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日時 令和2年4月30日(木)

場所 書面にて開催

内容

1. 令和2年4-6月期における物価連動債の発行額等の変更について

○令和2年4-6月期における物価連動債の発行額等の変更について、理財局から以下のように説明を行った。

・物価連動債については、P.3のとおり、3月の本会合でいただいた御意見を踏まえ、令和2年度国債発行計画(補正後(変更後))において、1回の入札当たり3,000億円で年4回の発行としつつ、「市場参加者との意見交換を踏まえ、市場環境や投資ニーズに応じて、柔軟に発行額を調整」することとしている。また、P.4のとおり、買入消却についても、「市場の状況や市場参加者との意見交換も踏まえ、必要に応じて実施する」こととしている。本日は、4-6月期における発行額等について、足元の市場環境等を踏まえ、改めて御意見をお伺いするもの。

・P.5のとおり、4-6月期については、5月に発行額3,000億円で入札を行うとともに、物価連動債市場の需給の改善を図るために、買入消却入札を毎月500億円実施することとしたほか、3月には3,000億円の追加買入を実施することも合わせて決定したところ。
   買入消却入札と日銀買入オペの結果については、P.6のとおりである。3月25日に実施した追加買入については、概ね市場実勢に即した結果となったほか、市場の在庫を相応に吸収したことで、その後の物価連動債の需給改善に寄与したと考えている。
   一方、4月以降に実施した買入消却入札や日銀買入オペについては、特に足元で前日引値対比大幅な安値の結果となっているところ。

・流通市場の状況については、P.7からP.9までのとおりである。P.7及びP.8をみると、足元の動きは、引き続き、日本においてのみならず、世界的に見て、トレンドから大きく乖離したものとなっている。
   詳しくはP.9のとおりで、足元では原油価格が一時マイナスをつけるなど、大幅に下落していることなどから、欧米のBEIも低下傾向にある。日本のBEIは、3月の追加買入実施後一旦改善がみられたものの、足元では欧米と同様に軟調な動きとなっており、マイナス0.2%程度で推移している。

・こうした中で、皆様から事前に御意見を伺ったところ、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴うリスクオフ地合いに加え、流動性の低下や原油価格の下落に伴って、グローバルに物価連動債が売られ、需給が大幅に悪化していることから、5月の物価連動債の発行入札が3,000億円の規模となると、供給が需要を相当程度上回る恐れがあるとの御意見が聞かれた。

・こうした状況を踏まえて、P.10に当局案をお示ししている。
   4-6月期の発行額については、3月の本会合後に決定した1回の入札当たり3,000億円から、更に1,000億円減額し、2,000億円としてはどうかと考えている。買入消却入札については、変わらず毎月500億円行うことを考えている。皆様からは、発行額を減らすこととした場合、物価連動債の将来的な継続性について疑義を招きかねないとのご意見を複数いただいており、発行額を減らす趣旨について、一言付け加えさせていただく。当局としては、物価連動債を将来にわたって継続的に発行していくことは重要であると考えているところ、一時的な需給の変動等により、商品性やファンダメンタルズから乖離した市況が続くことは、そうした継続性に悪影響を及ぼすおそれがあると考えている。足元の市況に鑑み行う今般の発行額の減額は、物価連動債の安定的な発行の継続を目的としていることを、念のため申し添えたい。
   なお、市場環境等については引き続きしっかりとフォローし、状況に応じて、機動的かつ適切な対応を行う予定である。

・以上、物価連動債市場についての状況とそれを踏まえた当局案について御説明した。
   物価連動債市場の育成は国債管理政策上の重要な課題と考えており、令和2年4-6月期における発行額等については、本日の会議内容も踏まえて再度判断することとしており、改めて皆様の御意見を頂戴したい。

○提出された意見等の概要は以下のとおり。

・ 5月の物価連動債の発行額を2,000億円にすることを支持する。
   物価連動債は発行の度に新規の投資需要を掘り起こさなくてはならないため、需給悪化が起こりやすく、フェアな価格を大幅に下回る場合は機動的に対応をするべき、という当社の考えは変わっていない。その点で、先月の3,000億円の追加買入、1,000億円の発行減額、毎月300億円の買入消却増額は、十分な対応であったと考えていた。しかし、直近起こった史上類を見ないエネルギー市場の暴落の中、再び物価連動債がフェアバリューから乖離しながら売られている状況を踏まえると、これらの対応では間に合わず、発行額を更に減らす当局の提案が適切と考える。

・当局の提案に賛成する。3,000億円への発行減額や、当局が3月に実施した3,000億円の買入により、一時は落ち着きを取り戻していたものの、依然としてフロア価格の100円を下回る推移が続いている点や、原油価格の大幅な下落等によりグローバルに物価連動債のセンチメントが悪化している点を考慮すると、2,000億円への一段の発行減額により需給を安定させることが望ましい。

・物価連動債については、買入消却額を維持しつつ5月の発行額を2,000億円まで減額する案を支持する。原油価格の大幅な下落といったファンダメンタルズの悪化もあるが、引き続き在宅勤務の市場参加者が増えていることもあり、物価連動債市場の流動性は低く、フロアがあるにも関わらずBEIは大幅なマイナス圏で推移している。この水準でBEIが推移してしまうということは、需給環境がかなり緩くなってしまっているということと考えられるため、発行減額を支持する。また、足元の市況に鑑み行う今般の発行額の減額は、物価連動債の安定的な発行の継続を目的としているとの趣旨も理解した。

・足元のBEIがマイナス圏となっていることや、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴うグローバルな景気悪化の長期化懸念、原油価格急落等、今後の国内物価動向に対する不透明感が極めて高い状況となっている。かかる環境下では、今後の投資家需要は更に乏しくなることが想定され、安定消化の観点からも発行額を2,000億円に減額することが適当と考えている。

・物価連動債の発行額の変更は、マーケット環境に即したものであり、今後のマーケットの成長に資するものと考えることから、当局の提案に賛成する。

・当局が提案している通り、現状を考えれば発行減額は妥当であると考えている。また、買入消却の頻度、金額に対しても異論はない。

・グローバルでは原油価格が急落するなど、足元では物価連動債市場を取り巻く環境は一段と悪化している。加えて、国内では緊急事態宣言が解除される見通しが立っておらず、市場参加者が少ない中では安定消化への不安が拭えないため、従前の3,000億円から2,000億円への発行減額を支持する。

・日本銀行が「国債の無制限購入」を決定した4月27日の金融政策決定会合以降、日本の債券市場はイールドカーブ全体で更に落ち着きを見せているが、物価連動債については流動性に乏しい状況に変化はなく、値が飛びやすい状況が続いている。新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う投資家、証券会社のスプリット勤務長期化や原油価格下落等から投資需要の減退が見込まれる中、発行額については前回の本会合で決定された3,000億円から1,000億円程度の更なる減額、及び買入消却額の月額500億円からの更なる増額の検討が好ましいと考えている。こうした施策により、市場参加者に安心感を与えるのは勿論のこと、今後の潜在的な需要も呼び起こされることが期待されるものと考えている。

・当局の提案に賛成する。足元の当該マーケットの流動性及びリスク許容量を勘案すると、2,000億円への発行減額は非常事態として適切な対応と考える。
   買入消却の金額についても足元の応札・落札状況を見る限り売却ニーズは残っており、発行減額後も500億円で据え置くことに賛成する。ただし、日銀買入額を合わせるとネットの吸収額が大きくなるため、応札額の減少やテールの拡大など、応札や落札結果に大きく改善が見られた場合は、その後の市場流動性を維持するために買入消却額を減額する必要があるか、臨機応変に判断をすることが望ましいと考える。

・令和2年5月の発行予定額を2,000億円とする当局の提案に賛成する。
   3月後半に3,000億円の追加買入が実施されたが、目に見えた反発は殆ど見られず、カレント債のBEIはマイナス20bps前後での推移となっている。名目10年債より金利が高く、かつ、プラス金利という事で、新年度入り後は新たな買い手が出て来ると期待していたが、この1か月、国内外の投資家のいずれからも買い需要は殆ど見られなかった。一時的なCPIマイナス化も予想され、原油市場の大幅な反発についても、ここ2~3か月で期待出来るような状況では無く、一時的な発行の減額は適当だと考えている。
   ただ、当局の説明では「今般の発行額の減額は、物価連動債の安定的な発行の継続を目的としている」とあるが、市場維持の観点から、これ以上の発行減額や買入消却の増額については、慎重に取り組んでほしい。

・ 3月以降の急激な市場環境の悪化は引き続き予断を許さない状況にあるため、 今後予想される需給バランスの急変時には、適宜、必要な額での買入消却を機動的に実施し、市場の安定化を図ってほしい。

・当局提案の2,000億円への発行減額を支持する。非常事態における低流動性の市場を踏まえた上でのサポートと解釈している。

・新型コロナウイルス感染症の感染拡大による業務的制約を受けて、市場の流動性は著しく低下しており、元々相対的に流動性が低い物価連動債への影響は特に大きくなっていると考えられる。物価連動債は、既に一部の銘柄の価格がフロアを考慮した理論上の最低価格を下回る状況になっており、需給の悪化が著しい状態と思われる。従って、発行の影響を軽減するための発行減額の措置は適切と考える。一方で、直近の日銀買入オペ及び買入消却の銘柄を見ても、マーケットではオフ・ザ・ラン銘柄に売り需要があると考えられるため、今後も物価連動債の需給が改善しない場合は、買入消却の増額等の措置をとることが適切と考えている。

・今般の需要減退に応ずる形で、発行額を2,000億円に減額する当局の提案に賛成する。買入消却の金額にも賛成する。一方で、現在も、カレント債である24回債はオフ・ザ・ラン銘柄対比、BEIが相応に高い水準で推移している。今回、新回号を減額することによって、24回債、25回債と他の銘柄とのBEI格差が定着、あるいは更に乖離していくようであれば、買入消却において柔軟に対象銘柄を選定することを念頭に置いてほしい。

・ 5月債については新発債になるため、セカンダリー市場の流動性を維持し、市場を成熟させるためにも一定量の発行残高が必要だと考え、発行金額については2,000億円ではなく3,000億円を希望する。先月から物価連動債の需給バランスが崩れBEIは大きく下落しているが、カレント債については投資家の押し目買いも入り、既発債対比需給がよい状況となっている。5月債についても連動係数など理論的な面からも入れ替えベースでの買いが予想されるため、3,000億円の発行でも消化できると考えている。ただし、既発債については入れ替えベースの売りが出ると更なる需給悪化が考えられるため、買入消却額については、1回の入札当たり200~300億円の増額を希望する。
   1回の入札当たり2,000億円まで発行減額するのであれば、今後の需給環境を見ながらリオープン発行になる8月債からを希望する。

・発行を取り止めるとともに、買入消却は現行ペースで維持することを希望する。また、発行を継続する場合には、カレント債の市中残高に配慮して、25回債を買入消却の対象から除外することを提案する。
   国内需要が乏しい商品であることに加えて、CPIが前年比マイナス1%に向かいかねない状況で、物価連動債が実需を伴わない水準で取引されている、もしくはマークされていることが問題の本質である。発行額を多少減らしたとしても、取引環境が大きく改善することはないと考えられる。市場機能を重視するのであれば、BEIが大幅なマイナスとなることも甘受し、フロア価値が物価連動債の買い手に有利な状況とするべきだが、これは発行体にとって割高な調達を意味する。国内からの強い需要が聞かれるまで、当面の発行を取り止めることが適当であると思料する。

2. 最近の国債市場の状況と今後の見通しについて

○提出された意見等の概要は以下のとおり。

・緊急事態宣言及びその拡大に伴い、在宅勤務が一段と増えるなど、新年度入り後の市場流動性は回復せず、一段と落ちているだろうが、市場参加者の様々な努力や日本銀行の買入れ方針の変更などによってセカンダリー市場では相応の取引が行われており、国債入札にも大きな問題は見られていない。令和2年度補正予算に伴って国債発行額は一段と膨らむことになったが、当局が市場との対話を図り、年限配分にも細心の注意を払ったため、ネガティブな影響はほぼなかった。
   今後に関しては、緊急事態宣言が解除されれば、流動性は徐々に回復するだろうが、現時点では1か月程度延長されると見込まれているため、その間、足元の市場の状況は基本的に変わらないだろう。いずれは緊急事態宣言が解除されるという前提を置くならば、期待感も含め、経済の回復は概ね同時進行であり、金利上昇圧力がかかりやすいが、4月27日に決定された金融緩和の強化によって、中央銀行である日本銀行が金利上昇圧力を金融政策で抑え込むことが確認されたので、やはり、金利が持続的に上昇することは想定しづらい。加えて、今後、国債発行が更に増額されることになっても、この構図は変わらないだろう。最後にリスクを挙げるならば、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の第二波の可能性や原油価格低迷の長期化といったことが考えられるだろう。

・緊急事態宣言の発出後、在宅勤務をする市場参加者が増えており、発行入札と日銀買入オペの重要性がますます増している。足元では、緊急事態宣言の延長が議論されているが、その際には追加の刺激策などにより国債の追加発行の必要性が生じかねない事態も考えられる。そうでないとしても、6月以降の景気回復の度合いによっては、将来的に景気対策の議論が出てくる可能性があると考えている。加えて、政府短期証券の増額により国庫短期証券の発行額が予想を大きく上回ってきている。納税猶予した税金等が納められることで将来的には国庫短期証券の発行額が減少する可能性もあると見込んでいるが、一時的とはいえ、市場が大きく変わる可能性がある。
   国内投資家の担保需要や海外投資家の需要、日本銀行の国債買入れも含めて、需給環境を俯瞰していくためにも、国債市場特別参加者等の市場参加者とのコミュニケーションの強化を図ってほしい。また、昨年度の本会合での議論を踏まえて、年度内でも国債発行計画を機動的に見直すことができると理解しているので、本会合や国債投資家懇談会を意見交換の場として引き続き活用してほしい。

・イールドカーブ・コントロールの下、国債市場は引き続きレンジで推移することが見込まれる。ただし、入札と日銀買入オペが取引全体に占める割合は増える方向にあり、その前後ではボラティリティが高まるリスクがあると思われる。

・新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、政府から緊急事態宣言が発出されて以降は、証券会社だけでなく、投資家にも在宅勤務が広がり、この4月は長期国債先物の日中売買高が1兆円にすら達しない日がほとんどであり、流動性の低下を痛感させざるを得なかった。こうした要因もあって、新年度開始以降、10年債金利はマイナス0.01%~0.015%程度の非常に狭いレンジでの推移となっていたが、4月27日の日本銀行の金融政策決定会合で、CPや社債だけでなく、国債の買入れについても強いコミットメントが示されたことを受けて、10年債金利はマイナス0.05%前後まで低下している。
   今年7月以降の国債発行の増額が懸念されていることもあり、大幅な金利低下にはならないと考えているが、3月半ば以降、プラス金利が暫く続いた10年債が、少なくとも目先1~2か月はマイナス金利で推移しそうな状況であり、この環境下では超長期ゾーンの金利上昇も抑制されそうな印象である。国債発行の増額を控えた6月末までは、10年債金利がマイナス0.05%、20年債金利が0.3%、30年債金利が0.4%を中心とする数ベーシスの狭いレンジで推移するのではないか。

・緊急事態宣言の発出以降、市場参加者の在宅勤務が増え、日々の取引量が大幅に減っている。流動性が低下している中で、オフ・ザ・ラン銘柄に関しては売買が非常に難しくなっている。懸念されていた今年7月以降の国債発行の増額に対しては、強力な日銀買入オペがサポートとなっており、需給環境を大きく崩すことはないと考えられる。

・令和2年度補正予算編成に伴う国債発行予定額の増額が国債価格の上値を抑える一方で、4月の日本銀行の国債買入オペの頻度が多くなったことや、新年度となり国内投資家を中心とした債券積み増し需要などが国債価格の下値を支えたことにより、10年債金利はゼロ%近辺での推移となっていた。新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けて、4月27日に、日本銀行が金融緩和の一段の強化策を発表し、その一環として、国債のさらなる積極的な買入れを表明したことにより、金利は低下基調となっている。今後2か月については、ボラティリティの低下と相まって、金利の一段の低下が見込まれる。

・足元の国債市場については、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による業務的制約を受けた流動性の低下が最大の問題となっていると見られるものの、マーケットのボラティリティや投資家層の厚さの回復を見る限りでは徐々に改善傾向にあると思われる。今年7月からの国債発行の増額についても、日本銀行が金融緩和姿勢を強めたことにより相殺されていくと見ており、大きな影響は出にくいと考えている。現状、超長期ゾーンのイールドカーブはある程度スティープな形状になっているものの、10年債金利が暫くの間マイナス圏に位置する可能性が高くなったことから、中長期的にはプラス金利に対する需要が超長期ゾーンに見られやすいと考えており、今後超長期ゾーンの発行増額が続かない限りは、イールドカーブが徐々にブルフラット化していく展開が予想される。

・スプリット勤務やリモートワーク推進により市場参加者が減少したことで、セカンダリー市場の流動性が大きく低下しており、今後も入札前後の値動きが大きくなるが、日本銀行の積極的な国債買入れを背景に、金利は上昇しづらい展開が続くと考えている。

・国債市場については、政府の緊急事態宣言が1か月前後全国的に延長される見通しとなる情勢の下で、市場参加者の取引頻度は低下したままである一方、日本銀行による国債買入額と買入回数を増やす政策によってボラティリティや金利水準はともに各年限で低位安定している。

・緊急事態宣言以降、在宅勤務等の影響もあり、先物市場や現物市場ともに売買高が減少している。今のところ、ボラティリティは低位安定しているが、市場参加者が少ない中でマーケットが動くようであれば個別銘柄の需給でイールドカーブが歪む可能性が考えられる。

・国債市場全体を見ると、一時期に比べ、オファー・ビッド・スプレッドが縮小するなど流動性にはやや改善傾向が見られるが、マーケットの厚みや取引量、投資家のアクティビティは依然低調であり、全体としての市場流動性は今後も低位で推移すると考えられる。こうした状況で、短期国債を含めて国債発行の増額が始まっており、市場参加者のオペレーション上の制約も継続する中では、他の市場参加者からも指摘されている通り、国債の安定消化を図る上で入札方式としてのダッチ方式の有効性を検討すべきタイミングと考えている。

・緊急事態宣言の発出により、投資家は、従前よりもセカンダリー市場での細かい売買を極力抑え、その分入札で一度に必要な分を購入する傾向が強まったように感じる。入札の安定消化につながっているが、今年7月から始まる国債発行の増額と日本銀行の買入れとのバランスがどうなっていくのか、先般の日本銀行の金融政策決定会合で「国債のさらなる積極的な買入れ」方針が示されているが、今後の波乱要因になる可能性があると考えている。

・4月の国債市場については、日本銀行がより積極的な国債買入れを実施したことが奏功したことや、株式市場や為替市場など他の市場がやや落ち着きを取り戻したこともあり、3月に比べると、落ち着いた動きとなっている。この間、令和2年度補正予算に伴う国債発行の増額や、同補正予算の変更による更なる増額は順調に相場に織り込まれたと考える。一方で、緊急事態宣言の発出以降、国債市場における売買高の減少は著しく、国債先物の出来高は連日1兆円割れが続いている。市場が落ち着いている背景の一つには、緊急事態宣言下で取引を手控える証券会社や投資家も多かったことが挙げられる。緊急事態宣言の延長観測もあり、引き続き市場参加者の減少による低水準の売買高は続くものと思われるが、こうした中で、突発的なニュースや出来事により、マーケットが一方向に大きく振れるリスクを念頭に置いておかなければならないと考えている。

・政府の緊急事態宣言以降、市場参加者のスプリット勤務等の物理的な制約を背景に市場参加者のリスク許容度の低下が一段と顕著となっている。日本銀行による強力なサポートもあり、債券市場は一旦落ち着きを取り戻しているが、今年7月以降に国債発行の増額が実施されていく中、日本銀行が、FRB等主要な海外の中央銀行と同様に、積極的な国債買入れ姿勢を継続していくかは大きなポイントになると思っている。また、現物市場におけるオファー・ビッド・スプレッドは広く、国債先物がヘッジツールとして機能していないなど、流動性や機能度といった観点からは注意を要する環境が続いていると認識している。大型連休中に政府の緊急事態宣言延長が発表されると見込まれる中、債券市場の流動性や機能度が早期に向上することは困難であると考えられるため、当局にはこれまでと同様に、引き続き丁寧なコミュニケーションをしてほしい。

 

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問い合わせ先

財務省 理財局 国債業務課 市場総括係
電話 代表 03-3581-4111 内線 5700