜひ尊重し、意見交換をしてもらいたい。

・海外金利、株式、為替等の外部環境によって変動はするものの、その幅についてはイールドカーブ・コントロールの下で小さく市場機能が損なわれており、今後も同様の状況が続くと考えている。市場の機能度向上が必要であり、日銀買入オペ(10年超25年以下)の減額により、超長期金利を市場に委ねる必要があると考えている。

・11月26日の前回会合から特段大きな変化はないが、今年度3次補正予算や来年度予算における国債発行増額への懸念が薄れ、超長期ゾーンを中心に地合いが良化している。また、外部環境面では、米国長期金利は高止まりしている一方、欧州金利が低下基調にあり、それが欧州債から日本国債へのシフトを促している感がある。もっとも、イールドカーブ・コントロールにコントロールされた「官製相場」という大枠は変わっていない。 
 今後の見通しに関し、来年を通じて今年後半のレンジ相場が続くというのが基本線になる。もし、利回りが予想以上に上振れするとすれば、ワクチン接種の浸透などから新型コロナウイルスの感染の収束が明確となり、強い景気回復が続く場合だろう。ただし、その際も日本銀行がイールドカーブ・コントロールの手を緩めることまでは考え難く、10年債利回りの上限は、最大限見積もっても、日本銀行が容認する変動幅の上限の0.20%程度と予想される。加えて、日米金利の連れ高の公算は小さく、やはりイールドカーブ・コントロールが米金利上昇の波及を防ぐだろう。一方、下振れはやはり、新型コロナウイルスの爆発的感染などが引き金だろうが、世界経済の失速、強いリスク・オフの進行が背景と目される。その場合、マイナス0.200~マイナス0.300%までの利回り低下が視野に入る。しかし、これも現状では、蓋然性を与えられるほどの高いリスク・シナリオとは見ていない。最後に、来年度は国債の大幅な発行増額がないという前提に立てば、タイトなレンジ相場が続くことによって投資家がより長い年限、デュレーション・リスクを負うことが可能になり、それを通じて意外なイールドカーブのフラット化が起こる公算を指摘しておきたい。

・入札のプレゼンスが増えている中で、海外投資家からの平均落札価格でのオーダーが増えており、注文執行に国債市場特別参加者として難しさを感じている。この現状に対処するために、第Ⅰ非価格競争入札を国債市場特別参加者1社につき1%分増やすことが望ましいと考える。

・発行増額懸念からスティープ化が進んでいた超長期ゾーンに投資家からの資金が流入している。ファストマネーによるこのゾーンの買戻しも誘発しているようである。また中長期国債は日本銀行による強固な金融調節の影響で変動率が低下している。 
 FRBがゼロ金利政策を当面継続する公算が大きくなる中、日本銀行が政策変更を行う可能性は低く、引き続きカーブの緩やかなスティープ化を容認するものと予想する。投資家は日本国債の押し目買いスタンスを維持し、円金利はイールドカーブ・コントロール政策の下、基本的には安定した推移となるであろう。 
 一方、新型コロナの感染状況やワクチン開発、海外金利の動き、米中関係の行方によって、特に残存10年超のセクターでボラティリティが高まるリスクはあるであろう。

・米大統領選直前に市場参加者全体で少しポジションを軽くする動きが出て国内金利が一時的に上昇する局面もあったが、それでも既往レンジの範囲内で、全体として日本銀行のイールドカーブ・コントロールが強く効いていること、超長期についても生保等を中心とする強い投資家需要に支えられ、総じて金利は低位安定しているものと思われる。米大統領選後は、トリプルブルーを回避して米国も過度な財政拡大懸念が後退し、海外金利もボラティリティは相応にありつつもレンジを形成しつつあること、国内でも3次補正の大筋が見えてきて、大幅な発行増額懸念が後退しつつあること等から、国内金利が大きく上昇する材料に乏しく、引き続き低位安定を想定している。

・安定発行・安定消化の観点から、プライマリー市場へ新たな投資家層を呼び込むため、引き続き超長期ゾーンのイールドダッチ方式への変更を希望する。

・日本銀行による積極的な国債買入スタンスを背景に10年債金利はゼロ%程度での推移が継続すると考えている。 
 来年度の発行計画が発表されるまでは一定程度の警戒感は残ると考えているが、足許では利付債の大規模な発行増額に対する懸念が後退する中、投資家需要を背景に超長期ゾーンも安定的に推移しており、今後もこの傾向が続くと考えている。

・海外金利に大きく連動することもなく、引き続き円金利は低位で安定推移している。今後も日本銀行がイールドカーブ・コントロールや強力な金融緩和を推し進める中にあっては、同様に狭いレンジでの推移が想定されるが、市場参加者の多くが同様の見通しを持っていることから、海外金利がさらに上昇基調を強めたりする等外部環境が大きく変化した際に、大きく動き出す可能性も頭の片隅に入れておきたいと考えている。

・今月の10年債入札及び20年債入札は、いずれも従来と比較して低い金利水準で実施されたにも関わらず、不明分が相応に多く無難に消化されており、米大統領選後の堅調な相場展開を受け、投資家の買い目線が利回りで見て徐々に切り下がって来ている印象。また30年債入札が0.650%で実施された後、1週間で5bps程度金利低下しており、30年債及び40年債の需給が大幅に改善している。直近の超長期ゾーンの堅調さに加えて、来月には各年限で新発債へ切り替わる事によるロールダウン効果も有り、少なくとも年内に関しては堅調な地合いが継続そうな雰囲気である。

・強力な金融政策により、今後も金利の低位安定が続くと考える。


  
 

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財務省 理財局 国債業務課 市場総括係
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