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日時 令和2年6月24日(水)

場所 書面にて開催

内容

1. 令和2年7-9月期における物価連動債の発行額等について

○令和2年7-9月期における物価連動債の発行額等について、理財局から以下のように説明を行った。

・物価連動債については、P.3のとおり、令和2年度発行計画(第2次補正後)では、1回の入札当たり2,000億円で年4回の発行としつつ、「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて、柔軟に発行額を調整」することとされている。また、P.4のとおり、買入消却についても、「市場の状況や市場参加者との意見交換も踏まえ、必要に応じて実施する」こととされている。本日は、7-9月期における発行額等について、御意見をお伺いするもの。

・P.5のとおり、4-6月期については、市場の状況や市場関係者との意見交換を踏まえ、5月に発行額2,000億円で入札を行うとともに、物価連動債市場の需給の改善を図るために、買入消却入札を毎月500億円実施することとしたところ。P.6のとおり、5月の発行入札は、市場実勢に即した結果となったと考えている。
   買入消却入札と日銀買入オペの結果については、P.7のとおりである。買入消却入札、日銀買入オペ共に、足元、前日引値対比20銭程度の安値での決着がみられているところ。

・流通市場の状況については、P.8からP.10までのとおりである。P.8及びP.9をみると、足元は、世界的に見て、一頃に比べて落ち着いた動きとなっている。
   詳しくはP.10のとおりで、3月から4月にかけて、新型コロナウイルス感染症の感染拡大及び原油価格の下落に伴って、欧米のBEIが大きく低下し、日本のBEIも、それに続いて大幅に下落していたが、5月の発行入札を通過後、BEIは概ねプラス圏で推移し、足元ではゼロ%近傍で推移している。

・こうした中で、皆様から事前に御意見を伺ったところ、足元では特にカレント債については価格が上昇してきているものの、既発債についてはグローバルなリスクオフ地合いの中、カレント銘柄との入替の動き等に伴い、引き続き需給が不安定な状況が継続していることから、7-9月期における物価連動債の発行額及び買入消却額については据え置きとすることが望ましいとの御意見が多かった。

・こうした状況を踏まえて、P.11に当局案をお示ししている。7-9月期については、4-6月期と同様、1回の入札当たりの発行額を2,000億円とし、毎月500億円の買入消却入札を行うこととしてはどうかと考えている。
   市場環境等については引き続きしっかりとフォローし、状況に応じて、機動的かつ適切な対応を行う予定である。

・以上、物価連動債市場についての状況とそれを踏まえた7-9月期の発行額等の当局案について御説明した。物価連動債市場の育成は国債管理政策上の重要な課題と考えており、7-9月期における発行額等については、本日の会議内容も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて皆様の御意見を頂戴したい。

○出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・当局の提案に賛成する。外部環境は事前に想定されていたほどは悪化しておらず、欧米の期待インフレも反発を見せているが、日本だけはBEIがゼロ%近辺での推移と、依然として低迷している状況。従って、7-9月期については、発行額を2,000億円、買入消却額は毎月500億円とするのが適切であると考える。

・新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響で、CPIがマイナス圏に入ったことから、市場参加者の動きが更に消極的になっている。発行減額と買入消却の増額により、需給が改善し、一時的に価格の反発もあった一方、ファンドによっては物価連動債のポジションを閉じる動きもみられ、新たな買い手を見つけることが難しい状況に変化はない。カレント銘柄は発行額が小さいことから、足元は流動性が低下しているが、リオープン発行を続けることで、徐々に流動性が高まることが期待できる。当局の提案通り、8月の発行額を2,000億円、7-9月期の買入消却を毎月500億円とする案に賛成する。

・当局の提案に賛成する。足元のBEIがゼロ%近傍となっていることや、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う今後の世界景気や国内物価動向に対する不透明感が極めて高い状況と考えている。このような環境下においては、投資家需要は乏しく、安定消化の観点からも、現状規模の発行と買入消却の実施が適当であると考えている。

・1回の入札当たり2,000億円の発行及び毎月500億円の買入消却入札の実施継続が望ましいと考えている。3月に見られた相場の調整局面以降、当局や日本銀行の対応にも関わらず、インフレ率上昇への道筋が見通せない中、投資家の需要が戻ってきているとは言い難い状況である。このような状況を鑑みるに、当面は需給バランスを地道に改善させていくこと以外に市場参加者に安心感を与えることは難しいと推察されるため、引き続き、現状程度の発行額及び買入消却額の継続を支持する。

・カレント銘柄のBEIはプラス圏まで回復したが、オフ・ザ・ラン銘柄はまだマイナス圏にあり、日銀買入オペと財務省による買入消却入札で市場が何とか保たれているという状況に変わりはないと思う。一部の投資家からは、日本の物価連動債市場に対する質問も聞かれるようになっているが、幅広い投資家からの需要は依然として見られておらず、辛抱強く現状の発行及び買入消却を継続すべきと考える。

・物価連動債市場では引き続き需要が不安定な状況が続いているため、4-6月期と同じ発行額及び買入消却額を支持する。

・現状のBEIの水準においても23回債以下のオフ・ザ・ラン銘柄には潜在的な売却ニーズが存在し、当局案に基づく発行・買入消却の実施で安定化を待ちたい。

・物価連動債市場は、引き続きカレント銘柄とオフ・ザ・ラン銘柄においてやや大きな需給のギャップが見られており、オフ・ザ・ラン銘柄が割安に見える状況が続いている。従って、依然としてマーケットのオフ・ザ・ラン銘柄の在庫が多いと考えられることから、買入消却については大きめの額を維持することが望ましく、現状維持が適切と考えている。また、更に大きく需給が崩れるようであれば、臨時の買入消却を行い、対応することが望ましいと考えている。

・1回の入札当たり3,000億円発行及び買入消却の毎月800億円実施を提案する。5月実施の発行入札では投資家の強い需要が窺えた一方、買入消却や日銀買入オペは総じて弱い結果となっており、カレント銘柄とオフ・ザ・ラン銘柄の需給格差が拡大している状況と言える。発行額、買入消却額両方の増額により、格差是正に繋がるものと思料する。

・需給環境の悪化は継続しているものの、3月以来の最悪期からは一旦離脱したと思われる。このため、緊急的に発行額を半減させた5月発行入札から前進させて、1回の入札当たり3,000億円の発行を希望する。これは、発行額を絞ったためにオフ・ザ・ラン銘柄とは大きく異なる値動きをしたカレント銘柄の流動性を高めてほしいという意図もある。一方で、需給改善の観点から、オフ・ザ・ラン銘柄の保有者からは、買入消却の増額への強い要望もある。未だにアンダーパーという、理論値から乖離した水準で推移する市場を放置することは、今後の投資家需要を減退させる要因になると危惧している。

・5月の発行入札については、予想よりもしっかりとした結果となり、その後もBEIはゼロ%前後の水準で安定的に推移しているため、8月の発行入札については1,000億円増額の3,000億円の発行を希望する。買入消却については、オフ・ザ・ラン銘柄の需給の改善が見られず、カレント銘柄対比でBEIが大きく乖離していることから、250億円増額の月750億円を希望する。

・市場残高の減少は需給環境に好影響を与えるが、BEIは既にゼロ%付近へ上昇しており、経済ファンダメンタルズと比較して、異常な水準にあるとは考えられない。よって、買入消却の規模は縮小しつつ、緩やかな残高減少を目指すことが適切であると思料する。また、買入消却という制度の趣旨や市場残高を踏まえると、カレント銘柄は買入対象外とすることが適切であると考えられる。

2. 令和2年7-9月期における流動性供給入札について

○令和2年7-9月期における流動性供給入札について、理財局から以下のように説明を行った。

・流動性供給入札については、P.13のとおり、令和2年度発行計画(第2次補正後)では、
   ① 残存15.5年超ゾーン及び残存1-5年ゾーンについては、令和元年度と同様、それぞれ3.0兆円、2.4兆円とするほか、残存5-15.5年ゾーンについては令和元年度から1.2兆円減額して6.0兆円とし、合計で年間11.4兆円を発行することを想定しつつ、
   ② 最終的には「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて柔軟に調整」することとされている。
   これを受け、本日は、7-9月期におけるゾーン毎の発行額等について、御意見をお伺いするもの。

・P.14のとおり、4-6月期においては、令和2年度発行計画で想定されているのと同様、残存1-5年ゾーンについては、奇数月の5月に4,000億円、残存5-15.5年ゾーンについては毎月5,000億円、残存15.5年超ゾーンについては、偶数月の4月と6月に5,000億円の発行とした。

・P.15~17に、最近の流動性供給入札の結果を示している。各ゾーンにおいて、総じて安定した結果となっている。

・こうした中で、7-9月期の流動性供給入札について、皆様から事前に御意見を伺ったところ、いずれのゾーンについても需給状況に大きな変化はみられていないことから、殆どの方から、現状の発行額等を維持することが適当との御意見をいただいている。
   これを受け、P.18にあるとおり、7-9月期におけるゾーン毎の発行額の当局案を作成した。残存1-5年ゾーンについては、奇数月の7月と9月に4,000億円、残存5-15.5年ゾーンについては、毎月5,000億円、残存15.5年超ゾーンについては、偶数月の8月に5,000億円の発行としてはどうかと考えている。

・7-9月期における流動性供給入札のゾーン毎の発行額等については、本日の会議内容も踏まえて総合的に判断することとしており、改めて皆様の御意見を頂戴したい。

○出席者から出された意見等の概要は以下のとおり。

・当局の提案に賛成する。各年限で金額がバランスよく配分されており、証券会社のショートカバーや投資家需要に支えられ、安定的に消化できていることから、現状と同程度の配分が適当であると考えている。

・当局の提案に賛成する。今年度に入り、一時的に市場流動性が大きく落ち込む局面もあったが、流動性供給入札の結果については、各年限ともに非常に安定していた。7-9月期も現行の発行額で問題ないと考える。

・現状のマーケットにおいては、レポ市場を見ても、個別の銘柄に対する大きな需給の歪みは観測できず、流動性供給入札が機能していると考えている。従って、現状の発行額の維持が適切であると考えている。

・3つのゾーン全てにおいて適正な発行量と思われるため、当局の提案に賛成する。

・流動性供給入札の年間発行額に変更がなく、発行年限区分の中で発行額を調整するのであれば、現状維持を希望する。

・現状の発行額でバランスがとれているように思う。超長期ゾーンに関しても、最終投資家からの買いが見られており、問題なく消化されている。流動性供給入札の発行額の変更については、7月以降の利付債の発行増額の影響を見極める必要があると考えており、現時点では据え置きが望ましいと考える。

・当局の提案に賛成する。4月以降の入札結果をみると、残存5-15.5年ゾーンの応募倍率が、発行減額になったことで3.5倍前後に上昇したが、各ゾーンのバランスは取れていると思われる。残存1-5年ゾーンには、恒常的に需給がタイトなオフ・ザ・ラン銘柄も多く、増額余地があるが、7月から国債の発行額が大幅に増えるため、7-9月期においては変更の必要はないと考える。

・7-9月期については、4-6月期と同様の発行額を支持する。流動性供給入札については、各ゾーンとも相応の需要が見られており、現時点で特段、発行額の変更等の措置は必要ないと認識している。ただし、国債発行増額が行われる7月以降は、徐々にカレント銘柄とオフ・ザ・ラン銘柄の流通バランスに偏りが出てくることが想定されるため、将来的には、カレント銘柄の発行量を、一部、流動性供給入札での発行に移していくことも、市場での適切なイールドカーブ形成に必要ではないかと考えている。

・基本的に当局の提案に賛成する。直近の入札結果からは、年限毎の発行額、発行頻度が現状の需給環境に概ね見合っていることが窺える。強いて言えば、今後更なる発行増額が必要となった際には、2年債や5年債を増額するよりも、流動性供給入札の残存1-5年ゾーンを増額することにより、銘柄間の需給格差が過度に広がることを抑制し、市場の機能度及び流動性を維持することに寄与できるものと思料する。

・海外投資家から短中期ゾーンへの投資ニーズが強まってきている。そのため、残存15.5年超ゾーンを4,000億円へ減額して、残存1-5年ゾーンを5,000億円へ増額することが望ましいと考える。

・残存1-5年ゾーンは日銀買入の増額や担保需要等により需給がタイトとなっている銘柄が増えているため、増額を希望する。一方、残存5-15.5年ゾーンは、チーペスト銘柄のスクイーズ対策以降、需給がタイトとなる銘柄が出にくくなっているため、減額可能と考えている。

3. 最近の国債市場の状況と今後の見通しについて

○提出された意見等の概要は以下のとおり。

・市場参加者は従来の勤務体制に徐々に復帰しつつあるが、リスク・テイカーが増加した印象は薄い。また、大きく落ち込んだ国内外の景気は米国を中心に良好な経済指標も見られるようになったが、その持続性には疑問があり、新型コロナウイルス感染症の感染再拡大のリスクも存在する。10年債金利は日本銀行の政策目標であるゼロ%中心での推移を続ける一方、7月からの国債発行増額と日本銀行の買入意欲の乏しさから、超長期ゾーンの需給が相対的に弱く、イールドカーブはスティープ化している。こうした現在の状況を踏まえると、7月以降、世界的な景気回復や超長期ゾーンの需給改善がなければ、金利上昇やイールドカーブのベア・スティープ化は続くと見込まれる。もっとも、この場合でも、最終的には日本銀行がこうした動きを阻む役割を果たすだろう。超長期ゾーンの需給に対する懸念がやや過剰と映るため、実際には、7月に入れば、国債市場は買いが先行すると考えている。新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって引き起こされる様々な経済の構造変化を踏まえると、プラス圏で推移する10年債金利が高水準すぎると判断しており、どこかで水準調整が起こる公算は小さくないだろう。

・各国の経済対策や新型コロナウイルス感染症の感染拡大に対する衛生面での対応に差はあるが、グローバルにイールドカーブのスティープ化の傾向が続いており、共通した背景として、国債発行増額による需給の緩みと様々な景気刺激策による景気回復期待が挙げられる。日本においては、日本銀行が超長期ゾーンの国債買入に消極的であるとの観測もあるが、超長期ゾーンに対する生保の潜在的な需要は決して少なくはなく、5月の公社債店頭売買高の投資家別売買動向をみても、4,000億円台半ばと高水準の買い越しとなっていることが確認できる。足元の低金利状況が長期間にわたって続く可能性が高いことを踏まえると、市場機能を重視するという日本銀行の姿勢は適切であると考える。もっとも、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって在宅勤務などが増えたことに伴う流動性の低下など、様々なリスクは依然として存在しており、金利急騰時には日本銀行による国債買入の増額は超長期ゾーンを含めて必要であると考える。金利急騰リスクとしては、7月以降の国債発行増額が挙げられるが、5月に発行増額が決まったタイミングでも、投資家の売買動向が相応の買い越しとなったことは大きいと考えており、金利急騰時には生保等リアルマネーが一定の歯止めの役割を果たすことが期待できると考えられる。
   また、今後、潜在的な需要が見込まれる先としては、貸出額の少ない預金取扱金融機関が考えられる。新型コロナウイルス感染症対応のための貸出が増加した金融機関は、日本銀行の新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペに参加することで、マクロ加算残高を大幅に増やすことができる一方で、日本銀行は政策金利残高を一定に保つために、基準比率を引き下げる必要があり、貸出額の少ない預金取扱金融機関にとっては、金利がプラス圏にある国債を購入するなどにより、政策金利残高を削減する動機が生じる。また、預金取扱金融機関にとっては、特別定額給付金、いわゆる10万円給付による預金急増もあるため、金利がプラス圏にある国債を購入する原動力になると考えている。そのため、今後、10年債の金利がプラス圏であれば、需要は高まると考えており、日本銀行による国債買入オペの増額がなかったとしても、10年債の金利はプラスマイナス0.2%の範囲に十分に収まり、金利上昇したとしても0.1~0.15%程度の範囲に収まると考えている。こうした観点から、ベア・スティープ化の傾向は続くが、かなり穏やかなものになると考えている。
   他方、金利低下のリスクとしては、米中貿易摩擦等に伴う逃避買い需要の高まりや、FRBやECBなどによる更なる低金利政策の実施が挙げられる。FRBはマネー・マーケット・ファンドに配慮する必要があるため、マイナス金利導入の可能性が低い。ECBは既に金利を大きく引き下げており、パンデミック緊急購入プログラムの拡大の可能性はあるが、マイナス金利の深掘りには慎重にならざるを得ない。こうしたことを踏まえると、各国の中央銀行がグローバルに低金利競争をする蓋然性は低く、リスクオフ・イベントに対して、各国は財政政策を中心に対応することになると考えられるため、逃避買い需要の高まりが財政政策に伴う国債発行増額によって相殺される可能性もあると見込んでいる。

・市場の関心は国債発行増額に伴う日銀買入オペの調整に集まっている。超長期ゾーンに対する需給懸念がイールドカーブのスティープ化の主な背景となっており、諸外国でも、イールドカーブの末端部分の金利水準についての目線が定まったとは言い難い状況である。しかし、日本銀行の金融緩和政策は出口戦略から一層遠のいており、インフレ率や経済成長率の高まり等がなければ、リスクプレミアムの織り込みにも限度があると考えられる。今後のイールドカーブについては、スティープ化の傾向を維持しつつ、緩やかに調整されていくと想定している。

・国債市場については、3月や4月に比べて流動性は回復しているが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大前と比べると、依然として店頭での取引量及び市場での取引可能額は少ない環境が続いている。スワップや先物、オプションなどのデリバティブ市場の流動性が著しく低い状況が続いており、国債市場の流動性にも影響を及ぼしていると考える。流動性については、投資家や証券会社のオフィスへの出勤率と比例するとみており、年内は緩やかなペースで回復していくことを想定している。

・3月に国債市場の流動性が大きく低下したが、日本銀行が国債買入オペを柔軟に運営したことと10年債金利がプラス圏に入り投資家需要を喚起したことにより、4月以降、ボラティリティが低下し、市場は徐々に落ち着きを取り戻している。一方、2回の大型補正予算の編成に伴う国債発行計画の変更により、金利上昇圧力がかかり、日本銀行の買入比率が相対的に低い超長期ゾーンの金利については、1年振りとなる水準まで上昇し、イールドカーブはベア・スティープ化した。ただし、生保等リアルマネーの押し目買い需要が見られ、相場全体のボラティリティが上昇するには至っていない。7月からの国債発行増額により金利が上昇する局面もあると考えられるが、投資家の押し目買い需要を喚起し、実需による売買を伴った市場が形成されることが期待される。

・国債発行増額による金利上昇圧力はあるが、超長期ゾーンの投資家需要と日本銀行のイールドカーブ・コントロールを背景に、安定した市場環境が継続すると考えている。

・7月以降の日本銀行の国債買入オペの運営に関して若干の不確実性は伴うものの、7月以降の国債発行増額を相応に織り込んで金利水準が調整され、イールドカーブが形成されている状況にある。今後はグローバルな景況感の立ち直りの度合い及び各国中央銀行の金融緩和姿勢の強度の変化などによって、長期ゾーンや超長期ゾーンの金利は適度に変化していくことになるが、現時点では金利上昇バイアスが強めに意識されているように見受けられる。

・7月からの大幅な国債発行増額の決定に加え、グローバルでのリスクオン相場を受け、日本国債のイールドカーブは引き続きスティープ化の傾向で推移している。足元、30年債金利は0.58%台、40年債金利は0.61%台と、昨年4~5月以来となる水準まで金利が上昇している。ただ、10年債金利については、4月後半の日本銀行の追加緩和を受けてマイナス0.05%に低下し、6月前半の米国の雇用統計の公表を受けて0.05%近辺まで上昇したが、直近の超長期ゾーンの金利上昇にも関わらず、現状は0.01%近辺と極めて安定的に推移している。現状のイールドカーブのスティープ化については、国債発行増額の決定を受けた需給悪化観測だけではなく、グローバルな株式市場の堅調さを受け、欧州や米国の国債も同様にスティープ化の傾向で推移しており、米国の追加経済対策期待や新型コロナウイルス感染症に対するワクチンの早期開発期待もあり、7月以降もこうした傾向が継続する可能性が否定できない状況である。10年債については、イールドカーブ・コントロール政策下で引き続き安定的に推移すると見込んでいるが、超長期ゾーンについては、7月以降の日銀買入額や大幅な国債発行増額による入札への影響が不透明であり、少なくとも7月や8月はボラティリティの高い相場になりそうである。

・7月以降の大規模な国債発行増額が決定されたにも関わらず、国債市場は比較的安定している。ただし、7月以降は利付債の発行額が急増するため、需給環境が一変するリスクは存在する。日銀買入オペの増額を通じて一定程度の影響を吸収することになると市場は想定しているが、今後の市場の流動性等には十分な警戒が必要であると考えている。

・世界的なコロナショックからの脱却と景気回復期待による株高を横目に、債券は積極的には買い進みづらい状況となっているように感じる。加えて、7月から始まる国債発行増額も意識されているが、日本銀行の国債買入スタンスがどう変化するかが7月以降の相場動向を左右するポイントの一つと思われる。

・前回の本会合以降も、引き続き、閑散なマーケット状況が継続している。多くの市場参加者の注目点は7月の日本銀行の国債買入オペの運営方針となっており、それを確認するまでは、積極的に動きづらいのではないか。ただ、金利は一時的に上昇することがあっても、投資家の実需に支えられる形で、安定的な推移になると考えている。

・大規模な財政支出に伴う国債発行増額懸念から生じる金利上昇圧力は幾分弱まっているが、マーケットでは7月からの国債発行増額の影響を織り込みきれていないと考えている。日本銀行による積極的な国債買入姿勢を背景に、10年債金利はゼロ%程度での推移が継続すると考えているが、今後、更なる財政支出の増加も意識される中で、超長期ゾーンを中心に金利上昇への警戒感が残ると見込んでいる。

・7月以降の国債発行増額を日銀買入で支えられるかどうかに市場の注目が集まっているが、10年債金利の値動きが安定していることから、やはり日本銀行の強力なイールドカーブ・コントロールに支えられるという見方が多いのではないか。

・新型コロナウイルス感染症の感染拡大も完全には収まっておらず、今後も不要不急の活動が控えられることが予想されるため、市場の流動性は悪化した状態が長期化しそうである。このような環境下で、7月からの大幅な国債発行増額を見据えて、ダッチ方式での入札の実施を改めて要望する。財務総合政策研究所のディスカッション・ペーパー「日本国債入門―ダッチ方式とコンベンショナル方式を中心とした入札(オークション)制度と学術研究の紹介― 」において、ダッチ方式とコンベンショナル方式のどちらが発行体の利益に繋がるのか分析されているが、①「勝者の呪い」が顕著なケース、②入札参加者の間での共謀が深刻なケース、③スクイーズが深刻なケースを取り上げ、①についてはダッチ方式が有利、②についてはコンベンショナル方式が有利、③についてはダッチ方式が有利、とされている。現状のマーケットを鑑みると、マーケットの厚みが薄く、今後の国債発行増額による影響が不透明な中で、①のケースが顕在化する可能性がある。また、カレント銘柄の需要は強く、レポ市場におけるカレント銘柄の需給が引き締まるケースもしばしばあり、③のケースに該当すると考えられる。発行体としても、より低いコストで資金調達を行うため、入札方式の変更について検討してもよいのではないかと考えている。

・10年債以下の金利については、日本銀行の国債買入オペの増額を見込んで安定的に推移しているが、超長期ゾーンの金利については、スティープ化が進んでおり、発行増額を前に若干不安定な動きとなっている。過去最大の国債発行増額を控え、入札方式を変更する良い機会であるため、利回りダッチ方式への変更を改めて希望する。国債発行増額後の安定的な発行・消化のため、これまで価格コンべンショナル方式であることでプライマリー市場を敬遠してきた国内外の投資家層を、利回りダッチ方式にすることでプライマリー市場に誘導し、投資家の裾野を拡大するきっかけにすべきではないかと考えている。また、例えば、10年債以下のゾーンについては発行額が1.5兆円以上の場合、20年債以上のゾーンについては発行額が5,000億円以上の場合には、入札方式を利回りダッチ方式とし、発行額がその金額未満の場合には入札方式を価格コンべンショナル方式とするなど、入札方式についての条件を明確に定めれば、海外投資家にも受け入れられやすい。また、入札方式を利回りダッチ方式に変更すれば、当該入札方式に慣れた、特に米国の投資家からの入札参加の増加が見込まれ、価格の安定や発行コストの軽減にもつながると考えている。なお、米国で20年債の入札発行に成功し、その後、金利も安定的に推移しているが、利回りダッチ方式に拠るところが大きかったと聞いている。

・7月からの国債発行増額が控えているが、日本銀行の金融政策に対する期待感もあり、金利は緩やかに上昇し、イールドカーブはスティープ化している。今後、市場とのコミュニケーションに齟齬が生じれば、急激にボラティリティが上昇する可能性が十分にあると考えている。

・緊急事態宣言の解除直後は、債券市場の流動性や機能度に改善の兆しが一時的に見られたが、足元、流動性や機能度はともに再び低下傾向にあると認識している。7月以降の未曽有の国債発行増額を前に、「金利が上昇したら抑制する」という日本銀行の対応姿勢の下で、積極的な債券売買の困難さを感じており、市場のボラティリティが再び急上昇する可能性もあると危惧している。低位安定したイールドカーブを継続するためには、当局、日本銀行、そして市場参加者が一体となって取り組んで行く必要があると感じており、引き続き丁寧な連携と市場との密なコミュニケーションをしてほしい。


  
 

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問い合わせ先

財務省 理財局 国債業務課 市場総括係
電話 代表 03-3581-4111 内線 5700